Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

【AI革命に背を向ける中国】テクノロジー企業の規制は何のためか、いつまで続くのか

 

中国投資からの時宜を得た退却」。

  D1キャピタル・パートナーズは新東方教育科技集団株2500万株を売却、ソロバン・キャピタル・パートナーズはアリババグループ株206万株を手放したと、ブルームバーグが報じます。

www.bloomberg.co.jp

 それによると、「7月は米上場の中国企業株で構成するナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数が22%急落したが、届け出からは一部のファンドがその影響を免れたことが分かる」といいます。

 

 Forbesによると、中国国務院は、国家の安全保障やイノベーション、独占禁止を含む分野での法整備に積極的に取り組むと表明したといいます。

 さらに、AI(人工知能)やクラウドコンピューティング、インターネット金融などの分野に導入する、新たな法律の研究を行うと宣言したそうです。

香港のAmple Capitalのアセットマネジメント担当のAlex Wongは、中国政府によるデータの収集と使用に対する規制の強化は、とりわけ大きな打撃につながると指摘する。

アリババやテンセントのようなテクノロジー大手は、顧客のニーズに合わせた広告や位置情報サービスを収益源としており、新たな規制が障害となるからだ。 (出所:Forbes)

forbesjapan.com

 Forbesによれば、こうした事態の背景をアナリストたちは、政府がこの分野の規制をさらに強化し、データのセキュリティを重視し、すべての分野に平等な機会を与えようとしていることが挙げているといいます。

北京の調査会社PlenumのFeng Chuchengは、「中国のテクノロジー企業に対する規制は、数カ月で消えるようなものではない」と語る。

Fengは、2012年に始まった中国の反腐敗キャンペーンが、一時的なもので終わらず、9年目に突入していることを例に挙げた。 (出所:Forbes)

 もっともらしい説明に聞こえますが、あながち、そういうことなのかもしれません。

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 強権的にみえる中国ですが、一方、国内はどうなのでしょうか。

 大企業による優越的地位を利⽤した事例が散見されるようになっていると感じます。AIとかクラウドとか成長が期待される案件が狙い打ちされているのでしょうか。

www.businessinsider.jp

 こうしたことに過熱しているようですが、現実の社会にどれだけの貢献があるのでしょうか。

 

 地球温暖化は進み、異常気象が頻発するようになり、現実の問題としてかなり深刻化してきています。大量生産・大量消費に疑問が投げかけられますが、データを利活用して効率的に販売することばかりに精を出していることはないでしょうか。

 これではいつまでも、社会課題が解決されることはないのでしょう。コロナがいつまでも収束しないことと同じように感じてしまいます。

 モラルが低下していることはないでしょうか。危機感だけが募るようになってきました。

 

【影響及ぼす中国の規制強化】その狙いは何なのか、低迷する投資グループの株価

 

 中国の露骨さと徹底ぶりには脱帽します。今度は、オンライン保険への監視が強化されるようです。

「次の締め付け標的か」とブルームバーグが報じています。

 それによると、規制当局は企業と地方当局に対し、不適切なマーケティングや価格設定の慣行に歯止めをかけ、ユーザーのプライバシー保護を強化するように命じたといいます。これらの問題に自主的に取り組むよう各企業に促し、順守できない場合は「厳しい罰」を受けることになるとしているそうです。

 「過ぎたるは猶及ばざるが如し」、行き過ぎは許さず、適正をとり戻そうとしているのでしょうか。

www.bloomberg.co.jp

 今回の広範な命令は、保険テクノロジーの新興企業ウオータードロップ(水滴)や中国平安保険(集団)が支援する事業など一部の上場企業を対象にした措置を越える内容だとブルームバーグが指摘しています。

 

 中国のアリババ・グループで起きた女性従業員へのセクハラ問題が明らかになったことを受けて、中央規律検査委員会がビジネス上の飲酒に関わる「不快な」文化を非難したといいます。

