Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

【連載:日本はもう一度、世界をワクワクさせられるか?】第1回:CES 2026の衝撃 ― 陰りゆく日本の現在地

 米国・ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」。閉幕後、日本のメディアを駆け巡ったのは、「技術立国・日本」の地盤沈下を象徴するような数字でした。

「日本企業のアワード数はわずか7件、対する韓国は200超」

 この圧倒的な差は、単なるスペックや技術力の差ではありません。それは、日本が誇る「ものづくり」が、AIという魂を吹き込まれないまま放置されているという、世界からの厳しい警告でもあるのです。

「家電」を捨てた日本、「未来」を語る中韓

 かつてCESの主役といえば、ソニーパナソニックが披露する最新のテレビや家電でした。しかし、今年の会場でその光景は一変しました。

CESで見た「技術立国」日本の陰り アワード数はわずか7件、韓国は200超:日経ビジネス電子版

 パナソニックのブースから「家電」が姿を消し、サプライチェーン管理ソフトやデータセンター向けインフラといった、目に見えない「B2B」の展示が中心となっていました。一方で、韓国・現代自動車ボストン・ダイナミクスの技術を背景に、人型ロボットの「年3万台量産」という狂気的なまでの具現化を宣言した。LG電子は「家事ゼロの未来」を掲げ、自律走行する家事ロボットを堂々と披露していました。

 日本メーカーが消費者の「目に見える未来」をデザインすることを諦め、B2Bという「裏方」へ退却しているように見える一方で、中韓の勢力は「AIという知能を、いかに物理的な身体(ハードウェア)に宿すか」というフィジカルAIの覇権争いに突き進んでいます。

放置された「空席」と、不在の構想力

 ここで一つの疑問が浮かびます。かつての電機メーカーが去った「消費者の未来」という空席を、誰が埋めるのか?

 ソフトバンク楽天といった、日本のデジタル経済を牽引するサービス企業たちはどうか。彼らは投資家としては成功し、国内のポイント経済圏では無敵の強さを誇ります。しかし、CESという世界の舞台で、GAFAMのように「自社のサービスを最大化するための独自のハードウェア」を、世界を驚かせるナラティブ(物語)と共に提示できているのでしょうか。

 ソフトバンクはAIへの投資を語るが、そのAIを「日本人の生活を支える身体(ロボット)」として実装する意志は見えない。楽天は配送効率を語るが、それが街角を動く「ワクワクするメカ」として具現化される予感は薄い。

 今の日本に足りないのは、効率的な経営でも、優れた部品でもありません。**「このハードウェアで、世界をこう変えてやる」**という、かつての創業者が持っていたような、狂気的なまでの「具現者」としての意志ではないのでしょうか。

競争は再び「物理世界」へ戻ってきた

 しかし、絶望すべきではありません。テクノロジーのトレンドは、画面の中の「生成AI」から、現実に触れられる「フィジカルAI」へと移っています。競争は、日本が本来得意としていた物理世界、つまりハードウェアの領域に戻ってきています。

 TDKが発表したARグラス「i-Sight」の映像美や、ソニーが「AFEELA」で見せた、映像・音響・ゲームが究極のレベルで融合した移動空間。日本には、世界を熱狂させる「パーツ」と「感性」はまだ残っています。

 私たちの生活を塗り替える新しい物語とハードウェアの誕生が待たれます。

 

「参考文書」

フィジカルAI大導入時代 現代自がロボ年3万台、NVIDIAは自動運転 - 日本経済新聞

現代自動車、28年に人型ロボ3万台生産体制 EV部品組み立てに導入へ | 日経クロステック(xTECH)

LG電子の家事ロボット、5本指を駆使 家電と連係して洗濯補助 | 日経クロステック(xTECH)

(写真:MTG