Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

日本製鉄とトヨタの仁義なき場外戦、和解はなるのか、それとも徹底抗戦のはじまりなのか

 

 日本製鉄がトヨタ自動車を提訴した案件が場外でももめているのだろうか。

 鉄鋼連盟会長の立場として「相手が認めないのであれば、提訴以外ない。まったく迷いはなかった。社長として合理的に判断した」と発言したことにトヨタが疑問を呈しているという。

トヨタ、日本製鉄からの提訴に「トップへ一言あってもよかった」 | 毎日新聞

 JIJI.COMによれば、トヨタ自動車の長田准執行役員が「あんなところ(鉄連会長会見)でやるのかな、と率直にびっくりしている」と強調し、提訴後も「場外」で発言を続ける日鉄側の姿勢に不快感を示したそうだ。

 「トップからトップへ一言あってもいいのではないか」

 長田執行役員が報道各社とのオンライン懇談会で、豊田社長の考えを伝える形でこう発言したという。

「提訴前に日鉄の橋本英二社長から豊田章男社長に「仁義」を切るトップ同士のプロセスがなかった」との主張だと毎日新聞が解説する。

 

 

「仁義」、この業界の交渉でよく聞く言葉だ。

 トヨタがこういうことをいうようであれば、日鉄がこれまでの慣習を破ったということであろうか。宝山の電磁鋼板採用について、筋を通したはずとでも、トヨタはいいたいのだろうか。

 推論の域を脱しないが、その筋論を日鉄側は理解できても、承服しかねたということなのかもしれない。理屈はあっても、トヨタの行為が脅迫まがいなことと感じてしまったのだろうか。そうなれば、「仁義」を守れないということであろうか。

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 大企業であれば、いかなる取引において、法令遵守コンプライアンスは避けえない。独禁法、下請法など遵守すべき法令に沿った行動が常に調達部門には求められる。

 優越的立場を濫用できないし、買い叩きなどは禁じ手中の禁じ手だ。

 メーカとしてより競争力ある価格で購入しようと思えば、相見積もりに頼らざるを得ない。A社よりB社がより競争力のある価格を提示すれば、当然B社が採用され、A社は失注する。供給能力などの懸念があれば、複数社購買となり、その価格見合いで発注比率が設定されるのだろう。

 そんな流れが想定できるが、その中では特許のやり取りもあったのだろう。指摘があれば、メーカ側も当然確認に動く。先方の主張を聞いたうえで、確認行為が進められ、知財、法務の部署も巻き込んで確認作業が進められるのだろう。

 そうした話し合いが繰り返され、担当者間で合意に至らなければ、エスカレーションされ、より上位の階層に判断が委ねられる。交渉相手がより上位の人になれば、受け手側もそれに見合う人が交渉に加わることになるのだろう。日本企業の判断の遅い所以でもあるが、エスカレーションの方法を間違えれば、ムダに時間を費やすことになるのかもしれない。早くからトップ交渉に移行しておけば、いざこざにならずに済んだのかもしれない。

 

 

中国でEVを売るためなら…トヨタと日本製鉄の「鉄の結束」を壊した自動車業界の大変化 生き残るための「苦渋の選択」 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

日鉄は世界の自動車向け電磁鋼板の需要は25年度に17年度比で7倍程度に増えるとみている。宝山の電磁鋼板は、海外の自動車会社でも採用が続いているとみられ、鉄鋼業界にとって主戦場となる電動化分野で覇権を取るには、宝山の動きを止める必要がある。 (出所:プレジデント)

 こう読むのは自然なのかもしれない。そうであれば、トヨタを巻き込まずに、宝山だけを提訴でもよかったのではなかろうか。宝山を提訴して、トヨタとは話し合いの場を持つというのが筋のように思われる。それでもトヨタを提訴に巻き込むには、筋論で語れないやむに已まれない事情があるのだろう。