 中央規律検査委員会は、ウェブサイトで公開した通達で「この事案では、労働環境における不健全な動き、飲酒の不快な文化、問題報告時の透明性の欠如が、暗黙の決まりとして根深くまん延していることを明らかにした」と指摘。酒を飲むことを強制するといった「暗黙の決まり」を打破するよう呼び掛けた。 (出所:ロイター)

jp.reuters.com

 ロイターによると、張勇CEOは、性的暴行を加えたとされるマネジャーを解雇し、性的嫌がらせ防止に向けた制度を確立すると表明したといいます。

 古来からある文化でも、行き過ぎがあれば、切り込んでいく規制当局の徹底ぶりには少々驚きます。

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 こうした中国当局の規制の影響なのでしょうか、ソフトバンクグループの株価がさえないといいます。

 SBGの孫社長が、「世界のAI技術の革新の中心は2つあって、米国と中国であると思っています。ですから、今後とも中国におけるAI技術そしてビジネスモデルの革新はどんどんと続いていくんだろうと強く信じております』と述べたといいます。

「中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じております」。(出所:TechCrunch)

jp.techcrunch.com

 当局の狙いは何なのでしょうか。表向きには、「新たな秩序」、規律ある業界、適正な成長を求めているということでしょうか。米国を追い抜こうと思えば、同じような市場である必要性はなく、米国が抱えるであろう問題に早めに対処、規制管理しておこうということなのでしょうか。

中国当局は今年に入ってフィンテック分野に対する規制を強化。その後、教育テクノロジーや配車サービス、短編動画プラットフォームの他、最大手テクノロジー企業の一部に対しても締め付けを強めている。 (出所:ブルームバーグ

 あって便利ではあっても、なくてはならないものかといえばそうではないのかもしれません。合理性があるのかもしれません。

 行き過ぎ、過剰に走る米国と規律を求める中国との構図がしばらく続くのでしょうか。それはそれでバランスがとれていいことなのかもしれません。

 それにしても、この規制強化で、SBGの株価が低迷しているなら、SBGにとっては迷惑な話なのでしょう。こうしたことも狙いだったりするのでしょうか。

 

【エアコンにも波及する半導体不足】米TIの売上見通しが予測を下回ったことは変調の兆しなのか

 

 半導体不足がエアコンの供給の遅延や減産につながっているといいます。

パナソニック三菱電機富士通ゼネラルといったエアコンメーカーが、 半導体不足の影響でエアコンの供給不安や、納期の遅れを家電量販店に伝えているといいます。

www.zaikei.co.jp

 半導体不足、その影響範囲が拡大しているのでしょうか。

 

 

 米半導体メーカTIテキサス・インスツルメンツの7-9月(第3四半期)の見通しが、売上高で44億-47億6000万ドル(約4850億-5250億円)と、一部のアナリスト予想を下回る水準だったといいます。

 それを受けて、半導体業界の前例のない投資急増が行き過ぎてしまい、数年先に大規模な生産能力を持っても需要の減退で利益に打撃を受けるとの懸念が強まっているとブルームバーグはいいます。

www.bloomberg.co.jp

 それによると、TIの4-6月(第2四半期)売上高は41%の大幅増加だったそうですが、7-9月期の見通しが困惑を招き、アナリストたちはTIが楽観的でない理由や、景気循環型産業として知られる同業界の最初の減速の兆候なのかどうかについて会社側に質問を浴びせたといいます。

これに対し経営陣は、需要のピークや、現在のレベルの成長が持続可能かどうかは予測できないと警告。

ラファエル・リザルディ最高財務責任者(CFO)は、「われわれの仕事は将来の予測ではない。会社が何にもでも対応できるよう準備することであり、それを行った」とインタビューで説明。「今回は違うと主張する人もいるが、それは危険な議論だ」と述べた。 (出所:ブルームバーグ

 TIは何か変調の兆しを感じとっているのでしょうか。

 

