Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

結束する欧州、対立する米中、それに適応していくビジネスもある

 

 香港のことが気になる。香港国家安全維持法が制定され、同法違反容疑で逮捕者が出るまでの事態になってきた。

 20年近く、仕事を通して香港と関わりがあった。ニュースだけを見ると、再び香港を訪問しようとの気にあまりなれない。知り合いも多くいるが、声を掛けにくく連絡できずにいる。

 

www.jiji.com

 

 

 

 米中対立が激化する。報復合戦、何か事を起こしては互いに報復措置を繰り返す。

 

 米政府が、香港で製造され米国へ輸出される製品について、「中国製」と表示するよう義務づけると発表した。香港で国家安全維持法が施行されたのに伴う香港への優遇措置の廃止の一環だと日本経済新聞が伝える。関税は中国本土と同率になり、米政府が中国に課す制裁関税が香港製の物品にも適用されることになるという。

 

 香港は変わっていってしまうのだろうか。

 

r.nikkei.com

 

 中国のレアアースの輸出量が、4月以降、コロナ感染拡大の影響で減少しているという。

 米国はレアアースの8割を中国に依存している。今後、中国が輸出制限に動くことも考えられると共同通信は指摘する。

 

軍事を含むハイテクで中国産に依存する米国への輸出が滞れば、米中対立の新たな火種となりそうだ。

中国がトランプ政権による中国企業排除の報復手段に使う可能性もある。 (出所:共同通信

 

this.kiji.is

 

 こうした報復合戦は、サプライチェーンに影響があるのだろうか。

 

 「もはや中国が世界の工場である時代は終わった」と、アップル製品を生産するFoxconn鴻海精密工業)の劉揚偉会長がコメントしたという。

 貿易摩擦が激化、関税問題が現実化となれば、産業界は動くしかない。

 Foxconnは、米国向け商品の生産を中国から東南アジアやその他の地域にシフトしているとブルームバーグが伝える。

 デバイスメーカーも生産拠点を中国から離れ多様化するようになり、中国に生産を頼っていたiPhoneは中国国外でも生産できるようになったという。

 これは、中国中心の電子機器サプライチェーンが長期的には細分化されていくことを示唆しているとブルームバーグは指摘する。 

  

「China’s Days as World’s Factory Are Over, IPhone Maker Says」(Bloomberg)

 

  日本経済新聞は、アップルは従来のアイフォンの生産委託体制を見直そうとしているという。

 今まですべて台湾勢に発注し、大半を人件費の安い中国で作らせてきたが、今後は大きく二つに分ける構想が固まりつつあると指摘する。

 

この構想では、世界販売約2億台のうち、中国で売る約3000万台は中国メーカーを中心に作らせる。

担い手として有力視されるのがラックスシェアを中心とした「新・中台3社連合」だ。

中国市場以外で売るスマホについては生産地の中心をインドにする。

ペガトロンは7月、インド進出を決めた。鴻海やウィストンも相次ぎ、インドへの追加投資を計画。鴻海は既に高価格帯のiPhone11の生産にも乗り出したという。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com

 

 日本経済新聞は、こうしたアップルの委託生産体制見直しには多くのメリットがあると解説する。

 一つは中国リスクの回避、そして、もうひとつは調達価格の低減だという。

 中国系EMSを中心とした体制で中国向け商品の生産を維持すれば、一定程度中国への顔向けはできる。その一方で、一極集中のリスク回避と高騰した中国の人件費抑制を目的に中国外の生産を拡大する。

 この危機上に乗じて、両者に顔を立てながら実行するアップルの強かさといってもいいのかもしれない。

 そのアップルは、サーキュラー・エコノミーを推し進め、レアアースの回収を独自に進める。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 香港上場子会社のFIH Mobile Ltd.が、8月7日の決算発表で、Huaweiが中国で人気を博している一方で、米国の制裁を受けて他の地域では期待外れと述べたとブルームバーグが伝える。

 同社のもう1つの主要顧客であるXiaomi(小米)は、中国とインドの緊張が高まる中、インド市場で反発に見舞われているという。

 

☆★☆

 

  アグネス・チョウ(周庭)さんが、香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕され、その後保釈された。

 10代から政治活動に身を投じてきた若手の民主派活動家の一人だという。AFPは、中国当局が、今、この世代の活動家らを沈黙させようとしているという。

 

 11日夜に保釈された周氏は記者団に「当局に対し、このようなばかげた政治的訴追の停止を求める」と述べた。

長きにわたって中国本土の独裁的指導者らやその香港出先機関との対立を繰り返してきた経歴に、今回の逮捕が新たに加わった。 (出所:AFP BB NEWS)

 

www.afpbb.com

 

 政治手法が陳腐化してきていないであろうか。力による支配には限界がありそうだ。

 そうした影響を回避し、強かにしなやかに生き延びようとする人たちがいるようにも見える。 

 

 

 

 欧州では、7月下旬、EU 欧州連合が、域内経済の立て直しのため、総額7500億ユーロの「復興基金」を創設することで合意したという。

 

 ロイターによれば、これまでギリシャ債務危機やイタリアに反EU的なポピュリズム政権が誕生したことなどで、投資家は何度も、ユーロ圏解体が近づいているとの恐怖にさいなまれてきたという。

 今回の復興基金の合意は、約70年にわたる欧州統合の取り組みにおける画期的で、未曽有の行動との評価がもっぱらだとロイターは指摘する。

 

投資家は拍手喝采を送った。

欧州の財政統合に向けて重要な一歩を踏み出したことになり、債務危機や南北対立に長年悩まされてきたユーロ圏の金融資産にとって、プラス方向への大きな転換点になったとみなされたからだ。