 まずは、日鉄が申し立てた、対象となる電磁鋼板を利用したHVなどの国内での製造・販売差し止めを求める仮処分の決定がどうなるかによるのだろうか。

 どういう結果になろうとも、どちらかが即時抗告することになるのだろう。裁判所の決定が下されることが話し合いのきっかけになるのかもしれない。和解なのか、それとも徹底抗戦、どちらになるのだろうか。

 

【脱炭素:COP26に合わせ動く世界】米議会で糾弾される石油メジャー、CO2排出管理するクラウド開始するマイクロソフト

 

 COP26、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議が開幕するのに合わせるかのように、世界が目まぐるしく動いているようだ。

 米国では、議会で米エネルギー大手などによる過去数十年間のロビー活動や公式声明が検証されたという。

石油大手、米下院で厳しい質問浴びる 気候変動めぐり初の宣誓証言 - BBCニュース

石油大手各社の代表が28日、米下院公聴会に出席し、気候変動について世間に誤った情報を与えたのではないかなどとする、厳しい質問に直面した。石油大手のトップが公の場で宣誓証言をするのは、これが初めて。 (出所:BBC

 民主党議員たちが、石油メジャー幹部を攻撃し、共和党は擁護したようだ。

 BBCによると、アリゾナ州のアンディ・ビッグス議員は各社CEOに向かい、「あなた方がここに連れてこられたのは、民主党が皆さんをボコボコにしたいからだ」と述べたという。これに対して、民主党のマローニー委員長は公聴会の終わりに、「子どもたちのために地球を救うためにはできる限りのことをする」と宣言し、調査を継続する必要があると述べたそうだ。

 

 

マイクロソフトの温暖化ガス排出を管理するクラウドサービス

 米マイクロソフトが、企業がCO2など温暖化ガス排出を管理するためのクラウドサービスのベータ版を公開したそうだ。

Microsoft、脱炭素の進捗をリアルタイム計測: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、現状の把握や対外的な報告書の作成、気候変動に関する今後の目標設定などに利用してもらうことを想定しているようだ。脱炭素に取り組む企業にとって課題だった「計測」を容易にするという。自社が直接排出する温暖化ガスや電力使用に伴う間接的な排出に加え、「スコープ3」と呼ばれるサプライチェーン、供給網全体でのCO2排出を管理しやすくするそうだ。

工場の操業や輸送、製品の設計変更といった企業活動に伴う二酸化炭素(CO2)排出を、ほぼリアルタイムで把握できるようにする。

自社や取引先のシステムなどとつないで計算のもとになるデータを自動で取り込むことで、報告書を作ったり、新たな削減計画を立てやすくしたりするのが狙いだ。当面は無料で試せる。 (出所:日本経済新聞

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野心的な脱炭素目標を掲げる東京

「今後の気候変動問題への取り組みは、産業革命以降形成されてきた産業構造を変えて、社会と経済のあり方を一変させるに違いない。いま、人類共通の課題解決に向けて、叡智を集結させた取り組みが拡大している。そのなかでも人類史上最大級のチャレンジとなっているのが、エネルギーの脱炭素化だ」、というのはForbes。東京都の「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」に採択された「エクセルギー・パワー・システムズ」を紹介している。

 

 

世界を明るく照らす技術が東京から生まれている

「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」で人類共通の課題解決へ! エクセルギー・パワー・システムズの「蓄電池システム」がエネルギーの脱炭素化を実現する | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 Forbesによれば、東京都は、都内の使用電力に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに50%に高める目標を掲げているそうだ。都議会では一定の新築建築物に太陽光発電の設備設置を義務付ける、都独自制度の導入も検討を開始しているという。

企業が事業継続計画(BCP)に無停電電源装置UPS)を取り入れると同時に、電力網に対して調整力をバックアップサービスとして提供する動きが今後は日本でも加速していくでしょう。 (出所:Forbes)

 スマートビルやスマートシティ、EV急速充電ステーションといった次世代の都市インフラの整備が進む中で、エクセルギー・パワー・システムズの蓄電池システムが活用できると記事はいい、そうしたことで、未来の東京が、世界の脱炭素シナリオをリードしていくことを願っているという。

