コロナ渦の影響を伝えるニュースを見るたびに戸惑うことがある。1930年代の世界恐慌並みの経済危機と言いながら、ナスダックでの株価が史上最高値更新とのニュースが流れる。
今年の世界経済はマイナス5.2%の成長と、最悪の落ち込みといい、かなり悲観的なニュースが流れるが、国内では、5月の倒産件数が56年ぶりの低水準という。米国でも、5月の雇用統計が予想外に改善したという。
世銀は2つの別のシナリオも示しており、新型コロナの収束に予想以上に時間がかかり、制限措置の継続や再導入が必要になる場合、世界経済は今年ほぼ8%のマイナス成長に落ち込む可能性を指摘。一方、制限措置を近くおおむね解除できるシナリオでは、成長率は4%のマイナスにとどまるとの見方を示した。ただ、この場合でも、2009年金融危機時の2倍余りの落ち込みとなる。
中国は1%増とプラス成長を確保するものの、1976年以来の低水準を見込む。日本は6.1%、米国も6.1%、インドは3.2%のそれぞれマイナス成長の予想。
一方世銀は、来年の世界経済についてはプラス4.2%成長への回復を予測した。 (出所:ブルームバーグ)
5月の景気ウォッチャー調査によると、景気に敏感な小売店主らに聞いた「街角景気」が15.5に改善したという。それでも、まだ2002年以降で3番目に低い値だという。
2~3か月先の景気の見方を示す先行き判断指数は19・9ポイント高い36・5で、過去最大の上昇幅となった。全ての業種が2桁の伸びで、「今が最底辺なので、今後は少しずつでも日常を取り戻せると期待する」(北海道の観光名所)などの声が上がった。
内閣府は基調判断について「極めて厳しい状況にあるものの、悪化に歯止めがかかりつつある」との見方を示し、1年3か月ぶりに上方修正した。 (出所:読売新聞)
コロナの影響で足元の経済が急激に悪化したが、近々、経済は反転、上向くが昨年並みまでには遠く及ぼない。つまり、経済的に影響する期間としては、極めて短いがその溝は物凄く深いということなのだろうか。
東京商工リサーチTSRの『「破産をリモートで進めるのか」、倒産件数56年ぶりの低水準の舞台裏』との記事が気になった。
TSRによれば、緊急事態宣言以降、法的手続きを進める弁護士の作業が、移動制限によって滞ったことで、5月の倒産の下落につながったという。
セーフティネット保証の適用拡大や持続化給付金など、政府の資金繰り支援策も倒産の抑え込みに一役買っているともTSRは指摘する。
別の審査関係者は、「下手に期限の利益喪失を振りかざして破産されるより、融資や助成の中から支払ってもらった方がいいと思っているところもあるはず」と本音を明かす。
「止血なき輸血」の行方
5月25日に緊急事態宣言は解除されたが、「新しい生活様式」でコロナ前の売上・利益率をあげることは難しい。中小企業では財務余力が乏しく、環境変化に向けた多額の投資には動けない。アフターコロナに対応できない企業への資金繰り支援は、究極の「止血なき輸血」で新たなゾンビ企業の再発にもなりかねない。 (出所:TSR)
「緊急事態宣言の解除に伴い、法的手続きが正常化すると、倒産が再び増加に向かうことは必至だ」といい、今後の2次破綻のリスクもTSRは指摘する。
史上最大の資金繰り支援が、倒産を抑制している側面もあるが、支援とセットの「再建」計画をどう策定し、実行するのか。
事業再生の現場からは、「この状況で計画を作っても蓋然性が担保できない」との声も漏れてくる。リスクを過小評価した場合、「過剰支援」になり、過大評価は「二次破たん」に繋がることも懸念される。 (出所:TSR)
コロナの第二波や第三波も気になるし、今後の経済動向が気になる。倒産する企業が急増に転じるのだろうか。
仮に急増するようであれば、コロナ渦を思えば、様々な産業に波及しそうな気もする。
ブルームバーグが伝えた世界銀行の経済予測にはそうしたことも織り込んでいるのだろうか。そうであると、株価が高すぎる気もする。
誰も経験のないことがこのコロナ渦と言われる。どの予想が正しいのかと気を揉んでも仕方がないのかもしれない。
何れにせよ、時が経てば、すべてが明らかになってくる。要注意で、ウォッチということなのだろう。
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