Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

円安で利益が消失、デザイン家電のバルミューダの嘆き、次なる一手はあるのか

 

 トースターやコーヒーメーカー、ケトルなどデザイン性と機能性を兼ね備えた家電を相次いでヒットさせ、スマートフォンの販売も始めたバルミューダが、円安に苦しんでいるといいます。

 2022年1~9月期決算は、売上高が過去最高だったのに対して、純利益は前年同比83・6%減の4300万円だったといいます。

家電バルミューダ好調だが… 円安で「売っても売っても利益出ない」:朝日新聞デジタル

「売っても売っても、この原価ではなかなか利益が出ない」と寺尾社長が嘆いているといいます。

 販売は国内が7割を占め、生産は中国や台湾など海外で、作った製品を輸入しなければならず、歴史的な円安で原価が膨らんだといいます。

 

 

 朝日新聞によれば、バルミューダの寺尾社長は、製品の値上げについて、今のところ明確な計画はないが、状況次第で、真剣に検討せざるをえないと述べ、「できればやりたくありません」と語ったといいます。

 国内生産についてが視野に入る円安レベルになっていると指摘、また、今後は、円安がプラスに働く海外での販売を広げていく方針といいます。

 記録的な円安に一服感もあるようですが、まだこの円安水準は続くことになるのでしょうか。これを機に、成長期待が望めない国内市場から、海外販売を強化する動きが加速するのでしょうか。

 日本製鉄は、成長市場であるインドへの投資を加速する方針を明らかにしたそうです。

日鉄、印への投資加速 ハジラ製鉄所の高炉新設を近く決定=副社長 | ロイター

 インドについて「鉄鋼でいうと、唯一大きく成長するマーケットとみなされている。足元でも、拡張競争みたいになっている」とし、投資を加速したいと、日鉄の森副社長が述べたそうです。

 

 

 エアコンのダイキンも「インドは今、需要の爆発が起きている」として、この市場において成長を加速させるそうです。

次の「一大市場」に懸けるダイキン、2025年にインドの生産台数を2倍の270万台に | 日経クロステック(xTECH)

インドの人口は14億人を超えており、2023年には中国を抜いて世界最大となる見込み。購買力も高まっている。一方で、空調機の普及率は5%前後と低く、今後の伸びが大きく期待できる。(出所:日経クロステック)

 この経済成長を取り込むため、ダイキンは現地の工場を拡張し、生産能力を現在の2倍に増やす計画といいます。また、ここ拠点として、中東やアフリカへの輸出も視野に入れているようです。気候などの市場の共通性を考慮し、量産効果を生かしてコスト競争力を高めて巨大市場を取り込む考えといいます。

ここで勝ち続けるために、ダイキン工業はインドだけではなく、アフリカおよび中東を巻き込んだ「一大市場」を想定する。人口はインドが先述の通り14億人以上、アフリカも約14億人、中東が約4億人であるため、30億人を超える規模の商圏となる。(出所:日経クロステック)

 

 

 円安によって利益が圧迫され、その対策を考えれば、海外進出を意識せざるを得ません。また「経済安全保障」を念頭にしサプライチェーンの再構築を考えれば、「フレンドショアリング」を考えるべきなのかもしれません。

 成長の翳りも見え始めた中国という選択肢はもうないのでしょう。そうであるなら、フロンティアとしてインド以西に注目が集まることは自然な流れのような気もします。

 バルミューダはこの先、どんな選択をするのでしょうか。それがこの後に続く企業の良き先例になって欲しいと願うばかりです。

 

 

電動2輪車のバッテリーシェアリングサービスが始まる、先行の台湾メーカは世界展開へ

 

 電動2輪車向けの交換式電池のシェアリングサービス「Gachaco(ガチャコ)」が始まったそうです。電池を充電、交換できる機器が都庁前に設置されたといいます。電動2輪車ユーザーは、これによって充電された電池と使用済みの電池を交換することで、充電を待つ必要がなくなるそうです。