 COP26は注目度は高いという。逆にいえば、それだけ国ごとに気候変動緩和策への対応に温度差があるのだろう。

 話し合いがスムーズに進み、合意に至るのがベストではあるのだろうけれども、たとえどんな結果になろうと、今はパリ協定の目標に向け歩みを続けなければならないのだろう。

 

なぜ日鉄はトヨタまで提訴したのだろうか、宝山、トヨタとも早期和解を望むのだろうか

 

 電磁鋼板の特許権侵害で中国の鉄鋼大手の宝山鋼鉄トヨタ自動車を提訴した日本製鉄の橋本社長が記者会見で、「聞いているというだけでは(特許侵害を否定する)説明にならない」と、トヨタ自身が調査することが必要だと主張したという。

トヨタを提訴の日鉄社長「まったく迷いはなかった」…特許権侵害巡り : 経済 : ニュース : 読売新聞オンライン

「私どもの土俵にのっていただけるのならば、日本経済への影響が出ないようにする責務がある」とも述べ、対立を解消して和解にいたるのが望ましいとの考えもにじませた。 (出所:読売新聞)

 読売新聞によれば、日本製鉄は、宝山の電磁鋼板が使用されているトヨタの電動車の製造や販売の差し止めを求める仮処分も同地裁に申請しているという。

 強気な日本製鉄との印象をぬぐえない。これまでの交渉経緯はどうなっているのだろうか。トヨタが宝山の電磁鋼板を採用する至った背景は何だったのだろうか。

 調達リードタイムを長くなる宝山に切り替えなければならない、やむに已まれない理由あったのではなかろうか。この業界のことだ、その時はおそらく仁義は通したのではなかろうか。もしそうであれば、こうしたことをされたら取引相手のトヨタはどういう印象を持つのだろうか。

 

 

トヨタに対してけんかを売るということは、誰に対しても売るということ」を意味していると、アナリストが分析していると、ブルームバーグが報じる。

供給制限で車と鉄の力関係変化か-日鉄トヨタ提訴、もろ刃の剣の声も - Bloomberg

脱炭素の流れの中で鉄鋼業界の生産能力の増強は進まず、供給が世界的に減少していく見通しのため、タアインハ氏は「良い商品を継続的に調達したいなら自動車会社だけがいい思いをするのではなく、フェアな取り分を素材メーカーにもよこせ」と言える環境になりつつあるという。 (出所:ブルームバーグ

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 ブルームバーグによれば、別の国内証券のアナリストは、お互い関係を断ち切るところまで事態が悪化する可能性は低いとした上で、もし仮にそうなったら「日鉄を失ったトヨタというのは瀕死(ひんし)になるだろうし、トヨタを失った日鉄は確実に死ぬ」と指摘。訴訟が長期化している間に競合他社にトヨタとの取引でのシェアを奪われるリスクもあり、「早期に交渉して和解するのが一番いい」との見方を示したという。

 普通に考えれば、和解を望むのはけんかを売った日本製鉄側で、トヨタではなかろう。筋違いのけんかを売られて、わざわざその相手がいる土俵にあがるのだろうか。温情を示して上がるなら、日本製鉄側が先に何らかの譲歩を示す必要があるのではなかろうか。

 

 

 鉄鋼 高炉メーカーの中で営業力を強化するために商社との業務のあり方を見直したり、新たな協業を模索しようとする動きが出始めていると鉄鋼新聞が伝える。

 それによれば、商社が果たす機能を議論し、メーカーと商社が一体になってサプライチェーンの強化を図る狙いがあるそうだ。それぞれのビジネスにおける商社機能が明確になってくれば、既存の商社口銭の見直しにつながる可能性もあるという。それだけ鉄鋼業界の競争環境が厳しくなっているのだろう。厳しい環境に晒され、商社にもけんかを売り始めたのだろうか。

