Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

矛盾はないか、英国の脱炭素、新築住宅にEV充電器設置義務化、英空軍は合成燃料で脱炭素

 

 英国では、2022年からすべての新築住宅およびオフィスビルにEV 電気自動車用の充電ステーションの設置を義務付けられる。

 英政府が発表したこの新しい施策は、毎年14万5千カ所の充電ポイントを追加することで、英国でのEV普及を促進することを目的としているという。

英国、2022年から新築住宅・オフィスにEV充電器の設置を義務づける | TechCrunch Japan

「これにより、人々はEVの未来に備えた新築物件を購入することができ、また、英国内の新しい店舗や職場で充電ポイントを容易に利用できるようにすることで、今日のガソリン車やディーゼル車の給油と同じように簡単に利用できるようになります」(出所:TechCrunch)

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 TechCrunchによると、スーパーマーケットやオフィスビルなどの建物に加え、10台以上の駐車スペースを持つ大規模な改築も対象となる。ただし、設置場所の仕様や出力など、ルールの詳細はまだ公表されていないという。

 英国が本気でEVシフトを進めようという現れなのだろうか。

 

 

広州モーターショー開幕

 中国 広東省広州市で、広州モーターショーが開幕した。

 JIJI.COMによれば、自動車の電動化の流れが強まる中、EV 電気自動車やPHV プラグインハイブリッド車など「新エネルギー車(NEV)」の出展が大幅に増加、全体の1/4になっているという。出遅れていた日系メーカーも投入を本格化させている。

「新エネルギー車」が大幅増 広州モーターショー開幕―中国:時事ドットコム

 中国は世界の中で、最もEVが売れる国だと言われる。

 中国での10月の自動車販売台数は全体で233万台あまりで、その内、NEV 新エネルギー車全体の生産・販売は、月間40万台ほどになる。半導体不足の影響があるにもかかわらず、生産販売台数の記録を更新するなど明るい材料もあるという。

 ただ、売れ筋はまだまだNEV以外ということなのだろうか。この先、EVがPHVを凌駕し、さらにエンジン車を超え、EVシフトが加速していくのだろうか。中国の動向が気になる。

東南アジア

 日本経済新聞によれば、三菱自動車日産自動車は東南アジアでPHV プラグインハイブリッド車の販売を本格化するという。

三菱自、東南アでPHV3車種 「準EV」で中国勢に対抗: 日本経済新聞

 新興国では充電設備の整備が遅れている。これが足枷となり、EV 電気自動車の普及に時間がかかる可能性がある。家庭の電源から充電できるPHVを売り込み、格安車で販売攻勢をかける中国勢から次世代車の顧客を囲い込むと解説する。

 

 

英空軍、合成燃料のみで飛行 脱炭素か

 英空軍が「合成燃料」のみを使って航空機の飛行に成功したという。合成燃料での飛行は世界初で、ギネス世界記録に認定されたそうだ。

英空軍、合成燃料のみで飛行 世界初、脱炭素に一歩:時事ドットコム

小型機「イカルスC42」が2日、21分間の飛行に成功。合成燃料は二酸化炭素(CO2)と水素を原料に造られ、1回の飛行で従来の燃料に比べて温室ガスの排出を約90%削減できるという。(出所:JIJI.COM)

 同じようなエンジン、内燃機関を使用する飛行機では、「合成燃料」による脱炭素を目指し、自動車はEVのみで脱炭素すると方策に多少疑問も沸く。

 飛行機も自動車も「合成燃料」の使用と、電動化が併存してもいいのではなかろうか。がんじがらめな規制ではかえって目標達成を困難にすることはないだろうか。究極の目標としてEV化を標榜することはよいにしても、EVシフトを世界標準にするには整えるもの整えてからだろう。まだ時期尚早ではなかろうか。

 

タイでカーボンニュートラルの工場団地を造るトヨタ、カーボンネガティブを目指すマイクロソフト

 

