Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

EV 350万台戦略、トヨタが日本に問いかけていること

 

 トヨタ自動車が、EV 電気自動車の販売目標を大幅に引き上げ、2030年、バッテリーEVのグローバルでの販売台数を年間350万台にするという。

バッテリーEV戦略に関する説明会 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

 批判ではないが、時々の状況に合わせ、臨機応変に目標を調整できることがトヨタの強みなのだろう。ひとつのことに執着していれば、目標の変更などはそう容易くできることはでない。常に準備されているということなのだろう。

 

 

多様な選択肢

 そうは言えども、豊田社長は発表会で、「今、私たちは、多様化した世界で、何が正解か分からない時代を生きております。その中では、1つの選択肢だけですべての人を幸せにすることは難しい」と述べ、「だからこそトヨタは、世界中のお客様に、できるだけ多くの選択肢を準備したい」という。

 EV、バッテリーEVだけに固執することなく、その他の選択肢についても含みを残す。

私たちは、すべての電動車は、使うエネルギーによって、2つに分かれると考えております。一つは、CO2排出を減らす「カーボンリデュースビークル」。

クルマを動かすエネルギーがクリーンでなければ、どの電動車も、CO2がゼロにはなりません。

そして、もう一つがクリーンなエネルギーを使ってCO2排出をゼロにする「カーボンニュートラルビークル」です。 (出所:トヨタ自動車

f:id:dsupplying:20211215162110j:plain

(写真:トヨタ自動車

好反応

 今回のEVの計画発表をブルームバーグは好意的に分析する。

レクサス35年までに全車種EV化、トヨタが巻き返しへ投資加速 - Bloomberg

トヨタが明らかにしたバッテリー式電気自動車(BEV)戦略は、日程・台数・投資規模において従来公表していた計画を上回るもので、同社が電気自動車で出遅れているという一部に根強い見方を一変させるものだ。米テスラ、独フォルクスワーゲン(VW)、韓国の現代自動車など、BEVで先行するライバルを猛追する積極的な計画だ。(出所:ブルームバーグ

  ただ、トヨタはこれで満足することはないのだろう。

 

 

電池

「電池の領域では、トヨタは長年にわたり、内製で、電池の研究開発と生産を続けてきた」と、豊田社長はスピーチを続ける。

 その歴史は1996年に遡るという。ニッケル水素電池開発から始まり、リチウムイオン電池にも取り組み、全固体電池など次世代電池の研究へとつながってきた。ここまでの26年間で、1兆円近い投資をし、累計1,900万台以上の電池を生産してきた経験こそが、トヨタの財産であり、競争力だという。この先も、電池関連への投資を続け、さらに2兆円を投資し、先進的で、良品廉価な電池の実現を目指すという。

調達、資源・エネルギー

 資源の面で、グループ会社の豊田通商トヨタの電池を支えている。南米でリチウム鉱山の開発を進め、資源確保を進めいる。また、豊田通商はエネルギーの面でも、風力発電太陽光発電といった再生可能エネルギーの確保に取り組んでいるという。

TPS トヨタ生産方式

 トヨタは出来ると確信して、今回のバッテリーEV 350万台を発表したのかもしれない。欧米の競合と異なり、コミットありきではなく、実現可能な目標を提示し、この先も粛々とその計画を推進していくのだろう。結局、ここまで積み重ねてきた継続的な改善努力あってできうることなのだろう。そして、それはその目標が達成されるまで、また継続されていく。

正解がわからない時代、多様化の時代においては、市場の動向を見ながら、生産する種類や量をフレキシブルに変えていくことが大切になります。

これまでTPS(=トヨタ生産方式で培ってきたリードタイム短縮や多品種少量生産のやり方、日本のモノづくりの地道な取り組みがこれからの競争力になると考えております。(出所:トヨタ自動車

 

 

イノベーション

「どうしてここまでして、選択肢を残すのか」と、豊田社長は疑問を投げかける。

「経営的な話で言うなら、選択と集中をしたほうが効率的かもしれません」と指摘したうえで、「私は、未来を予測することよりも、変化にすぐ対応できることが大切だと考えいる」という。

