Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

【脱炭素】水素燃料電池のトヨタとミドリムシ バイオ燃料のユーグレナが動く

 

 コロナ渦が起きてすっかり技術動向も変わってしまったということはないのだろうか。それまでのモビリティの世界は「CASE(=Connected コネクテッド, Autonomous 自動運転, Shared & Services シェアリングとサービス, Electric電気自動車)」が声高々に叫ばれ、自動運転やMaaSなどの人の移動に関わることがその中心にあった。しかし、このコロナで移動が制限され、その状態からの出口は一向に見えてこない。

 ある意味、今までは人の移動を中心した経済だったのかもしれない。株価こそ好調ではあるが、経済そのものは急激に悪化、様々な施策が繰り出されている。技術トレンドに変化があってもおかしくないのかもしれない。

 

 

 

 欧州でグリーンリカバリーの機運が高まり、コロナからの復興予算の4割近くを気候変動対策に充てられる。カリフォルニア州では大規模な山火事が発生し、今までにない被害状況だという。カリフォルニアの州知事は山火事の原因は気候変動だとし、そうしたことの影響もあってのことだろうか、ガソリンエンジンを動力とする乗用車とトラックの州内での新車販売を2035年から禁止する方針を示したという。EV電気自動車への移行を促進し、温室効果ガス排出量の削減を図ることが狙いだとロイターは報じた。

 こうした状況からすれば、気候変動の緩和策につながることに技術開発の中心が移ることは必然なのかもしれない。

 

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トヨタ 燃料電池技術で大型トラックや鉄道車両を共同開発

 トヨタが相次いで燃料電池車関係の発表を行っている。北米向けの燃料電池大型トラックをトヨタと日野で共同で開発するという。北米で販売されている日野の大型トラック「XLシリーズ」をベースに、トヨタのFCV燃料電池技術を組み合わせるという。2021年前半に試作車を開発し、24年までに量産化を目指すそうだ。

  トヨタと日野は国内向けでも共同開発する。今年3月に航続距離600kmになる燃料電池大型トラックを共同開発することを発表していた。

 

global.toyota

 

 トヨタは、燃料電池大型トラック共同開発を発表した同じ6日、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した鉄道用試験車両の開発についても発表した。

 こちらは、JR東日本日立製作所の3社で連携して開発を進めるという。2022年3月ころから、鶴見線南武線尻手支線、南武線(尻手~武蔵中原)などで試験運転されるという。

 

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global.toyota

 

 

 

ユーグレナ バイオ燃料の開発加速 

 ユーグレナが進めるバイオジェット燃料事業と燃料用微細藻類に関する研究開発が、NEDO 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の公募事業「バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築、微細藻類基盤技術開発」に採択されたとがユーグレナが発表した。

 ユーグレナによれば、バイオ燃料製造実証プラントの運転費用、商業化に向けた事業検討費、燃料用微細藻類の培養に関する実証設備への投資や運転費用等について、NEDO助成金を活用していくという。2025年中のバイオ燃料製造商業プラントの稼働開始に向け、原料調達から燃料製造技術、燃料供給までの一貫したサプライチェーンの整備、燃料用原料となる微細藻類生産における技術確立を加速させるという。

 

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www.euglena.jp

 

 まとめ

 ここ最近、一気に水素に注目が集まるようになってきた。エアバスの水素旅客機などがその顕著な例なのかもしれない。水素を利用した燃料電池であれば、二酸化炭素を排出することもないので、普及すれば温暖化抑制の一助になっていくのであろう。

 しかし、世界は広い。現実としては、地球の隅々までに普及するまでには膨大な時間が必要になるのだろう。その普及するまでの間は今ある車両が使い続けられることになる。それは、今ある気候変動の問題を引き起こした設備をこれからも使い続けることを意味する。そうした状態から少しでも二酸化炭素の排出を抑制するためには、バイオ燃料の活用が望ましい。

 ユーグレナには助成金を有効活用して、一刻も早くその普及に努めて欲しいと願うばかりだ。

 

