Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

SDGsとグリーン成長戦略 トヨタの事例

 

 トヨタ関連のニュースが増える。日本自動車工業会のオンライン記者会見では、豊田社長が国のカーボンニュートラル政策に、「チャレンジする」といい、協力する姿勢を見せる一方で、メディアには注文をつけたと報じられ、それがまたニュースにもなった。12月25日の首相記者会見でも言及があり、波紋を投げかけることになったのだろうか。 

 

 

グリーン成長戦略

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が、 国の成長戦略として公表された。

 脱炭素社会が世界のトレンドになり、ビジネスの主導権争いが激化している、このグリーン成長戦略は、そう指摘する。その上で、これを研究開発で終わらせず社会実装まで行うため、企業経営者には、この取組を、経営課題として取り組むことへのコミットを求めるという。

 公表された資料では、自動車・蓄電池産業の成長戦略に、「EV等の電動車の普及加速」をあげ、電池など電動車関連技術・サプライチェーン強化と一体的に成長を実現するという。

  • 遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる。商用車についても、乗用車に準じて2021年夏までに検討を進める。
  • この10年間は電気自動車の導入を強力に進め、電池をはじめ、世界をリードする産業サプライチェーンとモビリティ社会を構築。この際、特に軽自動車や商用車等の、電気自動車や燃料電池自動車への転換について、特段の対策を講じていく。 
(出所:内閣官房公式ページ「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

 この他にも、 合成燃料の大規模化・技術開発支援を掲げ、 2050年にガソリン価格以下のコストを実現することを目指すとする。

 蓄電池についても、大規模化・研究開発支援、蓄電ビジネス創造を掲げ、 2030年までのできるだけ早期に電気自動車とガソリン車の経済性が同等となる車載用の電池パック価格1万円/kWh以下を目指し、太陽光併設型の家庭用蓄電池が経済性を持つシステム価格7万円/kWh以下(工事費込み)も目指すという。

 おおよそ想定内の発表内容だったのだろうか。 

 

 

 これとは別にして、MaaSについても言及し、「日常生活における車の使い方をはじめとした国民の行動変容を促す」とし、工程表に「MaaSの普及促進など公共交通等の利便性向上」を組み入れ、マイカーだけに頼らず移動できる社会を実現すると明記する。

 

 便利なトヨタのEVたち

 トヨタが、実用化に向け進化したEV「e-Palette」用の運行システムを公開し、超小型EV「C+pod」を発売したと発表した。国のグリーン成長戦略の公表前後のことだ。

  新型コロナの感染拡大で人々の生活様式が変化し、モビリティへのニーズは多様化しているとトヨタは指摘する。そして、新しいモビリティサービス、自動運転によるAutono-MaaSなどが社会に必要とされるという。

「人と接触せずに移動する」、「人が移動するのではなく、モノやサービスが来る」など.... (出所:トヨタ自動車

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(写真:トヨタ

 その期待に応えようと、開発されたのが、「必要な時に、必要な場所へ、時間通りにいける」、「必要な時に、必要なサービスやモノが、時間通りに提供される」というジャスト・イン・タイムの思想を取り入れたe-Paletteの運行管理システムだという。

global.toyota

 これとは別に、超小型EV「C+pod(シーポッド)」を、12月25日(金)から法人や自治体などを対象に限定販売を開始すると発表した。(個人向けは、2022年を目途に開始する計画だという)。

 日常生活における近距離移動の他、定期的な訪問巡回などの法人利用や、都市・山間部などそれぞれの地域の事情に即した移動手段を目指すものだという。

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(写真:トヨタ

  EVとしての利便性を徹底追及しているようだ。トヨタによれば、自宅でも外出先でも気軽に充電可能な「普通充電」に対応し、付属の充電ケーブルはAC200V・AC100V兼用で、コンセントに接続するだけで充電ができるという。

 

 

