脱炭素が求められる社会になり、投資の世界でも今やESG投資が当たり前になりつつあります。
脱炭素を加速させようと、それに比例して電化されるものが増え、ますます電力需要も増加することが見込まれているようです。こうした状況を鑑みれば、省エネは今まで以上に求められるテクノロジーになっていくのかもしれません。
世界的に半導体が不足している状況です。この背景にも脱炭素の影響はありそうです。半導体が高性能化すれば、省電力化されるのが基本です。機器装置の省電力化にも半導体は必須なものになっています。
「ガリウムナイトライドが安価に手に入ればな」
と聞いたのは、とある中小の電源を開発するメーカを訪問したときのことでした。もうだいぶ前のこと。その会社では、ワイヤレス電力伝送技術を開発していました。その実用化には必須のデバイスと聞き、気になる存在になりました。
GaN窒化ガリウムとは
「ガリウムナイトライド(GaN)」、窒化ガリウムのことをいいます。ガリウムの窒化物であり、青色発光ダイオード(青色LED)の材料として用いられる半導体です。
以前からその性能から注目されていましたが、なかなか普及には至っていませんでした。脱炭素の影響もあってのことでしょうか、パワー半導体など様々なデバイスへの応用が期待されるようになってきました。
GaNで小型する充電器
急速充電器などを手がける「ANKER」は、ノートPC用充電器に”GaN”を採用し、一般的65W出力の充電器に比べ約60%のコンパクト化を実現したといいます。
GaN(窒化ガリウム)素材の導入で、ここ2〜3年でアダプターってすっかり風変わりしましたよね。どんどん小型化高効率化が進み、気がつけばアダプターを持ち運ぶのも苦じゃなくなってきています。 (出所:GIZMODO)
GaNによる自動車業界への波及効果
欧州では、半導体大手のSTマイクロエレクトロニクスが自動車のルノーグループと戦略的提携を結び、EV電気自動車向け次世代パワー半導体の安定供給を図ると発表しました。
両社はSiC(炭化ケイ素)デバイス、GaN(窒化ガリウム)トランジスタおよび、関連するパッケージやモジュールへのルノーの技術ニーズを理解した上で、小型/高効率のモジュール型コンポーネントを共同開発していく。 (出所:EETimes)
「これらのコンポーネントは45%の電力損失削減や、電動パワートレインにおける30%のコスト削減に大きく貢献し、低コストかつ高収益性を持ったEV/HEVを普及させるという当社の目標達成をサポートするだろう」と、ルノーのCEOがコメントしています。
そのルノーも、2050年までに全世界でカーボンニュートラルを実現するという目標を設定しています。
まとめ
国の 「半導体・デジタル産業戦略」でも、GaNやSiCなど超高効率の次世代パワー半導体の実用化に向け、研究開発支援、導入促進のために、半導体サプライチェーンの必要な部分に設備投資支援などを実施するとあり、「2030 年までには、省エネ 50%以上の次世代パワー半導体の実用化・普及拡大を進め、日本企業が世界市場シェア 4割(1.7 兆円)を獲得することを目指す」としています。
GaNなど次世代パワー半導体が早期に立ち上がり普及し始めると、ANKERのような意外な恩恵がもっと増えるかもしれません。