実際、ユーロ/ドルは基金創設合意を好感し、1年半ぶりの高値を付けた。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

 これはEUの奇跡であり、理想像でもあると、Forbesはいう。

 

「70年近くにわたる欧州統合の歴史で前代未聞の結束」

 ポピュリストや支出を渋る頑固者を含む27加盟国のリーダーの意見をまとめるまでに90時間かかった。

そんな中、長きに渡ってリーダーとして外交手腕を磨いてきた女性が3人いる。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長、欧州中央銀行クリスティーヌ・ラガルド総裁だ。

この3者を合わせた力は強大だ。

この雑多な群衆を7500億ユーロ(約93兆5000億円)の復興基金案で合意させる上では、3人のリーダーシップスキルが大きな役割を果たしたことだろう。 (出所:Forbes)

 

forbesjapan.com

 

 欧州は長い対立の歴史に終止符を打ったのだろうか。

 

 Forbesによると、メルケル首相は記者会見で「これは容易でなく、何日間もかかった」と認めたうえで、次のように語る。

私たちがそれぞれ別の立場にあることも示された。

しかし、私にとって大事なのは、私たちが最終的に合意に達し、皆が決定内容に納得していることだ (出所:Forbes) 

 

 主義主張は、それぞれの立場によって異なる。違いがあって当たり前のことだ。

 その違いを力によって征服しようとすることは時代錯誤が甚だしいということでもあろうか。

 

 そろそろ政治も変わらなければならないということなのかもしれない。

  

 

「関連文書」

www.afpbb.com

 

gigazine.net

 

f:id:dsupplying:20200816102208j:plain

 

レジ袋とバイオマスプラスチックスを考察 環境への影響は

 

 レジ袋が有料化されたり、石炭火力発電など石炭政策が変化してきた。ここ最近、エコフレンドリーな施策が目に付くようになってきた。

 その火付け役である小泉環境相がたびたびメディアに登場し、その背景や経緯を語っている。

   

 「.....なぜ(レジ袋の有料化が)始まったのですか?」と問われた小泉環境相は、杉村太蔵氏との対談で「きっかけ」と答える。

 

目的が違うんです

目的は、レジ袋有料化をきっかけに、世界的な課題になっているプラスチックに問題意識を持ってもらうこと。

杉村さんも「有料化して何の意味があるんだろう?」と疑問を持たれた時点でプラスチックゴミのことを考えているとも言えますよね (出所:NEWSポストセブン)

  

www.news-postseven.com

 

  メディアがプラごみ問題が取り上げることで、問題が深耕され、疑問を投げかけることで、学びの機会になっているのかもしれない。

 

 

 

バイオマスプラスチックの裏側

  文春オンラインは、有料化対象外となった「バイオマスプラスチックも放置すれば「永遠のごみ」と指摘し、日本経済新聞は、「原料となるバイオマス(生物資源)の安定供給について注意しておきたい」という。

「レジ袋有料化ルール」3つの抜け道

国が定めたレジ袋有料化のルールには、三つの抜け道が用意されている。

一つは、厚さが0.05ミリメートル以上のもの。使い捨てではなく繰り返し利用できるという理由だ。

二つめは、ごみとなって海に流れ込んでも自然に分解されて消滅する「海洋生分解性プラスチック」だけでできているもの。

そしてもう一つが、バイオマス素材が重さにして25%以上含まれているものだ。 (出所:文春オンライン) 

  

bunshun.jp

  

農地でバイオプラスチック用の作物を作れば食料供給を圧迫するうえ、大規模な農地開発は森林減少によるCO2放出や生物多様性の問題を招く。 (出所:日本経済新聞

  

www.nikkei.com

 

バイオマス産業がさかんなブラジルの実態

 南米の農業大国ブラジルでは以前よりバイオマス利用がさかんであったと聞く。

 ガソリン代替としてサトウキビを原料とするバイオエタノールなどを利用する。石油価格高騰でバイオエタノール生産に拍車がかかったようだ。

 

耕地が膨大でサトウキビを作付けする余地の大きなブラジルでは、サトウキビがエタノール生産の原料となった。

特に、同国では、1970年代の石油危機の時の苦い経験から、石油への依存度を下げるためガソリンに20%~25%のエタノールを混合することを義務付けている。 (出所:独立行政法人農畜産業振興機構

 

 生産が増えれば、当然原料となるサトウキビの増産も必要になる。

 

 環境問題への影響として政府は、サトウキビであれば食料や環境との競合は少ないとみている。

ただ、バイオエタノール生産拡大によるサトウキビ栽培の拡大が、牧草地への大豆栽培を促し、大豆農家に牧草地を売った牧場主は更にアマゾンの奥地に牧場を求めて森林を伐採しながら移動するという、玉突き的な「森林破壊のサイクル」が生じているとの指摘がある

とはいえ、長期的なエネルギー不足や地球温暖化が懸念されるなか、ブラジルのバイオエタノール産業は、将来的にも世界の再生エネルギー分野を先導する産業であるといえよう。 (出所:独立行政法人農畜産業振興機構) 

 

www.alic.go.jp

 

進むブラジル アマゾンの森林破壊

 ブラジル アマゾンの熱帯雨林南端のパンタナル湿原で、今年7月から発生する火災件数が、観測史上最も多いとAFPが伝える。

 パンタナル湿原は、ブラジルからパラグアイボリビアにまたがり、生物多様性が高いという。 

 環境問題専門家らは、気候変動に懐疑的なブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領が、保護地区での農業や採掘を促進する政策を取っていることで、国の重要な天然資源を破壊していると非難している。 (出所:AFP BB NEWS)