 思い出してみれば、調達の仕事にかかわるようにきっかけは鋼板関係の問題処理だった。PCメーカから指定された特殊のブリキ少量が手に入らず、商社に協力を要請して、世界中を探しまわってもらってようやく手に入れることができた。それが当時の新日鉄(現日本製鉄)との関わりの始まりだった。とある海外の取引先が多量に鋼材を余らせては、その買い取りを別の商社から要請され、鋼板調達のいろはを知るようになった。同じような問題がたびたび発生しては手を煩わすので、また別の商社と組んで、少し変わった管理購買を始めることにした。商社機能を上手く使うことに工夫を凝らしたものだった。そのとき、まだ調達の素人で、すこぶる横柄な業界と感じたものだった。その後は価格交渉でずいぶん手を焼き、交渉のいろはを学ばせてもらった。価格交渉に行き詰まっては、そのたびに当時鋼板取引のなかった日鉄との取引を商社に相談したが、そのたび、そうすべきではないと諭された。その理由は感じている印象のままの会社ですよと言われた。今取引ある高炉メーカはこの業界で一番柔軟性があるのだからと言われ続けた。

 

 

 さて裁判所は如何ような判断を下すのことになるのだろうか。その前に和解勧告することになるとは思われるが。

 いずにせよ、最終セットメーカであるトヨタは、何らかの対応策をとるのではなかろうか。電磁鋼板代替品の検討とか、場合によっては供給リスクがある日鉄のシェア減も検討課題にあがるのかもしれない。必要があれば宝山と代替品を共同開発することがあってもおかしくはないのだろう。急激な現状はしないまでも、時間をかけてリスクを緩和させる方向に検討するのは間違いないのだろう。トヨタには市場に自動車を供給し続ける義務があるのだから。

 

「参考文書」

日鉄訴訟は「サプライヤーが折れるはず」と甘くみたトヨタの失敗 - M&A Online - M&Aをもっと身近に。

 

【増える石油需要予想】脱炭素プランをアップデートさせる必要はないのだろうか

 

 中国における、リチウムイオン電池用の炭酸リチウムの取引価格が10月中旬時点で1トンあたり約320万円(18万元)になっているという。

 日本経済新聞によれば、1月中旬時点に比べ3倍近く上昇しているそうだ。希少資源といえども、元々は地球に内蔵され、資源自体は無料なのに、採掘して流通すると、これまで上昇してしまうことに驚くばかりである。このまま単純にEV拡大路線がいいのだろうかと疑問を感じてしまう。

中国BYD、EV用電池2割値上げ 原料リチウム高騰で: 日本経済新聞

 中国のEV電気自動車メーカ大手で車載用電池の外販を行うBYD比亜迪が、その車載電池の外販価格を11月から約2割上げるという。電池の主要原料であるリチウムの価格が高騰しているためだそうだ。中国や欧州を中心にEVの新車販売が伸び、電池需要が急増しているという。

 

 

 自動車のEV化が進めば、石油の需要も減じていく。現在の石油需要の半分以上を自動車を含めた輸送が占めている。

石油需要の中期的な減少見通しは、再生可能エネルギーが存在感を増すことを想定したものだが、国際エネルギー機関(IEA)は、再生可能エネルギーが急速に伸びなければ価格高騰や需給逼迫を解消できないと指摘する。 (出所:ロイター)

アングル:石油の供給と需要、ピーク迎えるのはどちらが先か | ロイター

 ただ単純に再生可能エネルギーが増加したからといっても、肝心の自動車などの電化が進まなければ、いつまでも石油需要が残り、場合によって資源開発の資金はいつまでたって必要なのではなかろうか。世界の脱炭素プランをアップデートする必要があるのではなかろうか。

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 経済産業省が、現状のガソリン車など内燃機関車の燃料として使用できる合成燃料の研究開発・社会実装計画案を公表した。

第7回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ(METI/経済産業省)