ENEOS・ホンダなど共同出資会社、電動2輪の充電インフラ普及へ一手|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

 ENEOSと国内2輪車メーカー4社が今年4月に、ガチャコを共同設立し、電動モビリティの普及と、電動二輪車用の共通仕様バッテリーのシェアリングサービスを提供していくと発表していました。

 

 

先駆者 台湾「Gogoro」の世界展開

 出遅れ感が否めません。既に台湾では「Gogoro」という同種のサービスが2015年に始まり、今年年8月には利用者が50万契約に達したといいます。

台湾や中国で電池交換サービスが離陸、EVメーカーの大競争始まる | 日経クロステック(xTECH)

 そのGogoroは、米国の株式市場NASDAQに上場すると発表し、台湾・鴻海精密工業とは電池パックや電動スクーターの大量生産で提携、中国本土にも進出して「換換(Huan Huan)」ブランドで電池交換サービスを始めたといいます。

電動スクーターは、スズキが技術供与した中国最大手の2輪車メーカー中国・大長江集団(DCJ)と世界最大手の電動モビリティーメーカーの同Yadea Technology Group(雅迪)が製造する。(出所:日経クロステック)

 それに留まることなく、世界に積極展開していくとし、インド、インドネシアシンガポールイスラエルにも電池交換サービスを広げつつあるといいます。

 

 

ガチャコは電池のマルチユース

 一方のガチャコ、電池をシェアリングにすることでその稼働率を上げられるとし、さまざまな用途で利用できれば、あたかも乾電池のようにマルチに使って、電池の能力を最後まで引き出すことができると、その狙いをCEOの渡辺一成氏はそう語っているといいます。また、劣化して使えなくなった電池は、分解してリサイクルすることを想定しているそうです。

同じ電池を多用途でしゃぶりつくす、ホンダとGachacoが目指す未来 | 日経クロステック(xTECH)

電池の利用先は2輪車を超えて、超小型EVを含むマイクロモビリティー、一般家庭での定置型蓄電池、災害時の緊急電源、建設現場や農地での建機やトラクター、自動走行ロボット、アウトドアなどのレジャーといったさまざまな用途への2次利用、3次利用も想定する。同じ用途で電池を他人とシェアするだけでなく、異なる用途間でもシェアするのである。(出所:日経クロステック)

(資料:ヤマハ発動機

 いずれにせよ、まずは電動2輪車からということなのでしょうか。時期は未発表ながら、ホンダ、ヤマハカワサキ、スズキの4社がこれから発売する電動2輪は、原則としてこのGachaco対応になるはずと記事は指摘しています。

 これによって、車両は電池なしで購入し、電池は所有からシェアリングによる利用になるといいます。

 

 

 

 沖縄石垣島では、台湾「Gogoro」によるバッテリー交換式のEVバイクレンタルサービスが始まっているそうです。

石垣島でバッテリー交換式EVバイクを体験〜『Gogoro』の魅力を実感 - EVsmartブログ

 記事よれば、観光地の石垣島ではすっかり定着しているようで、「Gogoro」の水色のEVバイクとよくすれ違うといいます。

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もうだいぶ前のことですが、頻繁に出張していたベトナムでは、道路を覆いつくほどにバイクが走り、そのバイクのこと「ホンダ」と呼ぶと聞きました。

「ガチャコ」の世界展開はどうなっているのでしょうか。

 かつて世界を席巻した日本の2輪車は凋落してしまうのでしょうか。それとも電池のシェアリングを軸にして、巻き返していくのでしょうか。成長が見込みにくい国内に留まることなく、速やかに海外展開して欲しいものです。円安のご時勢です。外貨を稼ぐことも求められているので。

 

「参考文書」

「株式会社Gachaco」の設立について ~電動二輪車用共通仕様バッテリーのシェアリングサービスを提供~ - ニュースリリース | ヤマハ発動機株式会社

 

