Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

中国テックの台頭、米国防総省の懸念、傍観するだけの日本

「LiDAR(ライダー)」、レーザー光を照射して周囲の物体までの距離を高精度に測定する自動運転の目となる部品です。この部品において、中国企業の存在感が強まっているそうです。特許出願数で日米企業を大きく上回り、市場シェアも過半を握るようになったといいます。

自動運転の「目」、中国が特許首位 ボッシュは開発中止 - 日本経済新聞

中国では電気自動車(EV)の開発競争が激しく、差異化のためにライダーを使った運転支援の高度化が進む。日米欧企業の動きは遅く、独ボッシュなどが開発から撤退し始めた。(出所:日本経済新聞

 理由はともあれ、ありとあらゆる分野で、中国企業の躍進が続いているということなのでしょうか。

 

 

AI研究

 欧米諸国が世界をリードしているはずの生成AIの開発においても、トップ研究者のほぼ半数が、中国出身であることが報告されたといいます。

世界のトップAI研究者の約50%が中国出身であることが判明 - GIGAZINE

 米国のポールソン研究所のシンクタンク MacroPoloが、AI・機械学習分野の国際会議「Neural Information Processing Systems」が受理した論文を調査した結果、判明したそうです。中国でAI人材の国内プールが急速に拡大すると共に、自国のAI産業の需要も増大していることを示しているといいます。

日刊紙のニューヨーク・タイムズは、「中国がこれほど多くのAI人材を育成できたのは、AI教育に多額の投資をしたことも一因です」と指摘しています。(出所:GIGAZINE

 人材が育たなければ、研究も開発も進まず、ましてそれがビジネスに昇華することもないのですから。

国防総省が抱く懸念

 米国防総省が「中国テック企業の台頭」に懸念を示しているそうです。

「中国テック企業の台頭」が米国防総省の懸念となる理由 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

米国内の一部の製造業者は新しい技術に多額の投資を行っているが、中国との競争に敗れつつあることを示す根拠がある。中国企業は往々にして米企業より先にドローン(無人機)のような新しい市販品の市場投入を行ったり、米企業が張り合えないような価格で商品を販売したりしている。(出所:Forbes)

 そればかりでなく、ソフト、AI分野においても中国企業が挑み始めていることに懸念をもっているようです。米ビッグテック、超巨大テクノロジー企業もうかうかしれいれば、ハードウェアの二の舞になりかねないというところでしょうか。

 

 

中国から流入するIT人材

 日本で働く中国人のIT技術者が10年間でほぼ倍増しているそうです。IT技術者の国外脱出を後押している中国側の事情もあるようですが、IT技術者の不足という問題を抱える日本側の事情があるといいます。 

日本企業は選ばれたのか?中国人IT技術者が10年で倍増 給料が下がっても国を出る人たちの思惑:東京新聞 TOKYO Web

先の40代男性も「求められる技術レベルは高くない」と話し、技術面で日本から学ぶことが少ないと示唆する。男性の給与は以前より3割近く下がった。中国メディアの記者は「技術者にとって日本で働くことは賃金面での魅力は薄く、日本語の壁は高い」と語る。(出所:東京新聞

 一方で、技術の流出を懸念する人たちもいるようです。日本が優位性を保っている領域もあるのでしょうけれど、大いに学ぶべきこともありそうな気がしてなりません。批判もあるのかもしれませんが、上手に利用すべで、そうでないと太刀打ちできないほどの差が開くなりそうな気もします。 

「多様な背景の人材から、さまざまな発想を学ぶべきだ。むしろ日本企業が選んでもらえるかということが問題」と、専門家も指摘しているといいます。

 

急減速の米テスラ人員削減へ、EVシフトの再加速はあるのか

 米テスラの業績がさえず、EVシフト熱が急速に冷え込んだかのようです。日産自動車とホンダがEV 電気自動車で提携する検討を始めると発表し、出遅れる日本EVが巻き返しを図る号砲かと思いましたが、空砲で終わることになるのでしょうか。

日産自動車とホンダ、EVや車載ソフトでの提携検討を発表 - 日本経済新聞

 ここでブレーキを踏まずに前に進めれば、遅れの挽回となり、日本の自動車産業の構造転換を促し、競争力を一段高めることができるのでしょうか。

 

 

