Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

増えるばかりの荷量、負担増す物流に、DX が特効薬になるのか

 

 物流のDX化、デジタルトランスフォーメーションが急務といわれるている。巣ごもり需要による物流件数の増加、複雑化に伴う人材不足と運賃上昇が課題となっていることがその理由のようだ。

 ユニクロを有するファーストリテイリングの自動倉庫がその成功事例と紹介されたりする。そこにはユニクロならでは事情があり、自動倉庫が問題解決の核心ではない。

 逆に自動倉庫を導入したものの、宝の持ち腐れになっているケースもあるのではなかろうか。

gentosha-go.com

 物流といっても、その範囲は広い。一般的に「調達物流」、「販売物流」、「社内物流」、「返品物流」の4領域に分けられるという。関連した用語として、SCM サプライチェーン・マネジメントやロジスティクスなどの言葉もよく聞く。それらは原料生産者、加工者、販売者を密に繋いだ供給主体のより包括的な経済行為をマネジメント面から強調する言葉として説明される。

 工場などを監査などで訪問するときは、かならず倉庫を確認する。倉庫は物流の保管の機能を担う。倉庫をみれば、その会社の実力を概ね把握できると、そう思ってまず見学することから始めていた。それだけ、ムダも多く、管理すべき事項が多岐にわたっていた。

 

  SGホールディングスが8月25日、「最先端ロボティクスを活用した生産性向上・コスト削減への取り組み」や「AIを活用した先進的な共同研究」などのDXへの取り組みが評価され、経済産業省東京証券取引所から、『DX注目企業2020』に選定されたと発表した。

 LNEWSによれば、佐川急便は今年1月に次世代型の物流センター「Xフロンティア」を開設、ロボット設備やスペースを従量課金制で利用できる「シームレスECプラットフォーム」の提供を始めたという。

「シームレスECプラットフォーム」では、自動棚搬送ロボットを始めとしたAGV(Automated Guided Vehicle)や自動梱包機などの導入により、同規模の施設に比べ約50%の省人化を実現するとともに、同サービスを利用することで小規模の物流業務をマテハンの初期投資やスペース使用料などの固定費をかけることなく、大手通販事業者と同等の作業品質で通販ビジネスの展開を可能にしている。(出所:LNEWS)

www.lnews.jp

また、佐川は、電力データを用いて荷受人の在不在をAIに判断させることで不在配達を回避し再配達の削減させようと試み、2020年秋頃から実際の配送現場において実証実験を行うという。さらに、AIの活用が進めば、配送ルート、配送順の適正化なども期待ができるのかもしれない。

 荷量にもよるが、佐川のような外部のファシリティを利用したほうが案外物流改革はうまく進み、DX化にもつながっていくのかもしれない。

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 その佐川急便は、車両の電動化も急いでいる。30年までに現在7200台ある軽自動車の配送車両をEVに切り替えるそうだ。佐川ばかりでなく、他の物流大手もEV化を急いでいるようだ。

 日本経済新聞によれば、独DHLも2030年までに日本の配送車両の6割をEV電気自動車に切り替えるそうだ。三菱自動車の軽自動車タイプの商用EVを導入し、物流拠点から企業や個人宅への配送に使うそうだ。

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DHLは海外から日本への国際航空物流などに加え、海外の通販サイトなどで買った商品の個人宅への小口配送も手がける。20年に日本で取り扱った電子商取引(EC)関連の荷物は19年比で4割増えたという。小口配送の車両をEVに置き換えて環境対応を進める。 (出所:日本経済新聞

 広範にわたる物流、そこにある課題も多岐にわたる。良いのか悪いのか、ここまで荷量が増えていいのかと疑問も沸くが、しかしまた、それが現実なのだろう。早急なる課題解決が求められている。

 陸の物流ばかりではない、海運でも船不足で荷が滞りがちだという。こちら陸同様な問題解決が求められているそうだ。

 

株価は続伸、企業活動は減速、モノは活発に動き、コンテナ船が不足、物流は目詰まり

 

 米国株式市場を眺めていると世界経済にはリスクがないのではないかと勘違いしそうになる。S&P500もナスダックもまた史上最高値を更新したという。パウエルFRB議長が年内の資産購入の段階的縮小テーパリング開始を示唆したというが、テーパリング終了後も、直ぐには利上げを行わないとしたことでセンチメントが大きく改善したがその理由のようだ。