だからこそ、正解への道筋がはっきりするまで、お客様の選択肢を残し続けたいと考えています」。

 自ら仕掛けイノベーションを起こそうとするものもいる。それはそれでいいのだろう。しかし、近年日本ではもうそのイノベーションは起きていない。

 トヨタ型の思考法でアプローチすることを学べば、もしかしたら、再びイノベーションを起こす機会がうまれるのかもしれない。

 

成長産業に群がる人たちとバッテリーのサプライチェーンの健全化

 

「木の電池」、セルロースナノファイバー(CNF)による蓄電体の開発を日本製紙が行っているという。CNF蓄電体の実用化の検証実例として、学術実験以外で世界で初めて、CNF蓄電体のLED点灯検証に成功したそうだ。7秒間、LEDが点灯したという。

セルロースナノファイバー(CNF)による蓄電体の開発に向けてCNF蓄電体開発の一環で、LED点灯検証に成功|ニュースリリース|日本製紙グループ

 日本経済新聞によれば、この「木の電池」には、需給が逼迫するレアメタル希少金属)を使わないのが特徴という。今後は容量を増やして、2023年度にはドローン用電池、30年にはスマートフォン用などでの実用化をめざすそうだ。また、将来はEV 電気自動車への応用も視野に入れるという。

 

 

次世代電池 リチウム金属電池

 ソフトバンクが、米スタートアップのエンパワー・グリーンテックと共同で、次世代電池「リチウム金属電池」を開発したと発表した。

ソフトバンク、容量2倍の次世代電池 米新興と共同開発: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、同じ重さのリチウムイオン電池の約2倍に電気容量を増やしたそうだ。ドローンや計画中の「空飛ぶ通信基地局」向けに2023年の実用化を目指しているという。

 蓄電池の需要が伸長すればするほど、参加するプレーヤーは当然のように増え、新しい技術が登場することになる。それはそれでいいことなのだろう。ただ、今しばらくは既存の技術中心にして動くのだろうか。主役は引き続きリチウムイオン電池のままで、そこでも競争は激化していく。

なくならない資源の奪い合い

 リチウムイオン電池に必要な資源の奪い合いが起こっているという。

再エネや電気自動車に使用されるコバルトやリチウムが新しい『石油』に。米中が争奪戦開始 | ギズモード・ジャパン

国際エネルギー機関(IEA)は、世界各国がパリ協定の目標を達成するための対策を行なった場合、既存の鉱山によるコバルトとリチウムの供給では、2030年までに必要な量の半分しか満たせない可能性があると指摘しています。(出所:GIZMODO)

f:id:dsupplying:20211212164457j:plain

 GIZMODOによれば、専門家は昨今の世界的な半導体不足と同様に、EV用バッテリーの供給不足が起こると警告しているという。

 脱炭素の主役のひとつとして、EV電気自動車が注目されれば、俄然、蓄電池の必要量が一気に伸びる。自国の自動車産業を擁護しようとすれば、資源の奪い合いが起きても不思議ではないのだろう。ただそれはいいことなのだろうか。

 

 

サプライチェーンを健全化できるのか

未来社会を創出する、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟」、自民党の有志議員らによる議員連盟が6月に発足した。国内の電池産業強化が目的という。

電池開発強化で自民議連 旭化成吉野氏「崖っぷちだ」: 日本経済新聞

顧問の安倍氏は、設立総会において、「国家戦略を持って政策で支援していくべき産業だ」と電池産業の重要性を強調。会長の甘利氏も「電池産業は初期投資額が桁違いに大きい。民間事業者に任せるのではなく、政策の面から後押しする必要がある」と、官民共同の体制が不可欠であることを示した。(出所:日本経済新聞

 少々胡散臭いとも感じる。目ざとい政治家どもが手を出すほどに、注目される産業になったということなのだろう。

 世界各国が電池の確保に動けば、その供給能力が課題になるのだろう。そればかりでなく、使用済み後の電池の処理フロー確立も課題なのだろう。バッテリー自体を再利用する。また使用済みバッテリーから希少金属を取り出してリサイクルする必要もあるのかもしれない。