 テスラの失速原因を分析できれば、EVシフトを再加速させることもできそうな気がします。

【最速解説】なぜ、EV王者テスラが「急失速」しているのか

失速の主な理由は、非従来的なデザインと現在のターゲット層とのミスマッチ。著名批評サイトのコンシューマー・レポートでは、新型モデル3について「運転しながらダッシュボード画面でほとんどの設定をするのは、非常に気が散る」とレビューしています。(出所:NEWSPICKS)

 オンライン販売のため、ショールームが少なく、アフターサービスに対する苦情も目立つといいます。一理あるのででしょうが、これがすべてではないような気もします。

構造改革

 テスラは、足元の需要急減を理由に世界の従業員の10%以上を削減するそうです。

テスラ、世界の従業員の10%以上を削減へ-EV需要が減速 - Bloomberg

「次の成長段階に向けて準備するに当たり、コスト削減と生産性向上のために会社のあらゆる面を見直すことは非常に重要だ。この取り組みの一環として組織の徹底的な見直しを行い、全世界で10%以上の人員削減という難しい決断を下した。これほど嫌なことはないが、やらなければならない」と、イーロン・マスクCEOは説明したそうです。

 最新モデル「サイバートラック」の生産は遅れ、3万ドル以下の価格となる低価格モデルの投入までは、困難が続くとみられ、いいタイミングでの人員整理なのかもしれません。

 テスラの次の成長エンジンは何になるのでしょうか。低価格モデルそのものなのか、それとも、この低価格EVプラットフォームを活用した自動運転タクシーなのでしょうか。

テスラ、自動運転タクシーについて8月8日に発表-マスクCEO - Bloomberg

 FSD(Full Self Drive)自動運転ソフトについて、このタイミングで何かアップデート情報等があるのでしょうか。

 

 

 テスラとシェア争いを続ける中国 BYD(比亜迪)も足下でEVの販売台数を減少させています。価格面で優位性があるにもかかわらずです。なかなかスムーズにEVシフトは進まないのかもしれません。乗り越えるべき壁がまだ多々ありそうです。それともテスラの自動運転が刺激となって、それをテスラが牽引することでEVシフトに火がつくことになるのでしょうか。

 

 気になるのは国家間の対立です。それがこれからのEVシフトの足枷になるかもしれません。その壁を乗り越えるにはまだまだ解決すべき問題がありそうな気がします。

 

 

「参考文書」

マスク氏、テスラが低価格車の計画取りやめとの一部報道を否定 - Bloomberg

テスラ、低価格EVから撤退か 中国勢との競争激化で - 日本経済新聞

テスラはFSD12で将来の完全自動運転の実現を確信した模様

 

空飛ぶクルマ、実用化に近づく中国、開くばかりの実力差

 eVTOL 電動垂直離着陸機「空飛ぶクルマ」、大阪・関西万博やパリオリンピックで試験的な運航が始まり、今後モビリティの革命を起こすと期待されているといいます。2030年代には本格的な社会実装が想定されているそうです。

「空飛ぶクルマ」が旅を変える 好きな時に好きな場所へ - 日本経済新聞

 旅がストレスになることもあります。移動が集中するお盆や年末年始は、自動車は大渋滞に巻き込まれ、飛行機や新幹線は混雑し、希望する時間に予約が取れなかったり座席が窮屈だったりします。移動の選択肢が増え、そんなストレスが解放されるのであれば、「空飛ぶクルマ」はいいのかもしれません。

 

 

 デベロッパー大手の三菱地所が「空飛ぶクルマの社会実装に向けた都心でのヘリコプター運航実証」を実施したそうです。

東京駅とお台場を結ぶ空飛ぶクルマ適正値段、「丸ビル」屋上で考えた | 日経クロステック(xTECH)

 実証実験は、ゆりかもめ青海駅南側特設会場や東京ヘリポート新丸ビル屋上にあるヘリコプターの緊急離着陸場を結ぶ航路をヘリコプターを使って行われたそうです。日本の都市部で実証に使える「空飛ぶクルマ」の機体がまだないことが理由といいます。今回、価格は1人1万7600円、約70席が満席になったそうです。

 青海駅特設会場から新丸ビルまでの飛行時間は10分ほど、通常青海駅から東京駅へは、ゆりかもめなどの鉄道を使って30分以上はかかるので時短効果はかなりあるのではないかといいます。ただ安全面から、高層ビルの屋上を活用した都心部の運航実現には時間がかかりそうで、まずは空港とリゾート施設などを結ぶ路線や、アウトレット施設など観光地での遊覧飛行から市場が立ち上がっていくのではなかろうかといいます。