 

www.afpbb.com

 

 バイオベースで作られるプラスチックスは、こうした環境破壊のリスクもあるということなのだろう。

 

 

 

ユーグレナ 非可食バイオマスプラスチックスの開発

 サトウキビやトウモロコシなど可食成分に頼らず、非可食バイオマスからなるバイオマスプラスチックスの研究開発も進む。

 ミドリムシユーグレナ社は、環境省が推進する「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」を通して、「ミドリムシユーグレナ)の培養に、古紙や食物残渣などから分解した糖化物を栄養分として使用する非可食バイオマスによる資源循環システムの構築を目指します」と公表した。

 

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(資料出所:ユーグレナニュースリリース

 

www.euglena.jp

 

 8月6日、ユーグレナ社は、「微細藻類ユーグレナ成分を配合したバイオマス含有度50%のユーグレナ・プラスチックを開発」と発表した。

 研究成果のバイオマスプラスチックスを公表するが、実用化にはもう少し時間がかかるのだろうか。

 

汎用プラスチックの一種であるポリプロピレン(PP)とユーグレナ脂質抽出残渣を混錬し均一分散させたバイオマス含有度50%のユーグレナポリプロピレン複合体(図1)を開発しました。
 本研究で開発したユーグレナポリプロピレン複合体の物性上の特長は、100%石油由来ポリプロピレンと比較し、曲げ試験における最大曲げ応力と曲げ弾性率の向上が見られ、強さと硬さが付与されました。

開発したユーグレナポリプロピレン複合体を用いて射出成型によりフォーク等のサンプルを作成し、一般的な射出成型機での成型が可能であることを確認しました(図2)。今後、食品容器や成型材料など様々な用途への展開が期待されます。 (出所:ユーグレナ

 

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www.euglena.jp

 

 こうしたバイオマスプラスチックスの開発を環境省が補助事業や委託事業で後押しをする。ユーグレナ社以外でも非可食バイオマス利用のプラスチックスの研究開発が進むが、商用化にはもう時間がかかりそうだ。

 

 

 

プラスチックスの未来

 「化石燃料、化石資源を使って生み出されるプラスチックにこれだけ依存している社会のあり方を私たちは変えられるかどうか」と、小泉環境相は、NEWSポストセブンで語りかける。

 さらに、「これができれば私たちの経済社会は生活の質を落とさずに、なおかつ環境には負荷が低くなる。産業としてもより持続可能になります」と述べ、「もはや、環境に取り組むことは経済や雇用の重荷ではなく、競争力の源泉です」と続ける。

 

 杉村氏は、「それにしても、なぜ環境問題に取り組むと批判する人が出てくるのでしょうか」と訊ねる。 

「これをやって意味があるんですか」ということだと思います。

地球規模で解決しないといけない課題にもかかわらず、アクションが圧倒的に小粒に見える。

だから、「それって自己満足なの?」と思われるし、「やっている感」のツッコミが入りやすい。 (出所:NEWSポストセブン)

 

 「レジ袋有料化をきっかけに、そんな認識が広がっていくように取り組みを進めていきたいと思います。杉村さんも読者の皆さんも、一人一人ができるところから行動を始めてみませんか?」という言葉で、小泉環境相は、NEWSポストセブンでの対談を終えた。

 

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 プラスチックスが登場し、生活は圧倒的に改善された。しかし、そのプラスチックスが重荷になり始めている。

 プラスチックス産業のバリューチェーン全体を作り替えることで、それが競争力の源泉となり、持続化可能な産業へと変化していく。しかも、地球環境に負荷をかけることがない。

 できることなら、そうした世界の方が、今ある世界よりいいのかもしれない。

 誰もが参加して、プラ消費を少し抑えることで、その実現が早まっていくことになるのだろう。

 

 

「関連文書」

www.businessinsider.jp

 

 

「参考記事」

dsupplying.hatenablog.com

 

www.jetro.go.jp

 

 

TikTokを排除する米国 鎮静化はあるか 米中対立の行方 

 

 米政府が、動画共有アプリTikTokを提供する中国企業バイトダンス(ByteDance)とSNSアプリ微信(WeChat)を提供するテンセントとの取引を禁止する大統領令に署名したという。いずれの措置も署名日から45日後に有効となる。

  

 wiredによれば、「米中が新たな冷戦に陥る可能性があることから、中国系米国人やほかのアジア系市民に対する人種差別をあおらないように米国政府は慎重になるべきだ」と、中国の軍事戦略の専門家のエルサ・カニアは警鐘を鳴らしているという。

 

わたしたちが何に反対しているのか明確にする努力をすべきです。

わたしたちが反対しているのは、中国の権威主義政府であり、人権弾圧であり、有害なかたちで利用されるテクノロジーなのです (出所:wired)

 

wired.jp

 

 また、TikTokやWeChatに加え、中国企業の運営するアプリ排除の方針も表明したという。

 時事通信によれば、こうした措置に、共産党機関紙人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は「中国が取ることのできる対抗措置は限られている。これが現実だ」と指摘し、打つ手がないことを認めているという。

 

www.jiji.com

 

 

 

 

パンデミックは、世界の勢力が大きく変化し、競争本能が協調的な考えを圧倒し、既に不安定な状態になっていた世界に襲いかかったのです」と 世界経済フォーラムは指摘する。

 

米国と中国の間では、数年にわたって科学技術における協力分野が確認されていましたが、現在では「テック・レース(技術競争)」が急速に展開されています。

この競争は大きな賭けです。

2008年の金融危機時には16億人だったインターネット利用者の数は、今日では41億人に増加。AI(人工知能)を支配した国々では、この技術のおかげで向こう15年の経済成長が30%も増加する可能性があります。