ルール化をさらに進める欧州、「クール宅急便」を国際標準化したヤマトが享受したメリット

 

 EU 欧州連合が森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則案について審議を進めているといいます。目的は、商品作物用農地の拡大に伴う世界的な森林破壊や森林の劣化を防止することにあるそうです。

EU理事会、森林破壊防止のデューディリジェンス義務化に関する規則案に合意(EU) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

 デューディリジェンス義務の対象となる商品作物は、パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ豆、大豆などで、また、対象産品を原料とする皮革、チョコレート、家具などの派生製品も対象となるといいます。

 

 

 これらの対象品をEU市場に供給する事業者は事前に、その産品が「森林破壊フリー」で、生産国の法令を順守していることを確認するためのデューディリジェンスを実施し、管轄する加盟国当局へ報告することを義務付けるといいます。

 このデューディリジェンスでは、「森林破壊フリー」、森林破壊によって開発された農地で生産されていないことを確認することを求めるそうです。

 こうした広範なサプライチェーンを対象とするルールを設けることで、他地域にも影響が及び、これによって他の国々にも脱炭素を推進することを求めることができるといいます。欧州ならでのルール化がまたひとつ進むようです。

 日本でもこうした国際標準化の動きに負けじと動き出している企業があるようです。

 ヤマト運輸が小口保冷配送サービスの国際規格「ISO 23412:2020」の制定を積極推進し、2020年5月に正式に発行となったといいます。足掛け5年の推進活動だったといいます。

5年かけた国際標準化 ヤマト運輸がクール宅急便を世界に届けた日 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 始まりは小口保冷配送の「国際クール宅急便」、目的地が海外であっても最短翌日配達できるということでスタートしたといいますが、開始当時は海外に市場はなかったそうです。

 eコマースの伸びを考えれば必ず海外でもニーズが顕在化する、そう判断してのサービス開始だったといいますが、予想外に苦戦を強いられ、これがきっかけになったそうです。

 

 

 国際標準化は、ひとつのインターフェイス機能。サプライチェーンの垂直のつなぎ役にもなるし、それに伴う各ステークホルダーも横軸でつながっています。(出所:Forbes)

 国際標準化、「ISO」の制定で終わりではないといいます。次はこの国際規格をビジネスに活かさなければならないといいます。

 Forbesによれば、ヤマトは2021年、DPDグループとともに小口保冷配送のコンソーシアム「FRESH PASS」を発足させたそうでする。

 ヤマトが「ISO 23412」に基づいて荷物を日本から海外に発送しても、受け取る地域に同じ基準で受け取ってくれないと品質を担保することはできません。

「FRESH PASS」は、送り主と受け手の品質を「ISO 23412」で最低限共通化するプラットフォームだといいます。「ISO 23412」取得事業者に門戸を開き、委託と受託の関係を保ったまま品質を担保するオープンな枠組みであり、「ISO」を錦の御旗として活用した、実に戦略的でしたたかなやり方と記事は指摘します。

 

 

日本発のルールメイキングで世界に新市場が創出され、それが回り回って日本の既存市場をも活性化していく。(出所:Forbes)

 このようなベストプラクティスに倣う企業が日本から次々と誕生すればいいのでしょう。それに加えて、経済政策が不得意で、同盟ばかりにこだわる日本政府にも学習して欲しいやり様なのでしょう。

 

「参考文書」

EUがサプライチェーン新規制 世界に森林破壊防止迫る: 日本経済新聞

 

【人口減少は国の存亡の危機】少子化対策に成功する事例と失敗する理由

 

 日本の人口減少は深刻な事態といいます。「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなる」と、イーロン・マスク氏が5月にツィートするくらいです。

「日本はいずれ存在しなくなる」──。少子化が深刻化するこの国への悲観と失望が広がる。仕事との両立に悩み、産むことをためらう人はなお少なくない。(出所:日経ビジネス

