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【カーボンニュートラル】国内で走る中国製EVバスが脱炭素を先導する日はやってくるのか

 

 中国BYD(比亜迪股份有限公司)、その名前を知ったのはもうだいぶ前のこと。単にBYDに注目してのことだったのか、2次電池(蓄電池)に興味をもっていたからだったのか、その経緯さえよく覚えていない。

 その後、米国の投資家ウォーレンバフェット氏が出資したと聞き、これから2次電池とEV電気自動車の時代が到来するのかもと思ったものだが、そのときはまだ確信できていなかった。後になって、BYDが米国に進出し、EVバスを走らせていると知ったときは衝撃を受けた。

 

 そのBYDのEVバスが日本でも走行しているという。千葉市稲毛区で平和交通がBYD製のEVバスを運行させているとハフポストが紹介する。そのバスは、今年5月から使用され始めたという。

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(写真:BYDジャパン

「バス事業は車両が仕事道具。排気ガスが環境に与える影響は大きいと、会社全体で課題感を持っていました」と平和交通の藤原浩隆・課長代理は振り返る。

古いバスの買い替え先として「EV」が浮かんでいたところ、日本進出していたBYDから声をかけられた。そこから2年余りに及ぶ検討が始まった。
「一番重要視したのは安全性です。例えば電池に釘を刺しても爆発しないなど、耐久テストの結果も重視しました」 (出所:ハフポスト)

www.huffingtonpost.jp

「日本は海外から入ってくるものには警戒心が強い。一番重視されるのは品質に問題がないか、でしょう。その点、公共交通の車両は最もストレス(負荷)をかけて運行されます。使われて問題がなければ品質も評価されると考えました」

と語るのはBYDジャパンの花田取締役副社長。そして、BYDのバスの一番の武器は、「技術力」ではないという。

アフターサービスです。

EVは比較的シンプルな構造のため、いずれ後から参入するであろう自動車と大きく品質の差は出ません。ではどこで差が出るか。公共交通機関とは納入した後のお付き合いの方が長い。そこでいかに満足してもらうかです。 (出所:ハフポスト)

 少しばかり脅威と感じる。公共交通機関の一部となり、一気にシェア拡大を狙うのではなく、手堅く実績作りながら浸透していく戦略に強かさを感じずにはいられない。

 

 そのBYDは米国ロサンゼルスでは、電動バス工場を運営している。

「生産場所は米国内、そして、製品はバッテリー式で環境にやさしい、バイデン大統領が目指す理想を体現しているかのようだ」とロイターが紹介する。

 が、その一方で、当局による規制があるともいう。 

BYDノース・アメリカは、公共交通事業者が電動バスを購入する際に米政府が支給する補助金の適用対象から除外されている。

その理由は、BYDなどを念頭に置いて、中国政府が所有・管理するか助成している企業に連邦補助金を使用することを禁じた「修正米国防授権法」の存在にある。 (出所:ロイター)

jp.reuters.com

 他方、BYDを擁護する動きもあるようだ。ロイターによれば、労組もBYDを援護射撃し、「板金工組合」の下部組織を統括するウィリー・ソローザノ氏が「この手の問題は中国が雇用を奪っているという話ばかりだが、(BYDは)雇用を創出し、人々にキャリアを提供している。みんな充実した生活を手に入れ、家を買う人もいる。地域社会全体が恩恵を受けている」と述べたという。

地方の公共交通運営団体からは、BYDの排除はプラスに働かないとの声が聞かれる。

ロサンゼルス郡地域に公共輸送サービスを提供し、既に保有するバス約85台のほぼ全てをBYDの電動車に切り替えたアンテロープ・バレー・トランジット・オーソリティーのメイシー・ネシャティ最高責任者は、最も競争力のあるBYDを市場から追い出せば、残ったメーカーが共謀して価格をつり上げる事態になると訴えた。 (出所:ロイター)

 

 国内ではトヨタグループの日野自動車が、BYDと連携、電動ユニットや車両の開発で協力しているという。

環境技術を巡る協業の数も増えているが、「(日野、BYD、トレイトンがそれぞれ強みとする)分野ごとにすみ分けはできつつある」(小木曽氏)と話した。 (出所:日本経済新聞

www.nikkei.com

 バスと言えば、日野やいすゞの独壇場かと思っていたが、脱炭素が急務となるなかで、そのEV化は進むのだろうか。国内メーカが二の足を踏んでいるうちに、その勢力図、シェアに変化が起きるのかもしれない。

 米中の地政学リスクが高まる中で、この先、中国メーカとの協力体制のあり方も問われることになるのだろうか。国内メーカの戦略とその対応が気になる。

 脱炭素に、地政学、ものづくりのバリューチェーンは今後どのように変化していくのだろうか。

 

「参考文献」

japanese.china.org.cn