 一方で、バッテリーの原料のひとつであるコバルトの資源採掘では児童労働の温床になったりと、今あるサプライチェーンにおいても課題が多い。

 政治家が動くことで、既得権益化することなく、バッテリー産業を健全なものにすることができるのだろうか。それが世界と伍して戦う競争力になることを忘れてはならない。

 

【2035年のクルマ社会】欧州でゼロエミッション車だけ販売するトヨタ、その時、アップルカーは

 

 トヨタ自動車が、2035年、欧州で販売するすべての新車をEV 電気自動車など、ZEV「ゼロエミッション車」にすると発表したそうだ。

トヨタ、欧州での販売をゼロエミッション車に限定へ-35年までに - Bloomberg

 ブルームバーグによると、トヨタの方針はEUが7月に提案した気候変動対策と整合するという。トヨタは35年までの目標達成について、EUがバッテリー充電と水素補給のための十分なインフラを整備することを前提としていると説明したそうだ。

ハイブリッド車で大きく成功しているトヨタも、欧州の一部消費者はまだ完全なEV車に移る準備ができていないと主張するのは難しい状況となりつつある。

欧州で今年1-9月に登録された完全なEV車は80万台余りと、前年同期から90%超の増加となった。(出所:ブルームバーグ

 

 

 これまでのトヨタの主張を鑑みれば、今回のトヨタの欧州における方針は少々意外だった。

アングル:内燃機関で脱炭素、トヨタが挑む水素エンジンの現実味 | ロイター

 しかし、マーケットに真摯に向き合っているともいえるのだろう。

 政府施策があっても、最終の選択は消費者に委ねられる。消費者がそれを望むなら、まずはそれに従うしかない。

f:id:dsupplying:20211206145153j:plain

(画像:トヨタ自動車

  COP26の議長国で、脱炭素を強力に推進する英国が、天然ガス不足などを背景に電気代などが高騰し混乱した。これから向かう脱炭素社会の課題が浮き彫りになったようで、少し先行きに不安を感じた。欧州に暮らす人々はどう感じたのだろうか。たとえば、自動車を英国政府が示したようにすべて「ゼロエミッション車」に変えていくことに不安を感じたりはしないのだろうか。

 

 

アップルカー

 米アップルがEV 電気自動車の開発を加速させ、完全自律運転機能をあらためて開発プロジェクトの中心に据えていると、ブルームバーグが報じる。それによれば、アップルは自動運転車を4年後に発売することを社内目標としているそうだ。

アップルが自動車開発を加速、完全自律運転モデル目指す-関係者 - Bloomberg

アップルはさらに、インフォテインメントのシステムを車の中心に据えるデザインも検討してきた。大型「iPad(アイバッド)」のようなタッチスクリーンになるもようだ。またアップルの自動運転車は、同社の既存のサービスとデバイスとかなり一体化されたものになる。(出所:ブルームバーグ

 アップルが理想とする自動車は、リムジンのように乗客が向かい合って座り、ハンドルやペダルがなく、運転に手を出す必要がない車内設計とブルームバーグはいう。

 アップルが作るであろうEVが、これからのモビリティのカタチのような気もする。4年後、ほんとうにアップルカーが登場すれば、自動車のカタチを変えていくきっかけになったりはしないだろうか。都会の渋滞でもうイライラすることはなくなるのかもしれない。ただクルマを走らせる楽しみはなくなってしまうが。

 2035年、多くの国が規制を強化し、電動車やゼロエミッション車のみの販売となる。

 アップルカーが登場することで、この規制自体が見直されることになったりはしないのだろうか。もしかしたら、クルマという概念が変わり、クルマ社会にも変化があるのかもしれないのだから。

 

いつまでも解消されない不安、インフレ、物価高懸念、この冬の電力需給

 

 オミクロン株により経済活動が再び停滞するようなことがあるのだろうか。停滞が少し長引けば、世界で急激に進むインフレは少し落ち着くのだろうか。

 新型コロナもインフレも、あまり好ましいものではない。できれば、双方とも早期に解決ことが何よりなことなのだろう。

 