 タイのトヨタ自動車(TMT)をはじめ日系4社などが協力し、タイ東部のラヨーン県で「カーボンニュートラル工業団地」の建設を計画しているという。

東部に脱炭素のモデル工業団地 日系4社、タイ政府に政策提言へ - NNA ASIA・タイ・建設・不動産

 NNA ASIAによれば、2025年の開業に向けて、年内に第1次のFS 事業実施可能性調査を取りまとめ、タイ政府に提言するそうだ。このプロジェクトに日本側からTMT、豊田通商タイランド)、大阪ガス関西電力の4社が参加し、タイ側からは工業団地公団(IEAT)の他、3社が加わるという。

 

 

タイで始まるカーボンニュートラルな工業団地建設

 このプロジェクトでは、水素を含む再生可能エネルギーの開発、生産、使用、貯蔵を一貫して行うシステムの構築を目指すという。

工業団地周辺の豊富な農業廃棄物を有効活用したバイオガス発電や、工業団地内の移動用として化学工場などで副次的に生産される水素を活用した水素電池車(FCV)の導入などを検討する。(出所:NNA ASIA)

 ただ、実現にはまだ課題があるという。タイでは、地方電力公団(PEA)を通じた送電のみが認可されるため、同じ工業団地内であっても企業間同士での電力のやりとりはできないそうだ。カーボンニュートラルの実現に向けては、工業団地内外の電力の融通が欠かせず、送電に関するタイ側の規制緩和に向けた動きが鍵になるという。

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 この「カーボンニュートラル工業団地」の取り組みが、脱炭素化のモデルケースになると、タイ国内のほか、インドネシアベトナムといった他の東南アジア諸国の工業団地への展開も可能となるようだ。

 

 

マイクロソフトが進める壮大な脱炭素計画

 マイクロソフトが、スウェーデンに「100%グリーンエネルギーを動力源とする脱炭素のデータセンター」を開設したと発表したそうだ。

Microsoftが100%グリーンエネルギーを動力源とする脱炭素のデータセンターをスウェーデンに設立 - GIGAZINE

 GIGAZINEによると、このデータセンターのサーバーは、一年中外気のみによって冷却され、加湿には雨水が利用されるという。また、また、このデータセンターが開設される区域には、サーバーやハードウェアを分別して再利用するための「循環センター」も併設、1か月あたり1万2000台のサーバーを再利用可能にする能力を持つという。

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(画像:マイクロソフト

 マイクロソフトは、2030 年までにカーボンネガティブとなり、1975 年の創業以来直接的に、そして電力消費によって排出したすべての炭素を 2050 年までに環境から取り除くことをコミットした。そのためには、データセンターが広範な脱炭素化のためのソリューションの一部となる必要があるとはいう。

 マイクロソフトは10月27日、自身の目標達成に向けての進捗状況とその達成のための技術についてを公表した。

ネットゼロへの道のりを支援: Microsoft Cloud と脱炭素化 - News Center Japan

・水を使わない冷却方法を目指した液浸冷却の研究を継続

・地域の生態系を支えるデータセンターの設計・・・データセンター周辺に低地の森林地帯を設けると共に、水飽和率が高く、水のろ過に適した植生を持つ森林性の湿地帯を設けて、雨水や流出水を自然に処理していきます。

 

 

・データセンターの設計・建設におけるカーボンフットプリントの削減…データセンター建設における低炭素化を図るため、内包二酸化炭素に着目し、高い内包二酸化炭素を含むコンクリートや鉄鋼を低炭素のものを選択することを進めているという。

 気候変動の問題は、1 企業や 1 業界だけで解決できるものではないとマイクロソフトはいう。

 脱炭素もどこまで掘り下げるかによって、その取り組みをも変わるのだろう。ただ自社だけでの対応には限界があるのだろう。複数社が協力、調和し、この問題に挑めば、解決までの時間は短縮できるのだろう。

 

 

バルミューダのスマートフォンは新しい情報端末機器なのだろうか

 

 バルミューダが、 5Gスマートフォン「BALMUDA Phone」を発表、11月17日から予約を開始した。

コンパクト。そしてエレガント。4.9インチ 5Gスマートフォン「BALMUDA Phone」を発表 | ニュース | バルミューダ テクノロジーズ

 販売開始は11月26日。ソフトバンクのみでの取扱いで、バルミューダオンラインストアでも予約ができるという。

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(写真:バルミューダテクノロジーズ)