 国としての存亡の危機....、確かにそうなのかもしれませんが、そう考えなくとも、子どもを生み、育てることが普通でなくなっていることの方が異常なのかもしれません。

 

 

 経済活動が活発になり、様々な社会問題が確認されるようになっています。少子化高齢化もこうした社会問題のひとつなのでしょうか。その悪影響をあげればきりがありません。国をあげての取り組みが求められる所以なのでしょう。

 ただ、それは人が感じるマインドによっても左右されそうです。単純に、「将来への希望」>「不安」となれば、少子化に歯止めがかかり、状況は改善していくのでしょうか。

 伊藤忠商事における女性社員の期間合計特殊出生率が劇的に改善し、「1.97」になったといいます。国の出生率「1.30」と比較し、大きく上回る数値に改善できたそうです。

伊藤忠が「8時前出社」導入で出生率急上昇のナゼ | 特集 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 東洋経済オンラインによれば、2010年から試行錯誤をしてきた働き方改革の成果だといいます。その中で、特に2013年に導入した朝型勤務制度が効果的だったといいます。

20時以降の勤務を原則禁止とし、早朝の5〜8時までに勤務した場合には、深夜残業と同様に割増し賃金を支払う。今は、5割を超える社員が8時前に出社している。(出所:東洋経済オンライン)

 これまで様々な女性活躍のための取り組みをやってきたそうですが、あまり効果があがることはなかったそうです。

PDCAを回す」と、伊藤忠の取り組みを記事は解説しています。

 これまでに集まったデータを徹底的に分析し、何がダメで、何が効果的だったのかを検討し、全社的な働き方改革を実施してから出生率が大きく上がるようになったといいます。

 女性が働きやすい制度を整えようと、具体的に女性を何割雇い、何%を管理職にする、と数値目標を立てたが、女性の活躍にはつながらない、「数合わせ」をしたらむしろ離職率が上がってしまうこともあったそうです。

 

 

 よかれと思ってやったことが空振りに終わることはある、それでも諦めずに、引き続き次の施策をうっては、社員の反応を確認して効果検証を行い、また見直しを行う、その繰り返しが改善につながっていくようです。

 働き方改革も「ローマは一日にして成らず」と同じで短期に成果をあげることはできないのではないでしょうか。国が制度を整え、ルール化してくれることを待っていては、いつまでも改革は進みません。結局、改革は現場で行うもので、それを社会のしくみとして定着させることが、国の制度ということではないでしょうか。

子どもを産んでも仕事を続けられるよう、育児休業の拡充や保育施設の整備、経済不安の解消につながる幼児教育の無償化、不妊治療費用の助成と、さまざまな政策が打ち出されたのは記憶に新しい。しかし、出生率は1.8に近づくどころか低下する一方だ。(出所:日経ビジネス

 国が声高らかに働き方改革とか少子化対策といえばいうほどに、行動を起こすのでなく、国の制度や支持待ち状態になってはいないでしょうか。

 それでは成果は遠退くばかりです。何より大切なことは従業員と対話し、みなで働きやすい職場を作っていくということなのでしょう。

 国も言うばかりでなく、まずは官僚たちに働き方改革を求め、また国会自らの改革を断行し、その成果を示すべきなのかもしれません。うまくいけば、これほどのベストプラクティスはないのでしょう。

 

「参考文書」

[新連載]少子化は企業が止める 出生数激減、国任せではいられない:日経ビジネス電子版

 

解決しなければならない倫理的な問題に、求められる「誠実さ」という美徳

 倫理的で責任あるビジネスを目指す企業が増えつつあるといいます。

 現在の社会情勢からすれば自然ななりゆきなのでしょうか。こうした動きにまた日本が取り残されるようになってしまうのでしょうか。

「ESG(環境・社会・統治)」の「G」ガバナンス(統治)について着目し、企業パフォーマンスを高めるようとする動きがあるそうです。こうした動きのベスト・プラクティス情報を日経ビジネスが紹介しています。