 

「関連文書」

www.businessinsider.jp

 

「参考文書」

jp.reuters.com

 

 

 

ライバル テスラの背中が遠のく 電動トラックの二コラはなぜ躓いたか

 

 テスラのライバルになると目された二コラが騒動を起こしている。空売り会社のヒンデンブルク・リサーチ(Hindenburg Research)に詐欺だと非難され、株価が下落、創業者トレバー・ミルトン氏が辞任に追い込まれた。そればかりでなく、GMやBPとの提携話まで延期になってしまったという。ブルームバーグは初期投資たちの懸念を伝える。

フィデリティ・インベストメンツをはじめとする投資家は、大きな野望や自慢話を口にする二コラ創業者トレバー・ミルトン氏には、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のようにビジョンを製品として現実化する力が欠けていると懸念していた。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

 創業者が辞任したということは、その懸念を払拭できないばかりか、ほかにも何か不都合なことがあったのだろうか。

 今後が気になる。米証券取引委員会(SEC)や司法省が調査に乗り出していると聞く。その結果待ちということなのだろうか。

 

 

 

不正を暴くヘッジファンドの存在と空売り

 最近では、ヘッジファンドが企業の不正を暴き、それに乗じてヘッジファンドが多額の利益を上げケースがあるという。独決済大手ワイヤーカードや英衣料品大手のブーフーなどがその例だ。日本経済新聞は、「企業の裏面を調査するのが得意なヘッジファンドが本気になれば、同様の不正が暴かれる機会も増える」という。

 ブーフーは適正と考えられる賃金の半分しか工場労働者に支払っていないことが暴かれ、「現代奴隷」と揶揄されたうえ、株価が暴落したという。

 

r.nikkei.com

 

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二コラの競争優位性とは

 テスラの成功はあまりにも鮮烈だ。ポジティブなニュースが続く。そうしたことに影響されてしまうのだろうか。二コラを過大評価し、提携しようと考えるのか、米自動車のGM、英石油メジャーBPなどに加え、欧州や韓国の企業が出資や協業するという。

 二コラは水素自動車の商用化をなるべく早く実現するため、革新的な技術の開発よりもプラットフォームとしての位置付けを強化、水素やバッテリーの充電ステーションを建設することが二コラの優位性とForbesは指摘する。

 

 

 

ニコラはGMから新型バッテリーシステム「アルティウム」と燃料電池「ハイドロテック」の供給を受ける予定だった。また、GMはニコラのピックアップトラック「Badger」の設計、認証、検証、製造を行う予定だった。 (出所:Forbes)

 

forbesjapan.com

 

 欧州では独ダイムラーが、2023年から一部顧客向けのトライアルとして、走行距離1000km以上の燃料電池大型トラックの運用を始めるという。日本経済新聞によれば、日本でも、日野自動車トヨタ自動車と、いすゞもホンダとそれぞれ共同開発を始めているという。長距離輸送の脱炭素を実現する本命技術として、FCVの開発競争が激しくなっているという。

 

r.nikkei.com

 

 テスラが登場したときかなり競争環境が異なりそうだ。

 それでも、二コラは集めた資金で、アリゾナ州に工場を建設し、大規模水素ステーションを整備、2021年までに電動トラック「Tre」の製造などを予定しているという。

 

 

 

 テスラは順風満帆か、ウォルマートがEVトラック大量予約、モデル3にはコバルト不使用バッテリーも

 テスラの話題は尽きない。ウォルマート・カナダが、テスラ(Tesla)の18輪電動トラックの予約注文数を当初の3倍以上の130台に増やしたとBusiness Insiderが伝える。テスラは当初、セミトラックを2019年に発売すると述べていたが、2021年に納車を開始すると変更しているという。それでもテスラへの期待が予約注文ということになるのだろうか。