 経産省はこのプロジェクトにおいて、2017 年の IEA の分析を紹介している。

(自動車の)電動化が世界的な趨勢だが、エンジン車との共存が続く見通しであり、2040 年時点においても、乗用車販売に占める 84%はエンジン搭載車となっているため、世界的なカーボンニュートラルの実現には、脱炭素燃料の導入が重要となる。加えて、新規の合成燃料開発と合わせた燃料利用技術の最適化を進めることによって、相乗効果による更なる CO₂削減も期待される。 (出所:経済産業省

 その上で、今後、自動車分野においてカーボンニュートラルを実現する上では、バイオ燃料に加えて合成燃料も、電動車が潜在的に抱えている課題を克服する解決策の一つと考えられると指摘する。

 

 

 このプロジェクトにおいて、合成燃料は2040 年までの自立商用化を目指し、高効率かつ大規模な製造技術を確立するべく、大規模化に向けた実証を段階的に行うという。また、効率的燃焼とエミッション低減に向けた基盤となる研究を実施することによって、特に合成燃料の導入初期段階で想定される利用者の経済性悪化の緩和や、合成燃料の燃焼による大気環境への影響の緩和などを図り、将来の運輸部門等の脱炭素化に貢献させるという。

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(出所:経済産業省

 このプロジェクトで示す計画が、自動車など輸送機関の脱炭素化のバックアッププランという位置づけではないであろう。EVシフトを進める必要性に変わりはなく、それがメインストリームなのかもしれない。しかし、この計画を前倒し早期に実現させる必要もあるのではなかろうか。

 再生可能エネルギー整備を進まない途上国を思えば、合成燃料の方がはるかに脱炭素化に貢献するのではなかろうか。

 そればかりではない、現実、ポルシェが既に南米チリで、e-fuel工場の建設をはじめ、2022年にはレース用に燃料供給を始めるという。EV一辺倒と思われた欧州も合成燃料の目を捨てている訳ではないのだろう。競争がすべてではないが、脱炭素の世界のトップランナーであって欲しいなんても考えてしまう。

 

植物工場注目再び、中食向けが伸長か、気候変動による食料品高騰にも対応できるのか

 

 いつの間にやら再び植物工場に注目が集まるようになっているようだ。

 岩手県の自動車向けプラスチック部品を組み立て製造する那須野製作所が、植物工場事業を強化しているという。奥州市水沢に完全閉鎖型の「植物工場」を整備し、野菜の本格生産に乗り出し、試行的に取り組んできたフリルレタス中心の野菜栽培が軌道に乗ったことから生産拡大を図るそうだ。

 植物工場で生産した葉物野菜の需要が伸びていることに着目したという。

 

 

 京都では、レタス生産工場を運営するスプレッドが好調のようだ。

 取引先となる小売店や飲食店からは「仕入れ可能な量や、価格の見通しが立てやすい」と、工場産ならではの安定性を評価する声が届いていると京都新聞が伝える。

安定・環境低負荷、植物工場がフル稼働 野菜高騰で需要、市場拡大|経済|地域のニュース|京都新聞

国内に2カ所ある同社の工場では昨年12月からフル稼働での生産が続いており、需要のさらなる増加を見据え、工場増設も検討する。

稲田社長は「植物工場は農薬の使用を抑えられ、環境負荷も小さい。社会課題の解決とも連動しており、中長期的に評価される事業に育てたい」と意気込む。 (出所:京都新聞

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(画像:プランテックス)

 東京京橋、都会の真ん中にも植物工場がある。プランテックスの植物工場と研究所を兼ねた施設だという。

 農機メーカのクボタが昨年11月に、このランテックスに出資したという。

「植物工場」というもうひとつの食料生産のカタチ |クボタプレス|株式会社クボタ

 ここ最近、中食の市場規模が拡大しているという。それに加え、コロナ渦による変化で、この先も、中食向けなど、業務・加工用野菜の需要はますます高まっていく可能性があるとクボタはいう。

