Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

【未来の実験場】インディカー×スーパー耐久 — 「燃料」が広げるサプライチェーンの多様性

 米国のインディカー・シリーズフォーミュラカーを使用したレースでは北米最高峰に位置します。 アメリカ合衆国を中心に開催されるモータースポーツです。このレースでは、長年にわたりバイオエタノールを使用してきましたが、2023年からシェル(Shell)が供給する**「100%再生可能燃料」**を全車に導入しました。これは、単なる「環境への配慮」を超えた、極めて現実的なSC戦略です。

 

 

🌽 インディカーの現実解:100%再生可能燃料による「今」の防衛線

  • 「ドロップイン」の強み: 既存のシボレーやホンダの2.2L V6エンジンに大きな変更を加えることなく、燃料を入れ替えるだけでCNを実現。
  • 第2世代バイオエタノールの活用: 食料と競合しないサトウキビの廃棄物などを原料とし、ライフサイクルでのCO2排出量をガソリン比で60%以上削減しています。
  • SCの継続性: 輸送・貯蔵インフラをそのまま転用できるため、コスト増を最小限に抑えつつ、米国全土のサーキットへ「クリーンなエネルギー」を届けることに成功しています。


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🏁 日本のスーパー耐久:水素エンジンと「エネルギーの運び方」

 一方、日本の**スーパー耐久S耐)は、世界でも類を見ない「走る実験室」となっています。トヨタ(ルーキーレーシング)が率いる水素エンジン「カローラ」の挑戦は、技術以上に「サプライチェーンの限界」**を突破しようとしています。

  • 「液体水素」への進化: 気体水素から、よりエネルギー密度の高い「液体水素」へとシフト。これにより、航続距離とピット作業時間をガソリン車に近づけようとしています。
  • 輸送と貯蔵のSC構築: 岩谷産業などと協力し、マイナス253度という極低温の液体水素をどう運び、どう安全にピットで充填するか。この「極低温ロジスティクス」の構築こそが、S耐での最大の成果です。
  • 合成燃料の同時実証: 水素だけでなく、マツダSUBARUトヨタ(GR86/BRZ)が、使用済み食用油や微細藻類由来の**「次世代バイオディーゼル・合成燃料」**で参戦。既存エンジンの「資産」を活かすための多様なパス(選択肢)を検証しています。

🛡️ 「敵は炭素であり、内燃機関ではない」

トヨタ豊田章男会長が語るこの言葉は、インディカーS耐の両方に共通する哲学です。

  • 内燃機関(ICE)サプライヤーを守る: エンジン自体を使い続けることで、ピストンやクランク、インジェクターといった精密部品を作る日本の巨大なサプライチェーンを「脱炭素時代」にも存続させることができます。
  • 燃料の多様性によるリスク分散: 石油、エタノール、水素。供給源を多様化させることで、地政学的なエネルギーリスクや規制の変化に対応できる**「レジリエンス(復元力)の高いSC」**を構築しようとしています。

 

 

 📊 比較:インディカー流 vs 日本のS耐

項目 インディカー(米) スーパー耐久(日)
主役の燃料 100%再生可能燃料(バイオ) 液体水素、次世代バイオ、合成燃料
SCの重点 既存インフラの「即時転用」 未来のインフラの「ゼロからの構築」
狙い 現実的なコストでのCN達成 技術の極限追求と多様性の確保
日本への示唆 大量導入時のコスト・物流ノウハウ 水素社会に向けたフロントランナーとしての知見

💡 SCマネジメントとしての「マルチパス」

 インディカーの「確実な一歩」と、日本のS耐の「未来への挑戦」。これらから学べるのは、SCマネジメントに「唯一の正解」は存在しないということです。

 ある地域ではバイオ燃料が最適であり、別の地域では水素が最適かもしれない。モータースポーツを通じて、異なる燃料供給網を並行して磨き上げること。それこそが、将来の予測不可能な市場環境において、日本の製造業が生き残るための「真の競争力」となります。

次回予告: 第3回は、燃料から「情報」へ。 「フォーミュラE:SDV(Software Defined Vehicle)の最前線」 物理的なピット作業ではなく、クラウド経由のOS更新で勝敗が決まる。データが支配する新たなSCの姿を追います。