最先端技術で協力し合うよりも、これを支配することこそ、物質的、地政学的な利益の道に通じるという考え方があるのも、このためです。

(出所:世界経済フォーラム公式サイト「グローバルな連携が、これまで以上に重要である理由」)

 

jp.weforum.org

 

 2008年、リーマン・ブラザーズ破綻からわずか数週間後、世界各国の中央銀行は足並みを揃えて利下げを実施した。その後間もなくG20の会合がワシントンで開催された。 

 世界経済フォーラムによれば、この時、「世界経済の成長の回復と、世界金融システムに必要な改革の達成のために、協調を強化して協力し合うことを決定した」旨の共同宣言を発表したという。

「刺激策が自国の市民とビジネスにもたらす恩恵を最大化しようとするとき、世界のリーダーたちがとるべき賢明な行動は、相互に協力し合うことです」と 世界経済フォーラムはいう。

 

 

 

 欧米諸国が気にかけるウイグルや香港の問題を中国は抱える。こうした問題の解決を通して、両者が協力することはできないのだろうか。

 

 

  新疆ウイグル自治区では、ウイグル人約100万人が、テロ取り締まりを理由に拘束されているという。

 

国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。

中国政府は事実と異なると反発しているが、「宗教的過激派に染まった者」は「移住と再教育の支援を受ける」と珍しく認めた。 (出所:BBC

  

www.bbc.com

 

  米国は新疆ウイグル自治区での少数民族に対する人権侵害に関与しているとして、中国企業11社を輸出管理対象にする。ウイグルの問題が米中対立のひとつになっている。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 香港では、先に成立した香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕者が出ているという。民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんや、中国政府に批判的な香港紙・蘋果日報の創業者が逮捕されているという。(逮捕されたのち、8月11日夜、保釈となっている)

 

r.nikkei.com

  

 こうした香港の動きに、ポンペオ米国務長官が「中国共産党が香港を党支配下の都市として扱う限り、米国も同様に扱うことになる」と述べたと時事通信が伝える。

 

www.jiji.com

 

 ことあるごとに、米中の非難、制裁合戦となっている。

 歴史は繰り返してしまうのだろうか。

 

 かつて米ソが激しく対立したように、米中は対立を激化させたままなのだろうか。

 東西冷戦では、相手を犠牲にして「勝利」することを求め、対立ばかりであったという。今こそ、協調し合うべきではなかろうか。まずは協力して対処できる問題の解決から始めて欲しい。世界には解決しなければならない問題が山ほどある。

 

 

jp.reuters.com

 

 

「参考記事」

 

www.asahi.com

 

jp.reuters.com

 

 

www.bbc.com

 

www.jetro.go.jp

 

www.jetro.go.jp

 

f:id:dsupplying:20200809164805j:plain

 

コロナ渦 苦境に会っても黒字を生み出すトヨタとリストラを急ぐアパレルの差とは

 

 コロナ渦が長引く。これだけ長引けば様々な産業に影響が出てもおかしくない。

 TSR東京商工リサーチによれば、「新型コロナ」関連の経営破破綻(負債1,000万円以上)が、全国で400件に達したという。

 業種別では、飲食業が60件で最多、次いで、アパレル関連(製造、販売)が49件、宿泊業が40件と、この3業種が突出しているという。

 全国的な感染者数の高止まりが続き、今後、営業時間の短縮や移動の自粛要請が本格化すれば、消費マインドへのさらなる悪影響も懸念されるという。

 

 政府や取引金融機関などの各種支援に依存しながら経営を維持している企業は多く、影響が長引けば長引くほど、限界に達した企業の脱落型の倒産が増勢をたどる可能性が高まっている。 (出所:東京商工リサーチ

 

 連日、コロナの新規感染者数が1000人超となっている。8月6日、新規感染者が発生しなかったのは7県のみ。愛知や沖縄では独自の緊急事態宣言を出し、時短営業や移動の自粛を求めている。

 一方、国は重症者が少ないことなどを理由に、ただちに緊急事態宣言を出す状況ではないという。「感染拡大の防止と社会経済活動の両立」を図る考えを改めて示し、「Go Toトラベル」で観光需要を喚起、『ウィズ・コロナ』の時代の安全で安心な新しい旅のスタイルを普及・定着させていきたい」と述べたという。

 国と地方での感覚の差なのであろうか。言っていることがまるで違う。

 国のメッセージの出し方に大いに疑問を感じる。感染者が増えようが、相も変わらず、言うことは変わらない。感染者数は増え続ける一方で、経済の沈下はますます進む。

 この結果だけからいえば、何もしていないのと同じだし、悪化させているだけだ。

 

 

 

売上40%のトヨタはそれでも黒字を確保 = 4 - 6月期

 トヨタの4-6月期の業績発表の内容に驚く。売上が40%も減少したというのに、営業利益を確保、純利益1588億円を達成している。

 原価改善で100億円、経費低減で750億円、売上の落ち込み分を改善させたという。その「カイゼン」の徹底ぶりに脱帽する。TPS トヨタ生産方式がまた何か進化したのだろうか。

 通期21年3月期の業績予想は、売上高は前回発表時と変わらず前年比約20%減の24兆円、営業利益5千億円は前回発表のまま据え置き、未定だった純利益を7300億円とした。第4四半期では販売台数が前年を上回ると予測しているようだ。

 

global.toyota

 