「戦略的な誠実さ」で、倫理的なビジネス課題に挑む:日経ビジネス電子版

現在の極めて複雑な倫理的課題に対応するには、企業が社内に立ちはだかる壁を打ち壊し、戦略にふさわしい形に整え、コラボレーションを生み出し、インテグリティー(誠実さ)の文化を築くことが求められる。(出所:日経ビジネス

「誠実さ」をコアとし、それを一つの部門が全社的に推進していく、それが成るのであれば、価値観は転換していくのかもしれません。そうしたことにチャレンジする動きに斬新さを感じます。

 

 

「もちろん、ビジネスにとってよいことをしなければならない。とはいえ、人権を侵害したり、水や原材料などの資源を無責任に使用したりしては、ビジネスを維持することはできない」と記事は指摘し、「私たちが取り組んでいる素晴らしい活動を見てくださいというアプローチは、もはや信頼に足るものではない」といいます。

 これらの行為がステークホルダーからの信頼にどう影響を与えるのか、検討する必要があると主張しています。

 気候変動をはじめとする様々な環境問題、地政学リスク、分断や格差などの社会問題など、これらにどう対応していくのか、企業経営者の悩みは尽きません。

 現実にロシアがふいを虚を突いててウクライナに侵攻した問題で、この問題の重要性が増したようです。

 多くの欧米企業がロシアから撤退し、独裁的な国家において事業を続けることは、人権を軽んじ、汚職のリスクにさらされ、企業の存在意義に関わるという差し迫った問題になっているといいます。

 

 

権限を持った戦略的なインテグリティー(誠実さ)部門は、これらの問題に対してより積極的かつ体系的なアプローチを展開するための重要なステップである。(出所:日経ビジネス

 記事は、新たな「CIO」チーフ・インテグリティー・オフィサー(最高誠実責任者)の必要性を説きます。

「データ分析、政策、ステークホルダーのエンゲージメント、行動科学に関する特定のスキルを持つ、多様で学際的なチームのサポートを必要とする」といいます。「チームは、政治的な支出や社会的・政治的問題に対する我が社の立場の確立など、非常に幅広い問題に対応できるべき」と指摘します。

「CIO」最高誠実責任者、滑稽のようにも感じます。元来、「誠実さ」はビジネスにばかりでなく、人生においても必要とされる素養、美徳であったはずです。

 かつてはあったが、欲望に満ちた社会になっていく過程で失ってしまったということでしょうか。

 しかし、それに気づき、今一度、その素養を育もうとするのはいいことなのかもしれません。ただその回復には長い時間がかかりそうです。しかし、それが社会全体としての流れになれば、変化のスピードは増していくことになるのでしょう。

商人は、自分が売っている商品について、嘘偽りがなく、見かけ通りのものであることを無上の喜びとする。(引用:イギリス流大人の気骨 サミュエル・スマイルズ

 

 

 また、「商売ほど人間性がきびしく試される職業はない」とスマイルズは指摘し、「商売では、正直さ、無欲さ、公正さ、嘘をつかないことが厳密に問われる」といいます。

 これまでは、こうした格言とは真逆なことをやってきたということなのでしょうか。

 

 

成長が鈍化する米アマゾン、しのび寄る景気後退の足音、経営改善を始まるとき

 

 米アマゾンが先日、2022年7〜9月期決算を発表し、売上高が前年同期比15%増になったのに対し、営業利益は48%減になったそうえす。また、年末商戦となる10~12月期の業績見通しは市場予想に届かないといいます。

Amazon営業益5割減 年末商戦の予想弱く、株20%急落: 日本経済新聞

消費者の財布を圧迫する様々な要因があり、「四半期が進むにつれて多くの事業で売り上げの伸びが緩やかになっている」とオルサブスキーCFOは指摘し、「消費者がお買い得な商品を探していることは確かだ」と述べたといいます。