 TSMC台湾積体電路製造の創業者である張忠謀氏が先月7月16日、世界各国が取り組む自国内で半導体サプライチェーンを再構築する動きについて、コストが膨らみ、自給自足の達成もおぼつかなくなると警鐘を鳴らしたといいます。

www.bloomberg.co.jp

「過去数十年に及ぶ自由貿易半導体技術の発展を大きく後押しした」と指摘。「技術の複雑化がサプライチェーンのオフショア化につながった」とし、「時計の針を戻そうとすれば、コストは上昇し、テクノロジーの進歩は鈍化するだろう」と語った。 (出所:ブルームバーグ

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 そのTSMCが2023年にも、日本で半導体生産を始める方向で最終調整に入ったといいます。ブルームバーグによれば、主としてソニーグループのイメージセンサー向け半導体を生産する見通しだといいます。

www.bloomberg.co.jp

 計画実現に向けては、日本側がTSMC補助金などの条件を十分に提示できるかどうかという面もあり、課題は残っているといいます。

 日本の他にも米国やドイツで生産との報道も流れています。いずれにせよ、半導体不足の解消は、TSMC次第ということなのでしょうか。

 

【GX グリーントランスフォーメーション】パナソニックのGXとDXは誰のためか

 

パナソニックが、SaaS型業務アプリケーション群「現場最適化ソリューション」を発表しました。

 この「現場最適化ソリューション」は、本事造る(製造)、運ぶ(物流)、売る(流通)のサプライチェーン領域の課題を解決するアプリケーション群だとパナソニックは説明します。

news.panasonic.com

 IE(インダストリアルエンジニアリング)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の掛け合わせなのでしょうか。

 パナソニックによると、製造、物流、流通の現場に存在する多くの課題をネットワークカメラなどのエッジデバイスを通じてタイムリーに可視化し、コンサルタントが分析を行い、業務プロセスの標準・基準値を決めるといいます。標準値に比べて長い作業時間、工数、滞留時間などのムダを割り出し、ギャップを取り除いた上でAIがアシストする新たな計画に基づき最適な業務プロセスを実行することで、現場の業務効率化を可能にするといいます。

 

 おもしろい取り組みだと思いますが、このビジネスにニーズがあるということは、それだけ現場力、現場の改善力が低下しているということなのでしょうか。

日本でDXを導入する際によくあるのが現場の業務プロセスの定義や標準値を策定しないまま、デジタルだけを導入するパターン。

これでは真の経営課題を把握できてない

そのままデジタル化してもシステム導入の効果が明確にならず、現場の改善も期待できない。 (出所:Impress Watch

www.watch.impress.co.jp

 ほんとうなのだろうか。IEトヨタの生産方式を学ぶことで知り得る知識もないままに、現場の効率化、デジタル化を進めているのでしょうか。

 日本の生産性の低さが問題視されるのだから、こうしたニーズはあるのかもしれません。その解決のために、パナソニックがこのビジネスを行なう意義があるのかもしれません。

 が、パナソニックにはもっと大きな役割を担って欲しいとも感じます。

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(写真:パナソニック

地球環境問題に正面から向き合う

 GX グリーントランスフォーメーションについて、パナソニックの楠見新社長は、「理想の社会」の実現に向けて社会課題に正面から向き合い、人々の現在と未来の不安の払しょくに貢献していくことといい、その中で、地球環境問題には最優先で取り組むといいます。

news.panasonic.com

 パナソニックという会社が目標をもってカーボンニュートラルに取り組むことは当然のこととして、お客様のカーボンニュートラルにどう寄り添っていくのでしょうか。

 お客さまとは、企業でもあろうし、また、それは個人だったりするのでしょう。

 

パナソニックが、水素を活用して工場で使う電力を全て再生可能エネルギーで賄う世界初となる取り組みを進めている」と、ブルームバーグが報じています。

 それによれば、2022年春から開始する予定の草津工場での再エネ化の実証を、23年度までに商用化、将来的には中国や欧州でも販売し、30年に約3000億円の売上高を見込んでいるといいます。