アパレル大手ワールドは売上40%減 急がれる構造改革

 アパレル大手のワールドが業績を発表した。

 足元4~6月期の連結決算では、売上が前年比45.0%減の330億円、純損益は赤字で▲24億円だったという。通期でも最終赤字(▲60億円)の見通しという。

 新型コロナで事業環境が一変、構造改革を急ぐという。その内容は、ブランドの統廃合や低収益店の撤退、希望退職などになるようだ。

 

今回の改革では「ハッシュアッシュ」「サンカンシオン」「アクアガール」「オゾック」など5ブランドを廃止。その他のブランドも統廃合や効率化の取り組みの対象となる。

ブランド廃止に伴い214店舗を閉店するほか、低収益の130店舗などを含めた計358店を閉店する。 (出所:ITmedia ビジネスオンライン)

 

www.itmedia.co.jp

 

 

 

破綻レナウンは再建にむけ準備を進めるが...

 5月に経営破綻したレナウンが、民事再生法の適用を申請し、再生手続きを進めているという。TSRによれば、連結子会社11社のうち、すでに2社が倒産、5社が事業を閉鎖したほか、7月末に560店舗を閉鎖したという。スポンサー選定に向け、不採算事業を縮小し、事業価値を高める動きとみられると伝える。

 

レナウンの担当者は、「(2019年末は2,000店舗あったが)7月末時点の店舗数は約1,300店舗になった。8月も不採算店舗などを閉鎖し、収益性をあげていく」とコメントした。
 現在、複数のスポンサー候補と事業譲渡を交渉中で、ブランドや事業を分割してスポンサーに譲渡する方法も視野に入れているとみられ、レナウンの再建はヤマ場を迎えている。 (出所:東京商工リサーチ

 

www.tsr-net.co.jp

 

強みを活かすトヨタグループ 培ってきた技術で活路を開く 

 業界の違いはあれど、コロナで同じような比率で売上を落とした企業で、一方は黒字を確保し、他方、赤字に転落する企業もある。その差はどこから生まれてくるのだろうか。

 黒字を確保する企業は、生産現場に強みを持ち、常に効率化と革新を追求する。赤字に転落するような企業は、業績悪化してから構造改革を始める。企業活動に効率性を求めなければ、どんなに構造改革をしたところで同じことの繰り返しなったりはしないだろうか。

 

 こんな時だからこそ、同じ業界のことばかり調査するばかりでなく、他の業界についても分析してみてもよさそうだ。同じ「モノ」を作り販売する会社で学ぶべきものがあるのかもしれない。

 

 トヨタグループの部品メーカが、新型コロナで先行きの不透明感が増す中、事業の多角化を急いでいるという。

 SankeiBizによれば、豊田合成は、ウイルスの殺菌能力が高い「深紫外線発光ダイオード(LED)」の開発を進め、使用済み防護服やカーシェア車両の殺菌に使うなど幅広い業種での応用を検討しているという。

 アイシン精機は、ライドシェア(相乗り)サービスを始め、ジェイテクトは、介護用歩行器を発売する予定だとう。

 各社は本業で培った高い技術力を生かして新たな「飯の種」を模索するとSankeiBizが伝える。強みを活かして、異業種への挑戦ということなのだろうか。

 

www.sankeibiz.jp

 

 トヨタのグループ各社も危機感が強いということなのかもしれない。

 

 

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【脱炭素】加速するのか「カーボンリサイクル」カーボンニュートラルを目指せ

 

 東京大学が、「CO2に対する気候感度の不確実幅が低減」という研究成果を発表した。

 少しばかり期待したが、なかなかそういう結果は得られないようだ。

 

 IPCC 5次報告書で、1.5―4.5℃となっていた気温上昇幅が、様々な証拠を組み合わせることで、その幅が2.6―3.9℃となったという。

 1.5℃が2.6℃になったので驚くしかない。

 

急激に増加する二酸化炭素濃度

 東京大学が示した過去80万年のCO2濃度の変化のグラフを見ても、近年のCO2濃度の上昇が尋常ではない。

 

20世紀以降の観測された気温データ、氷期など過去の気候における気温変化の推定、全球気候モデルによるシミュレーション、衛星観測データや雲の詳細な数値モデルから得られる気候システム内部の物理プロセス理解などに基づく気候感度の推定を複数行い、統計理論を用いてそれらを重ね合わせて統合的に気候感度の幅を推定しました。

その結果、2℃よりも低い、あるいは4.5℃よりも高い気候感度の可能性は非常に低いことが明らかになった。 (出所:東京大学公式サイト) 

 

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(資料出所:東京大学公式サイト 過去80万年間の大気中CO2濃度​
紀元前80万年前から現在までの大気中CO2濃度の変遷。青線は南極での氷河や氷床から得られたデータ、赤線はハワイマウナロア島で観測された1958年以降のデータを示す。20世紀以降のCO2濃度の上昇が過去80万年間に見られなかったレベルであることが明らかにわかる。
© 2020 吉森正和(元データはアメリカ大気海洋庁およびスクリプス海洋研究所のウェブサイトより取得)

 

www.u-tokyo.ac.jp

 

 

 

キーワードは2050年のカーボンニュートラル

 EUは2050年までにCO2 二酸化炭素排出を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す。

 国内でも多くの自治体が「ゼロ・カーボンシティ」を宣言し、2050年のカーボンニュートラルを目指すという。

 しかし、CO2の回収、貯留が進まなければ、大気中のCO2濃度に変化はないのでなかろうか。

 

 石油メジャーのBPは、2月に、 2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を発表した。その達成に向けた具体的な経営目標を提示したと日本経済新聞が報じる。

 

