Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

再エネ業界の競争が始まったのだろうか、電力価格が下がる日は来るのだろうか

 

 エネルギー高騰を受け、新電力の倒産や事業撤退が相次いでいるという。そんな中、同じく新電力のLooopが6月から値上げすると発表した。

「【重要】「Looopでんき」料金改定(値上げ)のお知らせ」|Looopでんき公式サイト

 足下の資源高騰の影響もあり、調達コストが増大、コスト吸収が困難になってきたようだ。ただ、Looopは、この値上げとともに、「再エネ電力宣言」を公表、経済的で安定的な電力供給を実現していくため、再生可能エネルギーによるエネルギー自給率の更なる拡充が求められているという。

 

 

 Looopは、「再エネの発電所を増やし、コントロールし、最大限に届ける電力会社となることで、日本のエネルギー自給率の向上とエネルギーコストの低減に向けて邁進します」という。

 再エネ普及に向け、4つのステップを踏んで進めるという。

(1) 市場の再定義とサービス再設計
「Looopでんき」の価格を見直し、再エネ設備導入の可能性の高い、一戸建てや小規模ビジネス事業者を中心に競争力のある価格設定とします。

(2) 再エネ電源確保と技術投資
太陽光や風力をはじめとした自社発電所の開発、産業用・住宅用屋根置き太陽光発電の普及を加速させ、分散型エネルギーマネジメントシステム「エネプラザ」の拡張やエネルギーマネジメント技術の拡充によって、再エネ電源を日本各地に普及させます。

(3) 再エネ供給の加速
確保した再エネ電源を活用してサービスを拡充し、顧客に再エネを届けることがスタンダードとなることを目指します。

(4) 技術革新
再エネ拡大に向けた未来の技術開発に取り組みます。(出所:Looop)

 PPA市場に参入する企業が増えている。同種のサービスの拡張では厳しい競争に巻き込まれるだけではないだろうか。それとも切磋琢磨し、サービスの質の向上に役立つのだろうか。

 

 

 再生可能エネルギーの発電と販売を行う自然電力も、太陽光発電所や風力発電所の設置を加速させているようだ。

 西鉄合同会社を設立し、再エネ発電所を開設、エネルギーマネジメントと組み合わせることで、九州エリアの企業や自治体の脱炭素化に貢献するという。

西鉄と自然電力が再エネ発電事業拡大を目指す合同会社を設立 ~再エネ発電所開発とエネルギーマネジメントを組み合わせ 九州エリアの企業や自治体の脱炭素化に貢献します~ - 自然電力グループ

(資料:自然電力)

 まずは、2022年度を目途に、西鉄グループの施設である博多国際展示場&カンファレンスセンター、成田ロジスティクスセンター、九州メタル産業 第二ダスト倉庫へ太陽光発電設備を設置し、再生可能エネルギー電力を供給する予定という。

 自然電力はこれまで国内外で1ギガワット(1ギガワット=原発約1基分)以上の再生可能エネルギー事業に携わってきたという。また、引き続き国内外でメガソーラーの建設も進めているようだ。3月末にも宮城県気仙沼市に20MWの太陽光発電所を完工したという。

(写真:自然電力

 また、マレーシアでは、東南アジアで最大規模の150MWの浮体式太陽光発電所の建設のため、現地でフィージビリティスタディを開始するという。

東南アジアで最大級の浮体式太陽光発電所のマレーシアにおける推進に合意 - 自然電力グループ

この発電所はマラッカに建設され、発電された電力は現地マラッカ州の政府系水道供給会社に供給されるという。

 再エネ業界でも熾烈な競争が始まったのだろうか。電力価格の高騰に歯止め掛け、電力需給の逼迫緩和に役立ち、その効果が目に見える形で示して欲しいものだ。もしそれが叶わないのであれば、まだ不足していることがあるのだろう。その強化も怠って欲しくない。現状に甘んじで欲しくない。

 

経済制裁下で、再エネ発電が増加する米国、業績が悪化、苦悩する東電

 

 経済制裁が効果を出し始めるのだろうか、ロシアが大量の原油を入札にかけたが、買い手がつかず失敗に終わったと、ウォールストリートジャーナルが報じる。ロシア経済の屋台骨であるエネルギー業界は苦境に追い込まれつつあるという。

