現在、日本の路上を走るEVバスの約7割をBYDを中心とする中国勢が占めています。低価格とスピードを武器に浸透した「中国製EV」に対し、2025年、その持続可能性に疑問符が打たれる事態も起きています。
- 品質と供給網のリスク: 2025年の大阪・関西万博では190台ものEVバスが投入されましたが、一部の車両で不具合や点検の問題が指摘されました。公共交通という「止まってはいけない」インフラを、ブラックボックス化した海外製ハードに依存し続けることの危うさが露呈したのです。
- BYDの日本専用設計: 一方で、BYDは日本の中型バス規格に合わせた「J7(車幅2.3m)」を投入するなど、適応の速さを見せています。
🛡️ ハードウェアの逆襲:いすゞ「エルガEV」に見る国産の意地
この攻勢に対し、いすゞ自動車が投じた一石が**「エルガEV」**です。
- 「フルフラット」という高度な設計思想: 海外製EVバスの多くが後部に段差を残す中、いすゞはモーター配置を工夫し、最後部まで段差のない**「完全フルフラット」**を国内で初めて実現しました。これは、高齢化社会の日本において「車内事故ゼロ」を目指す、日本のバス文化に根ざした独自の回答です。
- 保守網の圧倒的優位: 「壊れない」だけでなく、「壊れてもすぐ直る」こと。全国津々浦々に張り巡らされたいすゞのディーラー網は、都市OSを支える物理的なセーフティネットです。
🧠 運行OSの参戦:NTTモビリティとマクニカが描く「脳」
EVバスを動かす「脳」の領域では、通信巨人とテクノロジー商社が主導権を握り始めています。
- NTTモビリティ(2025年12月設立): 2028年度までの「レベル4自動運転バス」の社会実装を宣言。慢性的な運転手不足(2024年問題)に対し、車両供給から遠隔監視、ルート最適化までを一括で受託する。これにより、バス会社は「車両を保有する」ことから**「安定した運行をサービスとして買う」**形態へ移行します。
- マクニカのオーケストレーション: 「everfleet」などの運行管理システムを通じ、異なるメーカーの車両や信号機、スマートポールを統合。ハードの国籍を問わず、**「日本の都市空間に最適な運行ルール」**をソフトウェアで規定します。
🏁 日本製ハード×都市OSという「輸出型インフラ戦略」
日本が目指すべきゴールは明確です。「信頼性の高い日本製ハード(いすゞやトヨタのe-Palette等)」と「緻密な運行・通信インフラ(NTT、トヨタ等)」が不可分に融合したパッケージの構築です。

- 鉄道輸出モデルの再来: かつて日本の新幹線が「車両+運行システム+保守」をセットで輸出し、世界最強の信頼を築いたように、次世代の公共交通もまた、この**「三位一体のサプライチェーン」**で勝負すべきです。
- 都市OSとしての完成度: ハードウェアが優れているだけでは勝てず、ソフトウェアだけでも街は動きません。「ハードの革新」と、「社会実装のスケール」が重なったとき、世界に輸出可能な「次世代都市インフラ」が完成します。
💡 サプライチェーンを「信頼の主権」で塗り替える
海外勢の低価格攻勢を無力化するのは、価格競争ではなく、**「絶対に止まらない、日本という社会に最適化された信頼の厚み」**です。
「公共交通の奪還」とは、単にバスを日本製に戻すことではありません。日本の道路事情を最も知る者が、ハードとソフトを融合させ、未来の街の姿を自ら描き直すプロセスそのものなのです。これこそが経済安全保障のあり方ではないでしょうか。

次回予告: ラストワンマイルの革命 — 超小型モビリティが変える「街のカタチ」 公共交通から枝分かれする、さらに細かな移動の血流。BYD「ラッコ」の襲来に対し、日本のスタートアップはどう立ち向かうのか。物理的な形状(ハード)の変革から、都市の再編を読み解きます。
「参考文書」
EVモーターズ・ジャパンが日本国内で販売した電気バスに何が起きているのか | EVsmartブログ
NTTモビリティ発進、28年度にレベル4自動運転 まずは路線バスで | 日経クロステック(xTECH)
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