 ロイターはテスラが、コバルトを含まないリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を搭載した中国製のEVセダン「モデル3」の販売を開始する構えだと報じた。ロイターによれば、LFPは、EV用電池に使用する最も高価な金属の1つであるコバルトを使用しないため、より安価に製造でき、既存の電池と比べて「2桁台%」低いという。

 

jp.reuters.com

 

 LFP電池の採用は、コバルトの使用を「ほぼゼロ」にするというイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が2018年に表明した約束の実現も後押しするとロイターは指摘する。

 

 多少の修正はあるにせよ、何事も有言実行することがイーロン・マスクということであろうか。創業者が退場した二コラは、テスラの背中を追うことができるのだろうか。

 

 

「関連文書」

www.businessinsider.jp

 

dsupplying.hatenablog.com

バイオテクノロジーの世界 ユーグレナが目指す「人と地球の健康」

 

  西武バスが、ミドリムシユーグレナ社のバイオディーゼル燃料を採用、路線バスに使い始めている。

 普通のディーゼルエンジンで使えることがこのバイオ燃料のメリットだが、まだ価格が高価ということもあるのだろうか、通常の軽油と混合して使用しているようだ。毎日新聞によれば、通常のディーゼル燃料で走るより二酸化炭素排出量が10%削減できるという。混合比率が上がれば、もう少し二酸化炭素の排出を削減できるのだろうか。

 

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 西武ライオンズの若獅子寮から出る廃食用油(月約60リットル)をユーグレナの燃料製造に提供し、西武バスは、燃料増産に合わせて使用車両を増やしていくと毎日新聞は伝える。

 

mainichi.jp

 

 

 

バイオテクノロジーミドリムシの可能性 

 今からおよそ5億年以上前に大気中の酸素濃度を上昇させ、生物に急速な進化と多様性をもたらした立役者ミドリムシ。体長約0.05mmと髪の毛の直径よりも小さく、植物と動物両方の性質を持つと、日経BP未来コトハジメは説明する。

 この稀有な生物が持つ力を借り、バイオテクノロジーによって食品からバイオ燃料までを作り出そうとしているのがユーグレナだ。ミドリムシの力を「5F」に応用し事業化する。「5F」とは、Food(食糧)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)を指す。

 ミドリムシの豊富な栄養素を「食糧」に活かし、ミドリムシにしかない成分パラミロンは「繊維」に活かす。燃料はミドリムシの脂質から作ることができる。燃料製造で出る残渣は、その成分であるタンパク質を活かして飼料・肥料として販売できるという。

 ただ、燃料を石油代替とするためには、1リットルで100円前後という価格を目指さなければならないという。 これに反し「食糧」はマーケティングなどによって価値を高められる可能性があるという。

 

project.nikkeibp.co.jp

 

 

 

ミドリムシユーグレナマーケティング会社

 そう言ったのはユーグレナ社の取締役副社長 永田暁彦氏。Agenga noteのインタービューで答えた内容だ。

ミドリムシ」、この言葉を聞いたことがある人は90%。「ユーグレナ」、という言葉を聞いたことがある人は50%。全世代に向けた認知率調査の結果だ。 (出所:Agenga note)

 

 和名では「ミドリムシ」というが、英名は「ユーグレナ」。そのユーグレナが社名になっている。

 ミドリムシ、「小学校の理科の授業で、顕微鏡をのぞくと動いていた緑色の微生物」と、Agenga noteの記事筆者は説明する。「食べたり、何か別の用途に使ったり出来る、という認識はありませんでした」という。 

 

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  意外にそういう人が多いのかもしれない。 

人間のカラダがユーグレナを摂取すると、どんな効果が得られるのか、という便益に対する理解を上げていくために、ヒト臨床試験などを行い、ファクトづくりを強化し、メディアで情報を受け取った人の納得感を高めるよう、PRと広告で発信するという活動を地道に行っている。 (出所:Agenga note)

 

agenda-note.com

 

