Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

株価は続伸、企業活動は減速、モノは活発に動き、コンテナ船が不足、物流は目詰まり

 

 米国株式市場を眺めていると世界経済にはリスクがないのではないかと勘違いしそうになる。S&P500もナスダックもまた史上最高値を更新したという。パウエルFRB議長が年内の資産購入の段階的縮小テーパリング開始を示唆したというが、テーパリング終了後も、直ぐには利上げを行わないとしたことでセンチメントが大きく改善したがその理由のようだ。

 

 ただ米国も中国も経済指標は万全とはいえそうにもない。

「米国の企業活動は8月も引き続き拡大ペースが減速し、8カ月ぶりの低水準となった」とブルームバーグはいう。原材料や労働力の不足、新型コロナウイルス感染の急拡大が背景にあるそうだ。

 中国の経済回復も8月は横ばい状態となっているという。ブルームバーグによれば、最近の規制面での締め付けや新型コロナウイルス感染拡大に対する当局の厳しい対応、内需の弱さを受け、成長の勢いが足踏み状態にあることがうかがえるという。 

www.bloomberg.co.jp

半導体不足や物流の目詰まり、原料高など、世界景気回復の足かせとなっている制約も続いたと指摘する。

一時的な現象にとどまるはずだった世界的なサプライチェーンの混乱は、来年に入っても続きそうな気配だ。新型コロナウイルスのデルタ変異株が急拡大しアジアの工場生産は一変、輸送も妨げられ、世界経済に新たなショックとなっている。

主要部品の不足と原材料・エネルギーコストの上昇に見舞われている各メーカーは、輸送船のスペース確保に向け入札競争への参加を余儀なくされており、その結果、運賃が過去最高水準に高騰している。一部の輸出業者は値上げ、あるいは単に輸送を完全に取りやめるようになっている。 (出所:ブルームバーグ

www.bloomberg.co.jp

 こうした状況下、海運業にも注目が集まる。

 海運の運賃動向を示すバルチック指数が11年ぶりの高値圏で推移するようになり、海運の需要の強さの証左になっている。ただ足下で、状況が直ぐに改善されることはないようだ。

 ブルームバーグによれば、現実、アジアから欧州にコンテナを運ぶコストは昨年5月に比べて約10倍となり、上海からロサンゼルスへの輸送費は6倍余りに膨らんでいるそうだ。

 

「海運大手各社は数カ月にわたりコンテナと港湾での船の停泊場所の欠如に悩まされてきた。そして今、船自体の不足が業界の新たな関心事となっている」と日本経済新聞はいう。

 一方で、海運には苦い経験があるそうだ。

「過去10年、業界は逆の状況に苦しんでいた。船舶の余剰で採算性が悪化して、韓国の韓進海運が経営破綻し、業界再編が進んだ」、「世界的に需要が増えているとはいえ、コンテナ船の過剰発注を懸念する業界関係者も存在する」と日本経済新聞は指摘する。

www.nikkei.com

 そして、業界にはもう一つ慎重になる理由があるという。それは、今後導入される環境規制のもとで、どのようなタイプの船舶を発注すべきかという問題があるというのだ。

23年から船舶のエネルギー効率性に関する規制が世界的に導入されるため、液化天然ガスLNG)を燃料とする船への関心が高まっている。だがこのタイプの船が新規発注全体に占める割合は19年10月から変化していない。

LNGは伝統的な燃料に比べ温暖化ガスの排出量が約4分の1少ないが、実質的に25年間温暖化ガスの排出量が固定化される点で議論を呼んでいる。環境保護活動家は、アンモニアや水素などのクリーン燃料に一気に転換するよう海運業界に求めている。 (出所:日本経済新聞

 他方、商船三井は、自社で掲げる「2050年までにネットゼロ・エミッションを達成する」ことを目指して「クリーン代替燃料の導入」戦略を策定、2030年までにLNG燃料船を約90隻投入する予定だという。また、インドの鉄鋼メーカ タタスティール社とGHG温室効果ガス排出削減に向けたばら積み船の実現を目指し協業を行うという。積極路線なのだろうか。

f:id:dsupplying:20210829152918j:plain

 異常気象が世界各地で常態化し、気候危機が叫ばれ、「サスティナビリティ」に注目が集まる。

 しかし、今、海運を取り巻く環境を見えれば、以前よりもモノがあふれ、そのモノを運ぶために、多量の船を必要とし、多量の二酸化炭素を排出し続ける。このままでいいのだろうか。

 世界がミニマルを標榜しない限り、とてもでないが気候危機は止まりそうにもない。