 世界的な景気減速の可能性が指摘されていますが、いよいよ現実になってきたということでしょうか。

 

 

 商品需給にも変化があるようです。つい先頃まで、あらゆる製品が不足と言われていたことが嘘のように、様々な製品の需給バランスが回復しているそうです。 半導体の供給制約は解消に向かい、不足していたゲーム機やデジカメも需要を充たすようになったといいます。需要が減退期に入って需給が緩んだ可能性もあるといいます。

半導体リードタイム、数年ぶりの大幅短縮-供給不足緩和の兆し - Bloomberg

 あれだけ不足といわれた半導体も同じようで、ブルームバーグによると、半導体の発注から納品までにかかる時間「リードタイム」が9月に4日間短くなり、供給不足が緩和されつつあることを示唆しているといいます。特に、電源管理とアナログ半導体が最も短縮されたそうです。

供給制約は一部で残っているものの、今では多くの半導体メーカーがこれまでとは逆の過剰在庫の問題を懸念している。(出所:ブルームバーグ

 

 

 一方、これまでのジャストインタイムから、万が一への備え「ジャストインケース」への転換が進んでいるといいます。コストをかけてでも在庫を積み増し、有事に備える動きがあるといいます。最悪の事態が生じても、製品を供給し続けるためだそうです。

ジャストインタイムの終わり インテル、50年目の転換: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、トヨタも有事の備えを急いでいるといいます。有事への対応として今期7000億円にのぼる費用を計上しているそうです。また、21年秋からは半導体の在庫を従来の3カ月分から5カ月分まで増やすよう一部の取引先に伝えているともいいます。

米中対立も激しさを増す。台湾海峡は世界のコンテナ船の約4割が航行する。危機が起きれば世界の供給網は機能不全に陥る。平時から有事に備える企業のみが顧客の獲得でも優位に立てるとの考えだ。(出所:日本経済新聞

 好ましくことではないですが、世界が分断化し、グローバリズムが逆回転しているといいます。有事への備えでコストがかさむようになっても、それを許容することが企業の生き残りの条件になりつつあるといいます。

 

 

 この他にも、足下の危機への対応が迫られています。

 人件費やエネルギー価格の上昇は重荷となり、米アマゾンにおいても、それが理由となって大幅な営業利益減になりました。また、景気減速の足音とともに成長が鈍化し始めたようで、今後の売上減の可能性も否定できない状況になってきているようです。

「コスト削減に取り組んでいる」と、アマゾンのオルサブスキーCFOはを強調したといいます。

生産性の向上や固定費の調整、インフレ対策を重視しているという。物流施設や配送網の効率改善を進めているほか、小売部門での採用を凍結したり、一部の製品やサービスはプロジェクトを中断したりした。(出所:日本経済新聞

 気配を感じとれば間髪入れずにアクションを起こす。それがアマゾンということなのでしょうか。それにしてもその内容は教科書通りのような気もします。原理原則を重視するからこその成長なのでしょうか。

 日本企業の準備はどこまで進んでいるのでしょうか。遅れがあれば、ますます生産性にしろ、賃上げにしろ、その差が拡大していくのではないでしょうか。

 政府におだてばかりに乗らず、目を海外に向けることが肝要ではないでしょうか。経済は世界において相互に依存し合っているのだから。

 

「参考文書」

ゲーム機・エアコンなど供給不足緩和 主要20品目の7割: 日本経済新聞

 

嫌われる中国との向き合い方、逃げ出す知識人、下落する中国株

 

 ずいぶんキナ臭さが漂う世界になってしまいました。争いごと、対立がつきません。

 中国で想定通りに習主席が3期目を担うことになりました。先々に少々不安を感じるようになります。米中対立は収まるどころか、ますます激しさを増すようになってしまうのでしょうか。巻き込まれないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。