 そうした地道な活動に加え、ユーグレナは、バングラディシュでユーグレナ入りクッキーを無償で配布、子どもたちの栄養問題の解決を目指すプログラムを展開する。そのプログラムが始まったのは2014年、SDGsが国連で採択される前のことだ。ユーグレナ製品の売上の一部をこのプログラムの協賛金にあて、ユーグレナクッキーを寄贈する。そして、その数が1000万食に達したという。

 

www.euglena.jp

 

人と地球の健康」がユーグレナ社の目標と聞く。こうした活動で、その目標に一歩近づいているのかもしれない。

 西武バスなどが利用が始まったバイオディーゼル燃料が普及すれば、CO2の排出を抑制し温暖化対策に役立っていく。普及するようであれば、大規模設備につながり価格は下がるかもしれない。飛行機、船舶、トラックなどに今のままで使用できる燃料と聞く。多くの人がこのことを知れば、もう少し普及しないだろうか。

  それまでは、ユーグレナの地道な活動が続くということなのだろう。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

EVの未来予想図 中国北京モーターショーとテスラの「バッテリー・デー」 

 

 中国北京市で26日、 世界最大級の自動車展示会 北京モーターショー2020が始まったという。AFPによれば、今年の北京モーターショーは「知恵で未来をけん引」をテーマに、世界初公開車82台、コンセプトカー36台、新エネルギー車160台を含む785台を展示するという。

 AFPが伝えた写真をみると、トヨタは自動運転のEV「イーパレット」を展示し、中国自動車大手、中国第一汽車集団は、来年7月から量産が始まる「紅旗スマート2.0ミニバス」を展示、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)も「スマートコックピットソリューション」を展示しているようだ。

 

www.afpbb.com

 

 その展示規模からすれば、中国の自動車熱がまだまだ高そうだ。

 

 

 

テスラ 電池内製化と260万円のEV構想

 テスラは、北京モーターショーに先立って22日、株主総会を開き、それに続いて「バッテリー・デー」というイベントで、電池事業の今後について説明をした。 

 テスラとイーロン・マスクにはただ驚かされる。というか、ほんとうはそうあるべきなのかもしれない。 3年後、260万円のEVを販売し、そのためにバッテリーを内製するという。

 「値ごろなEVを発売することは、会社設立以来の我々の夢だった

イーロン・マスクが22日の「バッテリー・デー」で語ったと日本経済新聞が伝える。このイベントでは、電池事業の今後について説明もしたようだ。

 

大幅な価格低下を可能にするのが、EVコストの約3割を占めるとされるリチウムイオン電池の内製化だ。

テスラは22日、パナソニックなど外部から供給を受けてきた中核部品の円筒形セルについて、2022年にEV140万台分に相当する年間100ギガ(ギガは10億)ワット時を自社生産する計画を示した。

現在のパナソニックからの購入量の約3倍の規模だ。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 一方、ブルームバーグは「技術や製造の革新に関する説明は印象的だったが、テスラの突発力は既に時価総額に反映されており、期待の高かった今回のイベントでサプライズがなかったことに投資家は失望しているのではないか」という。確かに、このイベントの後、テスラの株価は一時7%下落した。

  

www.bloomberg.co.jp

 

 

 

中国EVメーカトップにとっての、テスラの「バッテリー・デー」

 ブルームバーグによれば、北京国際自動車ショーでは、むしろテスラのこうした計画の実現に期待を寄せる声があったという。

 威馬汽車(WMモーター)最高経営責任者の沈暉氏はテスラの計画は「われわれにとって良いことだ」と述べたという。

テスラが中国に進出してとても喜んでいる。テスラはまさに初期のアップルのようで、市場全体を教育してくれる

中国携帯電話市場では、アップルのシェアを小米やオッポ(OPPO)、華為技術(ファーウェイ)など地元勢が奪っている。沈氏はEV市場においても長期的にはテスラに同じことが起こると予想。「主流」EV市場でのテスラのシェアは5-10年で大きく減るとの見方を示した。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