 

 

 一歩先行く中国では、「低空経済」という政策で、空飛ぶクルマやドローンを積極活用していくようです。地上から1kmないし3km以内の低空域を有効に活用し、経済成長につなげる狙いがあるといいます。

空飛ぶクルマ、26年の産業規模2千億円へ - NNA ASIA・中国・運輸

「空飛ぶクルマ」の開発する中国企業オートフライト(峰飛航空科技)は、5人乗りの機体を使った都市間輸送のデモンストレーション飛行を成功させたそうです。広東省深圳市の蛇口港から対岸にある珠海市の九州港までの往復100キロメートル超を飛び、自動車なら約3時間の所要時間を約20分に短縮できることを実証したといいます。

 今年2024年に空飛ぶクルマ産業の商用化が爆発的に進み、規模が大幅に拡大するそうです。 空飛ぶクルマの運航に必要な型式証明の取得も進んでいるといいます。また地元深圳市政府は、補助金支給などを含めて手厚いサポートを準備し、企業誘致と産業育成に強い意欲を見せているそうで、補助額は最大2000万元(約4億1786万円)になるといいます。

(出所:三菱地所

 欧米から批判の多い中国の補助制度ですが、それはそれとして、新たなテクノロジー開発、具現化、社会実装するスピードが突出しているとも感じます。力の差が開いていそうです。日本の空を飛ぶ「空飛ぶクルマ」が中国製ばかりになってしまうことはないのでしょうか。

 

「参考文書」

中国の空飛ぶクルマ「100km超のデモ飛行」に成功 オートフライト、商用運航の実現へ一歩前進 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン

中国がリードする「空飛ぶクルマ」実用化競争 国家レベルで「低空経済」発展を後押し、開発で先行していた日米欧が後れを取る可能性も | マネーポストWEB

 

~空飛ぶモビリティで、まちに、人に、次の豊かさを~ 空飛ぶクルマの社会実装に向け、都心でのヘリコプター運航実証を開始(三菱地所)

 

 

EVシフト急減速、中国小米参入、激しさ増す競争環境

 EVシフトの急減速、一時の熱狂がうそのようです。米テスラの販売数も落ち込み、猛烈な成長痛に苦しんでいることを示しているといいます。

「S&P 500で最悪」に沈んだテスラの株価は復活できるのか? | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 テスラの時価総額はピーク時には1兆ドルを超えましたがが、それ以降の市場環境の悪化で株価は大きく下落、他の米国EVメーカも同様で、Rivian(リビアン)は年初から約50%下落、Fisker(フィスカー)は今では倒産の危機に瀕しているといいます。

 

 

 中国のスマートフォン大手 小米(シャオミ)がEV「SU7」を中国で販売を開始しました。標準モデルグレードの価格は21万5900元(約450万円)からとし、テスラへの対抗姿勢を打ち出しているといいます。

シャオミ株16%急伸、初のEVが人気 大幅赤字の試算も | ロイター

 発売開始から27分で5万台を受注し、株価は香港市場で急伸したといいます。ただシャオミも「SU7」が赤字になるとの見通しを示し、アナリストの分析では1台当たり1万ドル近い損失を出すことになると試算しているといいます。今年の販売予測6万台からすると、総額41億元の純損失が発生する可能性があるそうです。

 価格帯が20万─30万元のEVは、最終的にどのメーカーも負け組になる可能性があるといいます。

 EVシフトに課題に期待、熱狂し過ぎただけのような気がします。参入メーカが増えたにもコストは思いのほか下がらず、また充電インフラの整備も進んではいないようです。自動車が馬車をあっという間に飲み込み、市場を席巻したようなイノベーションにならないのかもしれません。

 

 

 エンジン車に比し構成部品も少なく誰もが容易に参入可能といわれていました。部品を買い集めることができれば良さそうな雰囲気さえありました。しかし、今を見れば勝ち残れる企業はそう多くなさそうです。意外に技術的なハードルが高いということなのかもしれません。継続的にコストダウンを可能とする製造ノウハウとそれを支える固有技術、高価になっているバッテリーやモーターなどの基幹部品の要素技術とそれを低廉化する技術開発がなければならないのかもしれません。