 

 ただ米国も中国も経済指標は万全とはいえそうにもない。

「米国の企業活動は8月も引き続き拡大ペースが減速し、8カ月ぶりの低水準となった」とブルームバーグはいう。原材料や労働力の不足、新型コロナウイルス感染の急拡大が背景にあるそうだ。

 中国の経済回復も8月は横ばい状態となっているという。ブルームバーグによれば、最近の規制面での締め付けや新型コロナウイルス感染拡大に対する当局の厳しい対応、内需の弱さを受け、成長の勢いが足踏み状態にあることがうかがえるという。 

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半導体不足や物流の目詰まり、原料高など、世界景気回復の足かせとなっている制約も続いたと指摘する。

一時的な現象にとどまるはずだった世界的なサプライチェーンの混乱は、来年に入っても続きそうな気配だ。新型コロナウイルスのデルタ変異株が急拡大しアジアの工場生産は一変、輸送も妨げられ、世界経済に新たなショックとなっている。

主要部品の不足と原材料・エネルギーコストの上昇に見舞われている各メーカーは、輸送船のスペース確保に向け入札競争への参加を余儀なくされており、その結果、運賃が過去最高水準に高騰している。一部の輸出業者は値上げ、あるいは単に輸送を完全に取りやめるようになっている。 (出所:ブルームバーグ

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 こうした状況下、海運業にも注目が集まる。

 海運の運賃動向を示すバルチック指数が11年ぶりの高値圏で推移するようになり、海運の需要の強さの証左になっている。ただ足下で、状況が直ぐに改善されることはないようだ。

 ブルームバーグによれば、現実、アジアから欧州にコンテナを運ぶコストは昨年5月に比べて約10倍となり、上海からロサンゼルスへの輸送費は6倍余りに膨らんでいるそうだ。

 

「海運大手各社は数カ月にわたりコンテナと港湾での船の停泊場所の欠如に悩まされてきた。そして今、船自体の不足が業界の新たな関心事となっている」と日本経済新聞はいう。

 一方で、海運には苦い経験があるそうだ。

「過去10年、業界は逆の状況に苦しんでいた。船舶の余剰で採算性が悪化して、韓国の韓進海運が経営破綻し、業界再編が進んだ」、「世界的に需要が増えているとはいえ、コンテナ船の過剰発注を懸念する業界関係者も存在する」と日本経済新聞は指摘する。

www.nikkei.com

 そして、業界にはもう一つ慎重になる理由があるという。それは、今後導入される環境規制のもとで、どのようなタイプの船舶を発注すべきかという問題があるというのだ。

23年から船舶のエネルギー効率性に関する規制が世界的に導入されるため、液化天然ガスLNG)を燃料とする船への関心が高まっている。だがこのタイプの船が新規発注全体に占める割合は19年10月から変化していない。

LNGは伝統的な燃料に比べ温暖化ガスの排出量が約4分の1少ないが、実質的に25年間温暖化ガスの排出量が固定化される点で議論を呼んでいる。環境保護活動家は、アンモニアや水素などのクリーン燃料に一気に転換するよう海運業界に求めている。 (出所:日本経済新聞

 他方、商船三井は、自社で掲げる「2050年までにネットゼロ・エミッションを達成する」ことを目指して「クリーン代替燃料の導入」戦略を策定、2030年までにLNG燃料船を約90隻投入する予定だという。また、インドの鉄鋼メーカ タタスティール社とGHG温室効果ガス排出削減に向けたばら積み船の実現を目指し協業を行うという。積極路線なのだろうか。

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 異常気象が世界各地で常態化し、気候危機が叫ばれ、「サスティナビリティ」に注目が集まる。

 しかし、今、海運を取り巻く環境を見えれば、以前よりもモノがあふれ、そのモノを運ぶために、多量の船を必要とし、多量の二酸化炭素を排出し続ける。このままでいいのだろうか。

 世界がミニマルを標榜しない限り、とてもでないが気候危機は止まりそうにもない。

 

【中国の規制と影響】共同富裕と個人情報保護、株価下落する高級ブランドと低迷するテクノロジー企業

 