ロシアの22年石油生産、最大17%減も 輸出も減少へ | ロイター

 一方、ロシアからのエネルギーを禁輸にした米国では3月29日、風力発電天然ガスに次ぐ2番目に大きな電力供給源になったという。

再生可能エネルギーがメインになる日も近い?米国でいいニュースが続々 | ギズモード・ジャパン

同日のアメリカ国内における風力発電量は毎時2,017ギガワットに達し、総発電量の19%強を占めました。

石炭と原子力の発電量がそれぞれ19%と17%だったため、初めて風力が同じ日に石炭と原子力の両方を上回りました。(出所:GIZMODO)

 また、一時的ではあるにせよ、カリフォルニア州では4月3日午後3時39分、再エネ率が97.6%に達したという。

 資源大国の米国で、再生可能エネルギーが急速に拡大しているようだ。

 

 

 東京電力ホールディングスが2022年3月期決算を発表し、純利益が前年比96.9%減になったという。

 燃料価格の高騰で調達コストがかさむとして、410億円の赤字を見込んでいたが、その後の改善もあり、何とか赤字は免れたという。

東電が96.9%の減益、赤字は回避 「福島への責任」に黄信号:朝日新聞デジタル

 朝日新聞によれば、小早川社長は会見で「燃料市況の高騰が続く中で、当社を取り巻く経営環境は予断を許さない」と述べ、グループの再編や他社との協業を含めた構造改革に乗り出すと明らかにしたという。

 また、小林会長は2030年度までに原子力発電を含む脱炭素分野に他社と連携するなどして9兆円以上を投資すると発表し、「1年以内をめどにアライアンスの方向性を示したい」と語ったという。

 ただ、東電の柏崎刈羽原子力発電所で発覚した「ずさんな管理」問題については未だ解決に至っていない。

ずさんな管理「柏崎刈羽に固有の問題」 原子力規制委: 日本経済新聞

 原子力規制委員会が、中間報告を公表し、相次いで発覚したテロ対策の不備を「柏崎刈羽原発に固有の問題」と判断したという。今後も検査を続け、改善状況を詳しく確認していくそうだ。

 柏崎刈羽原子力発電所は現在、規制委によって核燃料の移動を禁止する命令が出さえており、規制委がこの命令を解除するまで再稼働に向けた作業が許されていない。

 

 

 その東電が3月に、シンガポール中間持株会社を設立し、Solar Rooftop CE 9 Co., Ltd.に出資、東南アジアで屋根置き太陽光PPA事業への参画するという。

タイ王国における屋根置き太陽光発電事業への出資について~約3.8MW規模の屋根置き太陽光PPA事業を実施~|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社

 まずは、タイ アユタヤの工業団地内でハードディスク等を製造する法人向けから取り組みを始めるという。

 国際情勢の変化により燃料価格が高騰し、さらに課題が増えたのかもしれないが、東電の安定無くして、福島の廃炉は進まず、また電力需給の改善もないのかもしれない。国民負担を軽減するよう一刻も早く、構造改革を断行し、電力を安価に安定的に、そして安全に供給できるようしてもらいたい。

 

「参考文書」

東電HD、脱炭素に9兆円超投資 目標引き上げ: 日本経済新聞

ロシア原油輸出に急ブレーキ、買い手つかず - WSJ

 

円安は輸出に有利と繰り返す日銀総裁、輸出を伸ばせる企業はどれだけあるのだろうか

 

 日銀の黒田総裁が口を開けば、円安が進むという状況が続いている。円安は輸出企業に有利に働くと再三聞かされるが、そうかといって、未だ物価目標の2%は未達で、まだこの先も厳しい状況が続くという。それゆえ、金融緩和は引き続き必要だという。いつまで経っても、同じ話が繰り返されるばかりで、まるで進展がないが、円安は着実に進み、輸入に頼る産業を疲弊させ、そのしわ寄せが国民生活を襲うが如しである。

 ならば、もっと輸出に携わる企業が増えるような構造転換が進むのかと言えば、そうは言い切れそうにない。この機会に乗じる動きがあってもよさそうだが、チャレンジする企業はないのだろうか。

 

 

