Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

黒字リストラ 大手の新陳代謝が始まった

 

 経団連の中西宏明会長は日本経済新聞の年頭のインタビューでこんなことを語っていた。

 

「新卒一括採用、終身雇用、年功序列型賃金が特徴の日本型雇用は効果を発揮した時期もあったが、矛盾も抱え始めた。今のままでは日本の経済や社会システムがうまく回転しない。雇用制度全般の見直しを含めた取り組みが重要だ」

「賃上げの勢いを保つことは大前提だ。ただ製品やサービスの付加価値向上に必要なスキルや意欲のある人が活躍できる環境づくりも大事だ。そのためには賃金体系や人事制度についてもしっかり対応すべきだ」(出所:日本経済新聞

 

  その言葉を裏付けるように産業界で、新卒一括採用、終身雇用、年功序列型賃金など日本型の雇用制度の見直しが始まり、企業の「黒字リストラ」も増加しているという。

アステラス製薬エーザイカシオ計算機といった、業績が一見好調とみられる大企業も、19年に黒字リストラに踏み切った」とITmediaビジネスオンラインは伝える。

 

www.itmedia.co.jp

 

 

 一方で、優秀な人材を確保する動きも活発化する。NECは一昨年3000人規模の人員削減を実行する傍ら、「新卒で年収1000万円以上」が可能となる新たな賃金制度を始めた。年功序列を払拭することが、新制度導入の大きな目的のひとつだという。

 NECの西原CTOは、日経ビジネスとのインタビューで、「研究者として成果を出して年齢を重ねた40代以降の人材も重要」と語り、「若い時期に優れた成果を残した研究者は、“先駆者”として次の世代の優秀な人材を引き寄せる存在でもあります。企業における技術の強みとは、すなわち人のつながりの蓄積です。若手からベテランまで、優秀な人材が永続的にNECで研究をしたいと思える給与システムをつくりました」と答えた。

 

business.nikkei.com

 

 メルカリは外国人を積極的に採用する。国内ばかりでなく、優秀な人材確保を海外まで広げる。

 

 これから、AIなど最新技術の社会実装が始まる。技術を商用化するにも有能な人材は必要だ。ポストAIの技術研究も必要であろう。世界から遅れてしまったビジネス展開を早急にキャッチアップしていかなければならない。

 

 

 

 前出ITmediaビジネスの筆者は、「伸び悩みという企業のホンネも垣間見える」といい、「黒字リストラ機運の高まりは、実力主義への移行という文脈だけでなく、日本企業の先細りを示唆するシグナルという文脈でも検討する必要があるといえるだろう」という。

 仮にそれだけであれば、事業は先細りとなり、賃金体系を見直してもさほど意味をなさない。黒字リストラの経営効果への期待が全くないとは言わないが、だからこそ、今、アクションを起こすのだろうし、現在の雇用環境を考えたアクションなのであろう。

 

人材の流動性が高まれば、給与制度にもダイナミックな変化や多様性が生まれていくでしょう (出所:日経ビジネス

 

  若者の大手離れの報道がある。大手も、優秀な若手のつなぎ止めに必死であろう。

 

もちろん、給与制度を整えても独立志向の強い人材はいるでしょう。大企業の役割とは、独立志向が強い人材も含め、優秀な人材を輩出することにあると考えています。NEC史上最年少の主席研究員となった機械学習の世界的なエンジニア、藤巻遼平さんは、2018年にNECの研究所から独立して、シリコンバレーで新会社ドットデータ(dotData)を立ち上げました。NECは追い出すことはせず、むしろ彼をサポートしました。独立を志向する人材と敵対するのではなく連携することが重要だと考えています。

NECに入社すれば、チャレンジする場も、待遇も与えてくれる」――。そんなイメージを持ってくれるようになれば人材は自然と集まるでしょう。こういった研究者のエコシステムを構築することも、賃金制度を改定した目的の一つです。(出所:日経ビジネス

 

 と、インタビューに答えていた西原CTOの言葉が印象的である。

 

 SONYも吉田新社長に変わり、パーパスを明文化し、存在意義を明らかにした。経営の立て直しの一環であろうが、 若手社員のことも意識したのだろう。そのSONYも、長い低迷から抜け出たとの報道が多い。

 

 リストラで新陳代謝する大手が、優秀な若者をつなぎとめ、活躍の場を準備できれば、国際競争力を取り戻すこともできるのではないであろうか。

 大手には変わり始めているのかもしれない。若者が活躍できる場が用意されてきたようだ。

 

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「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com</a>

 

 

「参考文書」

www.nikkei.com

news.yahoo.co.jp

tech.nikkeibp.co.jp