 グローバル化の進展の反動が現れているような気もします。重要なところを世界の工場となった中国に抑えられ、新たな国際競争環境下ではそれが足枷になっているということはないでしょうか。

 これからのイノベーションとは市場を席捲し、支配することではないのかもしれません。デジタルが市場を席捲したかのように見えましたが、アナログ的なもの、リアルなものが完全に淘汰されていないのですから。デジタルは万能ではなかったようです。急成長を期待し過ぎることが間違いなのかもしれません。もうそんな時代ではないということであるのかもしれません。

 

「参考文書」

テスラの納車台数、予想を大きく下回る-前年比減少は2020年以来 - Bloomberg

「シャオミカー」450万円でTesla対抗くっきり、発売27分で5万台受注 | 日経クロステック(xTECH)

 

混迷深める世界、変わる中国に「もしトラ」、失政が続く日本

 中国の全人代で、成長率の目標を5%前後とすると李強首相が表明していました。また、AI 人工知能や宇宙など将来の競争力に不可欠な産業を育成すると語り、海外投資家の撤退を食い止めるため、製造業や一部サービス業への参入を自由化する方針を示したそうです。

中国、外資に製造業開放の方針 投資促進には実践必要との声も | ロイター

李氏は量子技術や生命科学といった分野を切り開き、戦略的産業発展目標を達成するための科学技術プログラムを立ち上げるほか、ビッグデータや商業宇宙飛行、AIへの取り組みを強化すると表明した。(出所:ロイター)

 

 

 経済の減速、反スパイ法の施行などによる失望より、再成長への期待が膨らめば、海外企業の逃避に歯止めがかかるのでしょうが、その兆しは見えないようです。それよりは、中国は中国なりの道を歩んでいくことになりそうです。

時価総額1000兆円消失すらかすむ、中国から届いた「最悪のニュース」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

国家安全省は最近、中国経済や市場の見通しに関して批判的な見解を広める者を見張っていると明らかにした。「虚偽の言説」によって「中国経済をおとしめる」言動をするな、という背筋の寒くなるような警告は、アダム・スミスに始まる近代経済理論とはかけ離れた毛沢東的な発想だ。そしてこれは、中国の影響力が高まるなかで非常に厄介な問題を引き起こしている。(出所:Forbes)

 資本市場においては、透明性が重要であるはずなのに、それに逆行するブラックボックス化する動きといいます。現実、著名なエコノミストやジャーナリストの論評が中国のネット空間から削除されているそうです。こうした行為は、リスクや不正行為に対するメディアの監視機能が働かなくなる危険性が高まり、資金流出を止め、反転させることにならないといいます。

 先進国の支持を得るよりも、体制固めが優先事項なのでしょうか。大きな政治的な混乱もなくそれが着実に進んでいきそうです。

 

 

 すでに複雑で予測不可能な時代といわれていますが、ますます混迷が深まっていきそうです。ウクライナでの終わらない紛争、人権が蹂躙され続け、関係国による調停もままならない中東ガザの危機。それだけでも手一杯のはずなのに、この先、東アジアも混沌していくことになるのでしょうか。

2050年の世界・大予測の著者、「日本の強みを過小評価するな」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 世が安定していれば、深く未来を考える必要がないのかもしれません。しかし、これだけ混沌としてくると、どんな未来が待っているのだろうと気になります。未来予測することが人生設計において不可避な重要なことにも思えます。これからやってくる現実が、個々の人生を大きく左右していくことになっていきそうです。

あなたの人生やあなたが知っている時代を私以上に予測してほしい。私が考える方法は、今ある世界を見て、「人口動態」「資源と環境」「貿易と金融」「テクノロジー」「政府と統治」の5つの構成要素をもって、それらについて判断を下すことだ。そして、その判断のいくつかは間違っているだろう。それでいいし、間違っていることはわかっている。でも、それをベースにして間違っていたら変えて、世界に当てはめていくことを繰り返す。(出所:Forbes)

 

 

 中国の経済失速で米国の優位性が増すとの見方が支配的のようですが、「もしトラ」が政治の不安定化を招くような何か悪作用を起こすことはないのでしょうか。善い悪いは別にして、見方によっては中国は政治的に安定していそうな気がします。

 他方、AIや半導体など先端テクノロジーについても米国が優位性を保っていそうですが、すでにグリーン技術関連では中国が強固なバリューチェーンを築き、それを打ち崩していくにはとてつもない労力と資金が必要になりそうで、この領域では中国が支配的な立場となることも否定できそうにもないようです。