パナソニック滋賀県草津市にある家庭用燃料電池エネファーム」を生産する工場に導入する自家発電システムは、水素を使って発電する純水素型燃料電池太陽光発電、余剰電力を蓄えるリチウムイオン電池を組み合わせる。 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

 企業向けだけなのでしょうか。個人向けのソリューションサービスはないのでしょうか。個人としても、こうすればカーボンニュートラルの実現に貢献できるという青写真をパナソニックが提示してくれればとつくづく感じます。

 胡散臭いメーカが提案するより、自分たちでそうした製品を持ち、なおかつそのものづくりできるメーカが提案してくれた方がより説得力があるように思えます。

  楠見新社長に期待してもいいのでしょうか。

 

【危機的な地球温暖化】覚醒するか国内環境技術、脱炭素技術は国産であるべきか

 

 国連の地球温暖化に関してのIPCC 6次評価報告書が公表されました。

人間の活動が地球を温暖化させてきたことに疑う余地はない」と断定しています。

 国が、地球温暖化対策計画案をまとめています。

 2030年度の温暖化ガス排出量を13年度比46%減らす目標に向けて「国民各界各層における意識の変革と行動変容」が必要だと強調しているといいます。

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(資料:経済産業省「日本のNDC(国が決定する貢献)(案)」

 排出量を家庭部門で66%、産業部門は37%、運輸部門で38%減らすといった内訳が示されています。

 

 国は、地球温暖化対策計画案をまとめるのと並行して「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の構成」についても検討を進めているようです。この中には、国土交通省が7月にまとめた「国土交通グリーンチャレンジ」が含まれ、自動車の電動化に対応した交通・物流・インフラシステムの構築が取り組み項目にあがっています。

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(資料:経済産業省「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の構成(案)」

 米国、欧州、中国それぞれでこの先、各国の目標に従い、電動車への移行が進められ、ゼロエミッション車が市場でマジョリティを形成していくようになるのかもしれません。

 

 こうした環境を鑑みれば、脱炭素のキーデバイス重要部品の国産化が求められているように思えてなりません。他国依存であれば、脱炭素計画の進捗を危うくしないでしょうか。

 エネルギーは今まで化石燃料に依存し、輸入に頼り、価格をコントロールもできず、地政学に左右されてきました。脱炭素においてはこうしたリスクを負うことがないようにすべきなのではないでしょうか。

 世界的なEV化の流れにあって、各国は自国内でのバッテリー生産にシフトし始めているようです。ブルームバーグによれば、米フォードは5月、韓国の電池メーカー、SKイノベーションと米国の2工場でEV用電池を共同生産することで合意、独フォルクスワーゲンも欧州だけで6つの電池工場を建設する意向を明らかにしているといいます。国内では、トヨタパナソニックの合弁電池会社が、「電池は日本のものづくり最後の砦」として原価低減を強力に進めるといいます。

 中国エンビジョングループ傘下の車載電池大手のエンビジョンAESCが、茨城県内に新工場を建設するといいます。日本経済新聞によれば、投資額は500億円。生産能力は最新の電気自動車(EV)で7万台分からはじめ、将来的に20万台分まで高めるそうです。

www.nikkei.com

 工場は2024年から稼働し、日産自動車のほか、自動車メーカー各社へ供給するといいます。

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(画像:日産自動車

 エンビジョンAESCの前身は、AESC社、2007年に日産とNECによって、車載用リチウムイオンバッテリーの設計製造会社として設立され、その後に、中国エンビジョングループによって買収されました。

 

 脱炭素、これまで開発してきた環境技術が試されるときなのでしょう。当初期待していた時から大きく遅れてのことなのかもしれません。技術開発に停滞はあったのでしょうか。挽回が求められるのでしょう。そして、今この時代にあった生産戦略、サプライチェーン構築が求められるのでしょう。

 

「参考文献」

www.nikkei.com

【脱炭素】カーボンリサイクルと鉄鋼メーカ

 