 EV市場がまだ5%未満ということもあるのか、小鵬汽車の顧宏地副会長は、テスラが上海工場の生産能力を今後数年以内に年100万台に拡大する計画は懸念材料ではないと語ったとブルームバーグが伝える。

 イーロン・マスクCEOが「100万台を達成するとすれば、われわれの予想より市場がずっと速いペースで大きく成長したことを意味する」と話す言葉に期待を寄せているのかもしれない。蔚来汽車(NIO)の李斌CEOは「総体的な電池コストの低下はEV普及の手助けになる」と語ったという。

 

 

 

需要が復調 

 EVを含めた新エネルギー車の販売は今年6月まで1年余りにわたって前年同月比で減少を続けてきたという。だが、今年7月は19.3%増と反転し、8月には26%も増えたと、ロイターは需要が復調したという。

LMCオートモティブの予想では、新エネルギー車の乗用車の販売は今年8.9%減少するが、来年は48.4%増えて152万台に達し、全乗用車販売の7%を占めそうだ。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

  こうしたのことの証左になるのだろうか、北京モーターショーでは、新エネルギー車の展示が160台になっているようだ。

 

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国内のEV化は進展していくのか

 翻って国内、中国と多少温度差があるのだろうか。国内のEV動向はどうなのだろうか。昨年、トヨタが「100年に一度の変革期」といい、「CASE」が本格化的に動きだすようかに思われた。オリンピックが開催されていれば、その場で、「CASE」が実現する世界を見ることができたのかもしれない。

  

dsupplying.hatenablog.com

 

 コロナ渦で、自動車業界の苦境を伝えるニュースが多い。構造改革に目が奪われがちだ。日産は、国内ではEV関連車種を追加し電動化率を60%以上にするという。さらに、2023年度までには年間100万台以上の販売を目指すという。国内のEVは加速するのだろうか、それとも、最優先市場中国から浸透を狙うということになのだろうか。

 自動車業界の未来予想図がそろそろ気になりだす。テスラが引き起こしている追い風に乗ることはできるのだろうか。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

 

 

【SDGsと水資源】 垂直農業で挑む「水節約」と「ゼロエミッション」

 

 海外記事を読んでは、世界のあちらこちらで、未来を危惧し、行動を起こす人たちがいると気づく。

 東南アジアでは、海洋に流出するプラごみの多さを憂い、問題を提起し、活動する人々を紹介する記事が多いと感じる。地域ごとに、現代の矛盾とでいえそうな、それぞれの問題を抱える。しかし、その背景には、コロナ渦や気候変動による異常気象の影響など、世界共通の課題がありそうだ。

 

www.malaymail.com

 

 

インドの水危機と垂直農業

 インドでは、「水資源」に危機を感じ、垂直農業にチャレンジするベンチャーがあるとTechCrunchが伝える。

 「深刻な干ばつにより、インドの一部地域では河川や貯水池の水が流出し、世界第2位の人口を誇るこの国の5億人以上の人々が2030年までに飲料水を使い果たすと推定されている」。

 衝撃的なことだ。少子化が進み、水が豊富な日本では考えられない。

 

 

 

 インドでその垂直農業に挑むのは、UrbanKisaan(アーバンキサーンス)というスタートアップ。 大量に水を消費しているインドの農業に一石を投じることはできているのだろうか。

「作物を育てるために土壌や有害な化学物質を一切使用せず、従来の農場に比べて水の使用量を95%削減しています。水が流れ続け、何度も何度もリサイクルされるような水耕栽培システムを構築しています。より少ない水を使っているにもかかわらず、UrbanKisaanは30%以上の作物を生産しています」と最高経営責任者であるVihari Kanukollu(ビハリ・カヌコル)氏が説明するとTechCrunchが紹介する。

  

jp.techcrunch.com

 

  かつて、中国黄河では、大量の水が農業用に汲み上げられ、下流域で水が途絶えるという断流問題がおきた。世界では、こうした水資源に関わる問題が絶えないようだ。

 

