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【SDGs豆知識】3R循環型社会からサーキュラー・エコノミーへ

 

 今まで、3Rからなる循環型社会を目指してやってきた。

 その背景には、有害物質の環境への漏洩や廃棄物の最終処分場の行き詰まり問題など、この活動がスタートした当時の問題があってのことだった。循環型社会を目指した当初のことを思えば、それはそれなりに効果があったことだとの分析もある。最近ではもうダイオキシンの話は聞かなくなったし、埋立地のごみの問題もあまり耳にしなくなった。3R活動もそれなりに定着し、リサイクルの仕組みも整ったように見えたが、近頃では、新たな問題が顕在してきている。

  

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3R循環型社会の限界

 今までは、国内問題に絞って対応していたが、世界では、海洋プラスチックが問題視され、気候変動による温暖化が深刻な状況になり、その緩和と適応が話し合われるようになった。

 そうした視点からすれば、国内で効果があったことが、世界の動きからは乖離し、時として批判の対象にまでなっている。全体最適を図ったつもりであったが、時間経過とともにシステムが風化、新たな潮流に適合しなくなってしまったといことであろう。

 

 

 

 昨年、EUで誕生した新政権は、「グリーンディール」を政策の中心に掲げ、2015年に採択された「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」の社会実装を始める準備が着々と進んでいるように見える。使い捨て、ワンウェイプラスティックの使用禁止などが、その例として挙げることができよう。

 

 批判を受けやすくなった理由のひとつに、こうしたEUの政策の影響があるようだ。国も、EUの動向を気にかけ、調査を行っていたが、ここに来てようやく3R政策の見直し検討が始まった。

 経産省で「循環経済ビジョン研究会」が立ち上がり、「循環経済ビジョン」策定に向けた検討が始まっている。

 

リニア経済からサーキュラー・エコノミーへ

 ⼤量⽣産・⼤量消費をベースにした⼀⽅通⾏の経済活動を今まで続けてきた。この活動の上に、3Rによる資源循環のループを取り入れ循環型社会としてきた。

 これに対し、サーキュラー・エコノミーは、「資源投入と廃棄物発生を最小化し、循環させ、経済成長と環境負荷低減を同時に達成する」ことを目指す。これまでの「資源を搾取し、使用し、廃棄」するリニア型社会から脱却し、最新テクノロジーやバイオ素材技術といった先端テクノロジーをそのしくみに融合させていく。

 

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(資料出所:経産省「資源循環政策の現状と課題」

 

「循環型社会先進国」と自負していたが、その一方で、世界のメガトレンドからの乖離もあり、変化に適応した仕組みの変更が必要になってきた。

 

日本版サーキュラー・エコノミーのコンセプト

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(資料出所:経産省「循環経済の目指す姿(案)」

 

日本の強みである3Rの既存システムを活かしつつ、今まで生み出すことのできなかった付加価値を高めることが求められる。

 

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(資料出所:経産省「循環経済ビジョン策定に向けた検討」

 

仕組みを見直そうとも、企業が自ら主体的に動かなければ、後進国化し、競争優位性を毀損するリスクがあるとの指摘もある。

 

3R循環型社会での課題

 「循環経済ビジョン」の検討が始まり、国も3R循環での課題を認識、その強化を図っていくことになろう。静脈産業と呼ばれる廃棄物処理業界での限界、廃棄物処理法にもとづくリサイクルシステムでの付加価値創出の低さやモノの流れの問題などが議論の俎上にあがる。

 中国での輸入制限による低品質スクラップの国内滞留と処理の問題に見られる現行リサイクルシステムの限界、実際、鋼鉄スクラップでは、不純物が混入、成分不良によるロットの廃棄にまで発展しているという。

 廃棄物関連の廃棄物取引など情報処理システム技術の開発の問題もある。

 

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 廃棄物の排出を最小化していくためには、大量消費を促す小売のあり方や、使い捨てからリユースへと導く消費者心理への訴求なども課題になる。

 欧米を中心に拡大する機能やサービス提供をする「コト売り」が、法整備の遅れで、国内企業の出遅れにつながり、利益の源泉が未だ「モノ売り」のままである。

 消費者が環境配慮製品を購入しようとの意識は高まるが、「価格が高い」、「エシカルかどうかわからない」ことが理由になって購買を阻害し、大きな変化に至らない。

 

 

  

サーキュラー・エコノミーを目指して

 今ある3Rの仕組みを活かしつつ、サーキュラー・エコノミーを目指すには、素材循環ループの刷新や新たな小売トレンド、また、これらを組み合わせたサプライチェーンの再構築が必要になる。 f:id:dsupplying:20200204053843p:plain

(資料出所:経産省「資源循環政策の現状と課題」

  

 サーキュラー・エコノミーでは、今まで製品や分野別の個別最適になっていた資源効率を全体最適化へと導く。分散していた情報が統合され、製品や業界のカーボンフットプリントなども導きやすくなるであろう。

 3R活動が根付き、消費者の環境意識が向上したが、企業や製品の環境性能への理解には至っていない。企業が製品の環境性能を正しく伝え、購買の付加価値を創出していくことも必要になる。

こうしたことを前向きに捉え、環境と経済が両立した新しい循環型の経済システム「サーキュラー・エコノミー」の構築を目指すことが急務と国も認識したようだ。 

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  SDGsは、目標12「つくる責任、つかう責任」で、「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」ことを求めている。

 サーキュラー・エコノミーで目標達成に近づくのかもしれない。