 ここ最近、急激に地球の気候に変化が起きているという見方が正しいのでしょうか。

 イギリスの気候は、すでに「気候変動の影響を受けている」との最新報告書が公表されたとBBCが報じています。

 それによると、わずか0.1度や0.2度の気温上昇は、巨大な変化につながり得るそうです。特に異常気象の頻度や激しさにつながり得るということで、多くの人はこのことに気付いていないといいます。

気候変動は未来の話だと思っている人が多いが、気候変動がすでにイギリスの状況を変えていると、今回の報告書が証明した。

温暖化が進む中、熱波や洪水といった異常気象は今後さらに増えていく」 (出所:BBC

www.bbc.com

 BBCによると、科学者らは、今後も地球温暖化が進み、各国政府が炭素排出量の削減に失敗すれば、異常気象は悪化すると警告しているそうです。

 

 

 急激に悪化する地球の天候を思えば、多量に温室効果ガスを排出する産業の脱炭素化は急務です。しかし、それは大きな経済的な転換となり、痛みを伴うものになるのかもしれません。

 国内では、鉄鋼メーカが脱炭素に必死になって取り組み始めているように見えます。

 これまで二酸化炭素を排出することに何のためらいもなく、それを是として技術開発があったのですから、脱炭素とはまさに天地がひっくり返るほどの衝撃なのかもしれません。極端に言えば、バリューチェーンを一から作り直していかなければならない、そのくらいのインパクトがあるのでしょう。

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二酸化炭素、カーボンリサイクル

 現在の高炉による製鉄では二酸化炭素の発生は避けることはできそうにもありません。根本的にプロセスを変え、二酸化炭素が発生しないようにしていくか、それとも、二酸化炭素の排出をやむなしとして、全量回収して何か別なものに転用していく、そのどちらかを可及的速やかに実用化していくことを求められているのでしょう。

 日本製鉄によると、製鉄所などから排出されるCO2を分離・回収し、メタネーション技術によって製造されたカーボンリサイクルメタンが、船舶のゼロエミッション燃料となりうることを確認したといいます。

www.nipponsteel.com

生成した合成メタンを船舶が海上輸送に利用することで、臨海立地であり、原材料の輸入や鉄鋼製品の国内外の輸送のほとんどを船舶で運搬する製鉄業が、鉄鋼サプライチェーン全体でのCO2削減に貢献できる意義は大きいと考えています。 (出所:日本製鉄)

 そうはいっても製造するための設備投資、コスト等の課題があるのでしょう。高炉から排出される二酸化炭素全量を転用できるのでしょうか。おそらく他の転用先、需要開拓の必要性もありそうです。

 

水素

 高炉での還元(酸素除去)に水素が利用できるようになれば、二酸化炭素の排出は無くなるといわれます。

 この水素還元製鉄への転換が期待されますが、これもハードルが高いといわれます。

日鉄は研究開発に5000億円規模、設備の実用化には4兆-5兆円規模がかかると試算。JFEスチールは30年度までに約1000億円の研究開発費が必要と読む。(中略)

最終目標である100%水素還元には、水素の吸熱反応で奪われる熱の補償など多くの課題を解決しなくてはならない。 (出所:ニュースイッチ)

newswitch.jp

脱炭素には多額の費用を要するが、生産コストの低減や付加価値向上にはつながらない」と、ニュースイッチはいいますが、「付加価値」とは一体何なのでしょうか。

付加価値とは、企業がその事業活動自体から生み出す、付け加えた価値のことを言います。

 脱炭素は付加価値になり得ないのでしょうか。脱炭素はコストではなく、コストアップ分を含めて付加価値という意識の変革が必要なのかもしれません。

 