 

 つい先頃までは、「グリーンフレーション」ともいわれ、動き出した「脱炭素」もインフレに加担していることが指摘された。脱炭素を少しトーンダウンさせれば、いいのかもしれないが、やはり気候変動の問題からすれば、その対応を遅らすこともできない。

グリーンフレーション

「グリーンフレーション」、温室効果ガス削減への取り組みによって、石炭や石油などの化石燃料への設備投資が抑制され供給が逼迫し、価格が上昇した。

訂正ーコラム:当局悩ます「グリーンフレーション」 思わぬ円安のリスク=尾河眞樹氏 | ロイター

 この1年で原油価格はほぼ倍となり、天然ガスも、足元反落しているものの約75%上昇。これらが資源価格全般の上昇につながり、世界各国でインフレの火種となっているという。

 太陽光発電風力発電など再生可能エネルギーへのシフトが進めば、化石燃料の価格変動が物価に及ぼす影響は低下していくはずだが、移行期間においては、グリーン戦略がむしろ化石燃料の価格を大きく押し上げ、インフレを一段と加速させるリスクが高まっているとロイターは指摘する。

 

 

再エネの主力電源化

 第6次エネルギー基本計画では、30年度に電力供給の36-38%を太陽光や水力、風力などの再生可能エネルギーで賄う方針が示されている。この再エネの主力電源化に向けた「切り札」に洋上風力発電を位置付けられている。

脱炭素の本丸、電力業界で環境債本格化へ-再エネ投資70兆円必要とも - Bloomberg

 ブルームバーグによると、2050年までに必要な再エネへの設備投資額は少なくとも70兆円になるという。

 国内では20年代後半から洋上風力発電の導入が加速していくことが見込まれるそうだ。ただ、立地の制約条件や経済性の面から実現の難易度は高いとの懸念もあるという。

 グリーンフレーションの圧力から解放されるのはいつになるのだろうか。

脱原発

 ブルームバーグによると、再エネ促進と並行して、原子力発電所の再稼働させるのが合理的と、SMBC日興の浅野氏が指摘している。

原発再稼働やメンテナンスにかかる資金についても調達しやすい環境を整えることが脱炭素の推進には重要だ。(出所:ブルームバーグ

 足元の状況を鑑みれば、原発再稼働が必要に見えるが、現実、今の電力会社に原発を安全に運転できる能力はあるのだろうか。 

 

 

インフレの行方

 記録的な物価上昇が続く米国では、インフレをめぐる論戦が激しくなっているという。アメリカ議会下院で、財政政策を検証する公聴会を開かれ、イエレン財務長官が証言したそうだ。

米議会 インフレめぐる論戦激化 記録的な物価上昇続く | 米 バイデン大統領 | NHKニュース

 NHKによれば、野党 共和党は、バイデン政権による積極財政が需要を過剰に押し上げ、インフレを加速させたとする追及が相次いだという。

イエレン財務長官は「国民のポケットにお金を入れ、需要を高めたのは確かだが、小さな要因にすぎない」と述べ、インフレの最大の要因は新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーン=供給網の混乱だと反論しました。(出所:NHK

 過剰な需要も、サプライチェーンの混乱もどちらも影響しているのではなかろうか。コロナが落ち着くまでは、供給網の混乱は続くのだろうか。

f:id:dsupplying:20211204162827j:plain

 政府が来年度2022年度の予算編成の基本方針を決定した。財政健全化よりもコロナ禍で傷んだ経済の再生を優先する姿勢を強調し、必要な財政支出は躊躇なく行うという。少々不安を感じたりもする。

 来週、国会が始まる。少しは明るい先行きが見通せるようになるのだろうか。

今冬も厳しい電力需給

 萩生田経済産業相が「無理のない範囲で効率的な電力の使用や省エネに協力いただきたい」と、記者会見で述べたという。

経産相「無理ない範囲で省エネを」 冬の電力不足対策: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、2022年1~2月、東京エリアで電力不足が予想されているという。このため、休止中の火力発電所を稼働させるといった対策を講じるそうだ。他の地域において、余裕が十分に確保されていないようだ。