毎日決まった数の惣菜や弁当を消費者に提供するためには、それらの材料となる業務・加工用野菜が、安定した品質、量、価格で生産されることが必要です。それを可能としうる食料生産技術の1つとして注目されているのが人工光型植物工場です。(出所:クボタ)

 10年以上も前の植物工場といえば、露地栽培野菜と競合し、黒字化が難しいと言われていた。市場の変化で、商機拡大につながったということであろうか。

 また、クボタによれば、プランテックスは栽培棚ごとに「密閉型」構造とすることにより、装置内の栽培環境を精細にコントロールできるようにし、これによって、レタスなどの作物では従来の人工光型植物工場と比べて栽培面積当たりの生産性が3~5倍にアップという。

 生産性改善も市場拡大に役立ったのだろうか。

 

 

 気候変動の影響により、世界中で野菜や作物の価格高騰が続いている。国内における野菜価格の変動が頻繁に起きるようになったのではなかろうか。

10月、食品が一斉値上げラッシュ…地球温暖化の異常気象、食卓を直撃し始めた

野菜価格の高騰も深刻である。

農林水産省の9月29日の10月の価格見通しでも、北海道の7月の記録的猛暑と小雨の影響で、ジャガイモと玉ねぎは10月を通して平年より2割以上高くなり、白菜やレタス、ナスも9月前半の長雨の影響で生育が遅れ、10月前半は高値で推移するとしている。(出所:ビジネスジャーナル)

 こうした状況が続けば、さらに植物工場への期待は高まるのだろう。葉物野菜ばかりでなく、様々な作物が栽培できるようになれば、いいのかもしれない。

 従来から言われてきた、無農薬やフードマイレージ(食料の 輸送距離)だけがその魅力ではなくなっているのだろう。

 

 

 パナソニックは、気候に左右されにくい農業ソリューション太陽光型植物工場「ITグリーンハウス」を開発したという。

気候に左右されにくい農業ソリューション~アジアモンスーンモデル植物工場システム | Panasonic × 持続可能な社会 | 特集 | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン

 亜熱帯に属する沖縄地方は、湿度・温度ともに高く、スコールや台風も多い。野菜や果物の栽培においては厳しい気候の土地だという。特に高温多湿を苦手とするトマトやイチゴは栽培が難しく、島内の需要を満たすためには島外からの調達が必要になっていると、パナソニックは指摘する。

天候に左右されない農作物の安定収穫を実現できれば、日本のみならず海外の熱帯・亜熱帯地域でも栄養価の高い、美味しい野菜や果物を自給自足できるようになる。(出所:パナソニック

 こうした技術が確立すれば、著しく気候が変わったときにも、対応できるということなのだろうか。

 

「参考文書」

車部品の技術を野菜作りに 奥州市に「植物工場」を整備 | 岩手日報 IWATE NIPPO

車部品の那須野製作所、植物工場にシフト 収益悪化で: 日本経済新聞

【深刻なサプライチェーンの混乱】価格高騰、モノ不足、奪い合い、パーム油の事例

 

「低コストで多種多様な商品供給の時代は終わりか」と、ウォールストリートジャーナルが疑問を投げかけている。

サプライチェーン危機、グローバル化は後退へ - WSJ

 サプライチェーン(供給網)ほど、グローバル化の裏付けとして象徴的な存在は他にない。国内外の生産活動が連携するようになったおかげで、消費者は限りなく多様な商品をいつでも手に入れられると考えるようになったというが、こうした利便性は今、危機に瀕していると、WSJは指摘する。

 ここ最近における様々な経済的な事象を観察すれば、そうなのかもしれない。

 

 

 英蘭系日用品大手のユニリーバが、来年インフレが加速する可能性が高いとの見方を示したという。

ユニリーバ、来年のインフレ加速を警告 第3四半期は増収 | Reuters

 エネルギー価格などの上昇で消費財メーカーが値上げを迫られているという。

 パーム油、大豆油、プラスチックスなどの原材料に加え、輸送費も上昇し、企業の多くは、収益性への影響をさけるため、コスト上昇分を価格に転嫁する。結局、コスト上昇は家計を直撃することになる。