 資源や食糧が高騰し、値上げラッシュが続く。そうした中でも企業が値上げを抑制しようとする努力は評価されてもいいのだろうが、それによって実施的な賃下げになったり、雇用を生み出せないのであれば、企業の本分を果たせていないのかもしれない。そうした古い事業構造は淘汰され、新たなものにとって代わっていかなければ、国の活力は低下する一方なのだろう。それが今日の日本ということなのだろう。

 日銀ができることは金融政策であって、活力を失った日本には過剰な資金提供が必要とするのも理がないわけではないのだろう。ただその理が正しいか否かはわからないが。

スタートアップ創出元年

 政府は2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、スタートアップ企業を創出するための5カ年計画をまとめるという。経団連も「スタートアップ庁」の創設を提言したとそうだ。

スタートアップ躍進ビジョン 10X10Xを目指して(経団連)

 スタートアップへ投資を呼び込み、日本の「ユニコーン」を増やすことができるかが焦点と日本経済新聞もいう。ユニコーンが増えれば、日本が活性化するのかもしれない。

 

 

ユニコーン」、企業価値が10億ドル(約1250億円)以上の未上場企業のことをいう。世界では1000社を突破したというが、日本には10社にも満たない。その一方で、米国には488社、中国でも170社に及ぶという。クラウド経由でソフトを提供するSaaSフィンテックなどのIT分野が投資を集めているそうだ。

(資料:経団連

 日本でも、フリーマーケットアプリの「メルカリ」や、名刺データ管理の「Sansan」がスタートアップとして成功した部類に入り、こうした企業は株式を上場していった。

 

 

 既に成功を収めたスタートアップを模倣したところで、新たなユニコーンは誕生しないのだろう。成功事例を分析し、類似を模索するのはいいのかもしれないが、違う分野、カテゴリーに挑戦しなければならないのだろう。既に注目されている分野では過当競争に巻き込まれてしまうのかもしれない。

 ただまったく新しいことに挑戦すると理解されないことが往々にしてある。時として、出資をお願いする人に理解されないこともあるのだろう。

 これが課題のような気もする。日本のベンチャー投資家がどれだけの慧眼をもっているのだろうか。今日本で資金を集めるスタートアップは過去に成功事例のある同じような類のものばかりのようなが気がする。それではイノベーションなどないのだろう。単にスモールビジネスに出資しているだけではないのか。

ベンチャー企業とスタートアップ その定義と違いとは? デザイン会社 ビートラックス: ブログ

アメリカで”Startup”と呼ばれるかどうかは、会社の設立年数や規模はあまり関係ない。どんなことをやっているかや、どんなチームで構成されているかを中心に、存在目的や組織の構成、成長スピード、収益方法、目指すゴール等の内容において一部の特殊なタイプのものをスタートアップ (Startup) と呼ぶ。

それ以外の新しい、もしくは小さな会社は単純に中小企業 (スモールビジネス) と認識される。(引用:ビートラックス)

「日本のいわゆるベンチャー企業のそのほとんどは、スタートアップというよりもむしろスモールビジネスに近い」と、ビートラックスはいう。的を得ているような気がする。

 

 

 スタートアップ支援みたいなビジネスもあるようだが、これほど胡散臭いものはないのかもしれない。政府のスタートアップ支援はどんなものになるのだろう。

 そうであっても、日本が活力をとり戻すためには、雨後の筍ようなスタートアップの萌芽がなくてはならないのだろう。まだまだ未解決で手付かずの課題は山ほどあるのではなかろうか。

 

「参考文書」

ユニコーン、アメリカ488社・中国170社 日本は6社: 日本経済新聞

新興企業の支援 円滑に資金が流れる有効策を : 社説 : 読売新聞オンライン

首相、若手起業家らと車座で意見交換: 日本経済新聞

 

店舗に活気は戻るか、ファミマで電動キックボード、ローソンは無印良品を販売

 

 スタバが誕生して30年以上経過する。この3度も創業者が経営の指揮を執ることになった。成長が翳るたびに、ハワードシュルツ氏がCEOに復帰する。

 新型コロナ感染の拡大で、スタバが強みにしていた「つながり」が壊された。客は店内にとどまらず、テイクアウトが拡大し、それを常識として利便性と効率性を求めれば、スタバらしさが消えていく。顧客や従業員であるパートナーはこうしたことに敏感なおかもしれない。

 成長企業にも踊り場はあるものだ。スタバにとって、幸運なことは創業者が健在であることかもしれない。

 

 