 安心できることが増えずに、いつまでも不安が放置されているように感じてしまう。

 

【気候変動への適応を考える】エネルギーの地産地消は実現できないのか

 

 この先はエネルギーの地産地消を進めるべきなのだろう。あまり想定はしたくないが、気候変動による異常気象で、激甚災害が頻発するようになれば、レジリエンスの高い電源が求められるはずである。

 

分散型電源として

 日本経済新聞によれば、工場や公共施設など向けの太陽光パネルの出荷が好調で35%増加したという。一方、メガソーラー大規模太陽光発電所向けは2%増にとどまったそうだ。 住宅向けは10%増加している。

 分散型電源としても注目されるようになってきたのだろうか。

 エネルギー基本計画が改定され、30年度の電源構成のうち、再生可能エネルギーの比率が36~38%となり、現状から2倍に引き上げる必要があるといわれている。

 この目標を達成するには、太陽光を21年3月時点の6200万キロワットから30年度には最大で1億1760万キロワットに引き上げる必要があるそうだ。

 

 

逆風の太陽光なのか

 太陽光パネルの価格が前年比3割高近く上昇しているそうだ。太陽光パネルの7割のシェアを握る中国から供給力が低下しているためで、中国国内の電力不足が背景にあるという。

太陽光パネル急騰、3割高: 日本経済新聞

日本の発電事業者にとって採算の合わない水準まで値上がりし、契約の見直しや延期が相次ぐ。太陽光発電再生可能エネルギーを底上げする日本政府の戦略にも影響が出かねない。(出所:日本経済新聞

 一方、国内太陽光パネルメーカの撤退が相次いでいる。需要があり、価格も上昇傾向。国内にとどまらず世界的な需要も見込める中、撤退との判断になることに矛盾を感じずにはいられない。中国メーカがトラブルに陥った今こそ、市場を取りに行くのがビジネスの鉄則ではないのであろうか。それとも初めから勝てるはずがないと思い込んでしまっているのだろうか。

f:id:dsupplying:20211130110515j:plain

 太陽光関連業者には日本国内のエネルギーを支えるという大きな役割があるはずだ。災害時にも強靭に稼働するシステムを構築する役割も担っているのだろう。挑戦無くして、次の発展はないはずだ。

蓄電池代替の蓄熱技術

 ケイ砂を使った熱エネルギーの貯蔵技術をFabcrossが紹介している。

ケイ砂の蓄熱を利用——再生可能エネルギーを安価に保存するシステムを開発中 | fabcross

 それによれば、太陽光や風力による余剰電力でヒーターを動かして、蓄熱材料のケイ砂を1200℃まで加熱し、熱エネルギーを持った砂を断熱コンクリート製サイロに貯蔵する。電力需要が高い時は、砂を熱交換器に供給し、タービンと発電機を回して電力を生成し、電気料金が安い時に再び砂を加熱してエネルギーを蓄えるという。

 太陽光や風力といった断続的な再生可能エネルギーを有効活用するには、優れたエネルギー貯蔵技術が重要となると記事は指摘する。電力の貯蔵にはリチウムイオン電池が有力候補とされるが、こうした方法の採用の検討があってもいいのかもしれない。

 

 

バイオマス発電にも試練

 輸入木材の減少で、バイオマス発電所が燃料不足で発電量が半減、思わぬ試練に立たされているという。

バイオマス発電所、ウッドショックで燃料不足 国産木材需要高まり | 毎日新聞

 毎日新聞によれば、輸入材の減少にともなって国産木材の需要が高まり、兵庫県の「朝来バイオマス発電所」が燃料を工面できなくなっているそうだ。この発電所は、全ての燃料を地元の間伐材、林地残材で賄う珍しいケースだという。

まとめ

 発電事業者や大手商社などでつくる経済産業省の作業部会で、燃料用のアンモニアのコスト半減についての検討が始まったという。国際的に石炭火力が批判を受けていることが理由という。