 さて日本はこの先どうなっていくのでしょうか。失政続きで、少子高齢化に歯止めがかかる気配がありません。米国のように移民に対しオープンで、優秀な人材を引きつけるような魅力があれば、米国同様に先端テクノロジーを生み出す場所になれるのでしょうが、今の政治では天地がひっくり返らない限り、それも夢のまた夢でしかないでのしょう。失政を素直に認めることができれば、そこから新しさを生まれそうな気もしますが、それを実現できるよう環境は育つことはあるのでしょうか。

 政治の健全性と安定が求められていそうです。一強他弱は数における安定は実現するのかもしれませんが、不健全性を生み、偏った政策が安定性を喪失させ、将来不安を助長させているようい思えてなりません。そうしたものがリセットされ、持続的で安定的な経済成長が実現するのなら、社会保障費も安定化し、また社会的な弱者やケアにも必要なおカネが回っていくことになりそうな気がします。政治改革が待たれているようです。

 

「参考文書」

中国成長率目標は5%前後で据え置き、経済モデル転換確約 全人代開幕 | ロイター

中国、量子技術・AI開発強化へ 技術自給達成目指す | ロイター

米国の新たな措置、苦境の中国経済に追い打ち | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

株価急落、デフレ懸念、失速する中国経済、日本への影響、なすべきこと

 米国ばかりの強さが際立っているようです。中国経済が翳り、世界一の経済大国の座を巡る争いで、米国は中国をさらに引き離しているといいます。米国による締め付けが功を奏したのでしょうか。

米国、世界一の経済大国の座は盤石-中国に対しGDPリード拡大 - Bloomberg

 中国のGDP国内総生産が米国に追いつき、追い越すという見方が薄れつつあるようです。また、世界全体の時価総額上位500社のうち米国企業が236社を占め、中国企業は35社どまりで3年前に比べ6割減少しているといいます。

 

 

 株価が急落し、中国経済はデフレ圧力にさらされ続けている状態といいます。輸出は低迷し、需要不足も深刻のようです。当局もあれやこれや手を打っているようですが、センチメントを完全に改善するには至っていないようです。

時価総額885兆円失った中国株、習指導部にとって問題の深刻さ露呈 - Bloomberg

中国当局者は昨年1年間、インフラや不動産を重視する成長モデルから内需主導型成長モデルに移行する方針を示し続けてきた。しかし、実際には不動産を離れた金融資源が向かった先は、家計ではなく製造業だった。その結果、過剰生産能力への懸念が高まり、工場出荷段階のデフレを深化させた。(出所:ロイター)

 様々な専門家たちが、中国経済を分析し、この先を予測しているますが、なかなか好材料を見いだせていないようです。それに加え、欧米諸国は自国経済を再工業化しようとし、中国製品に対し規制を強化しています。米国は貿易関税を課し、高性能半導体の輸出を停止して技術的・軍事的進歩を遅らせようとしています。EUはグリーン転換に必要な素材や製品の中国への依存度を下げようとしているそうです。

アングル:中国の過剰生産、欧米との貿易紛争刺激 国内改革も進まず | ロイター

 こうした中国経済の失速が、日本にとってどんな影響となるかか気がかりです。実際に中国に大きく依存する企業の業績には悪影響も出ているようです。しかし、こうした状況は低迷する日本経済にとってはチャンスになるような気もします。

 

 

 多くの専門家が日本経済についても分析し、その処方箋を提言しています。その内容は大方同じようなものが多く、また政府施策の問題点を指摘し、こうあるべきと意見しています。

中国とバフェットが高笑いし、労働者があえぐ国ニッポン | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

安倍、そして岸田の大きな過ちは、日本が海上自衛隊海上保安庁の艦船を増やし、防衛費を積み増せば、中国の習近平国家主席をけん制できると考えたことだ。だが、今日のアジアでは、国内総生産GDP)を大きく成長させることのほうがはるかに重要だ。(出所:Forbes)

 記事内容を借りるまでもなく、やるべきことは明確になっているにもかかわらず、国が怠惰であるがために、停滞のまま抜け出ることができないだけのように思われます。

「日本は中国との経済的なパワーバランスを改善し、それによって中国はできることを制約され、以前のような「平和的台頭」に近い姿勢に戻る可能性も高まるかもしれない」と、『The Contest for Japan's Economic Future』の著者カッツ氏は主張し、「日本はこれまで、経済的な苦難のためにアジアでの影響力を低下させ、その結果、中国に対するカウンターウエイトとしての役割も低下させている」とも指摘しているそうです。