 こうしたことはユニリーバに限ったことではない。他のメーカにおいても同様だ。日本においても、関連する物品の値上げが相次いでいる。

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(写真:花王

 パーム油は、グローバル化の象徴のような存在なのかもしれない。その原料となるアブラヤシは、1980年代後半から急速に栽培が拡大し、パーム油が今では、世界で最も大量に消費される食用油になった。その使い道は、食用ばかりでなく、化粧品やせっけんの原料などに広がっている。

 そのパーム油が今、高騰を続けている。10月中旬時点での国際市況は、前年と同じ時期より73%も高い。用途が広いだけに、その影響は飲食店から菓子製造、化粧品メーカーなど広範にひろがり、消費パターンを変える可能性があるという。

パーム油の急騰が生活を脅かす 多用途で大量消費、コスト押し上げ - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 パーム油高騰の背景には、バイオディーゼル燃料としての需要増があるという。元々、産地のマレーシアでの悪天候に加え、新型コロナの拡大の影響で外国人労働者が減り、収穫に支障が出ていたという。そこにコロナ収束に伴う、経済回復も加わった。

 

 

 SankeiBizによれば、ユニリーバはパーム油などを、アイスクリームや化粧品、せっけんなどの原材料として、年に約100万トン購入している。価格高騰の影響は避けられず、平均4%超の値上げを実施、この高い価格は来年も続くと公表した。

 こうしたことは食品や日用品ばかりでない。

「中国から安価な製品を購入するのが当たり前になっていた世界中の消費者は、この年末商戦期に衝撃を受けるかもしれない」とロイターがいう。

 エネルギー危機と堅調な輸出需要を受け、限界まで我慢していた中国メーカーが国内外で、コストアップ分を販売価格に転嫁するリスクが高まっているからだという。

コラム:中国製品に値上げラッシュの兆し、迫るインフレの足音 | ロイター

熾烈な競争を背景に、中国の主要メーカーはしばしばコスト増大を自ら吸収することを強いられ、消費者物価の落ち着きに一役買い続けてきた。

だが、世界的なコモディティー価格上昇により、人手不足や新型コロナウイルスの影響、その他の制約に起因する供給網の混乱に拍車が掛かった。

その結果、中国の9月生産者物価指数(PPI)の前年比上昇率は10.7%と過去最大の伸びを記録。メーカーの利益率はかつてないほど圧迫されている。(出所:ロイター)

 日本企業とあまり状況が変わらないのかもしれない。

 

 

 ECB 欧州中央銀行のラガルド総裁が、ユーロ圏経済のグローバル化により、域内経済はサプライチェーンの混乱によるシステミックな衝撃に極めて脆弱になっているとの見解を示したとブルームバーグが報じる。

ラガルドECB総裁、ジャストインタイム経済が欧州を脆弱化 - Bloomberg

 また、「部品や原材料を必要な時に必要な量だけ仕入れるジャストインタイム在庫管理について、この数十年間、世界貿易を支配してきたが、システミックな衝撃に極めて脆弱だとし、これによってユーロ圏経済に持ち込まれる変動性は今後、減らずに増えていく」との見通しを示したそうだ。

 グローバル化し、そこに新型コロナと気候変動の問題が加わり、サプライチェーンが様々な問題を抱えるようになったのだろう。

 サプライチェーンの見直しは避けられそうにない。しかし、即効性のある有効な策がないのかもしれない。

 ただそうしている間も、食用向けとバイオディーゼル向けで、パーム油を取り合っているのかもしれない。それでいいのだろうか。 

 

「関連・参考文書」

3分でわかるパーム油

プルタミナ、もろ刃のバイオ燃料シフト パーム油に逆風 : 日本経済新聞

インドネシア=パーム油高でバイオディーゼル普及に暗雲|海外支店便り|マーケットニュース|マーケットニュース

 

世界的なエネルギー不足、高騰する石油にガス、今冬、電力不足にならないのだろうか

 