 コンビニも社会インフラになるまでに成長したが、もうかつてのような成長の勢いがなくなっているのかもしれない。矢継ぎ早に施策を打ち出しては、集客増につなげ、地道に成長の維持を図ろうとしているかのようだ。

ローソンで買える無印良品

 ローソンは「無印良品」の取り扱い店を拡大するという。これまでは試験的に東京都や千葉県、埼玉県の約110店舗で取り扱っていたが、2023年中を目途に全国規模に拡大するという。

<参考資料>良品計画とローソン、全国のローソン店舗への「無印良品」展開開始|ローソン公式サイト

 ローソンによれば、化粧水、文具、靴下、レトルトカレー、菓子など商品約200アイテムを扱うという。また、お客さまのご要望に合わせて、商品ラインナップの拡充を検討し、今後、共同でのPB商品開発なども行うそうだ。

 生活の基本となる日用品や食品に無印良品の品ぞろえに加えることで集客増につなげていくという。

 

 

ファミマに電動キックボードのポート

 ファミリーマートが電動キックボードのシェアリングサービスを展開する「Luup」と、資本業務提携契約したという。ファミマ店舗に「LUUP」の電動キックボードのポートを設置し、マーケティング面でも連携し、全面的に協業するという。街全体の利便性向上を指せ、双方の集客につながればいいのだろう。

ファミリーマートとLuupが資本業務提携|株式会社Luupのプレスリリース

 現在は、都内の数店舗に限られている「LUUP」の電動キックボードの設置を、「LUUP」が事業展開する東京、大阪、京都、横浜に拡大、その先は地方都市の店舗への設置も進める予定という。それに合わせ「LUUP」の事業エリアの拡大も容易になるということであろうか。

(写真:LUUP)

 これまでのような利便性ばかりを追求するのではなく、店がにぎわい、人がつながることの起点になればいいのかもしれない。デジタル化に効率性の追求もいいのかもしれないが、それは道具であり、そればかりになっては少し味気ない。もっとリアルを豊かにするモノがあってもよさそうだ。そんなところに成長の余地がありそうな気がする。 

 

 

物流クライシスに挑むヤマト、カイゼンを進めるとDXが進むのか

 

  GWが近づいてきました。今年は久々の行動制限なし。そんな話を聞くと、コロナ渦もようやく終わりに近づいてきたと感じてしまいます。そうはいっても、いつものごとく油断は禁物なのでしょうが。

 落ち込んだ消費を喚起しようとあの手この手と次々と様々な施策が国や企業を問わず繰り出されます。

 その一方で、足下では値上げラッシュで様々な物品が値上がりしています。また、ウクライナ危機で資源や食糧の流れが阻害され、高騰ばかりでなく、品不足になる恐れもあるといいます。

 コロナ渦からの出口が見えそうになってきても、まだまだ現実は厳しさがつき纏うのでしょうか。

 

 

 物流クライシスと聞くようになりました。コロナ渦でECサイトの消費がさかんになった影響もあるといわれます。宅配便の数量は2022年3月期では約22.5億個までに拡大したといいます。これに人手不足が加われば、ラストワンマイルの改善は避けて通れないのでしょう。ドローン配送や自動配送ロボットなどの実証実験もさかんに行われています。

まちのインフラロボット、社会実装へ | 未来コトハジメ

 そういえども、物流はラストワンマイルだけで成立しているわけではありません。物品を生産工場から倉庫や販売店に運び、ECを利用されればその商品を顧客のもとに宅配便で配送していきます。

 宅配便業界一位のヤマト運輸は、その物流の核となる「物流ターミナル」の現場改革を泥臭く進めているというます。IE インダストリアルエンジニアリングとテクノロジーを融合させ、効率化、いわゆるカイゼンを進め、オペレーションの標準化を進めているそうです。

 IE インダストリアルエンジニアリングとは、工程や作業内容を科学的に分析し、最善の生産管理方法を追求する手法といわれ、トヨタの生産方式の原形ともいわれます。

 このヤマト運輸の取り組みを日経ビジネスが紹介しています。

ヤマト運輸×パナソニック コネクト IE(インダストリアルエンジニアリング)で物流ターミナルのオペレーション改革に挑む ヤマト運輸が改革パートナーにパナソニックを選択した理由 - 日経ビジネス電子版 SPECIAL

