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日本企業は、アップル、グーグル、マイクロソフトも参加する「CE100」に注目しないのか

 

 アップル、グーグル、マイクロソフトも参加する「Circular Economy 100 (CE100)」という国際イニシアティブがある。このイニシアティブは、「CE: サーキュラーエコノミー」を推進する。

 

 

 「サーキュラーエコノミー」とは

「資源」や「製品」を生産から消費、廃棄にいたるまでの段階を循環させることで、「資源」や「エネルギーの消費」、「廃棄物」の発生を抑制しながら、その循環の中で付加価値を生み出し、経済成長と環境負荷低減を両立させること、いわば、バリューチェーンの変革を目指す。

 

 この 「サーキュラーエコノミー」を推進するのが英国のエレン・マッカーサー財団。国際的かつ協調的に取り組むため、ユニリーバルノーなどをグローバルパートナーとして招き入れ、2013年、「CE100」を立ち上げた。

 


The circular economy

 

CE100に参加する企業は

 CE100 には、企業の他、国や地方政府、大学や研究機関も参加する。参加する企業は、世界の大手化学メーカ、エネルギー関連、自動車関連、食品、一般消費財にアパレル、小売りやIT企業、金融まで広範囲の業界におよぶ。

 

・化学: 独BASF 、米ダウケミカル、米デュポン、三菱ケミカル

・自動車関連ブリヂストンミシュランルノー

・食品コカ・コーラ、ダノン、マクドナルド他

・流通・小売IKEAウォルマート

・アパレルH&MNike

・一般消費材 :P&G、SC Johnson、ユニリーバ

・IT企業他AppleCiscoDellGoogle、HP、IBMMicrosoftPhilips

 

www.ellenmacarthurfoundation.org

 

 

新たなビジネスチャンスを模索する「Co.projects」

 CE100では、他の企業と特定の課題に取り組むために「Co.projects」という場を設ける。すでに多くのプロジェクトの成果が公式文書となって公表されている。CE100メンバー間の専門知識を共有する機会になり、新たなビジネスチャンスを共同で調査することも可能のようだ。具体的な企業間コラボもこうした場で生まれているということだろうか。

  

「Co.projects」の具体例

・HP、IKEAPhilipsらによる「3D プリンターでつくるスペアパーツ

アリゾナ州立大学、eBay、ウォルマートらによる「小売業者と消費者との関わり」 

DellPhilipsRenaultらによる「プラスチックのクローズ・ド・ループ・リサイクル

コカ・コーラマクドナルド、Dellマイクロソフト、グーグルらによる「持続可能な水管理

ブリヂストンDell、GE、HP、Philipsルノーらによる「再生品が新製品に与える影響

(参考:経済産業省委託調査 平成30年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費 (資源効率に関する国際動向調査)調査報告書

 

プラスチックに関する取組 「NPE」 と 「CFI」 

 エレン・マッカーサー財団は、2016年に「New Plastics Economy23」というイニシアチブを立ち上げ、2017年5 月には繊維を対象にした新たなイニシアチブ「Circular Fibers Initiative」を立ち上げた。繊維から衣類の循環経済「サーキュラー・エコノミー」の構築を掲げ、主要な業界関係者を集めた。2018年には、「CFI」を次のフェーズ「Make Fashion Circular」にアップグレードし、アパレル業界のリーダー「バーバリー、Gap、H&MHSBCNIKE、ステラマッカートニー」などが参加する。

 

NPE ニュー・プラスチック・エコノミーとは

 エレン・マッカーサー財団は、繊維を含むプラスチックをターゲットにし、資源の循環化を推進する。そこには、プラスチックの環境漏出による海洋汚染に対する強い危機感があるのかもしれない。

 このイニシアティブには CE100 メンバーの多くが参加する。昨年12月には、Googleがテクノロジーパートナーに参加した。

 

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www.ellenmacarthurfoundation.org

 

 

