東京圏で初の「人口流出」の事態が起きたという。共同通信によれば、7月の外国人を含む人口移動報告で、埼玉、千葉、東京、神奈川の東京圏から他の道府県への転出が転入を上回り、人口流出に当たる「転出超過」となったことが分かったという。2013年7月以来初めてだという。東京都への転入が減り、2カ月ぶりに都が2522人の転出超過となったことが影響したと共同通信は伝える。
この状況はしばらく続くことになるのだろうか。
危機が起こるたびに人々の行動に変化が生じるという。1923年の関東大震災でも、東京に変化があったようだ。
震災後10年にもたたない間に、半数以上の呉服商が神田から姿を消してしまうという非常事態が起きたという。そんな中、神田でいち早く頑丈なコンクリートの店舗を建設し、営業を再開した伊勢丹は、経営危機に陥ることになる。
PHPオンライン衆知は、新宿伊勢丹の歴史から、「人の流れの変化」によって変わる都市を伝える。
突発的で大きな危機に直面した際、多くの人は、「急いでもと通りに戻そう」と行動しようとするという。未曾有の被害に対して、目先のことを優先して生き残りを図る、という合理的な判断と、記事は指摘する。
「1日でも早くもと通りに戻したい」「もとに戻れば、また同じ日々がやってくる」と考えるのが、人間の思考回路だからです。しかし、未曾有の危機は、しばしば「人々の行動」や「街の構造」を大きく変えてしまうことがあります。(出所:PHPオンライン衆知)
「街そのもの、社会そのものを揺るがす大きな危機が襲い掛かったときには、目先の復興だけでなく、構造の変化にも気を配らなければならない」
関東大震災以降、東京に暮らす人々は「郊外への移住」を進めたために、従来の繁華街であった神田という土地の集客力が低下していたのです。震災前の繁華街の中でも、神田の凋落は特に著しいものでした。 (出所:PHPオンライン衆知)
大きな危機によって人々の価値観が大きく変わることもあり、この変化に対応できるかどうかが、明暗を分けるのですとPHPオンライン衆知はいう。
人口流出する「東京圏」では変化が始まるのだろうか。建築家の隈研吾さんも、このコロナを経験することで従来の東京の姿の疑問をかんじられたのだろうか。
20世紀型のオフィスや工場、都市は「集中すること」に価値があったという。「大きな箱」に人が集まって働くことが効率的だと考えられ、その方法が現代まで惰性で続いてきたと隈研吾さんは日経ビジネスのインタビューに答える。
しかし、今日の技術ならば都市部に通勤しなくてもリモートワークで仕事ができます。これからは「一極集中主義」と「経済活性化」が一体であるという考え方が成立しなくなります。
コロナ禍は20世紀型の構造から脱却するきっかけになるでしょう。
働き方や暮らし方などについて、人の意識も変わらざるを得ません。 (出所:日経ビジネス)
徳島県上勝町、ゼロウェイストにチャレンジする街だ。そこに今年5月、「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」が開業したという。2020年3月、大学を卒業後、上勝に移住し、この「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」で働きはじめた女性がいる。
WWD Japanが、その女性 大塚桃奈さんにインタビューする。
大学では環境工学を勉強し、短期留学で世界各地を見て回り、自然に近い暮らしに触れ、モノを大量生産し、使った後に捨ててしまうというサイクルに疑問を感じるようになったという。
その後、環境循環型ビジネスには可能性があること、欧州では若い世代が取り組んでいることを知り、環境ビジネスにより関心を持ったことが、「ゼロウェイスト」の街上勝に移住するきっかけになったという。
上勝町は過疎化が進んでいるので、新しい拠点が誕生したのをきっかけに、町外から移住したり、ビジネスをしたり、体験しに来る人が増えることを願っています。
ここのコンセプトが「ごみから学ぶ」なので、上勝町と一緒にゼロ・ウェイストに取り組んでもらえる企業とのコラボをたくさん生み出していきたいですね。 (出所:WWD Japan)
コロナばかりでなく、世界もまた大きく動き始めている。もしかしたら、今、経済を作り替えていく機会なのかもしれない。ただ単に「経済再生」をいつまでも追うのでなく、上勝町のように、ひとつ何か理念やビジョンを掲げて、新しい社会を作り上げていくほうがよさそうな気がする。
誰かと論争するより、誰かと合意するほうが、はるかに得になる。(ウォーレン・バフェット)
「グリーン・リカバリー」とか、「SDGs」という言葉がキーワードなのかもしれない。