現場を見える化し科学的に分析を行い、作業の細分化、標準化を実施し標準工数を設定する。こうした組立製造の標準化プロセスは、物流ターミナルでも活用が可能です。標準化していく中で、自動化か、人的運用かを見極めます。また、別のラインや他の物流ターミナルと標準工数を比較し、工数の最適化に向けた要因分析を行い、全体の工数カイゼンにつなげます。さらに、現場を見える化しPL(損益計算書)管理やBS(貸借対照表)管理につなげていくことが大切です。(出所:日経ビジネス

 

 

 原点に立ち返り、基本的なことを繰り返すことで、企業の競争力が強化されるのかもしれません。

 ヤマト運輸は、このプロジェクトのパートナーにパナソニックを選定して、「パナソニックのコストに対する厳しさは非常に勉強になりました」といいます。

新商品の価格から割り出した原価の中でオペレーションを貫徹するというロジックは、これまでの我々にはなかった視点です。物流ターミナルの作業を分解し、工程ごとの適正コストを算出し、そのコスト内に抑えるためにどうオペレーションを改革するか。この視点は、これからの当社には必要な視点になると思います。(出所:日経ビジネス

  ついつい目新しいことに目が奪われ、あれこれと手を出すことはかえって混乱のもとだったりします。現状をありのまま、しっかり科学的に分析してみる。そこから改善を始めることで、効率化が進むのかもしれません。そして、忘れてはならないのが標準化と水平展開。この実行にデジタル化が伴えば、もしかしたらそこからDX デジタルトランスフォーメーションが始まり、新しいテクノロジーの導入もより容易くなるのかもしれません。

 

「参考文書」

名ばかりDX、逆効果 アナログ風土の見直し遅れ: 日本経済新聞

 

急落する新興企業の株価、変わっていく社会課題

 

 中国配車サービス最大手の「滴滴出行(DiDi)」が業績を発表し、純損失が前年から368.5%拡大し、500億3100万元(約1兆円)にのぼる巨額な赤字になったという。ニューヨーク証券取引所での上場廃止を検討しているそうだ。業績悪化は、コロナ渦の影響なのだろうか、それとも当局による締め付けの影響なのだろうか。

 東南アジアのユニコーンとして、米ナスダックに上場した配車やデリバリーサービスを展開する在シンガポールの「Grab(グラブ)」も、2021年の通期決算が34億ドル(約3902億円)の最終赤字になったという。これを受け株価が急落したという。コロナ渦の影響のようだ。

 

 

 配車アプリとしてマレーシアで生まれたグラブが、そのプラットフォーム上で金融サービスを始め、今では東南アジアのスーパーアプリに進化したとForbesはいう。

 東南アジアは圧倒的な人口を抱え、1兆ドルの経済圏に成長しうると指摘し、グラブの成長戦略はこの市場の制覇を狙っているという。この先の業績回復が見込めるということであろうか。

デリバリーからフィンテックへ変貌!東南アジアのスーパーアプリ「グラブ」 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 グラブはまずは競合と共生するアプローチをとったという。18年にグラブがウーバーの東南アジア事業を買収し、ウーバーはグラブの株式27.5%を取得したという。中国の配車サービス大手「DiDi(滴滴出行)」もグラブに出資しているという。

 17年にデジタル決済サービスの「GrabPay(グラブペイ)」を立ち上げ、今では保険、融資、資産管理、後払い決済サービスなどを手がけ、20年末にはシンガポールの通信最大手シングテルと組んでデジタル銀行の免許を取得し、22年第2四半期にシンガポールでデジタル銀行業務を開始する予定という。また、19年にマスターカードと提携し、オンラインとオフラインの両方で使えるグラブペイカードを立ち上げているそうだ。

東南アジアのフードデリバリー、配車、デジタル・ウォレット決済、デジタル金融サービスの総需要は、25年までに20年の少なくとも3倍に増え、流通取引総額GMVが1800億ドルを上回る見通しだ。(出所:Forbes)

 

 

 コロナ渦を契機に、廃れるサービスがある一方で、花開いたサービスもあるのだろう。国内では、DiDiのフードデリバリーが撤退し、ウーバーイーツは楽天と提携するという。「楽天ペイ」と連携、楽天ユーザーは決済時には楽天ポイントの獲得や利用が可能になるという。