欧州初のゼロエミッションを目指す都市型垂直農業

 国内では、紀ノ国屋が、都市型垂直農業を展開する独Infarm(インファーム)製の水耕栽培装置を店内に導入、その装置で作られた野菜の販売を始めたという。

 

dsupplying.hatenablog.com

  

 垂直農業とは、高さのある建築物の階層や、傾斜面をつかって農業をすることをいう。Ideas for Goodによれば、平たい畑や温室などで野菜を栽培する代わりに、都会の超高層ビルや、輸送用コンテナ、使われなくなった倉庫などで、高さを利用して垂直的に農作物を生産することをいうそうだ。従来の農業のように広い土地がいらず、都市でも食物を生産できることが特徴的だという。

 

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 Techcrunchによると、Infarm製の垂直農法ユニットは、モジュール式でIoTを搭載しているという。

土壌ベースの農業よりも使用するスペースが99.5%少なく、水の使用量も95%少なく、輸送量も90%少なく、化学農薬もゼロであると主張している。

また、Infarmのネットワーク全体で使用する電力の90%は再生可能エネルギーを使用しており、同社は来年にはゼロエミッションの食品生産を達成する目標を掲げている。 (出所:TechCrunch)

 

 今はまだハーブや葉菜類の栽培になっているが、近い将来、根菜類、キノコ類、花卉(かき)類、さらには世界中のスーパーフードにまで拡大することができるとInfarmはそういうとTechCrunchが紹介する。

 

jp.techcrunch.com

 

 

 

ファミマが植物工場産野菜の普及に動く

 国内では、コンビニの総菜などで、植物工場産の葉菜類が多く使われていると聞く。ファミリーマートが、その植物工場産の野菜の普及に向け、バイテックベジタブルファクトリー(VVF)と協業するという。

 流通ニュースによると、ファミリーマートは2015年4月から植物工場で栽培された野菜を導入し始め、その使用量は、導入当初と比較し約60倍となっているという。

 

植物工場の野菜は、閉鎖された環境で栽培を行うため、天候や災害による影響を受けにくく、一年を通して安定した供給が可能となる。虫がつかないため農薬を使用する必要がなく、安全・安心であることが特徴となっている。また、野菜の洗浄などの手間も少なく済むことから、省力化・省資源化につながる。捨てる部分が少ないことからフードロスも最小限に抑えられ、環境負荷も軽減できる。 (出所:流通ニュース)

 

www.ryutsuu.biz

 

まとめ 垂直農業の可能性

 Infarm製のモジュール式水耕栽培装置があれば、様々な展開が期待できそうな気がする。都会はもちろんのこと、太陽光とのセットであれば、食糧危機にある地域に設置することはできないのだろうか。また、そうした地域で、新たな雇用を生みだすことができたりしないだろうか。

 国内では、今年、異常気象の煽りで、野菜高騰が頻発した。植物工場や都市で垂直農業が広がれば、野菜の価格安定に役立つのかもしれない。

 

 

「参考文書」

ideasforgood.jp

 

【脱炭素】エアバスの水素航空機コンセプト、米GEは脱石炭火力へ

 

米GE 石炭火力発電から撤退 それが意味すること

 「米GE、石炭火力発電から撤退へ」との共同通信の報道に驚く。GE、米電機大手ゼネラル・エレクトリックは、あのトーマス・エジソンを祖とする。

 

世界初の商用発電所は、トーマス・エジソンにより建設され、1882年9月から稼働したニューヨーク・マンハッタンのパール・ストリートの火力発電所であった。当時の動力は石炭燃料による175HPの往復動式蒸気機関であった。電灯需要地に近いエリアへ直流送電するため都市内に建設されたものである。 (出所:Wikipedia

 

 それが後の大型火力発電所へとつながっていく。

 祖業からの撤退を決めることは難しい決断になるのだろう。英断なのかもしれないが、発電機事業から撤退するわけではなさそうだ。

 

this.kiji.is

 