 またエネルギーを海外に頼ろうとするのだろうか。検討の必要性を否定しないが、エネルギーの地産地消化に向けた検討も同時並行に進めるべきではなかろうか。

 エネルギー価格が高騰を続け、一方で、この先の異常気象による災害を想定すると、不安を感じることが多くなる。こうしたことの解消も政府の役割ではなかろうか。気候変動適応の見地からのアプローチが少なくないだろうか。

 

なぜプラごみが大量に自然界に存在することになってしまったのだろうか

 

 「プラスチック汚染企業調査」を国際的な脱プラスチックネットワークが毎年行っているという。

 TOP10には毎年常連の企業が名を連ね、4年連続でコカコーラが1位になったという。

「世界をプラスチックごみで汚染している企業」コカコーラが4年連続1位に - 国際環境NGOグリーンピース

1位 コカコーラ    2位 ペプシコ  

3位 ユニリーバ    4位 ネスレ

5位 P&G       6位 モンデリーズ

7位 フィリップモリス 8位 ダノン

9位 マーズ      10位 コルゲート・パーモリーブ (出所:グリーンピース

 

 

なぜプラごみは自然界に流出するのだろう

「使い捨てプラスチックスが気候変動を加速させている」とグリーンピースはいう。

さらに、もしプラスチックスが「国」なら、原料の採掘から廃棄までにプラスチックスから排出されるCO2の量は、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで世界で5番目に多くなる(5位の日本を抜いて)という。

使い捨てプラスチックは、海の汚染だけでなく、気候変動への影響も深刻なのです。(出所:グリーンピース

 国連環境計画によれば、海洋には7500万から1億9900万トンのプラスチックス廃棄物があるという。2040年までには年間2,300万から3,700万トンものペースで増加するという。

How to reduce the impacts of single-use plastic products

ペットボトルなど使い捨てプラスチックスが登場して、便利になったのは事実なのだろう。ただ報道される棄てられたプラスチックスの惨状は目を覆いたくなる。

 もちろんそれを導入した企業側の責任は大きいのだろうが、我々市民側にもポイ捨てしない倫理観を求められているのだろう。

無責任に大量導入された使い捨てプラスチックス

「いくらボランティアがビーチクリーンを続けても、気づいた人からマイボトルを持ち歩くようになっても、世界中で毎日何十、何百億個ものペットボトルや小袋が使い捨て続けられる限り、プラスチックによる海の汚染や気候変動への影響を抑えることはできない」とグリーンピースはいう。

「根本的な解決には、構造的、体系的な変化が必要なのです」

 そして、こう提案する。

コカコーラの返却式ガラス瓶を見たことがあるかもしれませんが、使い捨てない販売方法は、長い間私たちの社会に根付いていました。

ガラスのボトルが3回以上リユースされれば、使い捨てと比べて年間50,000トンのCO2を削減できるという調査結果もあります。

そして今、世界ではテクノロジーによって新しいリユースのビジネスがたくさん生まれています。

解決策は、すでに存在しているのです。 (出所:グリーンピース

 まずは一部でもいいから、返却式のガラス瓶に戻すことはいいことなのかもしれない。

 便利さを求めて、ごみを増やし、その処分方法を確立しないまま、導入したことは愚かなことだったのだろう。

f:id:dsupplying:20211029101509j:plain

 台湾では、環境NPOが、海の浮遊ごみ回収船「アジュール・ファイター(Azure Fighter)」を開発し、試作モデルを披露したという。

動画:「海の掃除機」 台湾NPO、浮遊ごみ回収船を開発 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 台湾の沿岸部に多くある漁港を航行できるよう全長5メートル弱に設計されており、1日70キロの浮遊ごみを回収できるそうだ。

 プラごみの海洋への流出が止まれば、こうした活動の成果もあがるのだろう。

 ただ、こうしたごみの問題はプラスチックスばかりではないようだ。

 

 