循環経済

 二酸化炭素を排出する高炉を介さず、電炉と呼ばれる設備でも鉄を作ることができるといいます。

 しかし、原料が鉄スクラップになり、大量の電力が必要になります。十分な鉄スクラップを確保できるのでしょうか。二酸化炭素を排出しない電力の確保はできるのでしょうか。

 ハードルは高そうですが、実現できれば、あるべき循環経済サーキュラーエコノミーの姿があるように思います。

適量生産、最適地生産

 ニュースイッチによれば、鉄鋼メーカ各社は50年までの道のりと足元の需要対応を勘案し「複線的なアプローチが欠かせない」といっているそうです。

 これまでは、収益、成長をベースにして事業計画が検討されてきました。しかし、そのままでよいのでしょうか。それと同列で、二酸化炭素の排出をベースに事業計画を検討する必要があるのかもしれません。その排出を最小化しようとすれば、必要以上に作らない、過剰な成長は追わないとの姿勢が必要なのもかもしれません。

 多量に二酸化炭素を排出しなければならない鉄鋼メーカ、いっそのこと、二酸化炭素ビジネス、「カーボンリサイクル」に活路を見出し、それを成長路線に転換していくのもよいのではないでしょうか。

 逆転の発想が求められていそうな気がします。それによって、また循環経済 サーキュラーエコノミーの実現にも近づきそうです。

 

【規制強まる中国 2】容赦ないテクノロジーへの締め付け テンセントへの口撃

 

 いいのやら、悪いのやら。 中国のIT大手のテンセントが、未成年者に対するゲーム時間を制限する方針を発表したといいます。

 ブルームバーグによれば、平日は1時間、休日は2時間までとするそうです。また、12歳未満の子供にはゲーム内の購入も禁じる計画といいます。具体的には踏み込まなかったものの、12歳未満に対しては業界全体でゲームの全面禁止を探る可能性も提案したといいます。

www.bloomberg.co.jp

 新華社通信系の国営紙・経済参考報が、ゲームを「精神的アヘン」「電子薬物」だと批判したことの影響なのでしょうか。テンセントの下落が止まらないようです。

 

 アリババグループの4-6月の売上高の発表があったといいますが、ここ2年で初めて市場予想を下回ったといいます。

 インターネット事業に対する中国当局の取り締まり強化の影響が表面化したとブルームバーグは報じます。

クラウドから電子商取引まで主要な事業分野全てで成長が鈍化し、政府が次々と打ち出す規制が事業拡大を抑制し、企業負担を増やしているとの懸念が強まった。 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

最高経営責任者(CEO)のDaniel Zhang氏は、アリババのエコシステム全体で4~6月期にグローバルなアクティブコンシューマー数は11億8000万人に達し、前期から4500万人増加したと述べた。そのうち、9億1200万人は中国の顧客だ。アリババは長期的な成長にフォーカスし、事業に投資しているとZhang氏は言う。 (出所:ZDNet Japan

 CEOはもう穏当なことしか述べないのかもしれません。危険を冒して、当局に目を付けられては元も子もありません。 

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テンセント・ホールディングス(騰訊)の創業者、馬化騰(ポニー・マー)はここ9カ月間でアリババグループやアント・グループを創業した馬雲(ジャック・マー)氏より大きく資産を目減りさせている。 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

 テンセントはアリババと比べ、当局に抗うことなく、うまく切り抜けているように見えていたとブルームバーグはいいます。

 アリババには多額の罰金が科せられ(約3060億円)、テンセントへの口撃は、はまるで違った罰金が科せらているようです。

 

 

 中国のテクノロジー企業に対する締め付け強化は、どんな実利を生み出すのでしょうか。投資家を始め、これに関わった多くの人たちが痛みを感じているのかもしれません。

 無謀な行為とみるのが普通なことに思われますが、当局には何か違った大義が存在するのでしょう。

 成長が見込まれるテクノロジーを擁護するより、ものづくり、製造業を擁護する方が遥かに価値があるということなのかもしれません。その方が、国内外を問わず、より影響力を行使できるということなのでしょうか。 

ソフトバンクグループがアリババ始め、その中国に多額の投資をしています。傾注し過ぎることはリスクが伴うことでもあるのでしょう。そうはいっても、こうした事態になっても、まだ中国から撤退する理由にはなっていないようですが。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com