4.9インチ 5Gスマートフォン「BALMUDA Phone」

 バルミューダが新しく立ち上げたブランド「BALMUDA Technologies」の第一弾の製品がこのスマホだ。このブランドでは、この先、IT機器やそれに関わるサービスを展開するそうだ。

曲線だけで構成された美しいプロポーションに、シンプルながら使い心地の良さを追求した基本アプリを搭載。5G、FelliCa、非接触充電に対応しています。バルミューダが、画一的なスマートフォン市場に新しい選択肢をお届けします。(出所:バルミューダテクノロジーズ)

 

 

賛否両論か

「10万円を出して購入してもいい」と思える、背中を押してくれる納得感がないような気がしてならないのだ…

なぜ人はバルミューダスマホに落胆したのか。漂うコレジャナイ感(石川温) - Engadget 日本版

「ネット上には「これじゃない感」がただよっている」と、engadget日本版がいう。

スマートフォンの価格とスペックのバランスに対してユーザーはシビアな目で見て、比較検討するようになった。スマートフォンに10万円を出すからには、何かしら自分を納得させられる要素が欲しくなるのだ。 (出所:engadget日本版)

 これまでのスマートフォンというカテゴリーでとらえれば、こうした評価があって然りなのかもしれない。

 ただ、これまでバルミューダは、そのカテゴリーの常識を壊してきたのではなかろうか。スマホにあっても然り、これまでのスマホの常識を壊して欲しいと願ってしまう。

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(写真:バルミューダテクノロジーズ)

スマホの常識への挑戦

 スマートフォンは多く人が使うようになり、もはや新しい商品ではなくなっている。そして、この業界にはアップルという先達が巨人として存在する。そんな業界に今さら参入というなのかとの印象もぬぐえない。しかし、寺尾社長は「当然ながら、チャンスがあると思っていなければこの事業に参入しない」と語ったという。

「iPhoneはスタンダードになり過ぎてしまった」バルミューダがあえて小型スマートフォンを作る理由

我々にチャンスがあると感じているのは、アップルが世界の巨人となり、iPhoneがスタンダードになった点。彼らが生み出すプロダクトのクオリティが高いからこそ、他社メーカーも追随し同じようなスマートフォンを作る。結果、同じようなデザインのスマートフォンしか売られていない状況になった。そこが彼らのある意味で弱点ではないかと感じている。(出所:FASHIONSNAP.COM)

 アップルにしろ、サムスンにしろ、工業製品としてのスマホの完成度は高いのかもしれない。そして、従来の家電製品と同じように毎年モデルチェンジし、性能の改善が続けている。

 もうそろそろ、そうした常識も壊して、長く愛用できる商品にしてもいいのではないであろうか。

 

 

新しいカテゴリー

 FASHIONSNAP.COMによれば、BALMUDA Technologiesでは、スマートフォンに続く第2、第3の新プロダクトのプロジェクトが既に始まっているらしい。

「動画作品を鑑賞するにはBALMUDA Phoneでは小さい。スマートフォンとは呼ばないようなものを作っている」とし、具体的なカテゴリーの明言は避けたものの新作を開発中であることを明かした。(出所:FASHIONSNAP.COM)

 画像を楽しむ方法はスマホやテレビだけではないはず、もっと新しい商品があっていいのではなかろうか。もしかしたら、バルミューダ・フォンは、この新しい商品を世に送り出すのための布石なのかもしれない。

 1990年代、PDA携帯情報端末という商品カテゴリーがあった。この商品は、後々、新たに登場したスマートフォンに吸収されていった。このPDAに電話機能を付与したのがスマートフォンともいわれるし、従来のケータイが進化したものともいわれる。そろそろスマートフォンも次の段階に進化してもいいころなのかもしれない。

 この商品をこれまのスマホと同じ概念で評価すべきではないような気がする。また、そう感じさせてくれるのがバルミューダなのかもしれない。

 BALMUDA Phoneの販売見込みは約30億円だという。そこから推計される販売数量は、既存のスマホメーカにすれば、微々たる数字で、競合にも値しないのだろう。

 11月26日、販売が始まり、実際に顧客が商品を使い始めたとき、どんな反応を示すのだろうか。

 