 南米チリにあるアタカマ砂漠(Atacama Desert)には、衣類が山のように捨てられ、非現実的な光景が広がっているとAFPが報じる。

砂漠を汚染する「ファストファッション」 廃棄した古着から有害物質 チリ 写真18枚 国際ニュース:AFPBB News

 世界で最も乾燥しているといわれるこの砂漠を汚染しているのは、流行の服を大量生産して短いサイクルで販売する「ファストファッション」という。アタカマ砂漠に廃棄された衣類は少なくとも3万9000トンに上っているそうだ。

 何かが狂ってはいないだろうか。こんなことが当たり前になってはならないはずだ。

 

【東南アジアの脱炭素】サステナブルを希求するシンガポールの世界有数の石油コンビナート

 

 インドネシア、タイ、ベトナムなど東南アジア各国もカーボンニュートラル宣言し、この地域でも脱炭素が勢いを増して加速していくのだろうか。

 シンガポールは、COP26でPPCA 脱石炭国際連盟への加盟を発表した。PPCAに加盟するアジアの国はシンガポールが初めてとなるという。PPCAへの加盟に伴い、2050年までに、引き続き発電燃料として温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭の使用を段階的に削減するそうだ。

 シンガポールのグレース・フー環境持続相はCOP26のハイレベル会合で、「パリ協定の目標達成に向けて、国内の産業や経済、社会を、エネルギーと炭素効率を良くするよう変革するとともに、低炭素エネルギーの導入を拡大していく」と述べたという。

 

 

脱炭素で変わるシンガポールの石油コンビナート

 そのシンガポールのジュロン島には世界有数の石油コンビナートが存在する。

 BPやエクソンモービルシェブロン、シェルなどの石油メジャーに加え、BASFやデュポン、三井化学住友化学などの世界のプラスチックスメーカがこのコンビナートに立地する。この島における石油精製量は1日あたり130万バレルに達し、ガソリン、灯油、ジェット燃料を製造する。また、原油からはナフサが作られ、それを起点にして様々なプラスチックスなどの化学品も作られている。

f:id:dsupplying:20211125163035j:plain

 このジュロン島にも脱炭素の波が押し寄せている。持続可能なエネルギーと化学品工場の島に変えるという。いわば、この島がシンガポールの気候変動への取り組みの「中心地」になるということのようだ。

シンガポール版サーキュラーエコノミー

 この石油コンビナートに工場を持つ石油メジャーのシェルは、廃プラスチックを熱分解油に変換し、ナフサクラッカーを経て、サステナブルな化学品を製造するという。

Shell breaks ground on Asia's largest plastic waste to chemical feedstock plant, Economy News & Top Stories - The Straits Times

  その化学品のひとつはサステナブルブタジエンだという。これを原材料とし、同じくジュロン島にプラントを持つ旭化成が、S-SBR 溶液重合法スチレンブタジエンゴムを生産する。このS-SBRは、主に「エコタイヤ」省燃費型高性能タイヤに用いられる合成ゴムだという。

 

 

 自動車の燃費はタイヤにも依存し、燃費が悪化すれば、当然CO2の排出は増えることになる。また、自動車のライフサイクル全体のCO2の排出を低減させようとすれば、当然タイヤも対象となり、サステナブルなタイヤが求められる。

 旭化成によれば、従来のS-SBRを用いたタイヤに比べ、この新しい材料を用いれば、CO2を大幅に削減されることが期待できるという。

東南アジアで深刻なプラごみ問題

 シンガポール近隣の国々はプラスチックスごみの処理が問題になり、それが原因となって海洋ごみが発生しているといわれる。

 オランダの環境団体「The Ocean Cleanup(ザ・オーシャンクリーンアップ)がこの地域の河川に、ごみ回収船「インターセプタ―」を設置、ごみ回収を続けている。

f:id:dsupplying:20211126061724p:plain

(写真:The Ocean Cleanup: マレーシアのクラン川で回収されるごみ)

 ごみも適切に処理されず、放置されれば、川に流れ出て、それが海洋ごみになったりしてしまうのだろう。シェルのプラントがこうして回収されるごみの処理にも活用されればいいのかもしれない。