「BPは30年までに全く別のエネルギー企業になっているだろう」

 日本経済新聞によれば、石油やガスの生産は段階的に縮小していくという。石油やガスの生産量は、石油換算ベースで、19年実績の260万バレルから4割減らし、30年で日量150万バレルにする。新たな国での資源探査は行わない方針だという。

 

化石燃料への依存度を徐々に下げ、新エネルギー分野に軸足を移す。再生可能エネルギーによる発電容量を19年の2.5ギガ(ギガは10億)ワットから、30年までに50ギガワット規模に増やす。

生物資源に由来するバイオ燃料の生産量を日量2万2千バレルから10万バレル超に引き上げる。同時に電気自動車(EV)の充電施設は7500カ所から7万カ所へ広げる。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com 

 

 

経済産業省の回心 カーボンリサイクル本格化か

 昨年、経済産業省は、化石燃料から排出されるCO2の問題に正面から取り組む必要があるとし、CO2を再利用するカーボンリサイクルに係る技術開発のロードマップを策定した。

 

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(資料出所:経済産業省公式サイト「「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を策定しました」

 

 これに合わせるかのように、国の委託事業として、いくつかのカーボンリサイクルの技術開発が始まっている。

 「カーボンリサイクルロードマップ」の性質上か、石炭など化石関連会社に技術開発を委託しているようだ。

 

日本製鉄 CO2 を原料とするパラキシレン製造開発に着手

 日本製鉄は、富山大学三菱商事など6社と共同で、「CO2 を原料とするパラキシレン製造に関する開発に着手」したという。

 パラキシレンは、高純度テレフタル酸(PTA)をを経由してポリエステル繊維やペットボトル用樹脂等に加工される化合物で、工業上、重要な基礎化学品だ。

 パラキシレンの世界需要は約4,900万トン/年あり、仮に現在の世界のパラキシレンの需要を全てCO2原料に切り替えた場合のCO2固定量は1.6億トン/年になるという。

 

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(資料出所:日本製鉄プレスリリース「CO2 を原料とするパラキシレン製造に関する開発に着手」

委託元は NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)で、委託プロジェクトは、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発」。

 

トクヤマ 炭酸塩製造にCO2利用

 トクヤマ双日などと、CO2を活用するための技術開発を進めるという。

 日本経済新聞によれば、トクヤマは板ガラスなどの原料になる炭酸塩を生産するという。

炭酸塩の製造工程では石灰石由来のCO2を原料として使用する。

このCO2をトクヤマが持つ石炭火力発電所由来のCO2に一部置き換える。

年間3万トンのCO2を有効利用する計画だ。発電所の燃焼排ガス中のCO2を吸収する技術を3社で開発する。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 

 

ユーグレナ 廃食油の有効活用

 カーボンリサイクルロードマップにも取り上げられている微細藻類バイオ燃料を手がけるユーグレナは、ファミリーマート一部店舗の使用済み食用油(廃食油)を原料の一部とする「バイオディーゼル燃料」を、ファミリーマートの配送車両に使用する循環型の取り組みを共同で実施すると発表した。

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(資料出所:ユーグレナプレスリリース)

 

www.euglena.jp

 

ユーグレナが目指す航空機のバイオ燃料化 GREEN OIL JAPAN宣言

 2018年10月、ユーグレナバイオ燃料製造実証プラントが竣工した。この時、ユーグレナは、「GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)」を宣言、「日本をバイオ燃料先進国にする」ことを目指すとした。

 

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 ユーグレナは当初、2つの目標を設定していたと聞く。

・2020年までに実証プラントで製造したバイオ燃料を陸・海・空における移動体に導入する。
・2025年までに25万kL/年規模で経済性を有する商業生産体制を整える

 

ユーグレナバイオ燃料のCO2削減効果」

既存の化石燃料由来の燃料を、ユーグレナバイオ燃料に置き換えることで、約80%のCO2削減効果がある。

25万kL/年生産することで、約50万ton/年のCO2削減効果を目指す

(出所:資源エネルギー庁カーボンリサイクル技術事例集」)

 

 そして、2030年までにバイオ燃料を製造・使用するサポーターを日本中に広げることで、バイオ燃料事業を産業として確立することを目標にしているという。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

ANA ESG中長期目標公表

 「GREEN OIL JAPAN」宣言に賛同したANAが、2050年までに達成するESG関連の中長期目標を公表した。

 

航空機の運航で発生するCO2排出量を2005年比で50%削減(2019年比で66.6%削減)
・航空機の技術革新により開発された、省燃費機材や改良型エンジンの導入等
・運航方法の工夫やエンジン洗浄等によるオペレーション上の改善
・SAF(Sustainable Aviation Fuel)の導入
排出権取引制度の活用

航空機の運航以外で発生するCO2排出量をゼロ
・空港車両等へのハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車の導入
・自社施設や設備等の省エネ機器へ更新
・省エネを実施したうえで、再生可能エネルギーへ移行

資源類の廃棄率をゼロ
・プラスチックや紙等を中心に、資源類の利用量削減、再利用、リサイクルの3R注3を推進

機内食などの食品廃棄を50%削減
・食材の調達、調理、食事の提供、廃棄を通した製品ライフサイクルの中で食品廃棄を削減

(出所:ANA公式サイト プレスリリース)

  

www.anahd.co.jp

 

 コロナの影響で苦境にあることは理解するが、30年後の目標だ。もう少し野心的な目標にはならなかったのだろうか。CO2削減効果の大きい国産バイオ燃料を積極的に活用して欲しいものだ。

 

jp.reuters.com

 

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プラごみ問題と有料化となったレジ袋のその後

 

 レジ袋が有料化されて1か月以上経つ。コンビニでのレジ袋辞退が7割を超えているという。

 ファミリーマートは、辞退率が有料化前の30%から、77%になったと速報値をニュースリリースで公表した。有料化の施策他で、年間で約9,000トンの石油系プラスチックの削減効果になるいう。

 日本経済新聞によれば、他のコンビニでも75%程度の辞退率だったようだ。

「有料化で消費者に変化が出てきている」と日本経済新聞はいう。ほんとうにそうなのであろうか。

 

レジ袋有料化で増えたポイ捨て?

