「PayPayフリマ」と「ヤフオク」が、期間限定だが、手数料を実質3%にした。フリマ市場でユーザー獲得競争が激化しているようだ。キャッシュレスサービスのユーザー囲い込みということなのだろうか。このビジネスでは、メルカリの強さが際立っていると言われる。
そのメルカリが、東大とコラボして、「価値交換工学」の研究に取り組むという。東京大学インクルーシブ工学連携研究機構(略称:RIISE)がコラボのパートナーとなる。このRIISEは、「技術の恩恵で皆が活躍できるインクルーシブな社会の実現」のための研究を行なう。
メルカリのCINO・濱田氏は、Forbesのインタビューで「最近では、ブロックチェーン技術等の登場によって、オンライン上で価値が自由に行き来する流れが生まれつつあります。これらを踏まえ、我々としては、メルカリを「価値交換のためのプラットフォーム」として捉えることで、新たなイノベーションにつながる芽を生み出していきたい」と話していた。
一方、RIISEの川原機構長は、「我々のような研究者という立場の人間からすれば、メルカリのプラットフォーム上で行われている「価値交換」は、研究対象として、非常に魅力的かつ奥深いものであると考えられるのです。「価値交換工学」では、上記のような取引行為を工学的な観点から研究することによって、より良い「価値交換」のデザインを行うことを目指しています」と答える。
「価値交換」とは、例えば、メルカリのプラットフォーム上では、ある利用者の方にとっては、「この商品はもう要らないな」と価値を感じなくなったモノが、別の利用者の方にとっては、「この商品は自分にとって必要なものだ」と価値を感じるということが日常茶飯事的に行われている。 (出所:Forbes)
価値交換工学を「価値の分析」「価値の生成」「価値の交換」の3つの観点から研究していくと川原機構長はいう。
「価値の分析」は、モノやサービスの価値を希少性やコンテキストを踏まえて定量化する技術のことを指すといい、「価値の生成」というのは、モノやサービスの価値を創出し、高めるための技術のこと。「価値の交換」は、人々が安全かつスムーズに「価値交換」を行うプラットフォームについて研究していくという。(参考:Forbes)
川原機構長は、「例えば、メルカリ内で行われた過去の取引を分析することによって、「この商品であれば、このくらいの価格で売れるはず」と予測することは「価値の分析」であると捉えることができる」といい、普段利用していない遊休資産をシェアリングエコノミー的に活用することは「価値の生成」であると捉えることができる。ブロックチェーン技術は、「価値交換」の範疇に含まれるテクノロジーの一つとして捉えることができる」とも答える。
この研究がどのような形で結実していくのかが楽しみになる。研究は5年のスパンで行なわれる。
「キャッシュレスの次は「マネーレス」が到来する。2049年には「お金」が消滅する」
ネットの普及で、今や二重の一致は奇跡ではなくなった。今後スマホ決済などによって売り手と買い手がインターネットで結ばれていけば、やがて物々交換や知識・労働の提供など、お金を用いない取引が拡大していくだろう――(出所:プレジデントオンライン)
という大胆な記事がプレジデントオンラインにある。実際に、物々交換サイトや自らの知識や労働を提供してサービスやモノを対価とするサイトも登場していると記事は指摘する。金だけが取引の手段ではなくなりつつあるのだという。
今後30年の間に『お金』の概念が事実上消滅すると思っています。キャッシュレスであることはもちろん、マネーレスになると考えているのです
(出所:プレジデントオンライン)
「価値交換工学」はこんな世界を目指すことになるのだろうか。
前澤友作氏が、noteに「世の中からお金をなくす」ことで世界は平和になると書いた。
お金がない世界では、過剰な消費や、華美な贅沢をする人は、おそらく尊敬されません。まったく働かない人も同じく尊敬されないでしょう。
お金がない世界では、自分の好きなことや得意なことを仕事とし、人を喜ばせ感動させる人に感謝が集まります。また、本来仕事とはそうあるべきものだったことに多くの人が気づくはずです。
人がお金の存在によって忘れかけていた、人に対する愛や感謝や敬意の気持ちを取り戻します。
(出所:「世の中からお金をなくす」ことで世界は平和になる|Yusaku Maezawa 前澤友作|note)
SDGsは、17の目標と169ターゲットからなる。2015年、国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 」では、『我々は、人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安全にすることを決意している。我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う』とし、5つのP - People, Planet, rosperity, Peace, Partnership、人間、地球、豊かさ、平和のための目標であり、国際社会のパートナーシップにより実現をめざしますとした。
そして、その平和では、『平和、公正で、恐怖と暴力のない、インクルーシブな(すべての人が受け入れられ参加できる)世界をめざす』とする。
東大の川原機構長は、Forbesとのインタビューで、民間企業等との社会連携を通じた「未来ビジョン」実現のための研究に取り組むといい、『この文脈におけるインクルーシブ(包摂的)という言葉には、テクノロジーを活用し、経済的な格差/地理的な格差を解消することによって、より公平で、より住みやすい、すべての人が活躍できるような社会を創ろうという意味が込められています』と話す。
前澤友作氏は、「世の中からお金をなくす」ことで世界は平和になるという。
何か、SDGsと相通ずように思う。
「価値交換工学」が社会実装されるとき、SDGsの定める目標がゴールに近づくのかもしれない。
(資料出所:Stockholm Resilience Centre)
「参考文書」
我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