EVシフトへの号砲か、米リビアンが上場、収益がゼロの会社が独VWの時価総額を抜く

 

 英国グラスゴーで開催されていたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会)で、40年までに新車販売を全てゼロエミッション車とするというEVシフトに関する共同声明が発表された。

 議長国の英国など28カ国が署名し、自動車メーカでは、ドイツのメルセデス・ベンツや米国のGMゼネラルモーターズ、フォードなど11社も署名したという。一方、日本の自動車メーカーやドイツのVW フォルクスワーゲンBMWは署名しなかったそうだ。

 自動車メーカごとにEV戦略に差が現れてきたということなのだろうか。

 

 

 スウェーデンVolvoボルボ)が、2025年までに世界で販売する新車の半分をEV電気自動車とし、2030年には完全なEVメーカーとなってEVのみを販売するという。

 COPが後押しをし、さらにEVシフトを加速させるのだろうか。

米新興EVメーカ リビアIPO

 米国の新興EVメーカ、リビアン・オートモーティブが、ナスダック市場に上場した。

EVメーカー株が活況 「バブル」に警戒感も―米市場:時事ドットコム

 JIJI.COMによれば、取引初日の終値は、公募価格を3割も上回り、時価総額は約860億ドル(約9兆8000億円)と、米自動車大手フォード・モーターを一気に追い抜いたという。

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(写真:Rivian)

生産準備着々

 そのリビアンがIPOで得た資金をもとにして新しい工場の建設を進めるようだ。

EVリビアン、独立したバッテリー工場など多くのプロジェクトに動く - Bloomberg

 ブルームバーグによると、投資の最優先事項は米国内2カ所目となるEV生産工場で、次いで欧州の工場という。欧州工場では2023年末までに自動車生産が開始される見通しで、英国で用地が検討されているほか、欧州大陸でも複数の場所が候補に上がっているそうだ。バッテリー工場の新設も検討されているようで、アリゾナ、ミシガン、テキサス州などが検討されているという。リビアンは現在サムスンSDIのセルを使用しているという。

 

 

時価総額、独VWを抜いて世界3位へ

 リビアンの株価は瞬く間に2倍以上になったそうだ。リビアンのその価値は1,400億ドルを超え、フォルクスワーゲン(1,390億ドル)をわずかに上回り、トヨタに次ぐ3位になったという。

 TrechCunchによれば、第3四半期にRivianが製造した電気自動車の台数がわずか12台だったといい、収益がほぼない会社である。

 米市場ではEVメーカ株が活況を呈しているという。

 07年創業のルシッド・グループは、事業実体の無い上場会社との合併を経由する「空箱上場」と呼ばれる手法を通じて今年7月に上場したが、株価は約8割上昇し、人気先行から過熱気味だ。 (出所:JIJI.COM)

 EVシフトに対する期待の現れなのだろうか。この先、期待通りにEVシフトは進むのだろうか。

 

【ジャストインタイムの崩壊】深刻な海上輸送、陸上の目詰まりを憂慮する海運業者

 

 コロナ渦からの急速な経済回復は世界的な供給網、サプライチェーンに混乱をもたらした。そして、その影響を今も続く。様々な物品の高騰の背景のひとつに、こうしたことが挙げられている。

 米国の10月のCPI 消費者物価指数の上昇率は前年同月比6.2%となり、上昇幅は1990年11月以来約31年ぶりに6%台に達したという。日本国内では、企業物価指数が前年同月比で8.0%上昇し、1981年1月以来、40年ぶりの伸び率となったという。また、プラスは8カ月連続となり、消費者物価指数との格差が拡大している。

 

 

 深刻な海上輸送の目詰まり

 今日のサプライチェーンの危機的状況は、政府が介入して混乱を緩和しない限り、少なくともさらに1年続くだろうと、世界大手の海運会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)が警告しているという。