 高級ブランドやサービスを提供する世界80社で構成する株価指数S&Pグローバルラグジュアリー指数」が約5カ月ぶりの低水準に落ち込んだといいます。

中国の習近平国家主席が貧富の差を縮小を示す「共同富裕」を提唱し、高級ブランドの中国事業の先行きに不透明感が生まれたのがきっかけだと日本経済新聞は説明します。

www.nikkei.com

欧州の高級ブランド品は中国富裕層の拡大に伴って事業を拡大し、株価も上昇してきた。例えば仏エルメスは10年前から株価が約5倍に膨らんだ。 (出所:日本経済新聞

 エルメスやLVMH、バーバリーなど高級ブランドの株価回復はあるのでしょうか。中国の意志がこの先、世界経済にどんな影響を及ぼしていくのか気になります。

 

 習近平主席による「共同富裕」への言及が今年に入ってから急増しているとそうです。

 ブルームバーグによれば、大きく広がった貧富の差の縮小を目指す中国共産党のコミットメントを示唆する動きだといいます。

共同富裕との文言は、習指導部発足後の最初の8年間に散発的にみられたが、昨年からより頻繁に言及するようになり、ペースに弾みがついている。習主席は昨年の演説と会合で共同富裕に30回触れたが、今年はこれまでに既に65回言及している。 (出所:ブルームバーグ

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 米ジョージア州立大学のマリア・レプニコワ氏は、スローガン作りは習主席の意図の強さを示唆していると分析し、「スローガンは新たな政策の方向性や変化を捉えるものであることが多く、政策がどのように変化しつつあるか示唆し得る」と述べ、「それらは幅広いことが多く、解釈のあいまいさと調整の余地をいくらか残している」と指摘したといいます。しかい、それは自分たちに都合のよい希望的観測が含まれているような気がしてなりません。

 「交通事故をなくそう」とのスローガンはその方向に向かうことを示唆し、曖昧さはないはずです。

 

 テクノロジー銘柄を買い戻す動きが失速している.....

中国当局が民間企業への締め付けをどこまで進めるのかを巡り懸念が根強く、割安株の物色が後退している」とブルームバーグが報じます。

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 疑心暗鬼、まだ中国のテック企業が「金の卵」に戻るのか、自信を持てないのでしょうか。

 中国の全国人民代表大会全人代)常務委員会は、企業によるユーザーデータの取り扱い方法により厳しい規則を定めた法案を可決したといいます。

 TechCrunchによると、レコメンドエンジンのような「パーソナライズされた意思決定」のためのアルゴリズムを使用する事業者は、まずユーザーの同意を得るよう求められるといいます。

jp.techcrunch.com

パーソナライズはユーザーの選択の結果であり、真のパーソナライズされたレコメンデーションは、強制することなくユーザーの選択の自由を確保しなければならない。したがって、ユーザーにはパーソナライズされたレコメンデーション機能を利用しない権利が与えられなければならない。 (出所:TechCrunch)

「中国以外の国でも、アルゴリズムによるターゲティングに対する懸念は高まっている」とTechCrunchはいい、欧州でも、議員や規制当局が行動ターゲティング広告の規制強化を求めているといいます。

 特に、中国が極端におかしなことをやろうとしているわけではないように解釈できます。個人的にはレコメンデーション機能は迷惑なものと感じています。

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  驚きのニュースが流れました。中国の深圳証券取引所は、EV電気自動車メーカーのBYD(比亜迪)の半導体部門の新規株式公開IPO申請について、審査を一時停止したと発表したといいます。

www.bloomberg.co.jp

 ブルームバーグによれば、今回の動きが中国政府の本土企業に対する締め付け強化に関連しているかどうか今のところ明らかではないといい、BYDにとっては打撃となると指摘します。BYDの株は最近、半導体部門のスピンオフ決定を受けて上昇基調にあったといいます。

 国策の脱炭素と半導体強化にも資するBYDも標的になったのでしょうか。脱炭素と半導体強化よりも、「共同富裕」が優先されているということなのでしょうか。

 

【テスラは一体の何の会社か】北海道に蓄電池発電所を建設し、新しいAI用スパコンも開発する

 

 米Tesla、EV電気自動車メーカと表現されることが多いが、時として、テスラとは何の会社かと悩むときがある。ここ最近、テスラのニュースが増えている。個々の案件ごとに興味は沸く。何故テスラはそう動くのか。その理由は?、どんな影響があるのだろうか。それが知りたくなってしまうことばかりである。