米ウーバー、日本のフードデリバリー事業で楽天Gと連携へ-決済利用 - Bloomberg

 ブルームバーグによると、2019年度に1700億円だったフードデリバリー市場は、22年度に3300億円、25年度に4100億円に拡大する見込みという。

 コロナ渦からの出口がうすらぼんやりと見えてきている中で、この先何がメガトレンドになるのだろうか。

 Netflix(ネットフリックス)の株価が急落したという。加入者数が20万人の純減と2011年以来のマイナスとなったことが理由のようだ。

Netflix、崩れた成長神話 会員「獲得コスト」2倍に: 日本経済新聞

 新型コロナの感染が落ち着いて外出を再開した消費者の選択肢は広がり、会員を獲得するコストは2倍に膨らんでいると日本経済新聞は指摘する。動画配信サービスの激しい競争だけでなく、世界的なインフレなど経営環境は厳しさを増しているという。何も動画配信サービスだけではないのだろう。

 コロナ禍を経て、国際情勢が緊迫化、何から何まで価格が上昇していくようになった。社会課題もまた変わり、その解決が求められ、それに対応したサービスが求められてはいないだろうか。

 

続く半導体不足、またトヨタが減産、積むに積めない在庫、品不足は解消するのか

 

 危機が幾重にも重なって襲いかかり、様々なモノの品不足が顕在化する。半導体不足と言われて久しいがまだ改善に至っていないのだろうか。

 トヨタ自動車が5月の生産台数をグローバルで10万台程度減らす方向に見直し、75万台程度を見込むという。

5月 生産計画について | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

 この4~6月を「意志ある踊り場」として、生産計画を現実に即したものに見直すとトヨタは公表していたが、まだ半導体不足については読み切れないところがあるということなのだろうか。それでもなお、5~7月のグローバル生産台数は、平均で80万台程度を予定するという。

 

 

 このコロナ渦で、企業はこれまでの「ジャスト・イン・タイム」を見直す、万が一の事態に備える「ジャスト・イン・ケース」も考慮し、在庫の確保することが求められようになった。

 そうはいっても、「金額の問題ではなく、とにかく、原材料を調達できない」という調達非常事態の状況に陥っていると日経XTECHはいう。

在庫は悪か正義か 非常事態はずさんな管理の免罪符にならず | 日経クロステック(xTECH)

調達非常事態の原因は、新型コロナウイルス禍による「物流網」の停滞と、相次ぐ自然災害や人災による工場の操業停止、そしてウクライナ危機をはじめとする国際情勢の急激な変化による供給不安や原油価格の高騰が加わった。サプライチェーンの安定は製造業における永遠の課題だが、現在におけるサプライチェーンの不安定さは、過去に類を見ない厳しいレベルにある。(出所:日経XTECH)

 高い価格でも調達できれば製品の生産、販売はできるが、それにも限度はある。在庫を積み増そうにも、資金が手当てできなければ、調達はできない。まさに試練のときということなのだろう。

 こうした状況は化学工業日報は「対岸の火事ではない」といい、欧州ドイツの事例を解説する。

 

 

 それによると、ドイツの医薬品を含む化学産業は、原燃料として天然ガスを年間約280万トン使用しているという。

対岸の火事ではない - 化学工業日報

ドイツは天然ガスの多くをロシアに依存しているが、これがもし止まった場合、ヨーロッパ最大のドイツ経済は30兆円のダメージを被るとも試算されている。(出所:化学工業日報)

 天然ガスが止まれば、諸々の原料となる基礎化学品さえ製造できない。天然ガスは長期契約で調達するのが主流で、この時期にスポット市場に手を出せば、とてつもなく高い価格で調達せざるを得ない。 

 化学工業日報によれば、1913年、独BASFのカール・ボッシュが工業化に成功し、空気中の窒素からアンモニアを製造する技術が、窒素系肥料の供給というかたちで食糧増産に大きく寄与したという。1世紀を超え、現代でもこの手法はアンモニア製造の主流を担っているそうだ。

この品不足の現代においても、こうした発明やイノベーションが求められているのかもしれない。よいことに脱炭素の時代になって、新たな技術に芽吹き始めている。早急に必要な技術を立ち上げ、普及拡大を図らねばならないのだろう。イノベーションの機会がやってきているのではなかろうか。