[FT]「供給網は23年まで混乱」 海運大手首脳が警告: 日本経済新聞

 世界のコンテナ輸送の6%超を担うONEは2017年に、日本郵船商船三井川崎汽船の3社のコンテナ部門を統合して設立された。そのONEのCEOが、港湾や鉄道、倉庫、道路網の能力増強のための投資を増やすよう、各国政府に求めたそうだ。

運送業界は新型コロナによる港湾労働者不足に対処しなければならない。さらに、英国、欧州、米国では、物品を内陸の最終目的地に運び、空になったコンテナを戻すトラック運転手の不足が起こっている。(出所:日本経済新聞

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ONE 2021年度第2四半期決算説明資料

 ONEが開示した説明資料のCEOメッセージにはこうある。

「陸側での労働力不足と消費財・工業製品に対する高い需要の結果として、国際的なサプライチェーン全体に重大なボトルネックが依然として存在しています。世界中で滞船している数百隻の船は、陸側サプライチェーンでのボトルネックが港湾に波及した結果です。陸側サプライチェーンの課題は、全世界的なものですが、北米と欧州が、その影響を顕著に受けている」と指摘し、「海外から船舶の戻りが大幅に遅れた結果として生じたスケジュールの遅れのために、多くの欠便を余儀なくされた」と語る。

220隻の船舶を持つONEは、思うように多くの貨物を輸送することが難しくなりつつある。

 日本経済新聞によれば、「我々は、顧客との輸送量の契約をし過ぎないよう、もっと慎重にならなければならない」とニクソン氏は述べたそうだ。 

 

 

ジャストインタイムの崩壊

 サプライチェーンが目詰まりを起こし、モノが滞ることで、世界の貿易に如何にジャストインタイム方式が浸透にしていたかが理解できる。

ジャスト・イン・タイム(Just In Time)」、トヨタの生産方式とも言われ、必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給することで在庫を徹底的に減らして生産活動を行う生産管理システムと言われる。

 この「ジャスト・イン・タイム」方式の見直し論が米国で浮上しているそうだ。

 ジャストインタイムも、整備された物流があってはじめて成立する。物流が混乱してしまえば、ジャストインタイムも崩壊する運命なのだろうか。

「トヨタ方式」に見直し論 コロナで供給網の弱点露呈―米:時事ドットコム

 効率を最優先したサプライチェーンが、需要急増に対応し切れないとの弱点が露呈したとJIJI.COMはいう。

「ジャスト・イン・タイムは(危機時の)復元力を考慮していない」。

レモンド米商務長官は1日の会合で、「トヨタ方式」のもろさを突いた。コロナや気候変動といったショックに対し、「ジャスト・イン・ケース(万が一の備え)を考えなければならない」と訴えた。 (出所:JIJI.COM)

 一方、「ジャスト・イン・タイムをやめれば在庫増を招き、幅広い物品の価格が一段と押し上げられる可能性がある」と、インフレが加速するリスクについて、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は警鐘を鳴らしているという。

 

 

 世界の自動車メーカが半導体不足などで一斉に大幅な減産を強いられたのも、ジャストインタイムの弊害なのかもしれない。もう少しバッファストックを抱えていれば、それほどまでに大打撃を受けなかったのかもしれない。

 トヨタが他の自動車メーカに比べ、減産幅が少なかったのは、東日本大震災の時の供給網寸断を教訓に、バッファストックを抱え、在庫の適正化を図っていたのだろうか。レモンド米商務長官が指摘した万が一の備え「ジャストインケース」ということであろうか。

日本国内でも物価上昇圧力

新型コロナの感染状況がようやく落ち着き、景気の回復が期待される中、水を差しかねない

原油価格の上昇はしばらく続きそうで、ガソリンや軽油の値上げに始まり、電気料金、穀物価格の上昇などにもつながるだろう。今の値上げは序章にすぎず、家計には、今後、じわじわ効いてくるとみられる」と、エコノミストが見解を示しているという。

企業物価指数 原油高で8か月連続上昇 35年8か月ぶりの高さ | 原油価格 | NHKニュース

「(日本国内の)物価上昇の背景としては、エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱といった要因が指摘されている」と、松野官房長官臨時閣議のあとの記者会見で述べ、「影響を注視 必要な対策 講じていく」と語ったという。