  岐阜新聞は、「ごみ袋再利用できず購入...エコ?」との切り口で報道する。

 岐阜県内のレジ袋辞退率の高い店舗を紹介、「エコ意識は浸透してきているのでは」と話す岐阜市の弁当店の声を紹介する。

 その一方で、「特に多かったのは、レジ袋をごみ袋として再利用しているとの声」という。

「結局ホームセンターや100円ショップでレジ袋と同じものを購入している。お金を出して買うようになっただけで、プラスチック削減にはなっていないのでは」などと、環境への効果を疑問視する声も挙がった。

また、コンビニの利用者からは「外出時に買った物やおしぼりのごみをレジ袋に入れて捨てていたが(マイバッグだと)それができない」という意見や、その影響か「ポイ捨てが増えた気がする」との声も複数あった。 (出所:岐阜新聞

 

www.gifu-np.co.jp

 

 

 

レジ袋有料化で減ったポイ捨て? = 英国

 2015年にレジ袋を有料化した英国では、レジ袋の使用は85%削減されたという。これをさらに進めるため、現在は除外されている小規模小売店でもレジ袋有料化を適用することが計画されているとNewsweekが伝える。

 

想定外だった結果の1つは、海辺の町でビーチの投棄ゴミの量が著しく減ったと報告されていることだ。

プラスチックが海に行き着くことが周知され、人々はビーチでごみの扱いに以前より気を配るようになった。 (出所:Newsweek

  

www.newsweekjapan.jp

 

 Newsweekの記事筆者は、レジ袋の有料化が、自分たちの行動を振り返るきっかけにもなったという。

 

僕たちは毎年何十億枚ものレジ袋を使い、その多くが海に行き着き海洋生物を脅かす。

僕たちは、使用済みペットボトルが新しいペットボトルに生まれ変わってなどいないことを学んだ(浅はかにも僕は長年信じ続けていたのだが)。

僕たちのプラスチックごみは船に乗って地球の反対側へ......現実にはリサイクルなどしていない国や、近年では受け取り拒否を鮮明にしている国へも運ばれているのだと知った。 (出所:Newsweek

 

 レジ袋を有料化したところで、報道されている「使い捨てプラスチックスの問題」が解決されるわけではない。あくまで、きっかけであり、英国のようにプラごみ問題を考えるきっかけになればいいのかもしれない。

 

 

 

ポイ捨てをすれば、地球温暖化に拍車をかけるだけ

  wiredは、科学誌「サイエンス」に発表された論文「Evaluating scenarios toward zero plastic pollution」を解説、ここ最近のプラごみ問題を指摘する。

 

もし人類が一丸となって行動を起こさなければ、16年から40年の間に13億トンものプラスティックが海に流れ込んだり、陸上に堆積したりするだろうと警告を発しているのだ。

たとえ早急に抜本的な対策を講じたとしても、その量は7億1,000万トンに達する可能性がある。

そのうち4億6,000万トンが陸地に、2億5,000万トンが海中に排出されると予測されている。

また、世界の大半の地域ではリサイクルが難しいプラスティックごみは焼却されるが、その量は2040年までに1億3,300万トンにのぼると試算されている。

さらにプラスティックごみの焼却によって危険な有害物質と二酸化炭素(CO2)が放出され、地球の温暖化に拍車をかけることとなる。

結局のところ、プラスティックの原料は石油なのだ。 (出所:wired)

 

wired.jp

 

 wiredは、「サイエンス」に発表された研究論文の共同執筆者であるリチャード・ベイリーの言葉を紹介する。

「地球に優しくしましょう、と呼びかけるだけでは意味がありません」。

「気候変動への取り組みの歴史から、そのようなアプローチに限界があることは明らかです。経済的に実現可能なアプローチでなければなりません

  

science.sciencemag.org

 

 ナショナル ジオグラフィックは、研究論文のもうひとりの共同執筆者のウィニー・ラウ氏の言葉を紹介する。

 

私たちの研究結果がどんなに素晴らしくても、すべての人の心を変えることはできません。

私たちの目的は、この問題解決のカギを握る人々の心を変えることです。

その人たちがリードし、企業の新たな基準を作ってくれるでしょう。

あとは、私たちの努力次第です (出所: ナショナル ジオグラフィック)

 

 ナショナル ジオグラフィックは、消費財メーカーのユニリーバが、昨年、バージンプラスチックの使用を半分に減らし、販売数以上のプラスチックを回収して加工するための支援を行うと約束したことを指摘し、こうした取り組みが出発点となるだろうという。

 

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

 何よりも肝心なことは、私たちがプラごみ問題に関心を寄せ、プラごみを無くしていこうと行動を始めることなのかもしれない。

  

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 Newsweekの筆者はこんなことを言う。

誰からも責められないのだから、必ずしも同調圧力という訳ではない。むしろ人々は「理解」した上で協力したがっているようだ」。

 筆者がいうように、レジ袋をもらって「罪悪税」を払う、そんな意識になっていくといいのかもしれない。

  

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

 