 国際的に批判の的になった、ベトナム中部の「ブンアン2 石炭火力発電所」。このプロジェクトは三菱が主体となり、日本の銀行も融資することで検討されていた。このプラントを作るのは米GE、中国企業が据え付け工事を行うことで予定されていた。

 このプロジェクトに影響はあるのだろうか。


 

 

欧州の石油メジャーは「脱石油」へ

 欧州では、石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルが、石油・ガス生産コストを最大40%削減することを検討しているという。ロイターによると、経費節約で事業を見直し、再生可能エネルギーと電力市場へさらに重点的に取り組むという。

シェルはメキシコ湾、ナイジェリア、北海を含む主要拠点に生産能力を絞ることを検討。液化天然ガスLNG)事業などのガス部門でも大幅なコスト削減を想定している。中でも、流通や販売を担う「下流部門」での削減は今後の移行計画実行において重要な意味を持つという。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

 欧州の石油メジャーは「脱石油」の流れが加速する。BPに続き、シェルも再生エネルギーへの移行を急ぐことになった。

 

 こうした企業の動きを後押しているのが、EUの「グリーンリカバリー」政策なのだろうか。脱炭素社会への移行を着実にすすめようとする欧州の姿がそこにある。

 EUは、2050年に温室ガス排出を「実質ゼロ」にする方針を法制化する「欧州気候法案」の成立を目指している。時事通信によれば、2030年までに温室効果ガスを1990年比で55%減(現行40%減)させる目標をその法案に反映させるという。

 また、欧州委は、新型コロナウイルス禍からの経済再建として来年以降、7500億ユーロ(約92兆円)の巨額資金のうち、37%を気候変動対策に投じる方針も表明しているという。域内の水素エネルギー活用を拡大する「欧州水素バレー」構想も打ち出したという。 

 

www.jiji.com

 

 

 

フランスの国家水素戦略

 フランスでは、政府が国家水素戦略を発表したそうだ。JETROによれば、この国家水素戦略では、水電解によるクリーン水素製造セクターの創出と製造業の脱炭素化、クリーン水素を燃料とする大型モビリティ(トラック、バス、列車、船舶、航空機などの輸送機器)の開発、水素エネルギー分野の研究・イノベーション・人材育成支援、の3つの柱からなるという。2020~2023年に約34億ユーロを拠出するが、このうち54%が製造業の脱炭素化、27%がクリーン水素モビリティ開発、19%が研究・イノベーション・人材育成に充てられるという。

 

www.jetro.go.jp

 

世界初 エアバスのゼロエミッション旅客機コンセプト

 この動きに倣ってのことだろうか、エアバスが、世界初となるゼロエミッション旅客機のコンセプトを発表した。

  2035年、世界初のゼロ・エミッションの民間航空機が空を飛ぶかもしれない

 このビジョンを現実にするために、エアバスはZEROeと呼ばれる革新的なコンセプトの航空機の開発を模索しているという。

 

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 (写真出所:エアバス公式サイト)

 

 エアバスによれば、航空機には、水素推進と水素燃料電池の2種類があるという。エアバスのゼロエミッション「コンセプト」航空機は水素ハイブリッド航空機になるそうだ。つまり、液体水素を燃料として燃焼させる改良型ガスタービンエンジンを搭載し、同時に、水素燃料電池を使用してガスタービンを補完する電力を生成し、高効率のハイブリッド電気推進システムを実現するという。

 

www.airbus.com

 

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(写真出所:エアバス公式サイト)

 

 

 

ダイムラー燃料電池トラックを発表

 陸上輸送では、独ダイムラーが、走行距離1千キロメートル以上の燃料電池トラックを開発し、2023年から一部顧客向けにトライアルを始めると発表したと日本経済新聞が伝える。

 欧州では、2035年までに中型トラックの55%、大型トラックの75%をそれぞれゼロエミッション車とする規制があるという。

 

www.nikkei.com

 