 企業物価指数の上昇に抗し得なくなった企業から、商品を値上げせざるを得なくなる。もしかしたらそんなタイミングが近づいているのかもしれない。すでに商品の値上げと伝えるニュースが増えている。

 

深刻化する気候危機に覚える強い不安、その憂いを政府は解消してくれるのだろうか

 

 地球温暖化が進む中、クウェートでは世界平均の2倍の速さで気温が上昇していると、BBCが伝える。ときに摂氏53度にまで達し、砂漠地帯が拡大している。

気温50度の暮らし 温暖化が急速に進むクウェートの「耐えがたい」暑さ - BBCニュース

 クウェートの女性活動家は、砂漠に植樹し、木が育つことを証明し、気温上昇を食い止めようとしている。一方で、気象インフルエンサーは、「耐えがたい暑さになりつつある」と話し、将来、クウェートに住むことができなくなるのではないかと危惧しているという。

 

 

気候危機のリスクは経済リスク

 こうした気候危機による影響を、イタリアの研究機関が分析した。

 それによると、対策が遅れると、主要20カ国・地域(G20)全体で2050年に国内総生産GDP)の4%を失う可能性があるという。

気候危機でG20全体でGDP損失4%予測 日本でも熱波や漁獲減か:朝日新聞デジタル

G20のすべての国で、50年には熱波の期間が少なくとも10倍に延びる。アルゼンチンやブラジル、インドネシアでは60倍にもなるという。インドではコメや小麦の生産量が下がり、農家の収入が15%失われる。豪州では森林火災や沿岸の浸水、ハリケーンで保険料が上がり、不動産価値が6110億豪ドル(約52兆円)失われるという。 (出所:朝日新聞

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日本では、対策を取らなかった場合、夏の熱波の期間が15倍以上になる

 熱中症による死者は2018年には00~04年の平均から58%増加していると朝日新聞は指摘する。さらに記事は日本の予測を示す。

海水温や海面の上昇による被害も深刻化する。温室効果ガスの高い排出レベルが続いた場合、今世紀半ばまでに、北海道の天然サケなど従来の魚種の漁獲が減るなどして、漁業全体で約530億円の損失になるという。海面上昇による沿岸部のインフラ被害は54兆円に拡大するとしている。(出所:朝日新聞

「気候変動をもはや気候政策として扱う余裕はない」、気候変動リスクは経済リスクと指摘する。

 

 

気候危機への対応「適応」策は十分か

 UNEP国連環境計画が、途上国が干ばつや水害など気候変動の影響に対処するための資金が大きく不足しているとの分析を公表した。

気候変動への「適応」資金、大きく不足 UNEP報告書: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、UNEPの報告書はすでに起こっていたり、まもなく起こりそうだったりする温暖化の影響への対応を示す「適応」に焦点をあてた内容という。

具体的には局地的な豪雨や洪水に備えた堤防建設などのインフラ策や、気温上昇に対応した農作物の新種開発などがある。気候変動対策は温暖化ガスの排出を削減する「緩和」と適応を並行して進める必要がある。(出所:日本経済新聞

「気候変動の損害を減らすには、資金調達と政策実行への野心を一変させる必要がある。今すぐ行動せねばならない」と、アンダーセン事務局長が訴えているという。

 途上国がより深刻化もしれないが、自国においても毎年激甚災害と言えそうな災禍が増えている。

 英国グラスゴーで開催されている「COP16」で様々な報告がなされ、提言があり、対策が話し合われ、数々の枠組みが始まる。これに続き、閣僚級会合も始まり、世界が結束できるか否かが試される。

 ただ、この会合を積極的にリードしようとの姿勢が日本政府にはなさそうだ。このままでほんとうにいいのだろうか。

給付金に、GoTo再開が経済対策の目玉ではさみし過ぎる気がする。

 

批判されてもアジアで建設が続く石炭火力、再エネは気候変動対策ではなかったのか

 

 気候変動対策が、英国グラスゴーで開催されている「COP26」で話し合われている。各国の思惑が入り乱れ、世界が一つとなって行動していくにはなおハードルが高いのだろうか。