 また、停電や災害など緊急時に役立つ、最大1,500W(AC100V)の外部給電機能も標準装備、助手席足元に設置されたコンセントや、オプションになるがヴィークルパワーコネクターを車両前方の普通充電インレットに差し込めば、外部給電用のコンセントとして約10時間程度の電力が供給可能になるという。

 EVの抱える問題を解決しつつ、それを利便性に変えたトヨタの本気度が伝わってくるEVたちだ。 

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(写真:トヨタ


始動 実現への歩み

 来年開催される東京2020オリンピック・パラリンピック大会では、e-Paletteが選手村内をバスとして巡回し、選手や大会関係者の移動をサポートする予定だという。そして、その先には、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「Woven City」での運行も計画しているとトヨタは説明する。そして、様々なパートナーと協働し、2020年代前半には複数のエリアや地域で商用化を目指すという。 

 まるで、国のグリーン成長戦略を見透かしたかのように動き出すトヨタ。そして、それはワクワクするような内容ばかりだ。

 こんな形でグリーン成長戦略が推進されていけばいいのかもしれない。そして、その上に適正な経済活動が成立すれば、もしかしたら、SDGsが目指すダイバーシティ&インクルージョンの世界にも近づいていくのかもしれない、そんな予感もさせてくれる。

 

「参考文書」

global.toyota

 

「大企業病の戒め」 松下電器産業(現:パナソニック)

 

 かつてド派手な記者発表会を開いていたパナソニック、旧松下電器産業だった頃のことだ。今まではそうした派手な記者会見は鳴りを潜め、送られてくるプレスリリースは事業撤退に関するものが目につくとNHKはいう。

パナソニックはどこに向かうか?」、取材を進めると根深い課題が横たわっていることが見えてきたとNHKは指摘する。

www3.nhk.or.jp

 

  政府が2050年のカーボンニュートラルの達成を目標にし、その実現にはライフスタイルの転換が不可避という。そのライフスタイルに深く関わりのあった企業のひとつが、かつてのパナソニックだったのではなかろうか。

 

 

 

大企業病

 記事によれば、大企業病に蝕まれ、それを組織改革によって治療してきたのが、これまでのパナソニックということなのだろうか。グローバル競争に挑むことができる体制づくりと、経営の実行力が問われているという言葉で締めくくる。

 記事が指摘する「大松下主義」が蔓延り、それが企業文化を形成しているのなら、組織をいじくり回す改革には限界があるのではないであろうか。

 

アップルが自動車を作る? 

 米アップルが自動運転車を製造するかもしれないという。関係筋の情報としてロイターが報じる。それによれば、自動運転車の開発を推し進めてきたアップルが、2024年の乗用車製造開始を目指していることが複数の関係筋の話で明らかになったという。自社開発の電池が搭載される見通しだという。

jp.reuters.com

 アップルの意図的な情報リークなのだろうか。ロイターが伝える「アップルは電池価格の大幅な低下と車の航続距離の向上につながる新たな電池の開発を戦略の中核に置いている」とか、「関係筋はメーカーと提携する公算が大きいとしている」と聞くと、ありえなそうな話で、まんざらでもないような気になるが、どうなのであろうか。

 自分たちの強みである技術が活かせ、コアコンピテンシーから外れず、そして、今自ら積極的に進めるカーボンニュートラルにも貢献でき、ある程度のマーケットが見込めるなら進出もあったりするのだろうか。

 

 

言い訳

 パナソニックにも、社員を含め誰もがときめく、パナソニックらしいプロジェクトがあってもいいのかもしれない。

 メーカーであるなら、やはりモノ、ハードウェアにこだわるべきなのではないだろう。それをどう作り、どう売っているのか。世界のどのメーカーもハードウェアなくして成功した事例などないのではなかろうか。今では顧客をつなぐのがハードウェアになっていはいないだろうか。

 パナソニックもアップルと同じ電機メーカなのだからできないはずがないし、まして今社会が求める脱炭素社会の実現に貢献できる多数の技術やプロジェクトを有しているのだから。