EUの環境戦略「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」との関連性

 EUは、プラスチック廃棄物削減・リサイクルに向けた規制を強化し、脱プラを目指して世界をリードする。2015年には、「サーキュラー・エコノミー・パッケージ(CEP)」を採択し、世界的な競争力、持続可能な経済成長、雇用創出のための戦略としている。

 CEPで採択した主要な行動計画には、「食品廃棄の削減」、「二次資源」、「エコデザイン(製品のエネルギー効率、修理しやすさ、耐久性、リサイクル可能性の促進)」、「肥料」、「プラスチック」、「水の再利用」などがある。

  エレン・マッカーサー財団は、EUに対して、情報を提供し、対話を重ねているという。そのためであろうか、EUの政策と財団の活動に関連性があるように見える。

 

まとめ 

 「気候変動」「SDGs」がメガトレンドになっている。こうした文脈に対し、EUが政策面でリードする。多くのグローバル企業とコラボする「エレン・マッカーサー財団」は、そのEUと対話を重ねる。

 

 昨年12月、エレン・マッカーサー財団が推進する「NPE ニュー・プラスチック・エコノミー」のテクノロジーパートナーとなった グーグルのブログに「サーキュラー・エコノミー」に関する記述がある。その内容が非常に興味深い。

 この中で、グーグルは「サーキュラー・エコノミーへの移行で、2030年までに4.5兆ドルの新しい経済価値を生み出す可能性がある」と指摘する。

 

A Circular Google

 

このビジョンを実現するための課題は、刺激的であると同時に困難です。システムの仕組みを再定義する必要があります。それは、私たちの価値や選択から、何十年にもわたって経済全体で標準的な慣行であった仮定や産業プロセスまでです。Googleの新しい「サーキュラーグーグル戦略」は、私たちが行うすべてに持続可能性を組み込むための幅広い取り組みの一環です。

この戦略を構築するにつれて、興味深い洞察が生まれました。完全に「サーキュラー・エコノミー」に到達するためには、地球規模の素材のサプライチェーンを特定、追跡、管理する必要があります。21世紀の技術の発展は、そうする方法を示唆しています。これらすべてを情報として見ることです。

「サーキュラー・エコノミー」を情報の課題として考えることは、Googleに刺激を与えます。規模、リソース、技術的専門知識を活用して、世界のニーズに役立つことを示唆しています。(出所:グーグル)

 

blog.google

 

 EUは、新たな法規制を導入しつつ、環境政策を強力に推進する。当然ながら、消費者の行動や企業はその方向に向く。法規制や規格に適合しない企業は市場から排除される。

 もしかしたら、エレン・マッカーサー財団に参加するグローバル企業たちはより有利な立場にあるのかもしれない。日本企業はこうした気づけていないのかもしれない。ブリヂストン三菱ケミカルのように、CE100に参加することを考えた方がよいのかもしれない。

  

エレン・マッカーサー財団は、企業や政府、研究機関と連携して、サーキュラー・エコノミーへの移行を推進することを目的に 2010 年に設立された団体です。CE100 は、参加組織のサーキュラー・エコノミーに関する能力開発や実践の支援を目的としたイノベーションプログラムであり、現在、様々な業種のグローバル企業やスタートアップ企業、大学、各国政府など多くの団体が加盟しています。当社はCE100 が主催するワークショップや参加企業との共同プロジェクトへの参加等を通じて、世界のリーディングカンパニーやイノベーターと共に、新たな価値の創造を加速させていきます。(出所:三菱ケミカル プレスリリース)

英エレン・マッカーサー財団「サーキュラー・エコノミー100」への参加について ―日本の化学企業として初参加三菱ケミカル プレスリリース)

新メンバー

 

 

「参考文書」

サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミー~廃棄ゼロの経済活動ループにより変化するビジネス~(大和総研)

 

経済産業省委託調査 平成30年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費 (資源効率に関する国際動向調査)調査報告書