 コロナ禍に世界中が陥り、そこからの回復はグリーンと言われていたが、足下の状況は決してグリーンともいえそうにない。

「環境に優しい経済への移行は、安定的なエネルギー供給に支えられる必要がある」と中国李克強首相が指摘したという。一国の首相がそう言わざるを得ない、日常生活に深刻な影響が出てしまうような電力不足が今起きている。

 エネルギー価格が急上昇し、世界が依然として化石燃料に依存していることをまざまざと知らされる。中国や英国で起きているエネルギー不足をみれば、その回避のためには、残念ながら、いまだ化石燃料に頼らざるをえない。コロナ禍の間、あれだけいわれた再生可能エネルギーへの転換が不十分でだったことを思い知らされている。

「現在の状況は、世界のエネルギー供給のぜい弱性を浮き彫りにしている」とウォールストリートジャーナルが指摘している。

 

 

 中国が9月の国連総会で、海外で新たな石炭火力発電プロジェクトは行わないと表明した。世界が二酸化炭素の排出の削減に取り組む中にあって、中国の方針転換は歓迎された。

 IEA 国際エネルギー機関は、この中国の新しい方針に従えば、最大190ギガワットの石炭プロジェクトがキャンセルされ、200億トンもの二酸化炭素の排出が防止される可能性があると推定している。その二酸化炭素の量— 2050年までに排出量をゼロにするEUの目標を達成したときに節約される量とほぼ同じ量だそうだ。

China stopping overseas coal finance to cut as much emissions as Europe going net-zero

 IEAの報告によれば、今後10年間で、クリーンエネルギー投資が3倍必要になり、2030年までに年間4兆ドル近くになるという。そして、その投資の70%が発展途上国で必要になるそうだ。

 途上国での投資分を含め、これだけの投資を先進国が自ら率先して確実に実行できるのだろうか。

 

 

 高騰を続けていた原油先物が昨日は反落したという。中国政府が高騰する石炭価格を抑制する方法を検討していると明らかになったことの影響のようだ。それに加え、電力不足の解消に向け、炭鉱のフル稼働を図ると表明したことの影響もあるという。

原油先物は反落、中国政府の石炭相場介入姿勢で | ロイター

中国のエネルギー問題を解決するには、結局は石炭生産量を増やす必要がある。(出所:ロイター)

 IEAの世界のエネルギー見通しでは、この10年間、不十分な投資により、世界のエネルギー市場はより「混乱」し、価格ショックに直面するだろうと述べていたそうだ。

 政府や民間企業が気候変動に対処するため、より多くのクリーンエネルギーに投資するにつれ、化石燃料の需要が減少することを見越して、石油とガスへの投資は近年減少している。しかし、その一方で電力需要の伸びの指摘もある。より多くの投資がなければ、世界に衝撃を与える不安定なエネルギー価格と不足は、10年を通して標準になる可能性があるとIEAは指摘した。

 そうした現実が今起きつつあるようで、少しばかり不安を覚えるが、相変わらず政治は、こうした危機的状況にはあまり関心がないようだ。衆院選でもさっぱり論議される様子もない。 

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 経済産業省が今日21日、大手電力のLNG液化天然ガスの在庫が約230万トンと明らかにした。ロイターによれば、昨年同時期に比べて約70万トン多く、過去5年間で最高水準となっているという。

経産省では「現時点において需給ひっ迫の蓋然性は低い」としながらも、想定を超える需要増や大規模電源の停止があると「需給が厳しくなる可能性がある」と警戒している。(出所:ロイター)

LNG在庫は過去5年で最高水準、現時点で需給逼迫の蓋然性低い=経産省 | ロイター

 今年の冬の電力需給については、最低限必要な予備率3%を確保できているものの、過去10年間で最も厳しい見通しとなっているそうだ。

 一般需要家に対しては、「無理のない範囲での効率的な電力の使用(省エネ)」への協力を呼び掛けているという。これでいいのだろうか。