 結果が出なければ、真剣に取り組んでいないと見られても仕方がないのかもしれない。

 

 焦点を絞る

 嫌になるほど分析を行ない、マーケティングして、いくつもの戦略を練り上げる、おそらくそんなことを繰り返していたはずである。それでもパナソニックらしい商品が出てこない。 

 一方、ライバルであり、同じ電機メーカのソニーはEVのプロトタイプを作って世間を多いに賑わした。今、ソニーはそのEVを作り販売しているわけではない。

 EV用バッテリーで協業するテスラは家庭用蓄電池の製造販売を手がけ、かなりの安価で提供しているという。パナソニックにはそうした安価の製品を作ることはできなくなってしまったのだろうか。

 

 

企業文化

かつて松下電器産業と言われていた頃、「大企業病の戒め」という社訓があったと聞く。

  1. 自分はよくやっていると自惚れている
  2. 上司は部下を叱らない
  3. タブーが多い
  4. 決めない・決まらない
  5. 上を向いて仕事している
  6. 報告や説明は巧いが自らはやらない
  7. 現状に甘んじ新しいことに挑戦しない

 

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 まさに、NHKが指摘した「大松下主義」のことからもしれない。組織をいじくり回しても、こうした文化は変化しないのだろう。

 素晴らしい社訓がある。それをもとにした経営者による原理原則による指導が必要なのかもしれない。そして、もう一度「パナソニック」というブランドを再生すべきだろう。 かつての松下には「ナショナル」という確固としたブランドイメージがあった。初期のパナソニックもそうだったのかもしれない。 

 NHKの記事を思ってそんなことを思った。現場を見た訳ではないから、正確なことではないかもしれない。ただひとりの顧客として感じたことでもある。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.comdsupplying.hatenadiary.com

dsupplying.hatenadiary.com

 

カーボンニュートラルとサスティナビリティとものづくり

 

 はじめてテスラの秘密のマスタープランを読んで、これが「サスティナビリティ」なんだと思った。極めてシンプルなワードでまとめられている。

スポーツカーを作る 
その売上で手頃な価格のクルマを作る
さらにその売上でもっと手頃な価格のクルマを作る
上記を進めながら、ゼロエミッションの発電オプションを提供する。これは、ここだけの秘密です。 (出所:テスラホームページ)

 

 この秘密のマスタープランは、2006年にイーロン・マスクが書いたものだ。そして、彼はその通りに実行してきた。

dsupplying.hatenablog.com

 

  

 そして、今またイーロン・マスクが驚きの発言をする。 

 経営者は、自分たちが作る製品や提供するサービスについて完全主義者を目指すべきだ

と話したとBusiness Insiderが紹介する。

 思わず腰を抜かしそうになる。さらに、マスク氏は「顧客からも、顧客ではない人々からも、あらゆる方面から否定的なフィードバックを集めるべきだ」と述べたという。

www.businessinsider.jp

 

プロダクト・イノベーション

 国内企業もかつては、プロダクト・イノベーションを標榜していた。そして、いつしか難しいといっては、努力を諦めてしまったのかもしれない。記事を読んで、そんなことを思い出す。

たとえ、プロダクト・イノベーションが難しいことだとしても、マスクはその技術は「絶対に学べるもの」で、最初のステップとしてやるべきなのは、シンプルに努力することであると述べた。 (出所:Business Insider)

 

 Business Insiderによると、「アメリカの企業経営者たちは、製品を改良するために十分な時間をかけているだろうか。私はそう思わない」とイーロン・マスクが語ったという。

 何も米企業だけのことではなかろう。

 そして、そのマスク氏の口から「カイゼン」の基本のひとつ三現主義を聞くとは思わなかった。「カイゼン」も米国の大学で研究され、「リーン方式」として定着したと聞く。そうであれば、何も不思議なことではないのかもしれない。

 

 

 そうした背景と、イーロン・マスクというよき先例ができれば、それに追従するものが現れたりするのだろう。電動車だけでどれだけのスタートアップが米国には出現したのだろうか。

 

オールドエコノミーたち

 このコロナ渦という嵐がグリーンリカバリーを萌芽させ、今までの経済社会を作り変えようとしている。自動車産業はいち早く回復をみせたが、その前にカーボンニュートラルという壁が突如としてあらわれ立ちはだかる。

 Car Watchによれば、日本自動車工業会のオンライン記者会見で、トヨタの豊田社長は危機感をあらわにし、「2輪、大型、軽そして乗用を合わせて、日本という国が今までの実績が無駄にならないように、どう2050年のカーボンニュートラルに向けていくか。簡単なことでもないですし非常に複雑です」と語ったという。

 その背景には、メディア報道の誤謬があるようだ。 

「日本の電動化は遅れてる」、「ガソリン車さえなくせばいいんだ。それが、カーボンニュートラルに近道なんだ」。 何の根拠もない、「不条理な話」ということであろうか。

car.watch.impress.co.jp

 

 豊田社長は、このオンライン記者会見で、メディアに異例の注文を付け、「正しい情報開示よろしくお願いしたいなと思います」と語ったという。

メディア報道が横槍となり、それによって生じる誤解が世相となれば、大きな障壁になってしまうことを恐れたのだろうか。

  その日本自動車工業会は、難しいことではあるとしながらも、カーボンニュートラルにチャレンジすることを全会一致で決めたという。

 

 

 

バルミューダ IPO

 家電メーカといっていいのだろうか、グリーンファンやスチームトースターの「バルミューダ」が東証マザーズに上場したという。

 気になる会社だった。電機メーカに勤めていたこともあったし、以前同じ職場で働いていた仲間が商品開発の責任者をしているからかもしれない。スチームトースタが売れ始めた頃であっただろうか、調査会社からレポートを購入してまで調査したこともあった。

www.nikkei.com

 メディアやアナリスト、知識人など様々な人々が色々なことを言っている。「デザイン経営」だの、尖ったデザインや機能、アートだとか、高級家電、ファブレスなどなど。ハードウェア系の生みの苦しみをわかっているのだろうか。売れる製品を作るまでのもがき、先行投資の繰り返し、資金ショートの恐怖。

www.balmuda.com

 

 バルミューダの寺尾社長もまた、イーロン・マスク氏のように何かマスタープランをもっているのかもしれない。ここまでの過程が重ねてきた失敗の経験が、マスク氏のように完全なる商品にこだわるようになったのかもしれないと感じた。  

 日本経済新聞にこんなコメントがあった。

スタートアップといえば「ネット系」が多かった日本の起業シーンもずいぶん変化してきました。「ものづくり系」はいくつかある注目分野の1つです (出所:日本経済新聞)  

  やはりものづくりは裾野が広い、メーカがひとつ誕生すれば、素材から組立まで、そのサプライチェーン上で関わる産業が増え、雇用の機会が生まれるかもしれない。また、サスティナビリティなものづくりの機会になれば、カーボンニュートラルの社会に貢献していくのかもしれない。

バルミューダの成功事例を学習して、新たなものづくり系スタートアップが次々と立ち上がって欲しい、そう思った。

 

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ポストコロナの世界のグリーンリカバリー

 

  国連の気候サミットが先週12日に開催された。それに合わせ、各国が気候変動対策を明らかにし、2030年の中間目標を公表する。

 東南アジアの国ミャンマーも先進国と同じように行動し、NDC(Nationally Determined Contribution:国が決定する貢献)を国連に提出するという。今回のオンラインサミットでは、アウンサンスーチー国家顧問が、今年2020年末までにNDCを提出すると述べ、計画は二酸化炭素(CO2)の削減を目的としていると付け加えたという。再生可能エギーのシェアを39%に増やし、林業部門からの純排出量を25%削減するという。

 

 

 

ミャンマー

 ミャンマーの報道機関によれば、ミャンマーは気候変動に対して非常に脆弱だという。過去20年間で気象関連の損失が最も多かった国のひとつとして、Global Climate Risk Index 2020にミャンマーの名があがっているという。

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 ミャンマーではCO2排出量が増加、2016年には2015年と比較して5.61パーセント増加したという。そうした状況下であっても、ミャンマーは2030年までに住宅部門で7.8%、工業部門で6.6%、商業部門で4%、その他の部門で1.36%の改善を約束する。

 また、そのCO2を吸収する森林を保護し、再植林を進める政府目標を立てる。しかし、その一方で、年間平均100万エーカー(404,685ヘクタール)の森林を失っているという。 

「国際社会から(実際の実施に関して)支援を得ることができれば、行動計画は迅速に前進する」とミャンマーの報道機関は指摘する。www.irrawaddy.com

 

 

 

カナダ

 カナダは、2030年に2005年比で32〜40%下回る範囲で削減することを目標に、「健全な環境と健全な経済」政策を推進する。

 カナダ政府によれば、エネルギー効率の高い住宅や建物への転換を推進していくという。それにより、より快適で、電力コストを低く抑え、汚染も削減、それに加え新たな雇用も創出できるという。また、クリーンエネルギーとその技術への投資を通じてクリーン電力の供給を拡大し、低排出ガス車やゼロエミッション車などによりクリーンな輸送を奨励する。

 さらにカーボンプライシングを導入、その収益を家庭に還元することで、経済的ニーズと環境目標を同時に満たすことができることを証明するという。勝手気まま、自由に汚染が進行してまえば、自分たち全員が望んでいる経済を成長させることはできないという。

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 カナダ政府はみずからの購買力を活用して、連邦政府の建物での排出量を削減し、建設資材に含まれる炭素を削減する技術など、カナダの経済部門全体で新たなクリーンテクノロジーをサポートする。 

 自然が気候変動の脅威にさらされているように、自然はそれとの戦いの味方でもあるとカナダ政府はいう。

 20億本の木を植え、自然環境をよりよく保護、復元し、地域コミュニティをより回復力のあるものにし、自然環境へのアクセスを増やしていく。こうした活動で、植樹、都市計画、観光などの分野で雇用を創出していくとしている。

www.canada.ca

 

 いつからか自国優先主義がまかり通り、プラグマティズム実用主義が蔓延、自国の経済ばかりを考えるようになり、経済対立する世界になってしまった。2020年の年末も近づき、そんなことを思う。年が明ければ、また国際協調の流れに復帰することになるのだろうか。

 また急速にコロナが再拡大を続けている。こんなに酷いコロナ渦にあっても、経済を優先することに少しばかり疑問を感じてくる。そんなことがずるずると長引かせている一因なのかもしれない。それでも、いずれそれも収束していく。

 ポストコロナは、各国が進めるグリーンリカバリーを基軸に進んでいくのだろうか。多国の動きを見ても、共通事項も多々あるように思われる。うまく国際協力できればいいのかもしれない。

 本来、2020年がSDGs行動の10年の始まりと言われていた。来年2021年が再スタートする年になればいいのかもしれない。SDGsがもとめるダイバーシティインクルージョンの精神を取り戻せば、今ある世界を改善していくのだろうか。

 

海洋ごみへの挑戦続く オーシャンクリーンアップ インターセプタを増強

 

 世界では様々な研究が行われている。海洋プラスチックスの生態系への影響もそのひとつであるが、 公開された76の研究論文からのデータを評価し、研究者らが予測した結果をテスト評価した研究結果が発表されたという。

 

海洋ごみ どのプラスチックスが最も危険か

 2016年、研究者らは、海洋ごみのうち、野生生物にとって最も致命的であると考えた4つの主要なアイテムとして、漁具の残骸、ビニール袋、ブイ、プラスチック製の道具を特定した。今回、4つの項目のうち3つで、それが正しいことがわかったという。

プラスチックシートやバッグ、パッケージなどの軟質のプラスチックスは、野生生物の腸の閉塞を引き起こす可能性があり、これが原因ですべての海洋生物で死亡例が確認されたという。特に、プラスチックシート類は、クジラ類とウミガメで最も多く確認された。漁具の残骸は、より大きな動物、特にアザラシやアシカの死因になっていたという。

 一方、ブイやロープなどは、小さな動物にとっては致命的となり、そして、硬質プラスチックスは海鳥の中で最も多くの死亡原因になったという。

 

 

 

 「The Maritime Executive」がこの内容を紹介し、解決策とし、海洋プラスチックスの摂取による海洋生物の死亡を減らすための最も費用効果の高い方法は、最も致命的なアイテムをターゲットにして、環境からそれらを削減することだという。

 

www.maritime-executive.com

 

オーシャンクリーンアップ 活動拡大へ

 果敢にも海洋ごみの削減に挑戦し続けるThe Ocean Cleanup (オーシャンクリーンアップ)という環境活動グループがある。2019年に立ち上がり、太平洋で海洋プラスチックスの回収を始める。そして、その活動は海洋プラスチックスの流出源と言われる河川にも広がりをみせる。この組織を率いるのはBoyan Slat(ボイヤン・スラット)氏。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 海洋ごみを回収する新しい「Ocean Cleanup System 002」が稼働始める準備を進めるという。

 

www.instagram.com

 

 

 

 河川でプラスチックスゴミを回収する「インターセプタ」は、マレーシアのクランでさらに2隻の建造が始まっているという。この新しい船は2021年5月に完成する予定だ。これらが完成すれば合計6台となる。

 

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(写真:The Ocean Cleanup)

 

 オーシャンクリーンアップによれば、グローバルにスケールアップしていくための基礎を築くため、インターセプター005と006は、これまでの第2世代のインターセプタでの経験を活かし、第3世代となるこられの船では、収集効率と生産の容易さを向上させているという。

 

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 (写真:The Ocean Cleanup)

 

パートナーシップ 活動の輪が広がる

 オーシャンクリーンアップの目的は、きれいな海にすることを達成することにあるという。そして、そのために、世界中で最も汚染されている1000の川で、インターセプタを使ってプラスチックスごみ回収に取り組むことだという。

 オーシャンクリーンアップは自分たちは小さなチームであるため、単独でできることに限りがあるという。しかし、今回は、「Konecranes」とのパートナーシップのおかげで、この第3世代の開発と建造につながったという。

 建造中のインターセプター005と006は、LAで活動する予定だという。

 

theoceancleanup.com

 

 

 

ポストコロナに向けて

 ウィズ&ポストコロナの成長戦略とし、政府は2050年のカーボンニュートラルを目標とし、また、循環型経済を標榜する。

 世界の海はつながり、海洋ごみには国境がない。 大きな目標をもって、その海洋ごみと格闘する青年がいる。

 日本の企業も国内ばかりに目を向けるのでなく、世界の海にも関心を持った方がいいのかもしれない。できることならオーシャンクリーンアップのような活動とパートナーシップを組み、支援していくべきなのであろう。

 それが循環型経済への近道のような気がするし、また、SDGsにも大きく貢献することになる。

 

 

重視されるサプライチェーン パタゴニアの「透明性」とソニーのwena 3の場合

 

 脱炭素やサスティナビリティ、SDGsに注目が集まり、企業活動における透明性が問われているようだ。WWD Japanは、ファッション産業では特に、商品をトレーサブル(追跡可能)にすることが重視されていると指摘し、サスティナビリティ先進企業のパタゴニアの取り組みを紹介する。

 

 

 

「トレーサビリティーは、複雑に入り組んだサプライチェーンによって生産される製品が、環境的、社会的な責任を追求した素材・慣行を使用して、実際に製造されていることを証明する最善の方法であると、パタゴニアの篠 環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーはいう。

 

www.wwdjapan.com

 

トレーサビリティはサプライヤー監査から

 WWD Japanによれば、パタゴニアは全ての最終製品工場(一次サプライヤー)に対して社会的・環境的監査を行っているという。そればかりでなく、主要原材料サプライヤー(二次サプライヤー)も監視し、それらの工場に対しても一次サプライヤーに適用しているものと同等の監査/是正工程を採用しているという(仔細はWWDの記事で確認できます)。 

 透明性、サプライヤー情報を開示することは勇気ある行動なのかもしれない。

 電機会社でも、自らの行動規範を開示し、「法令・社会規範の遵守」、「地球環境の保全、持続可能な社会の実現」に向けて、協働していくことを旨とし、Win-Winの関係で取引できるようにしていた。

 素材調達から始まるサプライチェーン上のサプライヤーを、パタゴニアと同様にサプライヤー監査を実施、是正活動を継続的に行なう。主たる目的は環境物質の不使用照明などを含めた品質保証にあったが、「トレーサビリティ」は重要な管理手法であった。

  しかし、そのサプライヤーリストを積極的に公表することはなかった。テクノロジー企業ということもあるのだろうか、技術の秘匿性が理由になっていたのかもしれない。国内企業の多くがそうしたことを理由にしてはいないだろうか。

 

 

 

ソニー 「wena 3」が仕掛けたオープンイノベーション

 ソニーが11月27日、スマートウォッチ「wena 3」の販売を始めた。Alexaを搭載し、Suicaに対応、「Qrio Lock」で解施錠ができるという。「wena 3」 を紛失しても、「MAMORIO」の機能でその所在地を確認できるという。そして、セイコーシチズンとのコラボモデルもリリースし、「wena 3」モジュールを使い協業するともいう。発売前からこの「wena 3」注目が集まった。

 

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 (写真:ソニー

 

 Business Insiderは、コラボする時計メーカーなどが独自の個性を確保したまま、wenaのフル機能が利用できるようになったことが大きいという。

時計メーカー側もwena 3のモジュールを採用すれば、前述の機能はすべて利用でき、またSuica発行などに必要な管理サーバーやアプリの保守などもソニーが担当するため、自社ですべて開発するよりスピーディーな製品化を実現できる。 (出所:Business Insider)

 

www.businessinsider.jp

 

「wena 3」の成功はサプライチェーンから

 c/net Japanは、今回のコラボを「オープンイノベーションの成功事例」といい、この「wena 3」の事業責任者であるソニーの對馬哲平氏にインタビューし、その言葉を紹介する。

 その對馬氏は「wena 3」の開発における苦労話としてサプライヤーチェーン作りをあげる。

ソニーにあるアセットは、基本的にはゲーム機を100万台作ったり、テレビを100万台作ったり、カメラを100万台を作るみたいな、そういうことに最適な組織とプロセスになっているんですね。

 そこと同じように新規事業を乗せると規模感が合わないんです。

wenaの場合は新規事業ってこともありますし、規模も大きくないので、それに見合った工場やサプライヤーさんと取引していくことが大事なんです。 (出所:c/net Japan)

 

japan.cnet.com

 

 オープンイノベーションとして注目される新事業も、地道なサプライチェーンがあって成立する。そうした視点に立ってみれば、ソニーはコラボパートナーからみれば、1次サプライヤーになる。そして、對馬氏が苦労して立ち上げたサプライチェーンが2次サプライヤーとなって、時計メーカを支えていく。

 しかし、そこにはまだパタゴニアのような「透明性」はないのかもしれない。WWD Japanが紹介したサプライヤーを巻き込んだパタゴニアの「透明性」の取り組みも、ある意味、オープンイノベーションの一例なのかもしれない。そうしたことが認知が進めば、国内企業の「透明性」もさらに向上していくのかもしれない、そう思った。

 

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「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

「参考文書」

www.sony.co.jp

 

カーボンニュートラル 企業の本気度

 

 国が掲げる「2050年までのカーボンニュートラル」について、目標達成困難とみる企業が7割弱あるという結果が、ロイターが実施した企業調査で明らかになったという。

 それによると、企業にとって環境対応コストに対する不安が大きく、化石燃料の代替電源として原子力発電の現状以上の利用にも慎重なことが背景にあるという。

今後10年間で自社の二酸化炭素(CO2)排出量で削減可能な範囲は10%以下との回答が半数を占め、取り組みは遅々として進みそうにないとロイターは指摘する。

 

jp.reuters.com

 

 

 

カーボンニュートラルは他人事か 戸惑う企業

 ロイターの調査結果に少々戸惑う。これが企業の本音なのだろうか。

 ロイターによれば、排出ゼロへの対策には「結局、企業の持ち出しは避けられない」(小売)など、コストを意識する声が目立つという。

事業への影響について、こうしたコストを踏まえて短期的にはマイナス効果となるとの回答が29%と、プラス効果(15%)の2倍を占めた。

ただ、中長期的にはプラス効果が出るとの見方が43%に増え、マイナス効果の倍になり見方は逆転している。 (出所:ロイター)

 

「短期的には設備投資過多の時期がありマイナスとなろうが、中長期でみると設備投資資金がない競合他社より有利になる」など、投資効果が顕現化することで事業にもプラスとなるとの見方があると伝える。

 

 再生可能エネルギーの普及の現在地 その実例

  NHKは、「2050年の“脱炭素” 再生可能エネルギー普及の現在地は」というビジネス特集で、個人や企業の再生可能エネルギーの取り組みを紹介する。

 横浜市にある印刷会社は、自社の電力のすべてを再生可能エネルギーに切り替えたという。NHKによれば、屋上一面に太陽光パネルを取り付け、会社で使う電力の2割を発電する。残りの8割も小売事業者を通じて風力発電でまかなっているそうだ。

 この会社の社長は、こう述べているという。

「『脱炭素』は新しい価値を創造するものの1つだと認識しています。今後、金融機関から資金調達をする上でもプラスになるのではないか」 (出所:NHK

 

 

 

  しかし、まだ再生可能エネルギー普及には課題もあるという。九州電力による再エネ事業者に対する「出力制限」の事例を紹介し、熊本県佐賀県など九州の43か所で太陽光や風力発電を運営する事業者は、今年とし36日の出力制御の要請を受けたと伝える。

「想定より多くの太陽光が入ってしまえば出力制御が増えてしまう。そういう可能性があっては投資できない」と発電事業者はいっているそうだ。

 

www3.nhk.or.jp

 

 九州電力もまた発電事業を行ない、送電事業も行なう。どの電源を優先するのか、国の規制が求められているのかもしれない。

 その一方で、福岡市に暮らす家族が再生可能エネルギー由来の電力に切り替えた事例を紹介する。それによると、契約を切り替えた理由は、温暖化への不安だという。夏の猛暑などを肌で感じ、家庭でも二酸化炭素を減らせないか考えるようになったという。

「子どもたちの将来のことを考えるとやはり一人でも多くの人が、再生可能エネルギーに対して関心を持っていかないといけないと思っています」 (出所:NHK

 

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抵抗勢力なのか

 経団連の中西宏明会長は、2050年までの政府のカーボンニュートラル目標について、経済界は抵抗勢力と心配されるが逆だと述べたと、共同通信が伝える。

 共同通信によれば、中西氏は「経済界も政府も力を合わせて一つの方向をつくることが大事だ」と訴え、環境分野の技術革新に積極的に取り組む意向を示したという。

 

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 企業の本気度が問われる。躊躇している余裕はないはずだ。もう動き出した企業もたくさんある。そして、何より忘れてならないのは、国際協調だ。温室効果ガスには国境がない。自分だけがよければという考えはもう通用しなくなるのだろう。