地球温暖化の最前線 北極海の異常 

北極海の海氷が今年の夏季、42年間の観測史上2番目に小さい面積にまで融解したことが明らかになったと AFPがいう。

 地球温暖化の深刻な影響を示す新たな証拠という。

 

www.afpbb.com

 

 欧州が脱炭素を進める以上に、地球の温暖化が加速しているのかもしれない。

 手遅れになる前に、国際社会が一致した行動を起こさなければならないのだろう。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

www.nikkei.com

 

www.nikkei.com

 

www.nhk.or.jp

人権問題で揺れる中国 それでも代替肉の米ビヨンドミートは中国をめざす

 

 中国でのウイグル人に対する人権侵害が問題視されている。米政府はウイグル人の強制労働などに関わる企業からの輸入を禁止する措置に動く。スウェーデンのアパレルH&Mは、新疆ウイグル自治区にある工場から間接的な調達があったと指摘を受け、関係する企業との取引を段階的に削減すると発表した。

 そんな中にあって、代替肉の米ビヨンドミートが中国浙江省に工場を建設、現地生産を始めるという。

  36krJapanによれば、数カ月以内には牛・豚・鶏の代替肉の試験生産に入り、来年初めには全面的に稼働する計画だという。中国では、消費者の植物由来の食品に対する関心が増しているそうだ。

 

36kr.jp

 

 「人工肉界のテスラがやって来る」と、現地での報道内容をNNA Asiaが伝える。 

 中国で、ビヨンド・ミートは代替肉メーカとして抜群の知名度とブランド力を持つという。NNA ASIAは、その進出手法にも目を引くものがあると指摘する。スタバやKFCピザハット外食チェーンへの供給から入り、アリババ傘下のスーパーで販売と、健康意識の高い若い消費者層に訴求しているという。

 

www.nna.jp

 

 

 

 一方、強制労働との関わりを指摘されたアパレルのH&Mは「新疆ウイグル自治区拠点のいかなる縫製工場とも協働していない」との声明を出し、また、新疆ウイグル自治区からのコットンの調達を停止すると発表したともいう。

 

www.wwdjapan.com

 

 WWD Japanによれば、新疆ウイグル自治区は、中国最大の綿花栽培地域で、H&Mに関係するサプライヤーは、これまで当該地域のBCI(ベター・コットン・イニシアチブ)関連農家からコットンの調達を行っていたが、当地域での信頼性の高いデューデリジェンスを実施することが困難になっているため調達の停止に踏み切ったようだ。

 

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 中国では過去幾度となく、こうした人権問題が発生する。その都度、関係する企業が対策を施し、再発防止に努める。

 WWD Japanによれば、H&Mも、工場から農家レベルまでのサプライチェーンにおけるリスクを特定して対処することを目的にした、デューデリジェンスを体系的に実施しているという。

 それでも、こうした強制労働などの人権問題はなくならない。

 

 

 

 ビヨンドミートの大豆調達などのサプライチェーンはどうなっているのだろうか。米国産大豆を使うのだろうか、それとも中国産なのであろうか。

 巨大市場中国での生産となれば、大量の原料が必要となることだろう。食糧問題に直結するだけに気になる。そこに人権まで絡むと問題が複雑化する。

 H&Mのように、世界中の労働者の権利の尊重を推進する、企業・労働組合NGOのアライアンスであるETI エシカル・トレーディング・イニシアチブ(Ethical Trading Initiative)の示されている勧告に従い、デューデリジェンスの実施や農家の育成はできるのだろうか。

 

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 中国天津に一時よく通っていた。北京空港から天津まで高速道路で2時間あまり。延々と続く畑がそこにあった。長閑なその風景の中に畑仕事をする人たちがいた。どんな暮らしぶりなのだろうと想像したりしていた。

 

 代替肉は、大量にCO2を排出する畜産業の負荷低減に役立つとの期待もあるという。その一方で、代替肉の消費が伸びることで、新たな問題が発生しないかと少しばかり気を揉む。健全なサプライチェーンの構築が求められているのだろう。

 

 

 

 「関連文書」

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