 

 

 現在の中国の状況からして、好機が到来しているように思えてなりません。しかし、相変わらず政府の動きは鈍重のままです。「不祥事続きの政権は本来やるべき大胆な経済改革に踏み込まず、日本経済はリセッション(景気後退)入りする可能性が高まっている」といいます。政治を変えなければならないようです。

 

「参考文書」

アメリカ時価総額、世界5割へ 中国停滞で20年ぶりマネー集中 - 日本経済新聞

中国株式市場でパニック売り-主要株価指数、急落後に下げ幅縮小 - Bloomberg

中国の消費者物価、2009年以来の大幅下落-デフレ圧力拭えず - Bloomberg

「中国経済」依然として見通し暗く 輸出微増も根強いデフレ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)



総統選を終えた台湾、未来の選択、民主主義の意義

 台湾で総統選が行われ、与党 民進党の頼清徳副総統が当選しました。蔡英文総統の路線が継承し、米国や日本との連携を重視、中国に対しては厳しく対峙していくことになりそうだといいます。

【解説】 中国が嫌う台湾の次期総統、頼清徳氏はどう進むのか - BBCニュース

 接戦と予想されていた事前の世論調査と異なり、民進党が予想を上回る大差で勝利したといいます。投票率は71%超。民主主義とはこうあるべきなのかもしれません。それに対して、台湾が頼りにする日本や米国の方が民主主義が劣化していそうです。

 

 

 「台湾はすでに独立した主権国家なのだから、独立を宣言する必要はない。その名前は中華民国、つまり台湾だ」、蔡総統路線の継承し、頼氏は選挙期間中に繰り返しそう述べたといいます。

 一方、国民党は、中国が台湾を攻撃するのではないかという、人々が現実に抱いている恐怖心をあおる選挙活動を展開していたそうです。

 台湾の有権者は中国による危険を認識しているし、中国との対話も望んでいる。しかし、若い有権者は、自分は中国人というよりも台湾人だと自認するようになり、そういう人々は国民党を支持しなかったそうです。

 もし国民党が勝利したなら、中国は台湾への軍事的な威圧をやわらげていた可能性もあるといいます。ただそれは台湾が脆弱なることを意味し、武器などを提供してきたアメリカをはじめとする同盟諸国が台湾政策を見直すことになる可能性もあったとされます。

 この選挙結果に、当然中国は不満を顕し、台湾海峡の緊張がますます高まる可能性が否定できそうになくなっているようです。

 

 

 自分たちの未来を選択できることは民主主義で素晴らしさなのでしょう。ただ台湾人による選択が地政学リスクとなって様々な問題を引き起こし、その解決の難しさを感じます。

 日本においても、こうしたことが論点となって、正々堂々議論されるべきではないでしょうか。国会を牛耳るために手段を選ばない政党が、ただひたすら米国にすり寄ったり、陰でこそこそ防衛費の増額を決めたりするのはもうやめるべきなのでしょう。

 さて、その自民党の改革は進むのでしょうか。安倍派の裏金問題が矮小化され、政治改革が蔑ろにされていく危惧があるようにも感じます。頼りない野党が対抗馬になって奮闘しなければ、この国の民主主義は機能せず、このまま悪い流れが止まることがないのかもしれません。

米国大統領選

 共和党の予備選がアイオワ州で始まり、いよいよ米国で大統領選びのプロセスが始まりました。

「バイデンに勝てる候補」 ヘイリー氏、トランプ氏猛追―米大統領選:時事ドットコム

 独走状態にあるといわれるトランプ氏が、自分さえばよければよいとの論理で、根拠のない主張をしたりして対抗馬を攻撃しているようです。

 米国も日本も似たり寄ったりと感じます。攻撃される側がその無理な主張を跳ね返さなければならなくなっています。こんなことでは自分たちの未来を選択できるのが難しくなっていくばかりです。政治改革が求められています。

 米国民は11月、どんな選択をすることになるのでしょうか。誰が選ばれても、翻弄されることになることは間違いなそうですが。

 

「参考文書」

台湾総統選、与党・頼氏が当選 対中強硬路線継続へ―史上初の「3期連続政権」:時事ドットコム