「トヨタ自動車」、言わずと知れた世界最大の自動車メーカのひとつで、日本が代表するグローバル企業です。
環境団体からは、HVハイブリッド車を主に販売していることから、脱炭素への取り組みの甘さを指摘されています。メディアは各国における規制や、米テスラや中国BYDなど台頭するEV新興勢力と比較し、トヨタがおかれている厳しい現状を伝えています。
アングル:トヨタとテスラの巨大工場、命運握る米排ガス規制 | ロイター
そんな中、佐藤新社長がメディア各社のインタビューに応じ、「EV 電気自動車への取り組みが遅れている」との指摘について、足元の販売台数で一部他社と開きがあるのは事実とし、プラクティカル(実質的)な観点から取り組みを進めており、むしろ他社の先を行っている面もあるとの見方を示したといいます。
EV展開では競合他社が大きく先行している。米EV専業メーカー、テスラの22年販売は前年比40%増の約131万4000台。中国のBYDの同年のEV販売は同2.8倍の約91万1000台だった。(出所:ブルームバーグ)
繰り返されるEVについての質問に対し佐藤社長は、「我々はEVを含め全部本気でやっているんです」と応じ、「世の中の動きが非常に速いのは事実です。そこに対して柔軟、迅速に対応すべきだということは我々も思っていますし、危機感を持って臨まないといけないと思っています」と答えたといいます。
また、「逆に教えてほしいです」と切り出し、「皆さんがどうしてそんなにEVのことを知りたいのか。ニュース性ですか」と逆質問したそうです。度重なるEVについての質問に「コミュニケーションの何がいけないのかと感じます。改善したいです。発信方法についてぜひアドバイスをいただきたいです」とも語ったといいます。
「なぜEVのこと知りたい?」 トヨタ佐藤新社長、逆質問の真意:日経ビジネス電子版
静かに沈みつつある衰退期を迎えたような日本。閉塞感から抜け出ることができず、その上、トヨタまでが凋落するようなことがあってはならない......との思いが先走り、メディアもEVシフトを加速する迫ったりしてしまうのでしょうか。
ブルームバーグによれば、佐藤社長はトヨタのEVの出遅れについての指摘は「裏を返すとトヨタ頑張れというエールだとも思える」とし、しっかり市場に向き合ってEVを加速していきたいとしたそうです。
広報活動
コミュニケーションの難しさ、企業広報のあり方を考えさせられます。発言次第で株価は動き、時にブランド価値を棄損させることもあります。
トヨタ、佐藤新社長就任で「広報戦略」激変の訳 | 企業経営・会計・制度 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
多くの経営者が、その苦労を回顧録で語っています。PR、広報がうまくはまれば、その企業はよりよく理解され、世論に良い影響を与え、企業業績にもポジティブに反応していきます。
しかし、それがマスメディアの力量次第になってしまうことはあってはならないのでしょう。あくまでも公平公正を旨として厳しく切り込んでいく姿勢が求められているはずです。
カイゼンの本質
佐藤社長はしきりに、TPS トヨタ生産方式に言及し、それによって積み上げてきたトヨタのものづくりのカイゼン文化にもふれています。また、生産のための技術開発力などトヨタの強みを強みを説明し、「世の中がEVに向かうにあたり、設計的な構造の合理化と、造る側(生産現場)における合理化の合わせ技によってどれだけ生産性を高められるかがポイントです」と語ったといいます。
悪いところや劣ったことを改めて、今よりよりよくするという「カイゼンマインド」が企業文化として定着しているのであれば、今遅れていることも、いずれ挽回されていくように思えますし、トヨタが主張する「マルチパスウェイ」もまた実現していくように思えます。それが市場がスピード感をともなっているかの問題はあるのかもしれませんが。
しかし、それもまたカイゼン活動によって克服されていくのでしょう。カイゼンに終わりはないといいます。
「参考文書」
トヨタ社長、EVでは現実的な取り組み、他社に先行も-批判に反論 - Bloomberg
中国の自動車産業は覇権を握るのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン