Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

DeNAも仮想発電所VPPに参入 変わり始めた電力産業

 

 DeNAが仮想発電所VPP(バーチャルパワープラント)に参入するという。電力産業に変化の波が押し寄せきたようだ。

 ここ最近、電力関係のニュースが増える。以前のように、いつまでも続く石炭火力発電に対する批判ではなく、水素などの新技術、異業種からの参入、電力インフラの変化等々。政権が変わり、新たな政府が2050年のカーボンニートラルを宣言した影響だろうか。

 それにしても、短期間に、堰を切ったように次々と新たな動きが出てくる。これだけの動きがあるということは、水面下で、企業は必要な技術開発を続けていたということであろうか。

 

 

 

これまではレガシーが擁護されていたのだろう。悪しき前例主義のようなものが成長機会を摘んでいたのかもしれない。

 

加速する仮想発電所VPPへの参入

 PwCコンサルティングまでが、VPPの支援サービスを始めるという。再生可能エネルギーへのシフトが一気に加速するのだろうか。そうでなければ、コンサルティング会社までがこの市場に参入してこないだろう。

 PwCによれば、脱炭素化の流れに加え、大規模な台風など自然災害による電力需給の逼迫を受け、電力需要家の施設内に太陽光発電や蓄電池などの分散型エネルギーリソース(DSR:Demand Side Resources)が急速に普及しているという。そのDSRを有効に活用するには、集約(アグリゲーション)し、ひとつの電力供給システムとする仮想発電所VPPに対するニーズが高まっていると指摘する。

 

www.pwc.com

 

エネルギー事業の変革におけるキーワードである『3つのD』、Decarbonization:脱炭素(再エネを中心としたエネルギーリソースの有効活用)、Decentralization:分散化(エネルギーの地産地消)、Digitalization:デジタル化(IoT技術の活用)を加速化することも期待されています。 (出所:PwCコンサルティング

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 トップが変ると前任者を否定することから始める。その方が変化をより明確にできるし、新たな成長の機会にすることができる。

 菅政権は「国民のために働く内閣」という。直接的に否定することなく、遠まわしの表現で指摘したのかもしれない。

 前例と真逆な政策を推進すれば、新たな成長余地が生まれる。脱炭素化やここ最近の電力関連のニュースはその表われなのかもしない。

 

 

 

 風力発電の適地北海道での事例

 北海道は風力発電の適地のひとつと言われる。日本経済新聞によれば、道内での風力発電の導入量が20年3月末時点で48万キロワットになり、3年で4割増えたことになるという。一方で、送電線の容量が足りずに待機中の電源も1000万キロワットに上るという。さらなる再生可能エネルギー導入に弾みをつけるには、エネルギー貯蔵技術の発達や導入コストを下げる仕組みが欠かせないという。

 

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 泊村の泊原子力発電所が停止し、その後を追うかのように風力発電が増加する。大量に温室効果ガスを排出する石炭火力発電は時代遅れのものになったが、いつまでもそれ頼みになっていたのが不思議なことに思える。

 再生可能エネルギーは天候頼みで出力がぶれやすく、調整弁が必要との指摘がある。それが今までベースロード電源には不向きとされたきた理由だ。

 課題があれば、問題解決しようとの動きが生まれ、技術的進歩の余地も生まれる。

 

 

 

 日本経済新聞によれば、北海道電力は、揚水発電所を「調整弁」として活用し始めているという。従来、「揚水発電所」は需要が少ない夜間に揚水し、日中の発電に備えていた。今では太陽光発電風力発電が稼働する昼間に揚水して電気を使う役割も担うようになり、稼働率も上がっているという。

 

北電は石狩市と組んで21年にも建設する再エネ由来の電力を使う企業団地に、植物工場の事業化も検討している。植物工場は温度管理や照明の電力消費が大きく、事業所などの電力をまとめて制御する「仮想発電所(VPP)」を確立すれば蓄電池と似た役割を担える。あの手この手で新時代への備えを急いでいる。 (出所:日本経済新聞

  

r.nikkei.com

 

エネルギー基本計画の見直し加速か

10月30日に開催された第42回地球温暖化対策推進本部の会議で、エネルギー基本計画の見直しを加速するよう指示があったという。

 福島の原発事故で「脱原発」のムーブメントが起きた。気候変動が顕在化し「脱石炭」の動きが加速する。そうした動きに合わせるかのように技術は次々と開発される。

 政策に柔軟さが欠けると、成長機会を阻害することになり、国民の期待を裏切ることになる。

 「脱炭素」にめどが立つようであれば、そろそろ「脱原発」の議論を始めるときなのかもしれない。  

 

 

中国でも売上を伸ばすユニクロ 期待したい中国が抱える問題への対応

 

 2600万トン、毎年、膨大な量の衣類が中国では廃棄されている、とブルームバーグが報じる。そのうち再利用もしくはリサイクルに回されるのは1%未満だという。

  日本では15億着の衣服が廃棄されているとの報道があった。2600万トンというはどのくらいの枚数になるのだろうか。ただ驚愕するしかない。

 

www.bloomberg.co.jp

 

ユニクロの大中華圏での売上高は世界全体の2割を占めるほどだ。

同地域での売上高は2017-18年度に27%近く増えて40億ドル(約4200億円)を突破した。

中国で購入される大半の衣料品は、大量生産されて安い、流行の入れ替わりが激しいファストファッションだ。 (出所:ブルームバーグ

 

  ファストファッションが中国で大量の衣料品廃棄物を生み出していると、ブルームバーグはいいたいのだろうか。そこにはユニクロも含まれるといることなのであろうか。

 

 

 

「RE.UNIQLO」 服から服へリサイクルを始める = ユニクロ

 ユニクロは11月2日、「リサイクル ダウンジャケット」の販売を始める。この「リサイクル ダウンジャケット」を発表したとき、ユニクロは、グローバルでもダウン商品の回収をすると公表した。また、回収した服を新しい商品に生まれ変わらせ、再びお客様に届ける循環型リサイクル「RE.UNIQLO」を始めることも公表した。

  ブルームバーグによれば、中国では、着古された衣料品が毎日、大量に処分されているという。中間所得者層(ミドルクラス)とEC電子商取引の拡大もあって、中国は昨年、とうとう米国を抜いて世界最大のファッション市場になったという。

 ユニクロの店舗数も中国が国内を上回るようになったと聞く。その中国でも同じようにダウンが回収したり、「RE.UNIQLO」を始めたりするのだろうか。

 中国なら、着古された衣服を大量に回収することができるではずだ。量がまとまれば、できることもより多くなり、問題解決も進め易くなるはずだ。

 「回収量が増えればその分コストメリットも出てくるはずであり、まずは再利用のためのサイクルをお客さまとともに作っていくことが重要」と、ユニクロのグローバル商品本部MD部長はWWD Japanとのインタビューで話していたのだから。

 

 

 

 ユニクロ柳井氏は、「真にグローバルなプラットフォームを作る」と、たびたびその話をする。そうであるなら、中国で服を回収しない手はないのではなかろうか。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 世界最大手のプラスチックスメーカ米ダウが中国でリサイクル開始へ

 世界最大手のプラスチックスメーカ米ダウ(Dow)が9月、中国でのプラスチックスのサーキュラーエコノミーで、福建省アモイの廃棄物管理会社のLuhaiと、協業すると発表した。これは、ダウにとってアジア太平洋地区で初めてのリサイクル協力になるという。

 ダウは、2030年までに、100万トンのプラスチックを回収、再利用、リサイクルする「Stop the Waste(無駄をなくす)」という「サステナビリティ」についての目標を掲げている。

 Luhai社は、現在、福建省アモイ市でプラスチックス廃棄物の回収事業を行なっているが、全国の他の都市にも活動を拡大する計画を持っているという。

 

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(写真:PR Newswire)

ダウとLuhaiが中国でのプラスチック循環性を高めるための提携を発表-PR Newswire APAC

 

corporate.dow.com

 

 コロナ渦による石油価格の下落で、世界の大手化学メーカがプラスチックスの設備を増強するとの報道をたびたび目にした。ダウは何か改心する動機があったのだろうか。それとも、この発表はロイターが指摘したごくわずかなリサイクル投資の一部に過ぎないということであろうか。

 

jp.reuters.com

 

 仮にそうであっても、ダウは中国で廃棄プラのサーキュラー・エコノミーを始めるのであろう。そして、それが次の展開、サーキュラーエコノミーの拡大につながったりしていくこともあるかもしれない。

 

 

 

 ユニクロはどうなのであろうか。中国で服を回収するプログラムの計画があるのだろうか。それとももう計画は持っているのであろうか。

 「国家に代わるプラットフォーム」を標榜するユニクロなら、大量の衣服が廃棄される現実を見過ごすことは出来ないはずである。

 

www.wwdjapan.com

 

 ユニクロが行動することで、中国の矛盾「ウイグル問題」の解決にもつなげっていって欲しい、そう思う。

 

 

「関連文書」 

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

 

持続可能な社会がすぐそこに レクサス初のEVが登場

 

 LEXUSが、初のEV電気自動車モデル「UX300e」の販売を始める(海外で販売開始済)。2020年度分は限定販売135台になるという。商談申込み(抽選)の受付が10月22日から始まった。

 

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(写真:トヨタ

 

 トヨタによると、2025年にはレクサス全車種に電動車を設定し、電動車の販売比率がガソリンエンジン車の比率を上回ることを目標にしているという。

 

 

 

ウーバーもEVシフト拡大

 2040年の「ゼロエミッション」を宣言したライドシェアのウーバーが「EV拡大」を約束したとブルームバーグが伝える。それによると、ウーバーは2030年までに欧州、米国、カナダの主要都市でEVの使用率を100%にするという。ドライバーのEVシフトを促すため、2025年までに8億ドルを支援する。ウーバーの競合、リフトも2030年までに排ガスゼロ車100%を目指しているという。

 

www.bloomberg.co.jp

  

 (関連文書)

dsupplying.hatenadiary.com

 

 脱炭素化、循環型経済へのシフトを予感

 EVの普及で脱炭素化の流れがさらに加速していくのだろうか。そして、それはまた循環型経済への移行も後押しするのだろうか。

 トヨタが、今後増加すると予想されるEVやHVなどで使われた使用済み畜電池を二次利用する仕組みを構築、資源の有効活用や車のコスト低減につなげるとブルームバーグが伝える。

 それによると、使用済み畜電池は初期性能の7-8割程度まで劣化しているため車向けとしての再利用は難しいというが、電力網の需給調整などの用途では使用が可能だという。

  

 

 

 「そのまま資源にするのはもったいない」というのが事業の出発点とトヨタはいう。

トヨタは、 JERA(東京電力ホールディングスと中部電力の火力発電事業の共同出資会社)をパートナーに選び協働し、使用済み車載蓄電池の2次利用の実証試験を進める。

ジェラ(JERA)の尾崎亮一技術戦略ユニット長は、日本が輸入に依存するコバルトやニッケルといった希少金属レアメタル)を使用する電池が「国内で循環する仕組みの一部を作る」ことで、再利用は金属資源調達の安定化にも寄与すると述べた。

また電池には天候によって出力が影響を受ける太陽光や風力発電を補完し、電力網を安定化させる役割も期待されているという。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

 ブルームバーグは、EVの普及が40年までに乗用車全体の58%に達すると見込む。 

 バッテリーの再利用が事業として成立すれば、EVのコスト低減につながる可能性がある。来年度には10年前のHV車の蓄電池が多量に回収される見込みだという。

 さらなるEV普及の呼び水になるのだろうか。

 

バッテリーリサイクルに挑むスタートアップ

 米国ネバダカーソンシティを拠点に蓄電池のリサイクルビジネスを行う「Redwood Materials(レッドウッド・マテリアルス)」という会社がある。

 TechCrunchによると、同社はEV、家電など様々な機器の蓄電池やバッテリーセルの製造工程からでるスクラップを再利用する循環型サプライチェーンの構築を目指しているという。

Redwoodは、家電会社やパナソニックなどのバッテリーセルメーカーから、スクラップを回収している。次に、これらの廃棄物を処理し、通常は鉱山から採掘されるようなコバルト、ニッケル、リチウムなどの材料を抽出して、パナソニックやその他の顧客に供給する。

Redwood Materialsには多くの顧客がいるが、協力が公表されているのはパナソニックAmazon(アマゾン)だけだ。 (出所:TechCrunch)

 

jp.techcrunch.com

 

 

 

二律双生 環境と利便性の両立

 蓄電池が登場しケーブルレスを実現すると、一気に利用範囲が拡大した。電池が進化すると、その利用がさらに拡大、EV、家庭用蓄電池、業務用など様々な分野で利用が進んだ。

 しかし、その蓄電池にも寿命はある。

 使い終われば、多量に捨てられる蓄電池が発生することになる。蓄電池を利用し始めたときは、その処分方法をあまり考えていなかったのかもしれない。

 循環型経済、蓄電池の2次利用の産業化は、この先の社会のあり方の映し鏡になるかもしれない。

 

「二律双生」とは、相反する価値を同時に叶えることとレクサスは言う。レクサスUX300eが、「環境」と「利便性」が両立することのフラッグシップになればいいのかもしれない。その2つが両立させていくことで、持続可能な社会に近づいていく。

 

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 (写真:トヨタ

 

 国内でもこうした課題解決型のスタートアップが多数登場してくれば、その実現が早まるのかもしれない。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

global.toyota

力は正義なのか、迷走中国とその焦り

 

 中国の習主席が国連で「二酸化炭素の排出量を30年より前にピークアウトさせ、60年より前に実質ゼロにするよう努力する」と発表したとき、大方の人たちが疑いの目をもったのではなかろうか。何せ、いまだに石炭火力発電所をせっせと増設しているという。

 しかし、中国である。口に出した以上、実現させてしまうのかもしれない。

 

 

 

 日本経済新聞は、早速、その目標に向けての準備が始まっていると伝える。利用実績による「取引市場」を設けたり、将来的には「炭素税」も検討しているようだ。

 しかしそれでも、いまだ石炭依存は高く、日本経済新聞によれば、ピークの13年から6%減ったが18年の石炭消費量は約40億トンに達するという。1次エネルギーに占める比率は今なお55%で、25年までに5割未満に下げるとの見方もあるそうだ。

中国の排出量が50年時点でもなお62億トンに達するとはじく。植林など二酸化炭素の吸収量を増やすとともに、排出量が多い石炭消費を抑制する抜本策が不可欠だ。 (出所:日本経済新聞

 

 日本経済新聞は、政府内には新たな施策が中小企業などの負担増になるとの懸念も強く、実現への道は険しいと指摘する。

 

r.nikkei.com

 

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ブラックリスト

 新興市場ファンドの一部では、ESGスコアで投資先を選別しているという。

 ブルームバーグによれば、カンドリアムSRI債券新興市場ファンドが、ロシアと中国、サウジアラビアを敬遠しているそうだ。3カ国とも、ESG(環境、社会、ガバナンス)のスコアが余りにも低いからだという。

 ファンドのランキングで下位25%の国は、債券の世界での役割がどんなに大きくてもブラックリストに掲載される。(出所:ブルームバーグ

 

 

 

 カンドリアムのアプローチは、発展途上国の政府が外国の資本に頼ろうとする時に今後直面する課題の前兆かもしれないとブルームバーグはいう。

現時点で各国の借り入れコストは温暖化ガス排出削減や汚職対策へのコミットメントなどの要素を織り込んでいないことが多いが、将来は変わるかもしれない。  (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

 こうしたファンドの動きは中国に変化を促すことができるのだろうか。

 

包囲網

 激化する米中対立で、あの手この手で制裁を加える米国。そうした影響が少しずつ顕在化してきているのだろうか。ファーウェイは、廉価版スマホ事業を売却との報道が流れる。小米が触手を伸ばしているという。

 

r.nikkei.com

 

 中国が力を入れようとする半導体産業でも包囲網を形成しようとの動きがあるようだ。

 韓国メモリー大手のSKハイニックスが米インテルのメモリー事業を買収し、旧東芝メモリのキオクシアホールディングスにも出資するという。韓米日連合を形成、半導体モリー国産化を急ぐ中国勢の台頭に備えると、日本経済新聞はいう。

 足元では、米国の制裁によって半導体製造装置を調達できないなど中国半導体メーカーの脅威論もやや後退している。それでもSKはしたたかに連合構想を前進させて、サムスンとともに半導体モリー市場での体制固めを急ぐ考えだ。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com

 

 

 

力は正義なり 変わった論理

 中国の孤立化が進んでいないかと心配になる。孤立化したところで、何の得にもならないような気がするが、何か違った論理があるのだろうか。 

 米国ばかりでなく、オーストラリアとの関係もぎくしゃくし始める。

 ブルームバーグによれば、中国の発電所や製鋼所は豪州産石炭の使用を直ちに停止するよう口頭で通達を受けたという。そればかりでなく港湾当局も豪州産石炭を陸揚げしないよう指示されているそうだ。

中国は既に一部の豪州産農産物の輸入停止などに踏み切っており、今回の措置で緊張が一段と激化する可能性がある。石炭輸入の停止措置がいつまで続くのか、既存の長期売買契約にどのように影響し得るかは明瞭でない。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

迷走

 中国は何も目指し、どこに行こうとしているのだろうか。対立する国を増やすことが目的ではなかろう。それとも相手を屈服させたいのだろうか。焦りはないのか。

 無理を通せば、道理が引っ込む。

力は正義なり」とでもいいたいのだろうか。

 道理は国ごとで多少違いはあるのかもしれない。それでも、国際社会と仲良くやった方がはるかに得る利益は大きいはずだ。

 地球規模の課題である「気候変動」に国際社会と協力して解決しようとの気はないのであろうか。

「非理の前には道理なし」

そうなっては手遅れになってしまう気がする。

 

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「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

「脱炭素化」宣言するワケ 企業存続の分かれ道

 

 国の脱炭素化政策がにわかに動き出す。10月下期に入って、動きがさらに活発化してきたのだろうか。

 10月9日、TCFDサミット2020の場において、梶山経済産業大臣が「ゼロエミ・チャレンジ企業」を公表したという。上場・非上場企業あわせて320社が「ゼロエミ・チャレンジ企業」の企業リストに名を連ねている。

 

ゼロエミ・チャレンジ企業とは

 経済産業省によれば、「脱炭素化社会の実現」に向けて、イノベーションの取組に果敢に挑戦する企業を「ゼロエミ・チャレンジ企業」と位置づける。

 「革新的環境イノベーション戦略」に紐付く経済産業省の事業や、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)が実施している28のプロジェクトを対象にした「ゼロエミ・チャレンジ」の趣旨に賛同した企業320社をリストアップしたという。

 

 

 

 金融機関・情報活用機関が、この情報を活用し個別の投融資判断や、指数等の金融商品の開発等に展開することを期待しているそうだ。この先、ゼロエミ・チャレンジ企業と投資家等との対話の場を設けるなど、ゼロエミ・チャレンジ企業の取組を経済産業省が後押ししていくという。

 

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(出所:経済産業省

 

 企業はどう反応するのだろうか

 気候変動対策は待ったなしの課題と、経済産業省は臆面もなくそういう。

 今年1月、世界全体でのGHG温室効果ガスの排出削減に貢献できるイノベーション分野を「革新的環境イノベーション戦略」で特定、この戦略を実現していくための枠組みとして、「グリーンイノベーション戦略推進会議」を設置したという。

 この会議では、脱炭素社会の実現を切り拓く企業を応援するためのプロジェクトである「ゼロエミ・チャレンジ」を始め、経団連NEDO(国立研究開法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と連携して今回の企業リストを作成した。

 

 

 

 投資たちもESG投資に注目する。また、国もESG投資などの資金を脱炭素を目指す企業に呼び込み、その動きを加速させたい。こうした動になれば、必然、企業は「脱炭素」から逃れることはできないということなのであろうか。

 日本経済新聞によれば、梶山弘志経産相は9日、気候変動が企業業績に及ぼす影響の開示を求める国際的な枠組み「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」のサミットで、「革新技術の開発に資金を供給することで社会実装を加速させ、環境と成長の好循環を実現したい」と話したという。

 また、菅義偉首相はビデオメッセージで「日本の強みを生かしてCO2を減少に転じさせるイノベーションを生み出し、世界の脱炭素化に貢献していく」と強調したそうだ。

 

www.nikkei.com

 

 

 

脱炭素化宣言する企業が急増

 ここ最近、今まだ脱炭素に後ろ向きと思われた企業たちが挙って「脱炭素化」宣言を行うようになった。 

 東京電力中部電力が出資するJERAが、2050年に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする目標を発表したという。

火力発電所の燃料を水素(やアンモニア)などに転換するほか、非効率な石炭火力を廃止する。国内最大の発電事業者である同社が目標を打ち出したことで、他の大手電力でも脱炭素に向けた動きが広がりそうだ。(出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 YKK㈱は、気候変動、材料資源、水資源、化学物質管理、人権に取り組む持続可能性目標「YKKサステナビリティビジョン2050」を公表、2050年までに「気候中立」(climate neutral、実質排出ゼロ)を実現すると発表した。

 

www.ykk.co.jp

 

出遅れる鉄鋼業界

 石炭を多量に使う鉄鋼は、CO2排出量が多く、気候変動リスクも大きい業界だが、なかなか「脱炭素」といえる時期が明示できないようだ。

 JFEは、「2050年以降のできるだけ早い時期にJFEグループとしてカーボンニュートラルを実現すべく、それに必要な新たな技術開発への取り組みを加速させる」という。「技術をしっかりと準備し、社会全体の脱炭素技術インフラが整備されれば速やかに目標を達成できるようにしたい」という表現にとどめる。

 

business.nikkei.com

 

 足元では、2030年度のCO2排出量を2013年度比で20%以上削減することを目指すことに注力することになるのだろうか。統合報告書では、「鉄鋼事業以外では、温暖化防止への貢献を事業の機会として活かす取り組みを様々な形で進めている」という。

エンジニアリング事業においては、環境負荷軽減に貢献する廃棄物やバイオマスによる発電、太陽光・地熱発電などの再生可能エネルギー事業により年間約400万トンのCO2削減に貢献しており、さらにはペットボトルのリサイクルなどの資源循環関連事業の展開も加速させている。 (出所:JFEグループ統合報告書

 

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 YKKの企業精神は「善の巡環」だという。「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」ということを表しているという。この考えは「サステナビリティ」に通ずる考え方であるとYKKはいう。

 「善」の捉え方が時代時代で変化するのだろうか。気がつけば、いつの間にか「気候変動」が深刻化し、異常気象が頻発するようになった。

 「脱炭素化」が新たな「善」の定義になったのかもしれない。

 

  

dsupplying.hatenablog.com

 

 

新しいアイフォンを発表したアップル、アイフォンを作るフォックスコンはEVシフトを進める

 

 アップルのアイフォンなどを製造する世界最大のODM/EMSのFoxconnフォックスコン)が、台湾の自動車大手と提携すると発表しているとForbesが伝える。

 Forbesによれば、Foxconnは1月、フィアット・クライスラー・オートモービルズFCA)と合弁会社を設立し、2年以内にEVを出荷すると発表、そのわずか1カ月後には、台湾の自動車大手「ユーロン・モーター(裕隆汽車)」と合弁会社を設立し、ユーロンの子会社と共同でEVを開発すると発表したという。これらの2社に、部品の組み立てサービスを提供していく見通しとのことだ。

 

調査企業ResearchAndMarkets.comの7月の発表によると、新型車のリリースや需要の高まり、政府の支援策により、パンデミック後に落ち込んだEVの販売台数は、2021年から増加する見通しという。

市場調査会社のケネスリサーチも、「世界のEV市場は2020年から2025年まで、年平均18.4%の複合年間成長率で拡大する」と予測している。 (出所:Forbes)

forbesjapan.com

 

 

スマホの価格下落が進む

 総務省が2019年7月に、2019年版の「情報通信白書」を公表、世界市場でのスマホタブレットの出荷台数予測を公開した。

 タブレットは右肩下がりの予測となり、スマホもかつてのような右肩上がりの成長は見込めない。

 総務省スマホの状況については、「2015年以降横ばい傾向が続いている」、「今後は、緩やかな増加傾向が見込まれている」、「新興国市場向けを中心に低価格な端末が増加することから、金額ベースでは横ばいないし減少傾向で推移する」と説明、また、出荷金額に大きな増減が見られないのは、単価が落ちているからに他ならないと、不破雷蔵氏がYahooニュースで解説、指摘する。

 

news.yahoo.co.jp

 

 Foxconnも、こうしたスマホ市場へ過度な期待することなく、次の成長の糧に準備を進めているということなのであろう。ただ、それがEV電気自動車とは少々驚きでもあるが。競争が厳しいが自動車の世界、それだけからこそ、より多くの機会があるということなのだろうか。

 

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(写真:Apple

 

アップルが新しい5G対応アイフォンを発表

 アップルがアイフォンの新機種を発表した。スタンダードな「iPhone 12」、小型モデルの「iPhone 12 mini」、高性能な「iPhone 12 Pro」と「Pro Max」の4ラインアップになった。様々な顧客に訴求するということなのであろうか。

 最上位機種の「Pro Max」の価格は11万7,800円から、一方、「Mini」は64GBモデルが税別74,800円。その価格差は43,000円。アップルによると、Apple Trade Inで下取りを利用すると、最大 27,000円割引になるという。「Mini」であれば5万円を切った価格で購入も可能になる。

 

 

 今回のイベントでは、アイフォンの他にも、小型スマートスピーカー「HomePod Mini」、ワイヤレスイヤフォンの「Beats Flex」、 マグネット式のワイヤレス充電「MagSafe」などの発表もあったようだ。

 

wired.jp

 

 アップルが低価格機種を強化するのは、もちろんスマホ市場の状況を反映してのことなのであろうが、どこまでシェアを伸ばしていくのだろうか。

 新たにインドでの生産を始めたと聞く。中国に次いで大きな市場での販売強化も考えてのことであろう。元々中国小米Xiaomiが強い市場と言われる。小米とのガチンコの勝負になるのだろうか。

 

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(写真:Apple

 それでも、アップルには低廉なスマホに普及に努めて欲しい。使い終わった古いアイフォンを下取りするTrade Inプログラムも同時に普及していけば、希少金属などのリサイクルが進み、サーキュラー・エコノミーが定着していく。そればかりでない。アップルは、2030年のカーボンニュートラルを宣言している。アイフォンで使う電力は、アップルのその活動によってオフセットされ、二酸化炭素を排出しない電力とみなすことができる。アイフォンを使うことが世界が目指す気候変動対策、地球温暖化防止にもつながっていく。

 

 新しいアイフォンはどんな反応になるのだろうか。その状況を確認していきたい。

 

 「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

全く新しいテキスタイル誕生 アディダスの「FUTURECRAFT.STRUNG」

 

 アディダスが、FUTURECRAFT.STRUNG(フューチャークラフト ストラング)という新たなコンセプトを発表した。

 

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(写真:Adidas

 

全く新しいテキスタイルが誕生

 STRUNGは、編み物でも織り物でもないという。以前に存在するものではない全く新しいものだという。アディダスは、それをテキスタイルであり、  製造プロセスだという。

 

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(写真:Adidas

 

 

 

 

アッパーの常識を覆す

 アディダスは、このSTRUNGを取り入れたコンセプトシューズを作った。冒頭の写真だそれだ。そのシューズは、短距離を速く走るためのものだという。そのために、2名のエキスパートランナーがモーションキャプチャーを使った計測などに協力し開発したそうだ。

 

余分な素材の使用を極力減らし、滑らかで軽い繭に包まれているような履き心地を提供する、STRUNGアッパー。ヒール、中足部、トゥボックスに、より強度のある赤い糸を用いた的確なフィット感とサポートが、かかとを固定して滑りを防ぎます。

一方、前足部には屈曲性に優れたより柔らかい黄色い糸を使用しています。ミッドソールには、ADIDAS 4Dを採用し前足部での蹴り出しに貢献する革新的な形に仕上げています。また、ヒールは重さを排除してミニマルに、ラバーアウトソールは速いペースの走りにおいてグリップ力をサポートするよう、特別な形になっています。 (出所:Adidas公式サイト

 

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news.adidas.com

 

専用マシーンが織りなすSTRUNG

 アディダスは、一本一本の糸を活かすことで、アスリートのパフォーマンスを改善することにつながっていくという。アディダスには、さまざまなアスリートやスポーツからのテストのデータを集約され、知識のライブラリが構築されているという。STRUNGは、このデータに基づいて、様々な異なる糸を選び自在に配置することができるそうだ。そのために、Adidasは専用マシーンを作った。

 

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 (写真:Adidas

 

 この新しいテキスタイルを取り入れた「FUTURECRAFT.STRUNG」は、独アディダスは2021年後半から2022年初頭に最初の靴を発売する予定だという。

 

アスリートの動きと足の解剖学的な構造も模す?

STRUNG is a milestone that has the potential to transform the way athletes work with designers, engineers and sports scientists. The ultimate aim is for it to be a cross-category platform that serves multiple sports. We’ve started with running but that’s just the beginning. We want this to be the most data-informed textile based on foot anatomy and athlete movement. (出所:アディダス公式サイト)

  STRUNGは、アスリートがデザイナー、エンジニア、スポーツ科学者と協力する方法を変革する可能性を秘めたマイルストーンです。アディダスは、このSTRUNGの究極の目的は、複数のスポーツにサービスを提供するクロスカテゴリプラットフォームになることだという。そして、まず「ランニング」を選んだが、それはほんの始まりに過ぎないという。

 アスリートの動きと足の解剖学的構造に基づいてSTRUNGで種目別に新たなテキスタイルを作っていこうということなのであろうか。 

 

 

 

 撤退したスピードファクトリの進化系なのか

 アディダスは2017年、ドイツ南部アンスバッハで「スピードファクトリー」を本格的に導入した。翌年2018年には、米アトランタにも開いた。

 「スピードファクトリー」とは、アディダスはこう説明する。

SPEEDFACTORYとは、デジタル技術を用いた靴製造工場です。最先端の3Dプリンタやコンピュータ編機、ロボットカッティングマシンなど、シューズの製造工程のほぼ全てを集約していることに加え、新たなシューズのテストやシミュレーション、個々人のカスタマイゼーションに必要な様々なデジタル機器を設置しています。
SPEEDFACTORYは、製造のスピードと柔軟性を兼ね備えることで、従来のもの作りのプロセスを根本から再考し、より迅速に消費者ニーズに答えられる、adidasが誇る業界の次世代スタンダードとなりうるモデル工場です。 (出所:アディダス プレスリリース)

 

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 大消費地の近くに自動化設備を設けることで、消費者の好みに応じた商品を短期間で企画・生産できると日本経済新聞は解説する。ドイツでは24年ぶりの国内回帰だった。

 東京でも期間限定だったが、「スピードファクトリ」が登場し、その期待も高かった。ドイツの強い製造技術、生産技術力がそこから伺えた。しかし、2019年、わずか3年あまりで、「スピードファクトリ」はその役割を終えた。

 

 「FUTURECRAFT.STRUNG」は、「スピードファクトリ」の進化系なのであろうか。ドイツのものづくりの魂を感じる。 どんな新たな展開があるのか、楽しみである。

 

 

 

 「参考文書」

prtimes.jp

 

prtimes.jp