新電力と協働して蓄電池発電所を設置

 テスラが、新電力のグローバルエンジニアリングとエネ・ビジョンと協働し、大型蓄電システム Megapack(メガパック)を使った日本初の蓄電池発電所「北海道・千歳バッテリーパワーパーク」を建設すると発表した。

 テスラはこれまで世界各地に蓄電池発電所を設置してきたが、今回、日本における蓄電池発電所へ初めてMegapackを導入することになる。日本で始まる容量市場や需給調整市場の開始に合わせ蓄電池発電所への展開を加速させていくという。

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(写真:テスラ)

 設置される蓄電池発電所は、グローバルエンジニアリングがアグリゲーター事業者として運用する。テスラによれば、太陽光発電などによる再生可能エネルギー電力、節電等により生み出されたネガワット電力(余剰電力)、自家発電設備による電力、そしてMegapackにおける貯蔵電力を同一グループ下でバランシングし、電力系統の安定化を図り、電力卸市場、需給調整市場、容量市場に参加、更なる系統安定化への貢献と収益化が見込るそうだ。2022年から稼働予定。設置工事は、エネ・ビジョン社がEPC契約のもと、進めていくという。

 一方、新電力倒産とのニュースをたびたび聞くようになってきた。新電力業界における新たなモデルケースになっていくのだろうか。

 

テスラ AIデー 

 米国時間8月19日にTesla AI Day(テスラ・AI・デー)が開催され、興味をそそる発表が相次いだようだ。

今回のイベントはテスラが単なるEVメーカーではないことを示し、同社に人材を呼び寄せることが目的。 (出所:ブルームバーグ

また、TechCrunchによれば、イーロン・マスクCEOはテスラのことを「推論レベルとトレーニングレベルの両方でハードウェアにおける深いAI活動を行っている企業である」と説明したという。この活動は、自動運転車への応用の先に待つ、Teslaが開発を進めていると報じられている人型ロボットなどに利用することができるそうだ。

jp.techcrunch.com

 それにしても、マスク氏はうまい表現をする。

「電気自動車による自動運転システムを開発するテスラ」とGigazineは、テスラのことを評する。そして、このイベントで発表があったカスタム半導体「D1」と、開発中のスーパーコンピューターDojo」について説明する。

スーパーコンピューターDojo

 Gigazineによると、このイベントで初めてスーパーコンピューターDojo」について明らかにし、「Dojo」は大規模なコンピュートプレーンを持ち、低遅延かつ超高帯域幅を備えた分散型コンピューターアーキテクチャだという。

テスラは100万台以上の車両から大量の映像データを取得しており、この映像データから自動運転AIのトレーニングを行っています。テスラのイーロン・マスクCEOは以前から「レーダーやセンサーよりも映像認識の方が自動運転に適している」と主張しており、自動運転AIの映像認識トレーニングに最適化したスーパーコンピューターを自社で開発する予定だと述べていました。 (出所:Gigazine

 

 この「Dojo」はまだ未完成で完全実用化の段階に至っていないが、マスク氏は2022年には稼働するだろうと述べたという。

 そして、このスーパーコンピュータ「Dojo」を構成するのが、ASIC「D1」。

 

カスタムASIC(特定用途向け集積回路)「D1」

D1は、機械学習における帯域幅ボトルネックを取り除くために自社設計されており、プロセスノードはTSMCの7nmが採用されているとのこと。D1のダイ面積は645mm2で、トランジスタ数は500億以上。 (出所:Gigazine

gigazine.net

 一体、テスラは何の会社なのだろうか。スパコンDojo」が完成すれば、これも販売することを考えるのだろうか。

 もしそうなれば、かつてのIBMに近い垂直統合型の企業になり、その派生商品も販売することになるということなのだろうか。「推論レベルとトレーニングレベルの両方でハードウェアにおける深いAI活動を行っている企業である」とマスク氏が言ったというのだから.....