 中国には無数の心臓があって、他の国と違ってひとつの心臓を叩き潰しても、別の心臓が動き出して鼓動が停止しないと「落日燃ゆ(城山三郎著)」にあります。

全ての心臓を一発で叩き潰すことは到底できない。だから冒険政策によって支那を武力で征服するという手段を取るとすると、いつになったら目的を達するか予測し得られない(引用:「落日燃ゆ」城山三郎

支那に大きな利害関係をもっている日本としては、そんな冒険的なことに加わりたくない」と城山は、幣原喜重郎の言葉としてそう描いています。

 体制に違いはあれど今も昔も同じなのかもしれません。習一強で一つの心臓になったように見えても、決してそうではないのかもしれません。まともに組み合って勝てる相手ではなさそうです。

 

 

 習氏の3期目入りが確定し、党中央政治局常務委員が発表されると、中国本土銘柄株が軒並み下落したそうです。経済と市場に対する統制を強める政策が何の反発も受けずに何年も続くとの観測が広がったためといいます。

習近平氏が投資リスクに、記録的な中国株下落で露呈-権力集中を嫌気 - Bloomberg

貧富の格差是正を図る「共同富裕」や、国内外の双方から経済発展を促進する「双循環」といった、習氏が掲げる政策目標が受け入れ可能かどうかを投資家は決めなければならないと指摘。「これら新しい一連の価値観」が今後数年間の投資目標と一致するかどうかを検討する必要がある。(出所:ブルームバーグ

「市場が懸念しているのは、非常に多くの習氏側近・部下が指導部に選出されたことで、市場に友好的ではない政策を邪魔されずに定めることができる習氏の力が強化されたことだ」と話す専門家の声を紹介しています。

 

 

 中国の知識人や富裕層が、長期化する強権政治に嫌い続々と国外脱出を図っていると、JIJI.comが報じています。

知識人・富裕層が中国脱出 習政権に嫌気、日本移住も―ルポライターの安田峰俊氏インタビュー:時事ドットコム

「アリババたたき」などハイテク企業が叩かれるようになり、政府に目を付けられると大打撃を受けかねない。また富裕層はいつ財産を没収されるかわからない、そんな恐怖を感じていることが理由といいます。さらに上海のロックダウンの状況をみて、先見の明のある人々も逃げ出しているといいます。そうした人々の脱出先として日本も人気があるといいます。文化的に近く、比較的低い予算で定住できることで選ばれているそうです。

1980年代から胡政権の時代まで、中国は経済や社会の各方面でおおむね自由が拡大していく傾向にあった。それが習政権下でイデオロギーを重視する極端な「左寄り」に傾き、統制が強まった。ソフト路線だった胡政権末期の党内には、次期総書記(習氏)に権力を集中させ引き締めを図らなければならないという共通認識があった。ただ、結果として習氏は強くなり過ぎた。(出所:JIJI.com)

 なんでもありの自由な中国から統制の中国へ。安定を手に入れた政争のない政権が、この先どんな行動をとるようになるのでしょうか。中国との関わりを再考すべきなのかもしれません。

 

 

野放しのあばれ馬だ。それをとめようと真っ向から立ちふさがれば、蹴殺される。といって、そのままにしておけば何をするかわからん。だから、正面から止めようとしてはだめで、横からとびのって、ある程度思うままに寄せて、抑えて行く他はない。(引用:「落日燃ゆ」城山三郎

 暴走する軍部を抑えようとした広田弘毅首相、しかし、その努力の甲斐もなく、争いの渦に巻き込まれてしまう日本。戦後、その広田はA級戦犯として東京裁判で裁かれることになり、文官としてただひとり死刑の判決を受けました。

 さて、今の日本に上手に中国を乗りこなせることはできるのでしょうか。

 

「参考文書」

習近平続投で中国株急落、米株式市場で10兆円以上が消失 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)