コロナ渦、小泉進次郎環境相動く 来年のCOPでの汚名挽回狙いか、その真相は

 

 7月末、45市町村が、「2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を「実質ゼロ」にする」と共同宣言した。

 この共同宣言をまとめた茨城県北茨城市の豊田稔市長が小泉環境大臣と面談したと共同通信が伝える。

  小泉氏は「政府目標を上回るものを自治体が掲げている」と高く評価し、政府内でも「(目標を)上げていく働き掛けを開始したい」と述べたと共同通信が伝える。

  

this.kiji.is

 

 CO2を含む温室効果ガスを国全体で50年までに80%削減する政府目標の引き上げに、小泉大臣が意欲を示したという。

 

  「実質ゼロ」を宣言する自治体が増えれば、IPCC1.5℃目標に貢献できることになるのであろうか。

 

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(資料出所:環境省公式サイト「地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況」

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 

  

 全国の19政令指定都市などでつくる指定都市自然エネルギー協議会が、再生可能エネルギー比率を2030年までに45%以上とする目標を、次期エネルギー基本計画に盛り込むことを政府に求める政策提言をまとめ、小泉進次郎環境相に手渡したという。

 小泉環境相は「(自治体の掲げる高い目標に合わせて)政府の目標もより野心的にできるよう努力する」と話したと共同通信が伝える。

 

this.kiji.is

 

 小泉環境相のまわりがにわかに活気づいているように見える。

 来年に延期されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に向けての準備であろうか。

 

 COPの延期が決まった5月末、小泉環境相が「関係省庁、政府全体あげてしっかりとした戦略を描くべきで、その時間が与えられたと前向きに評価したい」と述べたと朝日新聞が伝えていた。

 

COP26は当初、今年11月に予定されていた。

会議に向け、国連のグテーレス事務総長は各国に、地球温暖化防止のための国際ルール「パリ協定」に基づく温室効果ガス排出の削減目標を引き上げるよう呼びかけていたが、日本は今年3月末に据え置いたまま提出した。

その代わりに、COP26までに温暖化対策を追加で提出し、新たな削減目標は来年以降に改定される国のエネルギー基本計画や電源構成などと調整した上で見直すとしていた。 (出所:朝日新聞

 

www.asahi.com

 

 7月初旬、小泉進次郎環境相は、石炭火力発電の輸出政策見直しを経済産業省とともに発表した。

 7月29日、小泉環境相は、BSフジ「プライムニュース」で、「今回の石炭政策見直しの内容を昨年言えるのがベストだったが、調整できなかった」と国際的に批判が強まる石炭発電について答えた。

 小泉環境相は 昨年のCOP25で国内外から批判を受けていた。

 

 しかし与えられた3分間を使う上でイノベーションの話などに逃げるのではなく、国際社会の関心事である石炭の話に率直に触れた。

今後国際的に仲間を募る意味でもプラスと考えた。結果はかなり批判されたが。 (出所:FNNプライムオンライン)

  

www.fnn.jp

 

 

 

 経済界もそんな小泉環境相を後押ししているのだろうか。

 経済同友会が、2030年の国内電源構成で、再生可能エネルギーの比率を40%にすべきだとする提言をまとめたという。

 

2030 年再生可能エネルギーの電源構成比率を 40%へ -その達成への道筋と課題の克服- (経済同友会)

 

現状は17%にとどまり、政府のエネルギー基本計画でも30年で22~24%としている。

同友会はほぼ倍となる目標を掲げることで、政府の支援、民間投資に弾みをつける必要があるとした。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com

 

  同友会ばかりでなく、企業からも小泉環境相に再エネ関連に関しての要望が増えているようだ。

 リコーの山下社長は「日本での再生エネの調達は難しい」と小泉環境相に対策を求めたという。イオンの三宅香執行役も小泉環境相に対し「国のリーダーシップ、後押しがほしい」と訴えたとニュースイッチが伝える。

 ニュースイッチによれば、ESG投資を支持する機関投資家が増えており、再生エネの活用が企業の評価基準となり、大企業が安くて大量の再生エネを求めているという。

 

小泉環境相は「再生エネの需要を拡大し、コストを下げることにつなげていきたい」と語り、自治体や国民に再生エネの活用を呼びかけていく考えを示している。 (出所:ニュースイッチ)

 

newswitch.jp

 

 

 

 WMO 世界気象機関が発表した新しい気候予測によると、今後5年間(2020〜2024年)の年平均世界気温は、産業革命以前のレベル(1850〜1900年)から、少なくとも1℃上回る可能性が高く、20%の確率で1.5°Cを超える可能性があるという。

 

 地球の平均気温は、工業化以前の期間よりもすでに1.0℃高くなり、過去5年間は、過去最高の5年間だったという。

 

 WMOは、「気候変動に関するパリ協定の目標を達成する上で、今世紀の世界の気温上昇を産業革命前の水準よりも2℃低く保ち、制限する努力を続けるという大きな課題を示す結果だ」と指摘する。

 

 

public.wmo.int

 

 WMOによれば、新型コロナによる産業と経済の減速は、持続的かつ協調的な気候変動対策の代用にはならないという。

 「大気中のCO2の寿命が非常に長いため、今年の排出量の減少の影響が、地球の気温上昇を引き起こすCO2大気中濃度の減少につながるとは予想されていません」

という。

 

 

 可及的速やかなアクションが求められているのかもしれない。

 小泉環境相環境省が、COPでの汚名挽回を旗印に勝負を仕掛けているのであろうか。「パリ協定遵守」への道は開けるのか。

 小泉新次郎環境相の手腕に期待したい。

 

 

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