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「色」が消えはじめる売り場 — ナフサショック 官邸と現場の実感はなぜ乖離するのか

私たちの日常の風景から、確実に「色」が消え始めています。

共同通信などが報じたところによれば、不二家は「カントリーマアム」や「ホームパイ」といった主要なお菓子10品目のパッケージについて、使用する色数を削減し、商品名のロゴ部分を白黒基調にするなどのデザイン変更を7月上旬から順次実施するとのことです。

【速報】不二家、菓子の包装の色削減へ|47NEWS(よんななニュース)

原材料や包装資材の価格高騰が続くなか、商品の価格据え置きや安定供給を維持するための、企業努力の末の苦肉の策とされています。

これは単なる一企業のコスト削減というニュースではありません。お菓子のパッケージを彩るインキの原料である、原油由来の「ナフサ」の価格高騰が、私たちの生活の中から「彩り」を奪っていくことがいよいよ加速していくという号砲なのかもしれません。

値上げという数字の負担だけでなく、目に見える現実そのものがここまで変化し始めている今、私たちは身の回りに溢れる情報をどのように読み解くべきなのでしょうか。

錯綜するデータ:官邸と現場の「実感」

この「彩りが失われる」現場の苦境のすぐ裏側で、統治の側からは全く異なる言葉が発せられています。

高市首相は6月2日に開かれた中東情勢に関する関係閣僚会議の席上で、原油由来のナフサなどの石油製品について「年度を越えて供給可能」、つまり2027年4月以降も日本国内に必要な数量は確保できるとの見通しを示しました。

高市首相、ナフサなど石油製品「年度越えて供給可能」 - 日本経済新聞

国が示す「物量は確保されている(=棚からモノが消えるわけではない)」という安心のデータ。その一方で、現場の企業は「高すぎてこれまでの形を維持できない」と、パッケージを白黒にする苦渋の決断を下す。

ここで必要なのは、どちらが嘘でどちらが本当かという単純な二項対立で裁くことではありません。「数量の確保(パニック防止)」という統治側の指標と、「購買力・コスト(持続可能性)」という現場の生存に直結する指標が、決定的なまでに噛み合っていないという「文脈のズレ」を知らなければなりません。

国は「モノはある」と言い張りますが、現場にとっては価格も重要な指標です。納入と価格にリスクを抱える企業が対策をとるのは当然です。それが値上げであり、色の喪失ということではないでしょうか。政府の現実に目を向けない姿勢、そしてその説明に、多くの国民が拭い難いちぐはぐさを感じるのでしょう。

11.7兆円の為替介入と、160円への逆戻り

では、なぜこれほどまでに現場のコスト(価格)は跳ね上がり続けているのでしょうか。その背景には、もはや小手先の対策では覆せない巨大な市場の現実があります。

政府・財務省は4月末から5月にかけて、過去最大規模となる約11.7兆円もの巨額の資金を投じて為替介入(ドル売り・円買い)を行いました。一時的には円高方向へ押し戻したものの、市場はその効果の限界を見透かしたかのように、わずか1カ月で再び1ドル=160円台の円安へと逆戻りしてしまいました。

【正念場】どうなる金利。激しい円安のゆくえ

米国の根強い高金利の長期化、そしてホルムズショックに伴う原油価格の高止まり。これらが円安要因といわれます。この円安が輪をかけてエネルギー価格を高騰させる事態です。政府は補正予算を新たに組んでガソリン補助金を継続する方針を示していますが、この構造が改善されない限り財政圧迫は自明です。市場は円安基調を変えず、国債売り(長期金利上昇)で警鐘を鳴らしています。

政府がガソリンの店頭価格という「目に見える一箇所」だけを税金で取り繕っても、不二家が直面している工業用ナフサのような、サプライチェーンの末端に潜む原材料全体のコスト高を止めることはできません。部分的な補助金という目隠しによって、構造的な価格高騰という本質的な危機が覆い隠され、先送りにされているのが現実です。

 白黒のパッケージが私たちに問いかけるもの

お菓子の包装が白黒基調になるという現実を前に私たちは、素朴な疑問を感じずにはいられません。

政府は「2027年以降も数量は確保できる」と指標をすり替え、ガソリン補助金を継続するという「目に見える一箇所」だけを小手先で取り繕う説明に終始しています。しかし、その目隠しによって構造的な危機が先送りにされている間にも、サプライチェーンの末端ではコスト高が進行し、市場は円安と長期金利の上昇という形で警鐘を鳴らし続けています。

「なぜ、これほどまでに円安が放置されているのか」
「なぜ、外部環境に左右されないエネルギーへの構造転換を本気で進めないのか」

多くの国民が違和感を抱き、不安を感じ、納得できずにいるのは、まさにこの根源的な問いに対する答えがどこにも示されていないからではないでしょうか。

この前代未聞の事態。それは、政治の言葉にこれ以上惑わされてはならないという「警告」なのかもしれません。

 

 

「参考文書」

資源に乏しい日本、ガソリンは「G7で最安」 補助継続へ補正予算案 - 日本経済新聞

ナフサ由来の化学品、早ければ6月末に不足の可能性-丸紅元社長が警鐘 | TBS CROSS DIG with Bloomberg