 そうであれるのなら、当日に発表があった人型ロボット「テスラ・ボット」に手を出すことも頷ける。

 ブルームバーグによれば、ループ・ベンチャーズのアナリスト、ジーン・マンスター氏は、マスク氏には「大きなビジョンがある」とした上で、「投資家にとっては、テスラ・ボットが夢を見させてくれる何か新しい存在だ。半導体はより実体を伴うものだが、大半の投資家には退屈だ」と語ったという。

www.bloomberg.co.jp

 テスラのすごそうなポテンシャルに、まだ気づいていないのかもしれない。

 これからは、AIと人を橋渡しするインターフェースがハードウェアになるのだろうか。そして、基幹技術を応用した展開ハードウェア商品が次々と登場することになったりするのだろうか。もしそうなれば、バリューチェーンのあり方も変えることになるのかもしれない(今のアップルに近づくことなのかもしれませんが)。

 

【規制強化が続く中国】どこまで拡がるか、その波及への不安

 

 中国、良くも悪くも「何であり」と思っていました。台湾企業から、中国の工場をひとつ任すので、暮らしてみないかと誘われ、魅力を感じましたが、踏み切れませんでした。ひどく嫌っているのかといえば、そうではなく、自分の未来を託すには不安があったということでしょうか。中国投資でも同じかもしれません。魅力を感じつつも、常にその考えがよぎり、ついにここまで手を出すことができませんでした。もったいことをしたとの後悔もあったのですが、でもよかったのかなと感じる今日この頃。

「経験豊富な投資家なら誰でも、金融市場は問題が起きれば極端に振れると言うだろう。しかし、その市場が世界第2位の経済大国で、政府がゲームのルールを変えると決めたらどうなるだろうか」とロイターがいいます。

jp.reuters.com

中国ではこの数カ月間に電子商取引個人事業主が単発の仕事を請け負う「ギグエコノミー」、受験産業、直近ではオンライン保険などの業界で次々と規制が強化され、株式市場で2月以降に1兆ドル近くの時価総額が消失した。(出所:ロイター)

 1兆ドル、驚きの数字でしかありません。

 

 多額の負債を抱える中国の不動産開発大手、中国恒大集団のことが気にかかります。

 ブルームバーグによると、中国の金融当局は流動性危機の回避に苦慮する恒大に対し、債務問題の解決を求め、「虚偽」の情報を流布しないよう叱責したといいます。当局が監督下の企業を公に戒める例は少ないそうです。

www.bloomberg.co.jp

中国恒大が何らかの形で政府に救済されるとの期待感は、ここ数週間に薄れ、同社の社債と株式は急落している。

中国恒大は同国経済にシステミックリスクを引き起こす恐れがあり、19日の声明は当局がしびれを切らしつつあることをこれまでで最も明確に示唆した。負債総額が3000億ドル(約33兆円)を超える中国恒大の命運は、50兆ドル規模の中国金融システムのほか、同国の銀行や信託、さらに膨大な数の住宅所有者に広く影響を及ぼす。 (出所:ブルームバーグ

 これがきっかけの金融危機があるのだろうかと心配になります。

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 ブルームバーグによれば、その後も中国が進める不公平な市場に対する締め付けの波は続き、酒造会社や美容整形業界、オンライン薬局にも及んでいるといいます。

「規制への懸念と成長減速の始まりで、今は利益を出すのが極めて難しい。この調子だと、電気自動車(EV)や半導体など勝ち組の好調も長くは続かないかもしれない」と話すファンドマネージャーもいるそうです。 

www.bloomberg.co.jp

中国規制当局の引き締めについて「弱まる兆しは見えず、これが引き続き中国のテクノロジー株の重しになっているだけでなく、他市場にもますます波及している」とブルームバーグは指摘します。

 

  韓国では、「韓国のアマゾン」と呼ばれるクーパン、そのCEOのボム・キム氏が労組や顧客から批判にさらされているといいます。

 ブルームバーグによれば、6月の物流センター火災を受け、労働環境について組合や顧客から新たな批判に直面しているといいます。火災後のボイコットもあり、クーパンのアプリはデーリーユーザー数が一時70万人余り減少する日もあったそうです。キム氏がグローバル経営に専念するためクーパン取締役会の会長を辞任するとの発表が火災事故当日と重なり、責任を逃れるためだとの見方が広がったことも油を注いだといいます。

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 米国ではアマゾンの株価が急落しているといいます。ブルームバーグによれば、7月前半のピークから約15%下落し、時価総額は約2670億ドル(約29兆円)減少したそうです。投資家は同社のサービス需要に拍車を掛けた新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)収束後の展望に疑問を呈しているといいます。 