 インドのモディ首相が「COP26」の首脳級会合で、「2070年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す」を表明したそうだ。これまでカーボンニュートラルについて言及してこなかったことを考慮すれば、前進といっていいのだろう。

 ただ、50年近く先のこととなれば、気が遠くなる。やむにやまれぬ事情でもあるのだろうか。

 

 

インド、急増する人口、伸長する電力需要

 そのインドの西部ラジャスタン州の砂漠には、約1000万枚の太陽光パネルが設置された発電所があるという。インドの意思表示なのだろうか。

2070年までに排出ゼロ目指すインド、砂漠一面のソーラーパネル 写真20枚 国際ニュース:AFPBB News

 AFPによれば、インドのグリーンエネルギーは、この10年間で約5倍に増えたそうだ。しかし、この先、急増する人口に対応するため、今後20年間で欧州と同規模の電力システムを追加で構築する必要があるという。

 増える人口、増える電力需要に、再エネ整備は追従できるのだろうか。

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石炭火力への圧力さらに強まる

 先のローマでのG20サミットでは、地球温暖化の抑制に向け、海外の石炭火力発電への融資を停止することで合意したという。

石炭火力発電の投資削減、ほぼ全ての開発銀がコミット=調査 | ロイター

 ロイターによれば、このG20声明は世界の開発金融機関の99%が石炭投資を削減し、再生可能エネルギーへの支援を拡大することにコミットしていることを意味するという。

これらの機関がコミットメントを守る場合、途上国は再生可能エネルギーを活用したり、石炭発電から脱却する方が石炭火力発電所を新設するよりも公的な融資を受けやすくなるだろう。(出所:ロイター)

 

 

切実なニーズなのか

 その一方で、ロイターの別の記事は、インドにおける石炭火力発電所開発の実態を指摘する。

焦点:アジアで火力発電所約200カ所建設中、「脱石炭」の前途多難 | ロイター

 それによれば、インド南東部タミルナードゥ州では、少なくとも30年にわたって州内に住む7000万人強に電気を届けるための大型石炭火力発電所「ウダンディ・プラント」の建設が進められている。

 そればかりでなく、アジア地域で建設中の石炭火力発電所は200カ所に迫り、このウダンディ・プラントを含めてインドで28カ所、中国は95カ所、インドネシアは23カ所におよぶという。

世界の人口の60%、同工業生産の半分前後を占めるアジアにおいて、石炭使用は減るどころかむしろ増えつつある。急速に発展する各国が電力需要を満たそうとしているからだ。GEMのデータからは、世界全体で建設中の石炭火力発電所195カ所のうち、90%がアジアに集中していることが分かる。

ミルナードゥ州はインド全州で2番目の工業生産を誇り、再生可能エネルギー生産もトップクラスだが、石炭火力発電所の建設件数も最も多い。(出所:ロイター)

 ロイターによると、「再生可能エネルギーの拡大は重要だ。しかし石炭は少なくともあと15年、インドの主要エネルギー源であり続け、われわれのエネルギー需要に対応するため生産増強が必要だ」とインド石炭省の元次官が訴えているという。

 石炭火力に対する切実なニーズが浮き彫りになる。世界の開発銀行が融資を停止するといっても、その需要は減退しそうにない。この問題を効果的に解決する問題はないのだろうか。

 

 

日本にできることはないのか

 かつて日本はインフラ輸出といって、アジアでの石炭火力発電所建設に関与してきた。それはアジアにその需要があることを理由にしていた。しかし、その石炭火力への関与が批判されるようになり、潮が引くように商社、銀行など手を引いていった。しかし、それは問題解決を先送りにしているだけなのかもしれない。

 もう一度、日本の銀行や商社がアジアで発電所建設に助力を差し伸べてもいいのかもしれない。ただ今度は石炭火力ではなく、再生可能エネルギーという形で。それとも、そうできない理由があるのだろうか。

 再エネには、あまりインセンティブがないのだろうか。ビジネスチャンスにすることはできないのだろうか。再生可能エネルギーの導入が気候変動対策のひとつのはずなのに積極的にならないことに、疑問を感じずにはいられない。