 IT、テクノロジー企業にとっての受難の始まりなのでしょうか。

 

【エンターテインメントも規制する中国】「勝ち組」を狙い打ちする、その理由とは

「そう決めたからには徹底的にやる」というのが中国の文化なのでしょうか。

 実に驚きます。今度は、「アイドル文化」を規制強化の対象にするようです。

 ブルームバーグによると、中国共産党の機関紙である人民日報は17日の論説で、規制当局の監督を欠いてきたエンターテインメントセクターと「アイドル文化」について監視を強化すると主張したといいます。

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 上海大学の元教授(政法学)で政治コメンテーターのチェン・ダオイン氏は、習近平国家主席が目指すのは諸外国の制約を受けない堅強な製造業を基盤にした「強い」中国だと指摘しているそうです。

習近平主席が推進する「共同富裕」と富の再分配が一握りのハイテク富豪を押さえ込むことにとどまらない現状だ。

学習塾からオンラインゲーム、エンターテインメントを標的に規制を強化し、国営メディアに非難させる。こうした戦略が狙うのは、怠惰なライフスタイルを受け入れ始めた「寝そべり族」などの若い世代を鼓舞し、愛国心にあふれる有能な労働者に変えることだ。 (出所:ブルームバーグ

 

  行き過ぎた報道かと思うのですが、まんざら否定すべきことでもないようです。

内需の成長力は弱含み、一部の産業では企業の生産・経営状況に格差が生じ、「雇用の構造的問題」が依然として顕著だ。経済回復の中で幾つかの新たな問題が生じている」として警鐘を鳴らした」

と、JETROが8月6日の「人民日報」の記事を紹介し、「大卒人材などが就職難に直面する一方、工場ではワーカーや技術系人材が不足しているとする雇用の需給ギャップを存在する」ことを指摘しています。

若者にホワイトカラーの就職やハイテク企業での出世を断念させるのは、就活のプレッシャー軽減につながる一方で、別の目標達成も助ける。

つまり重要な技術革新を達成するのに必要な製造業の基盤を強化するという目標だ

中国は将来の経済成長に欠かせない高性能半導体の確保で米国などに依存せずに済むよう、国内製造業の底上げを目指している。 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

新たな規制を巡り大手テクノロジー企業にとって最悪期が過ぎたとしても、かつてほどの成長にはならないとわれわれは想定すべきだ

「今後の投資環境が厳しくなることは間違いない」、「投資家は本当に慎重になる必要がある」。

 ブルームバーグによれば、著名投資家がこのような言葉を発しているといいます。

 中国当局、その本気度を示す内容をブルームバーグが連投します。他のソースからしても、大きく外れていないようです。 

中国のテクノロジー業界規制、さらに強化へ-テンセントが警告 - Bloomberg

アリババ株、香港で上場来安値-当局による締め付け懸念根強い - Bloomberg

中国企業ADRはもはや「投資不可能」-マーシャル・ウェイス - Bloomberg

 

「(中国)ビッグテックの独占・寡占に対して、中国当局は公平かつ自由な競争を促進することで加盟店と利用者の権益を保護し、行き過ぎた行為を規制することで国民の不満解消を図ろうとしています」と、MONEY PLUSは指摘します。

その成果の一つとして、アリババ・グループとテンセントは年内にもサービスの相互受け入れを開始する見通しで、実現すれば加盟店と利用者が恩恵を受けるだけでなく、両社にとってもメリットがデメリットを上回る可能性があります。(出所:MONEY PLUS)

media.moneyforward.com

今までの枠組の中で高い利益率を享受してきた「勝ち組」企業が方針転換を迫られています」。

「今後は規制の着地点を見極めながら、イノベーションを生み出す資本力と研究開発力を持つビッグテックの変革に注目したい」とMONEY PLUSはいいます。

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経済構造転換で内需拡大の必要性がますます高まるなか、中国当局はビッグテックの既得権益化を防ぎつつ、国民の負担軽減を図ることで経済の活力を引き出そうとしています。

その過程において、当局の規制は企業にとって劇薬になるものの、中長期的に見れば効率化や消費を促進することになるでしょう。(出所:MONEY PLUS)

 

 中国当局による民間企業への締め付けが厳しく、投資が難しくなる中、ソフトバンクグループのビジョン・ファンドが国内で出資先企業の開拓を目指しているといいます。

 ブルームバーグによると、英語と日本語が堪能で、市場分析や資産査定、案件交渉など全ての投資プロセスに関与し、ディールの執行でも中心的役割を担うことができる人材をビジョン・ファンドが求めているといいます。

www.bloomberg.co.jp

 方針転換なのでしょうか。日本のテック企業への影響はあるのでしょうか。

 中国当局が規制強化した意味を理解しておく必要があるのではないでしょうか。

 

【長引くコロナ災害】さらなる災禍、PayPayは中小事業者向け決済手数料を引き上げか

 

 全国の新規感染者がまた20,000人を超えました。27府県で新規感染者数が最多を更新したといいます。また、40都道府県で、ステージ4(爆発的感染拡大)相当になっているそうです。ステージ4に相当しなかったのは岩手、秋田、山形、福井、鳥取、島根、徳島の7県。厚労省の専門家会合で、「全国各地で災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要」との分析をまとめたと共同通信が報じます。

nordot.app

 ため息がでるような状況です。対策効果がなかなか上がってきません。感染対策は適正なのでしょうか。決まったことだからと是認し、従いますが、こう悪化が続くようであれば、疑念が生じかねません。

 ものづくりの不具合対策になぞらえるつもりはありませんが、蔓延対策、根本対策、再発防止、現況への処置、恒久対策に分けての対応が必要になるのではないでしょうか。どれか一つ欠ければ、いつまでも対策効果があがらないのは当たり前のように感じます。

 

 そんな中、経済産業省最低賃金引き上げの影響を受ける中小企業の支援を拡充するといいます。

 NHKによれば、対象となるのは新型コロナの影響があり、全従業員の10%以上を最低賃金に近い水準で雇用している中小企業だといいます。こうした企業が「業態転換」を行う場合、補助金の支給割合を通常の66%から75%に引き上げるといいます。

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(資料:経済産業省「事業再構築補助金」)

www.meti.go.jp

 飲食店や小売店などの業種を想定しているようです。経営者には重石かもしれませんが、最低賃金をあげることは避けえないことではないでしょうか。

 この状況下、生き残ることは艱難辛苦なことなのかもしれません。ただ守るべきものは守らなければならないという現実もあるのではないでしょうか。

 

 長引くコロナ災害、こんなとき、スマートフォン決済大手のPayPay(ペイペイ)が10月から中小事業者向けの決済手数料を変更し、手数料率を最低1.6%とする方針を固めたと日本経済新聞が報じています。

 一般に3~5%とされるクレジットカードの半分以下に抑え、国内のQRコード決済業界では最も低い水準にする。

無料で加盟店を囲い込む規模優先の路線が転機にさしかかった。 (出所:日本経済新聞

www.nikkei.com

 この時期に行なうのは、如何なものなのでしょうか。さらなる災禍にならないのでしょうか。

 クレジットカードの手数料よりは安いのかもしれませんが、小規模事業者にとっては1.6%は大きな数字ではないでしょうか。小規模小売業の営業利益率は1%台半ばとの意見もあります。マネックス証券 執行役員大槻 奈那氏によれば、昨年時点のアンケートで、QR決済導入企業の半数以上が、QR決済は業務の効率化に繋がっていないといいます。一部のスーパーなどでは早くもQR決済受付を止めるなど(しかもがっつり手数料を取られるため、と掲示してある)、これまでと違う動きも出てきているといいます。

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 自分たちの都合しか考えていないのでしょうか。それとも違う目的が何かあるのでしょうか。もし良心があるのであれば、もう少し違う対応になりそうな気がします。

  Zホールディングスが2019年11月に開催した決算説明会で、「モバイル決済サービス「PayPay」を今後の事業拡大の要として成長させていく」と明らかにし、そのときの資料には、「未来は予測するものから、創るものへ」とありました。

 ずいぶんと横柄な未来を作ろうとしているのではないかと感じてしまいます。

「この秋、これまで順調に進捗してきたQR決済に、ひと波乱ありそうです」と前出の大槻氏は言います。その頃にはコロナも少しは落ち着いていればいいのですが。